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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第5章 黄泉返りの魔王

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黄泉返りの魔王 44

 一応この代官についても話をしておこう。

 今後も世話になるだろうしな。


 イメージしやすいように、先に容姿について話しておくか。


 彼は、まず彼というからには男性である。

 目が2つあり、穴が2つある鼻が1つ。


 冗談は置いておいて、切れ長の鋭い瞳が印象的な30歳くらいの男性だ。

 黒髪黒目でいつも黒のスーツっぽい服を着込んでおり、農民からは黒い人と呼ばれている。

 長い髪を首の後ろで紐をつかって括っており、いつも前髪を鬱陶しそうに払っている。

 だったら切れよ、と思わないでも無いが、俺も長髪なので言いにくい。

 スーツの胸ポケットからは細い鎖が垂れているが、懐中時計を持ち歩いているのではなく、ガラス製のレンズを持ち歩いている。

 ちょっと勉強のしすぎかなにかで目が悪くなったんだろう。

 小さい文字なんかを読むときに使っているのをよく見る。

 普段は胸ポケットに仕舞っているのだが、目が悪くてよく見えていなくて目に力が入っているのか、ただでさえ鋭い目つきに加えて、眉間に皺が寄っており、なんとも近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

 あと畑仕事を手伝うようなことは一切しないので、農民たちはもしかしたら、こっちが領主だと思っているかもしれない。

 俺は時々手伝っちゃうからね。


 彼の名はフィラール・ロデデーズ。

 姓があることから貴族家の出であること。

 その名を使うことを許されているのだと分かる。


 とは言え、ロデデーズという貴族家は無い。

 正しく言えば、今は無い。

 端的に言ってしまえば、取り潰されたのだ。


 俺が生まれる前に起きたアルブル帝国によるフラウ王国侵攻の際に、当時のロデデーズ家当主は務めを果たさないどころか、領民を見捨てて逃げた。

 その際に、ロデデーズ家に仕えていた騎士だった現ストラーニ伯が、他の騎士や兵士をまとめあげてピサンリを防衛し、その功績を以て元ロデデーズ領を賜ったという経緯がある。

 現在のストラーニ領は、かつてはロデデーズ領だったのだ。


 もちろん逃げると言っても財産を抱えて逃げたロデデーズ伯が逃げ切れるはずもなかった。

 ロデデーズ伯は捕縛され、処刑され、その一族も連座となる。はずだった。


 だがそうするにはロデデーズの名前は王国にとって大きかった。


 貴族というのは歴史を抱えている。

 ロデデーズ家の先祖は、かつて大森林から溢れ出した魔物たちを押しとどめた功績で、あの大森林に接する領地を得た。

 要は大氾濫で俺がやったようなことを、ロデデーズ伯の先祖はやり遂げたのだ。


 魔法も無しに魔物の軍勢に立ち向かうのが如何に困難なことか。

 この世界の人間が如何に精強とは言っても、大型以上の魔物と比べられるようなものではない。

 あれだけ強いバルサン伯爵ですら、兵士たちと協力して、その上で犠牲を覚悟してようやくドラゴン、それも割りと小型なドラゴンをようやく倒せるのだ。

 いやまあ、今のバルサン伯爵だったらあのくらいのドラゴン余裕なんで、参考にはできないんだけど。


 それとも当時は今のバルサン伯くらい強い人ばっかりだったんだろうか。

 それくらいでないと説明が付かない。


 なんにせよロデデーズは帝国の侵攻で名を落とすまでは、王国貴族の尊敬を一心に集める名家だったのだ。


 当主はともかく、家族くらいは処刑せずに、今後もロデデーズを名乗ることくらいは許しても良いのでは?


 という嘆願が各地で起こり、結果的に処刑は当主だけで済んだ。


 フィラールはそうして命と名前を残せたのだ。

 なのでロデデーズを名乗っていても、フィラールは貴族というわけではない。


 ではフィラール自身はどういう経歴なのかというと、ロデデーズ家が取り潰される以前に学院を次席で卒業し、徴税官としてキャリアを積んで、さてどこの貴族家に自分を売り込もうか、というタイミングだったらしい。


 フラウ王国では冬の期間、ほとんどの貴族が王都で過ごすため、その間領地を治めるために代官が必要になる。

 徴税官として働いた期間で、自分と相性の良い貴族家を探していたそうだが、そのタイミングで俺が領地を賜ることになった。

 領地は農村3つと少ないが、王女の婚約者であり、後々は経済都市であるウイエを取り込む可能性が高い。

 さらに俺は未成年で学院に在籍している上、観測所という研究機関を作ってそこに居座っている。


 フィラールはこの好機を逃す手はないと思ったそうだ。

 どうやら他の代官候補たちはそう思わなかったようではあるが。


 ま、まあ、フィラールが有能すぎて将来が見えすぎてたんだな。きっと。

 そうに違いない。


 とにもかくにも他に応募が無かったので、自動的にフィラールは俺の領地で代官となった。


 そんで実際に働いてもらったわけなんだけど、いや、本当にもう任せておけば安心なのよ。

 俺が金を出して、方針さえ伝えたら、大体その通りに物事が進む。

 俺の実際的な精神年齢は置いておいて、子どもの思いつきの政策なんて、実際の運用には問題があることが多いと思うんだけど、フィラールはそれとなく現実に即したアレンジを加えて、ちゃんと俺に変更点を確認してくる。

 俺はフィラールの改善案を承認するだけで、するすると物事が進んでいくのだ。

 徴税官をやっていた絡みで、各地に顔が広いのもいい。


 俺が農村間だけでなく、ウイエにまで道を整備したいって言ったら、必要な予算を算出して、人員を他所から集め、ウイエの代官から各種許可まで取ってきたからな。

 俺は道を作りたいって言っただけなのに、農民が農作物を売りに行ったり、商人がやってくることまで読んで、それに合わせた設計を出してきた。


 もうお前が領主でいいよ。


 顔を合わせることが多い分、もうちょっと愛想が良ければ、とは思わないでもないが、立場や役割を考えるとこれくらいでちょうどいいのかな、とも思う。


 とにかく俺の領地経営に彼の存在は最早欠かせないし、今後もよろしくお願いします。

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