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 翌日の朝、【イゼルの大迷宮】出入り口 

 今回もパーティリーダであるフロウドの元に、7人の探索者達が集まっていた。

 【教会】側からは3人。そのうちの一人は女神官ティルであった。


「トーマさん、おはようございます。体調の方はどうですか?」

「あ、ああ…、この間は、その、ありがとうございました。」


 怪訝そうな顔をするティルと、緊張で真っ赤になっているトーマ。

 そういえば、口調は気にしないで、とティルに言われたことを思い出すトーマであったが、余計にしどろもどろな口調になってしまう。

 一方、ティルにとっては、話相手の男がしどろもどろになるのは、そう特別なことではないのであろう。


「あ、あ、ありがとうございましたじゃなくて、その、ありがとう。」

「治癒は【教会】のお勤めなのですから、気にしないでくださいね。体調の方は、しばらく寝込んでおられたと聞いているのですが…」

「ああ…、体調のことか。2・3日休んだら、すっかり良くなったよ。」

「それなら良かった。今日はよろしくお願いしますね。」


 そういって、ティルは他の【神官】達のもとに歩いて行った。

 かわりに、戦士タリウスがトーマのもとにやってきた。タリウスは、フロウドと同じく前衛職の【戦士】で、がっちりとした体格の男である。肌の色も、浅黒い。やはりフロウドと同じく、南方の出身なのかもしれない。

 そのタリウスが、ひそひそと耳打ちする。


「なあ、お前、【セルフェストの聖女】とお知り合いなの?」

「【聖女】?」

「ははあ、フロウドの見立て通り、トーマは王都の出じゃないんだな。あのティルって女神官は、あのとおり、若くて、すごい美人で、【セルフェスト教区】の孤児院での活動にご熱心なんだ。」

「はあ。」

「そのことが有名になって、ついたあだ名が【セルフェストの聖女】。しかも、孤児院活動の原資を稼ぐため、相当、【大迷宮】にも参加しているんで、あの歳でお前と同じ中級どころさ。」

「18歳で、もうレベル39なんだ…」

「え、お前、歳とか聞いてんのか…」

「【大浄化の祝祭】のとき、魔力枯渇の症状が出たときに、魔力補給の支援をしてもらったんですよ。そのとき、少し話をしたんです…」

「うへえ、下心なしでお話したので、聖女に悪い印象を持たれなかった…お咎めなしってか。」

「し…下心。」

「逆に、真っ赤になってお話してたら、下心、ありありってことか?」

「えーーー、えーーー」


「おい、タリウス。そろそろ切り替えろ。」

 リーダーであるフロウドの声が響く。


(し、下心なんてとんでもない。大体、あっちの世界でもこっちの世界でも、女の子の友達もいないのに。)

 フロウドと目が合う。(何時まで呆けてるんだ。)トーマは、フロウドの目を見て、浮ついていた自分に気づいた。トーマとて、3年間、誰よりも【猟兵】として活動していた軍人の端くれ。切り替えは早かった。


(ふふん、やるじゃねえか。まあ、それ位でないと、【支援の加護】持ちの【猟兵】としてあの若さで中級どころなんてなれないか。)


 トーマをからかっていたタリウスも、トーマの切り替えの早さに感心した。



 前衛 フロウド 探索者、戦士、レベル81

 前衛 タリウス 探索者、戦士、レベル79

 前衛 トーネス 探索者、戦士、レベル78

 中堅 ネス 神官、治癒士、護衛士、レベル43

 中堅 マルシオ 神官、治癒士、護衛士、レベル47

 中堅 ティル 神官、治癒士、レベル39

 後衛 トーマ 探索者、猟兵 レベル40


 戦士フロウドが認識する今回のパーティの情報である。

 現在、【大迷宮】内を、ほぼ最短の行程を進んでおり、【大浄化の祝祭】とその後の上位パーティによる調整で、その行程における魔獣との遭遇率は極めて低いものとなっていた。

 本来、魔獣を退治し、魔石を獲得することが、【探索者】の役割ではあるが、今回の【迷宮】潜入の目的は、3人の神官に最下層である地下8階を経験してもらうことである。その過程での魔獣との遭遇はできれば少なく、しかし、道程としては最短が望ましい。

 【大浄化の祝祭】の後は、特に中級者が【大迷宮】の地下8階層を経験するのに、非常に良い機会なのである。


 前衛の3人は、【大浄化の祝祭】の時と異なり、【探索者】としての装備になっている。

 【探索者】である以上、ある程度の機動性を優先させるべきであり、胸当にしろ、片手盾にしろ、金属製であるにしろ、軽量化を図ったものとなっている。

 武器は槍と、腰に長い両刃剣。【イゼルの大迷宮】内の通路は、他の【大迷宮】と同様、道幅がかなりあり、槍の使用に支障がないため、前衛職の戦士達が剣を用いることは、ほとんどないといって良い。

 3人とも30歳代になったかならないかという世代で、これから【戦士】として、上級者として、正に最も活躍できる頃である。


 中堅のうち、【神官】である【護衛士】の2人も、やはり軽量化を図った装備となっている。武器も、槍と短剣。実践思考の【活動派】らしく、装備選択の考え方は【探索者】に近いものと思われる。

ネスとマルシオ、いずれも20歳代半ばと思われる。

 かなり【迷宮】での経験を積んでいるとみられ、後方から敵襲があった場合は、盾役として動ける装備になっている。


 ティルは術の専属である。そのため、装備は皮鎧に杖、腰には短剣を備えている。敵襲があった時は魔獣に対して行動阻害の術式、味方に対しては身体強化の術式、負傷したものに対しては治癒の術式を講じることとなっている。


 後衛であるトーマは、実際には、【猟兵】職と同様、探索、遊撃を主として行っている。

 装備は、皮鎧に、弩。腰には【魔刀】を備えている。今回は、治癒士が3人いることから、戦闘前の身体強化術式は担当せず、常時発動型の身体強化術式のみを使っている。


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