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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第5章 黄泉返りの魔王

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黄泉返りの魔王 43

 冬が深くなってくると、俺は領地に引っ込んだ。


 学院にまだ在学中である関係で、俺が領地にいる時間は少ない。

 俺が不在の間は王都から来た代官が全てを取り仕切っているが、この男が優秀すぎて何もすることが無い、というのは前にも話したと思う。


 今も俺は収支報告書を前に唸っていた。


 うん。分からない。

 多分、赤色のインクで書かれているところが赤字の項目なのだろう。

 借入金のところに、ちょっと考えられないような額の数字が赤色で記載されているのは分かる。


「この借入金というのは? すごい額なんだけど」


「アンリ様がポンポンポンとお気軽に、無節操に領地に投じた私財の分です」


「あー」


 怒ってらっしゃる。


 なるほどなあ。

 収支報告書をきちんと書くなら、あのお金って俺が領地に貸し付けたってことになるんだ。


 インフラ整備とか、農地改革とか、農村3つではどこをどう振っても資金が出てこなかったので、俺は貯め込むばかりの金をここぞとばかりに放出したのだ。


 そのお陰もあって、今では農民個人でも大八車に農産品を積んでウイエに売りに行くことができるようになっており、それまで自給自足に近かった領民たちの生活は劇的に豊かになった。


 税収の伸びもそれを示している。


 領主貴族は国に対して徴税官が調査した領地状況に応じた金銭での税を納めれば良いということになっている。


 なので領民からどう税を取るかは、領地貴族の自由裁量だ。


 俺の領地では、

   ・15歳以上の領民1人当りから取る人頭税。

   ・店舗で物を売り買いした場合の消費税。

   ・事業を行って得た利益に対する課税。

   ・領地に運び込まれた事業性のある物資(金銭は除く)に対してかける関税。

 の4つが税収の柱となる。


 農村3つであるにも関わらず、生産する農産物から税を取らないのは、純粋に換金が面倒だからだ。

 それに生産量に応じて課税しようとしても、農民からすると沢山生産しても、税として持って行かれる量も増えるだけだし、誤魔化そうと生産品を隠す農家も出てくるだろう。


 だったらもうそれぞれがこの地で生活することに対して税を取る。

 15歳からの課税としたが、王国の、しかもこれほど地方では4,5歳からもう畑仕事を手伝うのが普通だ。

 働いているのに税金がかからない労働力。

 それが子どもである。

 なので俺の領地では現在結婚ブームとベビーブームが巻き起こっている。


 消費税については代官からの抵抗が強かった。

 農民たちには受け入れられない、と。


 だけど消費税というのは、とても平等な課税方法だと思う。

 物を領内で購入する場合、10%の消費税を別途支払わなければならない。

 いや、消費税を納める義務を負うのは事業者のほうなので、別に客から消費税を必ず受け取らなければならないわけではないが、帳簿に記載された売り上げの10%は消費税受け取り分として納める必要がある。

 これは例え利益が出ていなくても納めなければならないので、領地内の店舗への調査は度々行っている。


 上記の理由から領地内の事業者はきっちり帳簿を作り、報告する義務がある。

 利益もばっちり分かるので、そこにも課税する。

 消費税はあくまで客が支払って事業者が預かっているものなので、事業者が得た利益には別途税金を支払ってもらわなければならないからだ。


 ただ経費は結構甘めに判定させているので、領内事業者は設備投資や人員雇用を積極的に行っている。

 俺が金を出さなくても事業者が領内産業を後押ししてくれるの楽で良いですね!


 ウイエで大きな店を経営する商人が、うちの領内に支店を出して商売をしているが、本店との連結決算は認めていない。

 ただ領内にある店同士であれば連結決算を認めているので、何人かの商人は共同で事業体を作り、グループ経営をしている。

 利益の大小によって税率が変わることはないので、効果はそれほど高くないだろうが、一種の相互支援組織だ。

 少なくとも決算用の帳簿は領内のグループ全体でひとつあればいいので、事務的なコストは抑えることができるだろう。


 すでに領内生産物を買い上げてウイエで売る事業体なんかも出てきている。

 農協かな?


 領外から持ち込まれる事業性の物資には課税を行うが、金銭は対象外なので、領内から生産物を持ち出してウイエなどの領外で売って戻ってくると、課税を回避できる、というわけだ。

 もちろんそうして得た利益が事業体全体で年間経費を上回れば課税はされるが、他の領地だと金銭の持ち込みに対しても課税されるところがちょいちょいあるので、俺の領地だと外で販売する効率が良い。


 言うて事業性物資の持ち込みも、仕入れ元に発行してもらった領収書を元に課税を行うので、他の領地のように持ち込んだ物品から一定割合を持って行くのと比べたら課税率は低いだろう。


「俺の貸し付け分はまあいいとして、それ以外でもまだ赤字かあ」


 税率を抑えめにしているからか、領地の経営はそれだけで見るとやや赤字だ。

 俺が赴任するまでは大赤字だったので、改善はしてるんだけど、もうちょっと長い目で見ないとなあ。


「税を誤魔化そうとする者が多すぎます。もっと厳しく調査し、厳罰を行うべきです」


「そのために人手を増やしすぎたくないんだ。たかだか農村3つだぞ。俺たちが来るまで商店もほとんど無かったような場所なんだ。上向きなのは間違いないんだろう?」


「マイナスがゼロに近付いた、という程度のことですが、はい、その通りです」


 んな苦虫を噛み潰したような顔にならんでも。

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新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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