すれ違い
気がつくと腰の痛みを感じ、その後に首が痛いことに気がついた。天国ではないということはすぐにわかった。次に辺りに赤とか黒とか、不気味で不謹慎な色がないことから地獄でもなさそうなことがわかる。
「………え?死んでないの?」
そう呟いた瞬間、笑い声が聞こえた。
私は痛む首と腰をおこし、笑い声の先に目を向けた。そこにいたのはカーキーの短パンに灰色のTシャツを纏った黒髪の少年だった。童顔の彼の顔付きは顔には似合わないくらい大人びでいた。というのも、彼は私が見ると笑うのをやめ、不満でもあるかのような、ムスッとした表情になり、あまりの圧力に謝りたくなるような顔つきになったのだ。
「好きです!!!!!」「ごめんなさい」
彼の言葉と同時に発した私の言葉は彼の表情に対してだ。
彼は殺してやると言わんばかりの何か悪事を企んでいるかのようなニヤケ顔になった。
「絶対(恋に)落としてやる」
「(地獄に)堕とさないでください。」
彼は拍子抜けした顔をした。
「え?」「…………え?」
お互いの頭の上に疑問が浮かびその疑問な消えることなく起こった1分ほどの沈黙は二人を冷静にさせた。
「……………そういえばおはよう。あと、香水ありがとね。」
彼は笑顔で言った。純粋な笑顔。営業スマイルにまで感じてしまうようなその笑顔は彼の心の中を感じさせないようだった。
「……………………どういたしまして。」
怖いほどに冷静になった二人は当たり前の会話をした。そのことは当たり前であるはずなのになんとも不思議な会話であるかのように感じた。
「もう少し寝たら?」
彼は優しい口調でそういった。
「あ〜……。そうだね。寝よう……かな。おやすみ。」
「ああ。おやすみ」
彼は優しく微笑み、私が布団に潜ると彼も布団に潜り込んできた。
「女子は添い寝されるんが好きだと聞いたことがある。」
「セクハラって言葉をご存知ですか?」
そう言うと彼は不満そうな顔をした。
「………嫌だったならごめん。」
何となく申し訳ない気持ちになった。そんな呆気なくされると断わりづらくなる。そりゃあ、すぐに辞めてくれることはいい事だけれど相手が年下でそれにかなり可愛いものだから(外見が)余計そう感じるのだ。はじめに感じた妙な恐怖は消えていた。というのは彼の表情が優しくなったからである。表情や口調一つでこんなにも受ける印象が変わるのだと私は感心した。
「………このままいてもいいよ」
私はとっさに言葉を訂正した。
然し、そういったときには彼はいなくなっていた。
疲れた。5分くらいだろうか?1時間は話したような気分だ。この数分でこんなにも印象が変わってしまうとははじめての経験で戸惑いしかなかった。
私はまた横になり目を閉じた。
天井には小さな穴が空いていた。そこから見えるのは緑色の葉っぱだった。詳しく言えば緑色だから葉っぱだと思った。辺りはまだ明るく、その緑を明るく照らしていた。
それにしても腰にくるベットである。私は起き上がる気すら失せてしまった。