黄泉返りの魔王 54
その後、報せを聞いてすっ飛んできたコルネイユ候に俺たち3人はめちゃくちゃ叱られました。
本当に本人が領地から騎乗して王都に乗り込んでくるとは思わないじゃん。
あとなんで俺まで叱られてるんですかね?
俺は反対しました!!
コルネイユ候にいくらなんでも新年が明けるくらいのタイミングは早すぎると説教され、ネージュが反論して、コルネイユ候が激怒、国王がそれに激高という、あわやというところまで行って、結局、ギリギリのギリギリ、年度が変わる直前、春の芽吹きを感じられるであろうくらいの時期にリディアーヌとシルヴィ、そしてネージュとの合同結婚式を執り行うことでまとまりました。
これも合同結婚式でいいんかな?
先例が無さ過ぎる。
リディアーヌの機嫌が良くなったと、こっちは肌つやの良くなった国王に言われるがまま、準備の日々が飛ぶように過ぎていく。
まあ、喫緊の課題は大体片付けた後だったからね。
隙間の時間を使ってアレアスくんとダニエルくんは口説き落としました。
リディアーヌとの結婚が秒読みに入ったことも、彼らが落ちた理由だと思う。
いくらリディアーヌの婚約者とは言っても、元平民の成り上がり貴族だったからね。
もう授業に出る必要が無いという2人をそれぞれ、アレアスくんはフィラールのところに、ダニエルくんはバルサン伯のところに送り込んで教育してもらうことにした。
学院の競技大会はなんか知らん間に終わってましたわ。
ダニエルくんは無事優勝したそうで、鼻っ柱が高くなってたから、魔法ありの模擬戦でバッキバキに叩き折っておきました。
これでバルサン伯の言うことをちゃんと聞くだろう。
なお、シルヴィについての言及が何故かバレて、シルヴィにもボコボコにされてた。
流石にちょっと可哀想。
だれがばらしたんだろう。
でもまあ、肉体強化の魔道具無しのシルヴィに技術で敵わず、穂先すら届かなかったのは結構堪えたみたいだ。
シルヴィの技術はちょっとバグみたいなところがあるから、しゃーないと思うよ。
アレアスくんはちょいちょいネージュに絡みに行ってるのがちょっと気になるんだよな。
嫉妬とかじゃなくて、ネージュさん、アレアスくんにガルデニア仕込みの技術を教えてない?
それ秘伝とかじゃない? 大丈夫?
ネージュに伝わってる時点で別にいいか。
いや、ネージュに関しては国王から特別に許可が出てる可能性も高いけれども。
これで領地の将来は安泰だ、とは言えないか。
すでにリディアーヌとの結婚後はウイエ周辺の直轄領を治めるように、と国王から内示が出ている。
流石に自分で人材を揃えろということはないそうだが、ウイエだからなあ。
フィラールが帳簿のチェックをしたら何が出てくるのやら。
まあ、それは後々考えよう。
戦争のことも一旦忘れて、俺は結婚式の準備に奔走している。
まあ、招待状を書くことがメインのお仕事だけれども。
王家と侯爵家が絡む結婚式なので招待客の数が膨大だ。
代筆を頼んでもいいらしいのだが、リディアーヌが担当分を自分で書いていると聞いて、俺もやるしかねぇってなった。
シルヴィも自分で書いているらしいが、あの子、あの件以来、綺麗な字をすらすら書けるようになっててズルい。
元々字は綺麗というか、貴族の基礎教養ではあるのだが、その速度が段違いに速くなったのだ。
実の家族を式に招待することは流石にできない。
今でも平民だからね。
色々と問題がある。
ただ現地には呼んで、控え室にはいてもらう予定だ。
その後はウイエに居を移してもらうことでストラーニ伯と話もついている。
家族にはウイエに私邸を建てて、そこでストラーニ家でしていたような仕事をしてもらうつもりだ。
もちろん当人たちが別にやりたいことがあるのなら支援したい。
コネまで使うかどうかは内容次第だけど、金銭的な支援はいくらでもするつもりだ。
まあ、それに頼り過ぎるようなら、口を出すかも知れないけど。
そして何度か雪が降って、ちょっとだけ積もったこともあったけども大した災害にもならずに、気が付けば日差しに暑さを感じる日すらあるようになった。
春と呼んで差し支えない頃、王国の暦では春の始まったその日、俺たちの結婚式が始まった。




