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夜咲き峰の人々  作者: 三茶 久
第一章 風の主の婚約者
68/121

第一章 登場人物紹介・用語集

《ご注意》

このページは第一章終了時の設定を記載しております。

大いにネタバレを含みますので、本編未読の方はご注意下さい。

——————登場人物紹介——————



【レイジス王国からの使者】


●ルカ・コロンピア・ミナカミ

月白の髪。金の瞳。物語開始時は14歳。

レイジス王国緋猿将軍(ひえんしょうぐん)の末娘だが、魔力を全く持ち合わせておらず、貴族としては認められていない。

妖魔の住む地、夜咲き峰の要求により、名目上筆頭妖魔である風の主の婚約者として連れ去られた。

もともと、妖魔の事が好きすぎて調べているうちに幼き歴史学者とまで呼ばれるようになった妖魔オタク。

新月の夜、鷹の封印が解けるとともに、彼女自身にも封じられていた魔力を操ることが出来るようになった。その身には妖気も秘めており、血の色は紫。

どうやらその出生に少なからず秘密があるらしい。

夜咲き峰に来てから、とある事件をきっかけに“レイルピリア”という名の石を手に入れた。現在は風の主によって加工され、彼女の左手の薬指にはめられている。

同時に、その子供石である“皆月(みなづき)”を、仲間の皆にペンダントとして配布している。



●レオン・アドルフ

金髪青目の美青年。物語開始時は19歳。

ルカが幼い頃から彼女に仕え続けた従者。もともとは高貴の出だが、家庭の事情によりアドルフ家の養子となる。

故に、アドルフ卿の盟友であるルカの父カショウ・ミナカミにも目をかけられて育ってきた。

ルカに永劫を誓っているが、口は悪い。

料理洗濯掃除等、何やらせても一流以上の腕を持つスーパー従者であるが、やはり口は悪い。

そのうえ、いつも体よくルカに利用され、面倒な役回りばかり任されてしまう不憫な人。




満月(まんげつ)の峰の妖魔】


(かぜ)(あるじ)(真名:エリューティオ)

長ったるいツヤツヤの縹色(はなだいろ)の髪に碧い瞳。

夜咲き峰の筆頭妖魔であり、満月の峰に住まう唯一の妖魔。

峰の結界を維持するために、満月の峰から一切離れることが許されなかった引きこもり。

しかし、新月の夜、峰の管理をルカに譲ることとなった。

ルカと婚約を名目に彼女を夜咲き峰に引き入れ、人化対策をするように命じる。彼女のことをどう考えているかは不明だが、何かと気にかけているのは間違いがない。

ルカが王都にいた頃から、彼女のことは一方的に知っていたようだ。




【下弦の峰の妖魔】


赤薔薇(あかばら)

黒の髪、深紅の瞳を持った女性の妖魔。

下弦の峰では最も古株で、下弦の筆頭妖魔にあたる。

小柄だが、彼女の体の倍近くある大鎌を振り回す。

人間の社会ではおとぎ話に出てくる程の、伝説級の妖魔で『血薔薇の死神(ブラッディ・ローズ)』と呼ばれることも。

物言いはぶっきらぼうで、無感情。というより、人間らしい感情を未だ持ち合わせていないようでもある。

しかし、ルカたちと過ごすうちに、趣向がはっきりしてきた。

植物の名前を持つ女なのに、無類の肉好きである。


(からす)(真名:アルヴィン)

光沢のある鋼色(はがねいろ)の髪に、黒の三白眼。

生まれ石は刀の形をしており、そのまま愛用している武闘派妖魔。

質実剛健で、無言実行の好青年ではあるが、基本無口。ただ、たまに箍が外れたように心の内がだだ漏れになる。

鴉の習性なのか、光り物を中心に、くだらないゴミを集めるのが大好きな汚部屋の主。

だが、ルカが逃げ出して以来、件の汚部屋はスッカラカンになった。

新月の夜にその力を失い、上級妖魔の中で唯一、人化の道を辿る。

ルカのことが好きで堪らなくて、力を失っても彼女と共にいるためにその名を捧げた。


花梨(かりん)

豪奢な黄金の髪に薄紅の瞳。

生まれ石は果実のような形。布の形をした妖気を操り、その身を隠したり防御壁を張ったりと、身を守る術に長けている。

かつて、人間の冒険家ジグルス・ロニーとの間に愛を育み、彼に“夜咲き峰に咲く花の種”を授けた。

そしてその花は、彼女の真名から“ミリエラ”と名付けられ、人間社会に広がったが、ジグルス・ロニーがどのようにして彼女の真名を知ったのかは語られていない。

誇り高く美しい女性で、自らの身に纏うドレスをも自作し、自分以外の者を着飾るのも大好きな妖魔。

ルカを着せ替えするのも楽しみのうちの一つ。

最近は新しい恋を求めて、レオンにアタックをしているらしい。


琥珀(こはく)

クリーム色の髪に琥珀色の瞳。

見た目も言動も幼い妖魔であるが、かなりの年月を生きているらしい。

生まれ石はその右目に埋め込まれており、まばゆく輝く中心に黒くて小さな核がある。

蚕の糸のようなものを右目から出したり、刃のようなものを飛ばして攻撃する。古語にも精通しているらしく、それを利用した妖術も操る。

趣味は建築や家具・装飾を作ることで、誰かの部屋を趣味で模様替えするなどして楽しんでいる。

この度宵闇の村に立てられた神殿ことトイレは、素晴らしい出来で、下級妖魔はその建物を崇め奉っている。

ルカの“皆月”を利用したペンダントを、皆におそろいで作ったのは彼の功績。

妖魔らしい、自分が一番で下級を下に見るなどの言動も多いが、最も行動力があるのも彼である。


(すみれ)

菫色の髪に淡いオレンジの瞳。

宵闇の村、花の一族出身の下級妖魔。

もともと力はそんなに強くないが、花の一族特有の、誰かと共存しやすい穏やかな性格。

ルカたちが夜咲き峰に来る直前、宵闇の村より召し上げられ、ルカ付きの侍女となった。

非常に人間らしい性格をしており、真面目で、おっとりとしている。

やや天然気味で、人の好意に疎い。

いつもレオンに厳しい指導を受けているらしいが、挫けずに取り組むことの出来る良い子。

胸がでかい。




上弦(じょうげん)の峰の妖魔】


白雪(しらゆき)(真名:ロディ・ルゥ)

ストレートの長い銀髪を一つに束ねており、穏やかな灰色の瞳を持っている。

恐ろしいほどに平凡で印象に残らない顔。

ルカの本来持っている魔力と妖気を欲したため“ある者”と共謀して、彼女を取り込もうとしたが失敗。

逆にルカに名前を縛られ、強い彼女の意識をその脳内に刻み込まれた。

故に、考えられないほどルカに対して従順になってしまっている。

過去、彼もまた似た方法で、上弦の峰の妖魔たちを縛った経緯がある。


白鷺(しらさぎ)(真名:ラージュベル)

肩くらいまでの白い髪に一房の黄色い毛。瞳は糸目で黒い。

上弦の峰、白雪の片腕で、冷静沈着な男。


蜘蛛(くも)(真名:タチャーナ)

くるくるパーマの黒い髪。目元まで髪で覆われている。

「みゃは〜ん♪」と特徴的なしゃべり方で、常にちょこまかと動いている。

お気に入りは黒犀の肩の上。

生粋の毒マニアで、ルカを四週眠らせたのも彼女の仕業。


黒犀(くろさい)(真名:ガングリッド)

短い黒髪と、縦に並ぶ二本の角。髪と同じく瞳も漆黒。

大きな図体と人並み外れた筋肉を持つ男。ただし、脳みそも完全に筋肉で出来ているらしい。

あまりに物覚えが悪いため、蜘蛛がブレインとして、彼と行動を共にしていることが多い。


玻璃(はり)(真名:セルステア)

白藍の髪と濃藍の瞳。

琥珀と同じく幼い風貌をした妖魔で、妖気を硝子状にして人を惑わせるのが得意。

白雪に誰よりも心酔しており、嫉妬深い。

ただ、その嫉妬深さ故、新月の夜の後、白雪に名前を還されてしまう。


(あざみ)(真名:ミメイ)

クセのある紫の髪に、同じ色の瞳。

名前を縛られていただけでなく、白雪と“ある者”によって魅了の術をかけられていた少女。

元々は宵闇の村の下級妖魔だが、狼が宵闇に降りた際、彼を絶望させるために変わりに引き上げられた。

狼の元恋人であり、紆余曲折をえて、また彼と繋がることになった。

新月の夜の後、白雪には名前を還してもらい、宵闇の村で狼と暮らすことを決意。




【宵闇の村の妖魔】


(おおかみ)

薄鈍色の髪に焦げ茶の瞳。ピンとたった三角耳とごわごわの尻尾を持っている。

元上弦の峰の上級妖魔。薊と一緒になるため、そして、白雪に名を縛られることを拒んだが為に宵闇に降りる。

しかし、薊は入れ違いに召し上げられたため、彼女と一緒になることはできなかった。

山猫に変わって宵闇最大の勢力である森の一族を掌握。

その筆頭として、宵闇の村を牛耳るようになったが、白雪と過ごしてきた彼は、妖魔らしからぬ統制のとれた社会を作ることしか出来なかった。

新月の夜、事件が収束したことにより、再び元の薊とともに生きることを決意。


山猫(やまねこ)

飴色と錆色の混じり合った髪。瞳は芥子色。三角耳に長い尻尾がぐるぐる動く。

元森の一族の族長。小柄ながらも、体つきはかなり筋肉質。

狼が宵闇落ちした際に、そのポジションを失った末、“はぐれ”となる。

が、本人はリベンジに燃える戦闘狂。

生粋の戦闘馬鹿だが、上級妖魔に叶うはずもなく、最近連敗続き。


矢車(やぐるま)

硬質な青紫色の髪、瞳の色は藍。

見た目は二十なかば位の青年だが、かなりの長寿らしい。少なくとも、二百年以上は生きている。

花の一族の筆頭で、波斯と雛の親にあたる妖魔である。

考え方は保守的で排他的。


波斯(はるしゃ)

藤黄の髪に赤銅色の瞳。

矢車の直子(すぐし)で、雛とは双子の妖魔。(本人はお兄さん気取り)

ルカによって保護された雛の付き添いとして夜咲き峰に上がるが、そのまま従者見習いとして夜咲き峰に残ることを決意。

レオンに憧れており、彼のような従者を目指して修行をはじめることを決意。


(ひな)

緩やかなウェーブかかった白い髪、山吹色の瞳。

矢車の直子で、波斯とは双子の妖魔。

宵闇の村で真っ先に人化に倒れたところ、ルカに保護された。




【その他妖魔】


(たか)(真名:オミ)

灰白色の髪。毛先のみ赤。(瞳はルカと同じ金色)

五分(ごぶん)三裸(さんら)(きみ)』『変態仮面』『だいたい肌色の男』など数多の呼び名を欲しいままにする変態。

お尻の割れ目がちょっぴり見えるへんてこな着こなしがチャームポイント。

夜咲き峰に所属していない“はぐれ”の妖魔で、ルカにストーカーまがいの執着心を見せている。

それは遠い昔に“ある者”と交わした約束が理由らしいが、まだ語られることはない。

新月の夜、ルカにその名を呼ばれ、瞳にかけられていた呪いが解かれた。


石墨(せきぼく)

黒髪に鈍色の瞳。朱色の着物を纏う少女。

新月の夜、倒れた風の主の代わりに一時的に峰の管理を保っていたが、その役目をルカに丸投げする。

どうやら夜咲き峰の妖魔であるらしい。




【レイジス王国の人々】


●カショウ・ミナカミ

ルカの父であり、レイジス王国六大将軍のうち一人“緋猿将軍(ひえんしょうぐん)”と呼ばれる男。

元々はゲッショウ諸島連合(しょとうれんごう)出身の常勝将軍だったが、諸事情により大陸に渡り、レイジス王国入りをした。


●カエイ・ミナカミ

グレーの髪を一つにまとめ、がっちりとした筋肉質な体格。

ミナカミ家長男。緋猿軍副将で、父に代わって軍の運営は今や彼の仕事。

作戦には気を配るだけの冷静さを持ち合わせてはいるが、そこに至る前の行動理由は感情的でストレート。

ゲッショウにいた頃の記憶があるらしく、言葉には訛りがあり、服装もかの国の民族衣装を未だ好んで身につけている。


●ユーファ

柔らかな若草色の髪に翡翠色の瞳。

カエイの妻で、レイジス王国育ちの生粋の貴族の娘。

魔術具の作成が趣味かつ特技の変わったお嬢様。


●リョウガ・ミナカミ

黒に近い紫色の髪に、紅の瞳。

ミナカミ家の次男で、ルカ狂いの超シスコン兄。

鍛え上げられた肉体を鎧で包んだ大男で、感情にまかせて突進してくるものだから、ルカにとっても脅威であった。

本来ならば王都ローレンアウスに引っ込んでいるはずの身なのに、妹可愛さに夜咲き峰までやって来てしまった残念な人。


●ハチガ・ミナカミ

藤紫色のおかっぱ頭に蘇芳(すおう)の瞳。

レオンの親友かつ悪友。ミナカミ家では唯一の文官で、物腰の柔らかい男。性格まで柔らかいとは言っていない。

レオンの養父であるアドルフ卿の元で修行中。この度、アドルフ卿とミナカミ家の意向により、スパイフィラスへ調査に出てきていた。





————————用語集————————



【地名】


夜咲き峰(ノクターナル・ピーク)

レイジス王国の北西、スパイフィラス領の西端グレイゼス山脈の麓にある峰。

結界により人間が入ることは出来ない地。伝承通り、妖魔が住まう土地だった。

満月の峰を中心に、東に下弦の峰、西に上弦の峰、北に新月の峰、そして南の麓の方には宵闇の村が広がっている。

峰に住まうのは基本的に上級妖魔と呼ばれる強い力を持った者たちで、それぞれの峰に自室を持つ。

夜には花弁のような美しい光を放つ幻想的な場所。


●レイジス王国

大陸の北に位置するルカたちの所属する国。

王政がとられており、現在はアルフレッド・イル・レイジリアが治めている。


●スパイフィラス領

レイジス王国の領地のうちのひとつ。王国の北西に位置している。

レイジス王国の歴史の中で、過去、四回の大事件の引き金となっている土地。

夜咲き峰もここの領地に面している。


●アヴェンス

夜咲き峰から南東の位置にあたるスパイフィラスの街。


●ダットルトアーニ領

レイジス王国最西の大領地。北はグレイゼス山脈、南はデルガ火山に囲まれており、西側は火ノ鹿教主国(ひのかきょうしゅこく)へ抜ける国境に面している。

夜咲き峰のあるスパイフィラス領とは隣同士だが、領主同士は仲が良いとは言えず、特に親交がない。




【その他設定集】

☆本編で明記していない部分もありますが、お読み頂いて問題ないと思います。

(もちろん、本編でも必要に応じて記載するつもりです)


●歴について

時間とは、時の女神セルスの気まぐれよるものと考える“セルス歴”を採用している。

一年は四ヶ月(四季節)。

春:風の月

夏:火の月

秋:土の月

冬:水の月

それぞれ第9週〜13週の幅があり、王立天文機関によって月の変わり目の予測がされている。

月の境は月の満ち欠けによるものとされている。



●一年の流れ

[昇月の夜〜風の月]


冬である水の月は、月が完全に姿を消してしまう。

そして満月として顔を出す日(昇月の夜)を境に、新年がはじまる。

風の月の間は常に満月。


[火の月〜新月の夜]

月が欠け始める。かなり暑い季節だが、レイジス王国の北部ではさほどではない。


[新月の夜/星祭(ほしまつり)の夜]

火の月と土の月の境にあたる日。

月を失った世界にて、草木をはじめとして小さな命が己の力を差し出す。それらが淡い輝きになり空気中に浮遊する。

夜咲き峰では、結界が作用している平常時では、峰からの妖気供給があるため、この現象は起こらなかった。


[新月の夜〜土の月]

実り多き穏やかな月。月は再び満ち始めるが、月の終わりになると、その輝きがおぼろげになってゆく。


[水の月]

草木も凍るような寒い季節。月は完全に姿を消してしまう。

レイジス王国は凍土に覆われる。



●神々について

月太神(げったいしん)

太陽の神と月の女神のこと。婚姻の際は彼らに祈りを捧げる。


[時の女神]

時を司る女神。歴は彼女の気まぐれで決められる。


[糸の女神]

時の女神の妹。時の女神が時間を刻むのを、糸で絡め取ることによって歴史的事件を起こすと言われている。


[木蔦の女神]

人との繋がりを司る女神。貴族の間では挨拶の謳い文句。


[ディゼル]

太陽の神の御使い。

いたずらっ子で、レイジス王国で過去に起こった大飢饉は“ディゼルの(くさび)”と呼ばれている。

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