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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第5章 黄泉返りの魔王

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黄泉返りの魔王 78 [人間の戦い 2]

 床から現れた黒マントを不意打ちめいた一撃で吹き飛ばし、ピエールを伴ってそれを追ったバルサンだったが、実のところ勝算があったわけではない。


 アンリから情報共有を受けており、黒マントの特性については聞き及んでいる。


 鋼の肉体を持ち、空を飛び、影を武器に変えるかもしれない。

 魔法を分解する能力もあるらしいが、魔法の使えないバルサンにしてみれば関係ない。


 帝城内という限られた空間であれば、脅威は自在に変わるかもしれない武器と、鋼の肉体のみ。だがその体重は鋼ほどの重さではないのだという。


 つまりバルサンの全力であれば吹き飛ばせる。


 バルサンの戦術目標は単純である。

 初めから時間稼ぎ一択。


 故にこの場にいる7人の英傑の中で最弱の2人で立ち向かうことにした。


 他の場所で味方が勝てば救援に期待ができる。

 それまで命を繋ぎつつ、敵の合流をさせない。


 アンリは敵の目的はこちらの分断だと言っていたが、それは違う。

 間違っている。


 初手の床からの一撃。

 あれはおそらくアンリを狙ったもの。


 バルサンはそう目している。


 結果的に外れただけだ。


 アンリから聞いていた話から推測するに、アンリは彼らの目的である魔法使いの復活における成功例だ。

 にも関わらずその命を狙ってきた。


「我はバルサン領主、レイモンド・バルサンである! 人類の抹殺を目論む貴様の名を聞いておこう」


「下等生物に名乗る名など無いと言いたいところだけどなァ、いいのを一発もらっちまったし、冥土の土産に教えてやろう。てめぇら下等生物に冥土があればの話だが」


 黒マント――とは言ってもその背にマントは無いのだが――は床をぶち抜き、バルサンの攻撃を防いだ馬上槍を双剣へと変化させる。

 大金槌を装備しているバルサンに合わせたのだろう。

 確かに大金槌は取り回しに難があり、対スケルトン用に装備していたものだ。

 バルサン伯爵が得意とする武器は大剣である。


「隣人のルキオ。それが俺の名だ。何秒覚えていられるか試してやるぜぇ」


 黒マント、いやルキオは鋼の肉体とは思えない速さでバルサンの懐に接近してくる。まだバルサンは大金槌を振り上げてすらいない。

 ルキオの手にした黒い双刃がバルサンに迫る。


 が、次の瞬間に吹き飛ばされていたのはルキオの方だった。


 バルサンに蹴り上げられて、易々と天井をぶち抜いて、上階にまで達する。


「先といい、今の手応えといい、確かに鋼の硬さがあるようだ」


「下等生物がぁ!」


「[ボーエンシィ機関]だったか? どうやら絶望し、弱った人間にしか手を出せぬようだな。貴様らの言うただの下等生物が積み上げてきた武の歴史を思い知るといい」


 言葉とは裏腹に大金槌がどすんと音を立てて床に置かれた。柄はバルサンが握っているが、戦闘態勢とは言いづらい。

 まるで休息でも取るかのような、隙だらけに見える姿勢だ。


 それはあまりにも露骨で、素人であっても[誘っている]と分かる。


 分かるが、分かる故にルキオは来るとバルサンには確信がある。


 ルキオは人類を見下しており、その人類が弄した策を回避することすらプライドが許さないだろう。

 バルサンはそう考えた。


 そしてそれは完璧に正しい。


 バルサンの予想通りにルキオは愚直に飛び込んできた、かに見えた。

 だがバルサンのすぐ手前で、その体が横にずれた。

 双剣の一本をまるで槍のように伸ばして、床に打ち込み、その反動を使って横に移動したのだ。

 バルサンには何もできない。


 唇を歪めて嗤うルキオが床を蹴って方向転換。

 無防備なバルサンの鎧の隙間を狙って双剣を突き出してくる。


 だが、その刃先がバルサンに届くことはない。

 バルサンは大金槌を持ち上げた。ただそれだけの動き。

 何の気なしに行われたように見えたそれで、ルキオは再び打ち上げられ、天井に強く打ち付けられた。


「ふむ、武器種を間違えたか。スケルトン退治用のままで来てしまったな。鋼の肉体とは聞いていたが――」


 ビュンと大金槌が振り回される。

 その巨大さ、その重量を完全に無視したように見えるほどだ。


「大戦斧にしておくべきだったな。容易く両断してみせたものを」


 そんなバルサンに、天井に不自然に張り付いたままのルキオが声を掛ける。


「ケケケ、舐めてかかってたことは認めるぜ。てめぇは強ェ、下等生物にしちゃあな。だが同じ魔法生物でも俺ァ主様に直接作られた特注品だ。第二ラウンドだ。行くぜ」


 今いる部屋の中央でバルサンは構える。

 大金槌の先を下に向けた、どちらかというと防御的な構えだ。


「――!」


 にも関わらず、ルキオの攻撃はバルサンの鎧に届いた。

 咄嗟に身を捩っていなければ、特注の鎧でなければ、貫かれていただろう。


 いつの間に武器を変えたのか、馬上ランスの穂先が、バルサンの鎧を抉りながら、空間を貫いていく。


「名乗ったはずだぜ? 俺ァ名乗ったよなァ? 下等生物は物覚えが悪ィからなァ。いいぜ。もう一度名乗ってやろう。俺は隣人のルキオだ。よぉーく、意味を考えな!」


 ふむ、とバルサンは首肯する。


 つまり奴らの能力は影の武器化だけではない、ということだ。

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新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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