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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第5章 黄泉返りの魔王

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黄泉返りの魔王 55

 当然のことだけど、王族の絡む盛大な結婚式ともなるとぶっつけ本番ということはない。

 関係者が集められて入念なリハーサルが行われたし、当事者だけでの練習も別途行われた。


 もう何回誓いの言葉を口にしたか分からないよ。

 そろそろ誓いが呪いに変わったりしない? だいじょうぶ?


 だから結婚式当日だからと言って、花嫁3人のドレス姿に今更感動ができない。

 純白、純白で目が潰れそうだよ。

 なんでこんなに白いんだい?


 って聞いたら純血の証と返ってきた。


 なーにが証じゃ。

 純血なんぞ露程にも大事にしない連中が、普通に純白のウエディングドレスで結婚して、若い暴力男と不倫しとるわ。


 地球ではどうせキリスト教圏の花嫁は純潔であるべしというような思想が反映されてるんだろうが、フラウ王国の貴族でも同じ。

 純血の証がなんで白なのかは俺に分からん!


 だけど実際に、俺は誰にも手を出さないままこの日を迎えることになった。

 未遂はあったけれども。


 前世から未だに清い体だと考えると、ついにこの日を迎えたという気持ちがないわけでもないが、正直、結婚式はリハをやりすぎて本番がダルい。

 ここまで来たら緊張での失敗はないだろうけどさあ。

 感動が無いよ。感動が。


「こんなに立派にな……」


 それでも父さんが感動のあまりに俺に抱きつきかけて母さんに羽交い締めにされていたり、リーズ姉やアデールにキラキラした目を向けられると感じ入るところがある。


 母さんやリーズ姉、アデールはメイドとして式典にも参加したいと言ってくれたけれど、今日のこのハレの日に家族を召使いのように扱いたくなくて、こうして控え室で待機してもらっている。

 食事は皆と同じものを用意するけど、逆に言えばそれくらいしか用意ができない。


「時間です。アンリ閣下」


 召使いに声をかけられて、俺は襟を正す。


「それじゃ行ってくるよ。せめて料理は楽しんで。マナーは気にしなくていいから」


 一応女性陣はストラーニ家で貴族のマナーを目にしているだろうけど、実践できるかというとまた別の話だし、庭師の父さんにそれができるとは最初から思っていない。

 期待していないという意味じゃなくて、普通に無理だし。


 家族に見送られて、俺は別の控え室に移動する。


 フラウ王国では王族の結婚式は迎賓館で行うのが慣例だ。

 なんせ隣国からも招待客が来るからね。


 フラウ王国の南にあるヒラシアメニク商業都市連合からは13人も客が来た。

 もちろんこれは式典に参加する身分の高い人の数で、使節団の総数はちょっと分からない。

 村を超えて町くらいの規模がありそう。


 商業都市連合にしてみれば北の友好国が、さらに北の覇権国家から攻め込まれる直前ということもあって、色々と思惑があった結果の数だろう。

 あの国自体も政治的内紛が凄まじいと聞くからな。

 そこの代表が行くなら、ウチも!

 だったらウチも参加する!

 みたいな感じで増えていったのだと思う。


 多分、これでも厳選されてるんだよな。考えたくないけど。


 大枠としたら戦争に向けた支援の話を持ってきたのだとは思うが、すでに足並みが揃ってないから、その内容も怪しい。

 実際の交渉は国王が担当するだろうから、俺は知らんぷりしてるけど。


 あと他にも何カ国か使節を送ってきてるけど、全部ヒラシアメニク商業都市連合を経由した先の遠い国だ。

 フラウ王国に隣接する友好国家はヒラシアメニク商業都市連合だけである。


 というか、ヒラシアメニク商業都市連合自体が王国の拡大に対抗して、アラシア港を巡って争っていた南方諸国が手を組んだものだ。

 対抗とは言っても軍事的にではなく商業的なものなので、こんな国名になっている。


 大陸の中央部に位置しながら、大陸西部からは辺境と言われているフラウ王国だが、遊牧民だった名残の毛織物が西部では高く売れるらしくて、ヒラシアメニク商業都市連合の商人がよく買い付けに来ている。

 フラウ王国独特の模様とかが異国的でウケているという側面もあるとは思うけどね。


 さてクソ面倒い政治情勢の話はこのくらいにして、今日の主役である花嫁たちの話をしよう。

 見飽きるほどに見たドレス姿だけど、それでもリディアーヌは息を呑むほどに美しい。

 いつもはわずかに残る少女らしさも今はドレスに隠されて、妙齢の女性として完成された美がそこにはある。

 肌をほとんど露出させないハイネックでプリンセスラインのドレスながらも、胸の膨らみは多分敢えて強調されていて、そのボリュームもあって、もうこれは兵器だよ!

 長い髪は纏められてヴェールに詰め込まれている。


 フラウ王国では一般的に未婚の女性は肩より下まで髪を伸ばし、結婚すると肩より上で纏める。

 夫と死別するとバッサリと切る。

 髪が伸びるまでが、寡婦が喪に服する期間だ。

 一般的に肩より下まで伸びれば喪が明けたと見なすけど、そのせいでどれくらい短くするかで亡き夫への愛情を示す女性が多くいる。

 夫の親族からの圧力もあるとは思うのだけど、近年はその傾向が過熱して剃っちゃう女性もいるらしい。

 まあ逆に肩にかからないギリギリの長さに切る女性もいるみたいだけど。


 なんか結婚式でする話じゃないな。

 いや、だってリハで何度もやったところだもん。

 雑念も浮かぶよ。


「今日も美しいよ」


「ありがとうございます」


 何度もやったやりとりだけど、欠かすことはしない。

 不思議なもんで、綺麗だね、って言うのはなんか恥ずかしいけど、美しいよ、と言うのはなんでもない。

 綺麗だねという言葉を言うと俺の主観だけど、美しいのは誰が見てもそうなので事実を述べたに過ぎないからかもしれない。


 続いて俺はシルヴィに向き直った。


 シルヴィは胸の下あたりから膨らみの無いスカート状になったエンパイアラインのドレス。

 代名詞のツインテールは封印されて、やはりヴェールの中に髪が押し込まれている。

 どうしても綺麗というより可愛いという感想が浮かんでくるけど、そこはぐっと飲み込む。


「シルヴィも綺麗だよ」


「ありがと」


 何度やっても照れるらしいシルヴィは今日も可愛い。

 ただそのドレス、多分膝丈くらいで引っ張ったら切れるかなんかするよね。

 んで、スカートの中に短めの剣を仕込んでるよね。

 いやまあ、戦争前夜だし、警戒はしたほうがいいと思うけど、リハの時だってさあ。本番くらいはさあ。


 シルヴィはそういうものなのだ、仕方がない。

 俺は今から武装解除させるのを諦めてネージュの方を向いた。


 ネージュはウエディングドレスと言えばこれだよなあって感じのAラインのドレス姿だ。髪は(以下略

 幼い頃から知る彼女が、その時の姿のまま俺の花嫁になるというのはなんとも不思議な感じがする。

 エルフと結婚するってことは、生きる時間の流れが違う相手と人生を寄り添うのだということを再認識する。再々々々々……認識くらいだけど。


「ネージュはいつも通りだね」


「もう何回もやったから」


「そうだよね」


「でも大事なのはこの1度だけ。やっとアンリの家族になれる」


「ネージュはもうずっと前から俺の家族だよ」


「法的根拠が必要」


 やだなあ。法的根拠とか言うエルフ。


「はいはい。熟年夫婦感を出さない。私たちまだ新婚ですらないのよ」


 フラウ王国貴族における婚姻は両家の合意によって成立するし、その日付は今日になるから、一応もう結婚済みと見なすこともできるけど、まあ、感覚的には宣誓の時とか、指輪交換の時だよな。

 フラウ王国には結婚指輪の概念無いから、誓いの言葉を口にした時になるんだろうけど、もう何回誓ったんだよ!!!

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