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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第5章 黄泉返りの魔王

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黄泉返りの魔王 33

 さて王都上空に戻ってきたわけだけど、アレクサンドラ連れたままで王城に入っていいか分からなかったので、一旦観測所のすぐ外側に着地する。

 まあ、ここも王城の一部ではあるんだけど、なんというか俺の領域内って感じだ。


「シルヴィ、ネージュ、アレクサンドラをここで確保して待っていて欲しい。国王陛下に報告するのに彼女を連れて行っていいものか判断ができないから」


「分かったわ」


 シルヴィの頼もしい了承を得て、俺とリディアーヌは王城に向けて歩き出す。

 ガルデニア辺りが俺たちの帰還を嗅ぎつけて、もう国王に報告しているはずだ。

 彼女らの情報伝達速度を俺は信頼している。


 リディアーヌがいることもあって、俺たちはさくっと国王の執務室の前に到着した。

 まあ、俺だけだと必ずここまで誰かが付いてくるもんな。


 リディアーヌは扉をノックだけして返事を待たずに扉を開けた。


 娘とは言え、返事を待たずに扉を開けるのはやめたげてよぉ。


 だが国王は特に意に介した様子もない。

 それもそうか。

 執事とかメイドが部屋に入ってくるのに、いちいち国王が返事したりはしない。

 王族って言うのは、その身の回りを世話される代わりにプライバシーを失うのだ。


「陛下、リディアーヌです。ただいま戻りました」


「早いな。なにか問題が発生したか?」


「先に結論から申し上げます。今回の招待はアンリ様の引き抜きを目的としたものでした。拒否に対して武力での確保を断行してきたため、皇女を人質に脱出しましたが、オルム近郊で帝国軍に包囲されたため、仕方なく飛翔魔法で帰還した次第です」


「……」


 国王は長い、すごく長いため息を吐いた。


「突っ込みどころが多すぎる」


 この人何気にツッコミ枠だよな。

 それ俺の役割なんじゃないの?


「お前がいて飛翔魔法を使わせたということは、人死にはだしていないな? 人質の皇女はどうした?」


「観測所の前でシルヴィとネージュ様に確保していただいています」


「西の別邸で会う。そうしてくれ。戦争になるか?」


「回避案はあります」


「分かった。その場で聞こう」


 リディアーヌが一礼したので、それに合わせて俺も一礼し、その場を退出する。


 西の別邸というのは王城にいくつかある別邸の中でも国王が一人になりたいときに使用されるという噂だ。

 もちろん緊急時には連絡が行くが、基本的に身の回りの世話をする者以外は立ち入らないらしい。


 俺たちは徒歩で観測所に戻り、ネージュ、シルヴィ、アレクサンドラと合流して、西の別邸に向かった。


 アレクサンドラは敵地のど真ん中ということもあってか、いつも以上にビクビクと周囲の様子を覗っている。


「もう少し自信ありげに振る舞えますか?」


 リディアーヌが言った。


「できなくはないですけど」


 そう弱々しく言ったものの、アレクサンドラはすぐに姿勢を正し、視線を真っ直ぐ前に固定した。

 やればできるんかい。


「死刑宣告を聞きに赴くのに、今更外面を取り繕ってどうなるというんですか?」


「そうならないように助言差し上げているのです」


「なにか妙案がおありなのですか?」


「ええ、フリュイ共和国のことは知っていますか?」


 アレクサンドラがあまりに外のことを知らないからか、凄い初歩的なところから来たな。


「帝国の隣国ですわよね。平民が貴族の真似事をすることもある国だとか」


「その認識で構いません。では帝国が現在の規模になるまでにいくつの国を攻め落としたかはご存じですか?」


 え? 設問の難易度が急に上がりすぎじゃない?


「それは諸説ありますわね。国と呼べるほどではない規模の集落を含めると百を超えるとは思いますけれど。帝国としても公式見解は無かったと思います」


「そうですわね。私もちゃんとした数を把握しているわけではありません。沢山あったと知っているのであれば大丈夫です。続いてそれらの国の民はどうなりましたか?」


「偉大なる皇帝陛下のご威光に平伏して帝国に下りました。帝国の第3市民として編入されておりますわ」


「それを拒否した者は?」


「拒否? 帝国の一員となれるのに拒否するような……」


 そこまで言ってアレクサンドラは言葉に詰まった。


 思い出したのだ。

 帝国の地方で見た民の様子を。


 ただ生きることにすら希望を失い、道ばたで座り込んでいるだけの人々。


 もちろん帝国国民全員がそういう人ばかりではないが、日中に町中で見かけるのは働く気力の無い人々だ。

 おそらくリディアーヌは意図的にそう言う人たちばかりをアレクサンドラに印象づけてきた。


「拒否する者もいたでしょうね。今でも帝国を離れたいと願う人は少なくないと感じました」


「そうです。そして帝国西方にあった国の人々には逃げる先があった」


「それがフリュイ共和国というわけですか……。それが私に関係が?」


「アレクサンドラ、貴女は皇帝に切られた。帝国はそう発信していませんが、貴女はそれを知っています。貴女には帝国に反旗を翻す動機がある」


「それは……」


「貴女がそうしたいと思っているかどうかではありません。外部から見た時にどう見えるかが重要なのです。貴女は生き延びたいのですよね。例え王国の下女になってでも」


「それは、はい」


「であれば、帝国から追い立てられて祖国を失った人々の祖国奪還を先導する聖女にだってなれますね」


「……ちょっと想像も付かなくて……」


「貴女が生きる術はこれしかありません。覚悟を決めなさい。貴女は今から王国の国王陛下にそうすると宣言しなければならないのですから」


 ああ、ここでこうやって決断を迫るために今まで教えてなかったのか。

 変に考える時間があると、アレクサンドラはものすごく迷いそうだもんな。


 実際、今もアレクサンドラは毅然と正面を向いて歩いているものの、どこか上の空だ。

 きっと頭の中では彼女なりに他の手段が無いか必死に考えているのだろう。


「大丈夫。私は貴女の味方です。悪いようにはしません」


 いや、人質に取るよう指示したのリディアーヌじゃん!


 と、思わず口から言葉が出そうになったがなんとか自制した。


 ひでぇよ、このフリ。

 ツッコみたいのにツッコめないじゃん。


「貴女が実際に先導する必要はありません。帝国に逆襲するその象徴であってくれればよいのです。おそらく実体はフリュイ共和国が用意してくれますよ」


 まあ、フリュイ共和国にしても帝国方面からの難民は社会問題化してるんだろうし、アレクサンドラたちが一部でも帝国領土を切り取ってくれれば緩衝地帯が生まれる。

 難民に手を貸す、というよりは裏でコントロールしたがるはずだ。

 逆に言えばアレクサンドラは流れに身を任せていれば、フリュイ共和国が道を用意してくれる。


「でも、その……」


「覚悟を決めなさい。そうしなければ王国は貴女を帝国に返還するしか無くなります」


 いや、アレクサンドラがフリュイに行った場合、王国の公式見解はどうなるのん?


 俺たちは多くの人の前でアレクサンドラを誘拐した。

 その事実は消せないはずだ。


 王国としては先に手を出したのは帝国だから仕方なく人質にしたけど、無事戻れたのでお返しします、とするのが筋ではある。


 リディアーヌのことだからなんかまた悪いこと考えてるんだろうけど。


「分かりました。覚悟を決めます。私は帝国を倒します」


 それはやりすぎぃ!

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