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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 24

 昼はレギウムの駐屯地を見て回り、夜になるとデラシネに転移して必要な物資の運搬などをする日々が続いた。


 すでにデラシネでは住民すべての家が完成し、それ以外の建築物の着手が始まった。父さんは森での狩りを住民に伝えている。

 住民の名簿はとっくに完成しており、フィラールは法整備というほどのものでもないが、デラシネでのルール作りを始めている。

 アレアスくんは住民たちの御用聞きみたいな役割だ。

 不満などがあればアレアスくんが意見を吸い上げ、それをフィラールやアレクサンドラ、あるいは俺に伝えている。


 順調だなあ。

 ソルヴのほうになんにも進展がない以外は。


 季節は早々に秋になろうとしている。

 この地方の夏が短いということもあるが、季節が変わるまでソルヴで足止めを食らうとは思っていなかった。


 生存者の解放はあまり進んでいるとは言えない。

 彼らは皆、亡者に襲われる恐怖を覚えており、心的外傷トラウマを抱えている。

 大の大人が夜中に泣き出して、個室に一人でいる恐怖に耐えられず、朝になると男たちが一カ所に固まって毛布を被り震えている、という光景を何度も見た。


 そんなもんだから、合計十人の生存者を目覚めさせてからは、新たな生存者を解放していない。駐屯地が居住に適さないということもあるし、彼らが亡者に変わる可能性をレギウム軍が無視できないからだ。


「ニニアエを取り戻して、生存者だけを集めた町を作るしかないかな」


「良い案だとは思いますが、上層部が受け入れられるかというと……」


「つまり?」


「帝国との、アレクサンドラ陛下との交渉次第です。現在、レギウム軍にとって最大の脅威が亡者の軍勢です。アレクサンドラ陛下がそれを率いているというのは、この駐屯地にいる者はすでに理解しています」


 まあ、駐屯地の外に支配地域作って、少数の亡者を召喚とかしてみせたしね。


「アレクサンドラ陛下がレギウムに敵意を抱いていないというのも、長く接してきた私たちには分かります。ですが、使節団はそうではないですし、外交として考えたときに、ニニアエは滅びましたが一万人を返してもらったのでチャラにします、とはなりませんよね」


「そりゃそうだ」


 レギウムには謝罪と賠償を請求する正当な理由がある。


 ただアレクサンドラがそれを受け入れるかというと、微妙なところなんだよな。


 彼女もレギウム人が肌が黒いだけで、魔族というような恐ろしい存在ではないことを理解している。だけど国交を持つことで帝国がレギウムに飲み込まれる可能性から目を逸らせない。

 実際、危ないと思うし。


 レギウムの軍人に善人が多いのは分かったが、政治が同じとは限らない。

 デラシネの住人がレギウムに併呑されたとして、少数民族として差別を受けるかもしれない。

 民主主義って少数意見に耳を傾けにくいしな。


「リディアーヌさんが協力的なことが一番の救いです」


 セルヴィスくんさあ、俺も協力的だよ?


 どうもレギウムでは個の武というのは、勇者を除いて重要視されないようだ。

 まあ、アーキバスの開発まで至っているから、戦場の主役は銃で、この時代の銃は横に並べて一斉発射による制圧を行うものだろうから、個人の活躍ってのはあったとしても目立ちにくい。

 軍としても突出した個より、同じ性能を発揮できる多数を求めるだろうしな。


「使節団はまだ選定に時間がかかるようですが、交渉の準備自体は進んでいるようで、それだけが救いです」


「そうなの?」


「おや、新聞をごらんになっていません? 世情を知るには一番ですよ」


 俺がレギウムの文字を学習しようとしない嫌みだろ、それ。


「美人で若い子が読み聞かせしてくれるなら世情を知ろうという気にもなるが」


「――がんばる」


 ネージュがいること忘れてアホなことを口走ったが、結果的にネージュのやる気を引き出せたようでなにより。

 こういう時は怒っていいんだよ。ネージュ。


「リディアーヌさんが手紙でレギウム政府とやりとりしてくれています。内容がちょっと漏洩したりしていますが」


「民主主義の悪いところだよなあ」


 民主主義はペンに力を与える。

 つまり報道機関が政府に対する監視と圧を担当する。

 それ故に有力な議員が匿名を条件に重要な情報をポロリとしたりするのだ。

 民主主義国家では政治がすべてを決めるのである。


「それで内容は?」


「帝国側は資産で賠償を行う、というものですね」


「資産?」


「貴金属や、芸術品などです。その代わり領土は割譲しないとしています。もちろん新聞記事では有力者とのやりとりとなっていて、アレクサンドラ陛下の発言ではないのですが」


「うーん、確かに今すぐ領土割譲となるとアレクサンドラが絶対に頷かないのは分かる」


 将来的な領土割譲には同意してるけど、それって何十年も先のことだと思うんだよな。

 アレクサンドラが年老いて死ぬ前に亡者をすべて解放する必要があるなら、事前準備として割譲しておかなければならないって話だし。


 かといってリディアーヌが勝手に賠償を約束していいものなんかな?


 うーん、まあ、リディアーヌなら大丈夫だろ。

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全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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