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(5)

 【大浄化の祝祭】は成功裡に終了した。

 成功を祝って、三日三晩、昼夜を問わず王都は賑わった。

 多くの人々が行きかい、飲んで、食べて、歌って、踊って、騒いでいた。


 まず、【イゼルの大迷宮】である。

 【大浄化の祝祭】により、迷宮の活動は非活性の状態となった。ただ、揺り返しの症状が発生するため、数個の上位パーティは、祝祭の終了後も、探索を継続していた。


 次に、【東の国】である。

 近年において、もっとも活性化していた【イゼルの大迷宮】に対して【大浄化の祝祭】を行ったことにより、これから数年間は迷宮から確保できる魔石量が少なくなる。

 【大迷宮】の規模になると、大浄化を行ったとしても、全く魔石が取れなくなるということはない。ただ、これまで活性化していた状況と比較すると、その量が大きく減少するのはやむを得ないことだろう。


 そのため、迷宮周囲の業者に対しては、規約に基づき一定の営業補償が行われることになる。また、【東の国】全体としては、【大迷宮】の活動が停滞している間に、王都南部の穀倉地帯を【南の国】の規模に近づける一方、【北の国】の知識・文化を獲得するため、交流をより活性化させていくという方針を明らかにしており、魔石確保のための資源をそれらに振り分けていくことになる。


 さて、トーマの状況はどうか。

 トーマは、上位パーティが【迷宮主】を倒したあと、【神官】達の魔力回復-主に神官ティルの支援-を受けながら、【イゼルの大迷宮】を出た。ほぼ全ての探索者や兵達が、その後のお祭り騒ぎに参加していた。祭りの気楽さもあり、面識のない者同士でも街に繰り出せる雰囲気であったし、決して人付き合いが得意ではないトーマにとっても、それに参加するのにあまり気苦労は感じなかったが、それにしては、あまり体調自体が優れなかった。


 理由は簡単で、大幅な魔力行使の影響である。

 また、一部のパーティは継続して最深部付近に残っており、また、【大浄化】の影響で付与の効果の継続が可能であったため、トーマは、その術式を講じたままにしておいた。

 その結果、お祭り騒ぎを横目に、まるで感染症にかかった時のように、トーマは倦怠感と関節痛に苛まされた。

 【大浄化の祝祭】終了後、三日目辺りで、トーマも、多少、気分も楽になったため、お祭り騒ぎの街中を歩いてみた。

 1年前、はじめて【王都】に来た時、その活気にトーマは唖然とした。

 【祝祭】の前は、さらなる活気に唖然とした。

 そして、文字通り、現在のお祭り騒ぎには、もっともっと唖然とした。

 屋台で美味しいものを食べ、沿道で催し物を観覧し、街行く人々の多くの表情を見ることができたのは、トーマにとっては、新鮮な驚きであった。


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