表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/231

暁の星 23

 先触れが来たのはソルヴ滞在十日目のことだった。

 滞在って言っても軍の駐屯地から外には出られてないから、ソルヴの町に入れもしていないけどな!


 伝書鳩がもたらした報によれば、使節団を結成して向かうから賓客対応で引き留めろというような内容であったようで、時期については明言されていなかった。と、俺を担当しているセルヴィスという士官から聞いた。


「長くなるかな?」


「長くなりますね。レギウムの政権与党は現在少数与党で意思決定には野党の賛成が必要です。対外融和はほとんどの党が是としていますので、それ自体は決定しますが、決定までに駆け引きが生じます」


「外交案件くらいは首相、あるいは外務大臣の独断でできないのか?」


「外務大臣が直で来る分にはできると思いますが、使節団の結成となると与党だけで固めると後々問題になりますから」


「面倒くさ」


 議会政治って面倒だなあ。

 この辺、首長の判断で物事が進む専制政治はスピーディだ。


「外務大臣は来るのを嫌がったんでしょうね。事実上ここは戦地のようなものですから」


「いま戦闘が発生しているわけでもないのに?」


「こちらの置かれた状態も考えてみてください。ひとつの町が市民ごとほぼ全滅しているんです。そんなところに重鎮が近寄ってくると思いますか?」


「となると使節団は押し付け合いか」


「今回の騒乱で現政権は間違いなく次の選挙で負けます。ここで点数を稼いだところで、という感じでしょうね。共和優民党なんかは重鎮が来るかもしれません。次の与党と目されていますしね」


「政治情勢に詳しいんだな」


「レギウムは民主主義国家ですから。政治に関心を持っていないと軍で出世も難しいですよ。どこかの党にだけすり寄っていたら選挙結果次第になりますし、うまく時勢を見極めないと」


「俺の担当になったのもそうやって先を見たからか?」


「そうだったら良かったんですけどね」


 あー、誰もなりたくなかったのね。かなしい。

 にしてもぶっちゃけるなあ。

 なんというか対等に見られていない感じを受ける。

 つまり発展途上国《格下》に対しマウント的に自分たちの政治状況の不満をもらしている印象を受ける。

 口語的に言語化すると「おまえんとこだと、こういう苦労はわかんねぇだろうけどさ」という感じ。


 口調は丁寧だし、悪気もあんまりなさそうだけど、それってつまりナチュラル見下しだよね。


「政治はリディアーヌに任せる。俺はそういう教育を受けてないからな」


「リディアーヌさんは素晴らしい学習能力をお持ちですね。まだ訛りがありますが、簡単な意思疎通なら問題ないレベルです」


「それを言うと君らがこれだけ話せるのも十分素晴らしいが」


 忘れてはいけないが、レギウムからすると帝国は道なき道を越えて侵略を試みてくる蛮族なのだ。


「コミュニケーションの失敗が戦争の引き金になることは少なくありませんから。我々は可能な限り言語を学ぶようにしています」


「言語が分かっていてもコミュニケーションはよく失敗するんだよな……」


「コミュニケーションは取れても、相互の利益がぶつかり合い、どちらも退くことができず、ということもあります。違うもの同士で尊重し合うことができれば一番いいのですが、いつでもそうというわけにはいきません。ですから軍隊という緊張でバランスを取るわけです」


「ああ、そうか、軍事力のある相手に強気には出られないか」


 なんか攻め込まれたときの防衛力という考えしかなかったけれど、国家間の交渉時にバランスを取る役割もあるわけか。

 こういう気付きがあると、これまでなんも考えずに生きてきたんだなあと思ってしまう。


「リディアーヌさんに政治を任せると仰るわりにアンリさんは比較的、先進的な考え方に抵抗がないように思えますが……」


「一応、フラウ王国で貴族教育を受けたからな。帝国の一般兵士に比べたら知識はあるほうだ」


 王国や帝国の教育格差は非常に大きいからな。


 あと前世の知識に頼るところは大きいですよね。


「アレクサンドラ陛下がそうなら良かったんですが……」


「根っからの皇族だからな。帝国は特に貴族主義的だし」


 王国もそうで、俺やリディアーヌが変わっているんだけども。


「せめて帝国までの交易路開拓には同意してもらいたいものです」


「狙いは植民地か? 帝国周辺には鉱山がたくさんあるからな」


「せめて交易相手と言ってください。帝国の現状からするとそのような形になってしまうかも知れませんが」


 帝国の国民は現在百人ほどしかいない。

 交易のためにレギウムが人を送り込めば、あっという間にレギウムの人間が過半数を占めることになりかねない。


「帝国が隣国二カ国にトップの首を文字通り要求するのであれば、せめてレギウムとは友好的に接してもらいたいものです」


「まあ、アレクサンドラに領土的欲求はない。亡者を拡散させたのも自暴自棄になっていたからという部分も大きいだろうし、レギウムが被害を飲み込んで交渉してくれるなら、俺としてはアレクサンドラにも受け入れてほしいけどな」


「アレクサンドラ陛下はアンリさんに心を許している様子ですから、説得に期待しています」


 そうは言ってもな。

 彼女の受けた仕打ちを考えると、あんまり無理は言いたくないんだよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ