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プロローグ 闇と悪事と白仮面と

呪文の読み方は割と適当です。ご了承くださいませ。

「おい、これでノルマ終わりだよな?」


「はい、センさん。」


「じゃあそろそろこの街を出るぞ。これ以上留まると足がつきかねない。」


「了解です。ハルーッ!車出せ!」


「わかりましたー!」


すっかり闇に塗り替えられた路には、大きなほろのついた荷台のある車が停まっていた。

傍には黒い服の男が2人、運転席には若い男が1人乗っていた。

しかし、その場にいるのは自分たちだけでないことを男たちは知っていた。

なぜなら、ほろの中には10人ほどの子供達がいるからだ。

何を隠そう、彼らは闇仕事を専門とする組織の人身売買に携わるメンバーなのである。

今回は、適当に子供を見繕って攫い、組織の研究にあてるとのことだった。


男たちは腕は人身売買課の中では特に腕がいいと評判であり、それが上の耳に入りこの仕事を任されるに至ったのだ。

2人の男はほろの中に乗り込み、ハルと呼ばれた若い男はエンジンをかけた。

そろそろ出発の頃合いかと2人の男が車の発進するのを待っている。


「ぅゎぁぁぁ」


それは微かな____

しかし確かに聞こえたのは紛れもない、運転席に座っていたハルの悲鳴だった。


「ハルッ!?」


ほろの方に乗った片方の男は、驚きを隠せず立ち上がる。

まだ進んでいない車には揺れなどなく、男が立ち上がったことで微かに揺れる。

もう1人の男は落ち着いたように座ったまま、冷静に目を光らせていた。

それは鋭い鋭い獣のような。

動揺した男と冷静な男は一瞬目を見合わせて、車から降りる。

動揺していても足が震えていないのはさすがだと言えるだろう。


「やあ、悪逆非道の人間たち?」


男たちの目に映っていたのは、黒マントを着て白い仮面を被った男だった。

口元には笑みを浮かべ、しかしはっきりと男たちに敵意の目を向けながら、彼は一歩こちらへ踏み出した。


男たちには、今までの仕事で築き上げてきた感覚と勘がある。

今、それらがけたたましく頭の中で警鐘を鳴らしていた。

逃げろ、逃げろ、と。

勘で、白仮面のこの男は危険だ、と。

感覚で、この男は相当な魔法の使い手だ、と。


しかし男たちには、逃げるという選択肢はなかった。

冷静なままでいる年上の男にはまだ逃げるという選択肢が1%ほど残っていたが、もう1人の男にはその選択肢はなかった。

あえて言えば、ハルを連れて逃げる、という選択肢は残っていた。


この男はサジと言って、10年ほど前に組織に入った。

家族がいなくなり、この仕事柄、というかこの組織の色として他人とつるむことに否定的になりかけていたサジ。

しかし、数年前に入ってきた若者、ハルによってサジの心は溶かされた。

割と新参者であったサジは、ハルのことを可愛がり、よく世話をした。

ハルもそんなサジのことを慕っていて、2人は互いに兄弟のように思っていた。

つまり、サジにとってハルは弟だ。

家族を見捨てて逃げる、という選択が彼にはなかったのだ。


「ハルっっ!!」


サジは叫びながら運転席の方へ走っていく。

白仮面の男はその姿を嘲笑をまぜた視線で軽く追いながら、もう1人ここに残っている男のこともしっかりと見据えていた。


「お前は、どうする?」


「悪いが、俺の辞書には仲間意識という概念の言葉は載っていなくてね。」


男は鼻で笑った。

それは自嘲なのか、嘲笑なのか、諦めなのか

、それとも別の何かなのか、男自身にもわかってはいなかったのだが。


「へえ。まあ、それも仕方がないことだけど。こんな仕事してちゃあね。」


白に身を包む男は、仮面をしていて年齢を掴みにくかったが、男、というよりかは青年といった様子だった。

この年頃からこんな言葉を発する彼に、男は少し戦慄を覚えた。

2人の冷戦状態が続く中、誰かの呻き声が、響いた。


「サジ……!?」


男たちは今まで悪事に何度も手を染めてきた。

そして必然的に荒事に巻き込まれること8割ほど。

新人だといっても、ハルもサジも腕は立つ男たちだった。

だからこそこの仕事を任されたのではあろうが。

その2人が簡単に自身の身体への危害を許すとは思えなかった。


「残念だが、あちらに1人回っているからな。」


「1人、だと!?戯言を。」


今まで闇の仕事をしてきた彼らにとって、数人の敵など脅威ではなかった。

そんなサジとハルを_______たとえ2人同時に相手をしたわけでなくとも1人で倒してしまうなど信じられるわけがなかった。

仲間意識なんてものはなくても腕の良さはよく知っていたからこそ、余計にそう思う。


「子供たちに手を出したのが悪いんだ。殺しはしないから安心しろ。……ああ、上に殺されるかもしれないけどな。」


白い仮面の男は不敵に口の端に笑みを乗せた。

そして、ゆっくりと、手を男の前に突き出した。


雷光礫ライトニング・ペブル


男を、電光が爆ぜる大小の礫達が覆う。


_________辺りに響いたのは、3人目の断末魔だった。

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