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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 16

 地獄とも天国とも言えるような旅はしばらく続いたが唐突に終わりを迎える。


「待ってください。近くに眷属がいます」


 森林限界を超え、もはや木々のない高地でアレクサンドラは進行方向を変えた。

 峠を越える直前で俺たちの目にもスケルトンの姿が目に入る。

 アヴィータさんは想わず身構えたが、他の面々はもうスケルトンの存在には慣れきってしまっている。


「目指していた眷属で間違いありません」


「ということはこの峠を超えたらレギウムの町が見えるのか」


「ええ、少なくとも滅んだ町があるのは間違いありません」


 俺たちは警戒しながら稜線の向こう側に顔を覗かせる。

 アヴィータさんによれば、レギウム連合国にはすでに遠見のできる器械が存在しているという。要は望遠鏡だ。

 こちらからは発見できなくとも、向こうがこちらを発見しているという状況は発生しうる。


 果たして眼下には確かに町があった。

 思っていた以上に発展していた形跡のある町が。


「探知魔法を使う」


 探知魔法は自分を中心に広げた魔力の波の反射を読み取る魔法だ。

 意外に思うかもしれないが、地形に邪魔されてしまう。

 稜線を超えたこの段階でなければ町を探知範囲に収めることはできない。


「ダメだ。生きている人はいない」


 子どもくらいのサイズを最小にして生命探知を行ったが、引っかかるものはなにもない。


「ここはニニアエだと思います。避暑地として人気のあるところでした。おそらく多くの人が訪れていたことでしょう」


 辛くなる補足情報は止めてほしいが、それも含め、俺たちが受け入れなくてはいけない現実ではある。


「ニニアエから亡者はすべて引き上げてあるんだよな?」


「ええ、何体か投入すれば支配地域にできますが?」


 黄泉返りの魔王の権能強すぎない?


「その必要はない。アヴィータさん、ニニアエからは街道が整備されているってことで間違いないですか?」


「ええ、はい。馬車が使えるくらいの道は整備されています」


「ニニアエでどこか屋根のあるところを借りて、明日からは馬車旅だな」


「プレハブが悪いわけじゃないんだけど、やっぱり家はちゃんと建ってるのがいいわね」


「プレハブは壁が薄い」


 はいはい。ちくちく刺さないでくれますぅ?


 俺たちは稜線を超えて、ニニアエに向けて山肌を降りていく。


 人のいなくなった町を英語でゴーストタウンというが、ここにはゴーストすら住み着いていない。廃墟としか言いようがない。

 どこにも人々が慌てふためき逃げ出した痕跡が残されていて心が痛くなる。

 安全だと思っていた場所、日常が、突然崩壊し、家族が殺され、その遺体が自分に向かって襲ってくる。それは一体どんな光景だったのだろうか。


 今後の交渉のことを考えれば、いっそ逃げ延びた者がいないほうがいいのでは? とすら思えてくる。

 少なくとも彼らは俺たちのことを許さないだろうから。


 探知魔法で人の捜索は終わっているので俺たちのすることは今夜の宿を決定することだけだった。

 おそらく領主のものだった大きな屋敷を間借りすることにして、一泊。


 簡単に書いたけど、どれほど困難な一夜だったかは、もう言わなくても分かるだろ?


 疲労はともかく、寝不足は魔法で回復できないんだよなあ。

 ドーピング的に一時的に眠気を飛ばすことはできるが、後で揺り返しが来る。使い過ぎると普通に睡眠不足で死ぬんじゃないかな。


「さてここからは馬車旅だ。幸い、収納魔法には馬車が入っている。眠らせた馬もな」


「帝国脱出の時のね。そんなに前の話じゃないのに、なんだか懐かしい気がするわ」


「最近は状況の変化が激しすぎるからな。御者はアヴィータさんに任せていい?」


「問題ありません。ニニアエからですと、ソルヴに向かいます」


 アヴィータさんは馬の扱いにちゃんと慣れていた。

 俺たちは滅んだ町を背に、連合国の内側へと馬車を進めていく。

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新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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