表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第5章 黄泉返りの魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/186

黄泉返りの魔王 42

 鉱山の崩落現場での話は省略させてもらおう。

 ただ俺にとっては簡単な、ちょっとできることをして、沢山の命を救った。

 それだけのことだ。


 だが見返りは大きかった。

 共和国大統領は金属の継続的な取引を約束してくれたし、難民の練兵も急ぐと言ってくれた。

 俺は大量の肉が採れる魔物の死体を提供した。

 この後、共和国では解体と精肉、そして保存食への加工が行われるのだろう。

 それを見届ける意味は無いので、金と鉄のインゴットを手に入れた俺は、王国へと舞い戻った。


「こうなってくるとアレクサンドラ姫にはどうあってもやり遂げてもらわなければならないな」


 俺からの報告を受けた国王はそう言った。


「アレクサンドラがやり遂げるのは前提事項では?」


「それはそうだが、南方へ、つまりシクラメンへ繋がる地域まで押さえてもらいたい」


「ああ、つまり共和国との短距離通商路ですか」


 現在、王国と共和国の間は帝国が支配していて、大陸を大きく西回りしてくるしかない。

 俺が動けるときは構わないが、そうでない時にやりとりや、物資の移動に片道で半年とかかかるのは勘弁ってことだ。

 帝国西部をアレクサンドラが切り崩し、共和国との通路を確保してくれれば、片道1ヶ月ほどに短縮できる。


「支援を増やしますか?」


「そうしたいところだが、こちらはこちらの軍備で手一杯だ。支援できるとすれば、シクラメン近辺でアレクサンドラ姫の軍と、こちらの軍で帝国軍を挟撃できる機会だな」


 ふむ。その状況下では流石の国王も打って出るか。

 まあ、ガラットーニ辺境伯は好機と見れば国王の意見も聞かずに飛びだして行きそうな気もするが。


 それはそれでどうなんだ、って話だな。

 戦争経験の少ない西方貴族が付いていけるかが微妙かもしれない。


「アンリくんが鉄を持って帰ってきてくれたから助かるよ」


 今日、会談に同席しているのは珍しくレオン殿下だ。


「王国の状況だとどうしても東側に物資が集中するからね。これで北方の守りを固められる」


「東方蛮族は相変わらずですか?」


 レオン王子の母親は東部貴族だから、東方の情勢に明るい。


「そうだね。気ままにやってきて略奪して去って行く。手の付けようが無いよ」


 東方蛮族は、まあ、実を言うと王国の祖先がそのまんま今まで残っているような民族だ。

 つまり遊牧民族であり、同時に略奪民族でもある。

 東方平地を巨大な狼と共に家畜を連れて移動し、移動先で略奪を行う。

 ふらりと略奪に現れるし、反撃しようとしても少ない荷物を持ってさっといなくなってしまうので、意味が無い。

 なんなら複数の部族が入れ替わり立ち替わりしているので、ひとつの集団を族滅したところで、別の集団がやってくるだけなのだ。


 彼らの大半は狼と生活を共にしており、面白いことに主体は狼の側にある。

 戦闘スタイルも人が狼に騎乗するものの、人の役割は後方や側面と言った狼の死角をカバーすることだ。

 移動や攻撃は狼が主体で行う。


 この辺は普通の遊牧民族だった王国の祖先とは違う点だ。

 狼に主体を置くその生活のため、定住することなく、今も遊牧民をやっているのかもしれない。


 そういう相手だから、東側は防御を固め続けるしかない。

 王国が拡大できない理由のひとつだ。


 東方滅ぼすべし、って感じの東方領地貴族タカ派出身者が母親であるレオン王子は、まあ、本人は温厚な性格だけど、後ろから戦果を挙げろって突かれてるだろうし、今回帝国相手に戦争となれば出ないわけにはいかない。

 となれば装備を充実させることのできる鉄が供給されたのは心強いんだろうな。


 クリストフ王子がどうするのかも聞きたいけど、流石にレオン王子のいるこの場では聞けない。

 そもそもレオン王子自体が北に詰めるかどうかもまだ聞いてないしな。


 個人的にはクリストフ王子と関わりが全然無いのでどんな人なのか把握しておきたいところはある。

 何をやらせても優秀だという噂は聞くのだけどね。

 性格が分からんのよ。性格が。

 その辺、レオン王子は長いこと一緒にいたから、良いところも悪いところも分かってる安心感がある。


 王様には向いてないと思うけど、いい人なんだよな。

 責任感の強さに対して、心の強さが追いついてないんだよ。


 まあ、帰らずの迷宮で折れなかったので、将来に支えてもいいとは思っているけど。


「ではこの冬の間にシクラメンに兵を集めて、帝国が侵攻してきたときには機動的籠城戦を行いつつ、アレクサンドラ姫の動きに連動という感じですかね?」


 自分で言ってなんだけど、機動的籠城戦って訳分からん単語だよな。


「そうだね。ガラットーニ辺境伯に籠城戦を任せて、自分が遊撃隊を指揮することになると思う」


 シクラメンは籠城戦の構えを取りつつ、大森林に潜ませた遊撃隊で包囲しようとする敵を突いて回る作戦だ。

 通常であれば籠城戦というのは物資の供給が絶たれるところに難があり、援軍が来なければ解決しないが、今回は最初から援軍がおり、補給路を変更し続けながら確保する前提だ。

 ただ援軍を含んでも帝国軍より数で劣るので、籠城戦という防御に有利な状況でどれだけ相手を疲弊させられるかにかかっている。


 通常の籠城戦は3倍くらいまでなら耐えられるとされるが、アレクサンドラが動かなければシクラメンの常備兵と比べて10倍の兵が押し寄せてくると予想されている。

 これをどこまでアレクサンドラが削ってくれるか次第で、俺が出る必要があるかどうかが決まる。


 勝つのは勝つよ。

 本気出せば大魔法一発で終わるっしょ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ