第076話 進化&空中散歩
リザアース暦803年1月2日(日)。
・・・んむぅ・・・右腕が温かい・・・何かフサフサしてるし。
このフサフサ感はルナか?
なんか魂の神様が来てややこしい事言ってたから、まだ眠いんだよ・・・。
もう少し寝かせて・・・んを?
今度はちょっとだけ重いし温かい・・・布団の中に入ってきたか?
で、圧し掛かり攻撃中?
ふっ甘いな。その程度でこの俺様を・・・。
あっ辞めてっ!ベロチューとかっ!まだ清い体なんですぅ~。
んぐあっ!鼻の穴に舌突っ込むとか、それは禁じ手っ!
「っぶぇっくしょ~い」
目が覚めました。
で、超至近距離に俺の唾いっぱいのルナの顔。見つめ合う2人・・・。
「・・・・・」
・・・てしてし・・・。
「いや、ルナ。もう起きたって・・・とりあえず顔を洗浄しときなさい。
ふぁ~。
何か魂の神様からややこしい事言われたせいか、ちゃんと寝た気がしない・・・。
とりあえずルナおはよう~。起こしてくれて有難うね~。先にリビングで待ってて~」
洗浄魔法で顔を綺麗にしてから【おはよう~】と言いつつ走り去っていくルナ。
「う~む。
魂の神様の件は夢なのか現実なのか判らんが、とっとと起きるか。
うぉ!もう9時過ぎてんじゃん!やべぇ寝過ごした!」
大慌てで分体作成してリビングへ。当然全員揃ってました。
「すみません!寝過ごしました!!」
とりあえず頭下げつつ謝ったら、なぜかは知らんが、魂の神様とミツハルさんが大爆笑。
何でだ・・・。
疑問は残るけど、そのまま大急ぎで朝食の準備。昨日用意していたおかげで素早く配膳出来ました。
で、従魔達と揃って「頂きます」しました。
若干急ぎ目でおせちを食べてたら、ミツハルさんからちらちらと伺うような視線が・・・。
「ん?ミツハルさん何かありました?」
「いえ、リュウノスケさんの体調はどうかな~?と思いまして・・・」
「は?至って普通ですけど?」
『それじゃぁ無事上級神になれたんだね?おめでとう~』
「あ、あれってやっぱり夢じゃなかったんですね。
あ~祝って頂いて有難いのですが、すみません」
『ん?何その微妙なリアクション?』
「いや~頑張ってみたんですけど、やっぱり上級神ってイメージ湧かなくて。
多分ですけど、上級神にはなってないと思います」
『は?でも感じる神気とか神としての核としては上級神のソレだよ?』
「いや~自分なりに結構頑張ったんですよ?
“俺は上級神、俺は上級神”って念仏みたいに唱えて。
でも中級すっとばすのも何か違うかなぁって思ったので、
途中から“俺は中級神、俺は中級神・・・”ってやってる間に寝ちゃいました」
『何それ!だったら今は中級神だって言うのかい?
君の従魔達とか私とかミツハル君達の心配は何だったのさ!』
従魔をからも非難の目が・・・。
え?いや、俺に言われても・・・って感じ。つか、お前らも何かしたんかい。
「えっと・・・とりあえず、すみません?」
『そんな気持ちの篭ってない謝罪なんて要らないよ!
なんで上級神にならなかったのさ!』
「そう言われましても・・・」
『上級神だよ!?神々の中でも上位の存在なんだよ!?
なんでなれるのにならないの!』
「いや、ですから、なろうとはしたんですよ?でも」
『でもじゃないよ!何?上級神の何が嫌だったのさ!?
私かい?上級神の私が嫌いなのかい!?』
「いやいや、魂の神様が嫌いとか飛躍し過ぎですよ!
大体、根本的な問題として、私が消滅するかも知れないから格を上げろって話でしょう!
それだったら上級神の前に中級神を挟んでもいいと思うじゃないですか!
と言うよりもそれが普通でしょう!
実際、消滅もせずに居るんだから問題ないじゃないですか!」
『それは確かにそうだけど・・・』
「中級神で問題があるんだったら、また後から上級神になればいいだけの話じゃないんですか?
大体、私自身が上級だの中級だのを認識出来ないんですから、どっちになったか。なんて判らないんですから」
『だったら見てくる。リュウノスケ君の本体に触れるけど構わないよね?』
「どうぞ?魂の神様がそれで納得して頂けるのなら構いません。
あ、変なところまで調べないで下さいね?」
『そんな事はしないよ!』
朝食の途中だけど、主寝室へと入っていく魂の神様。
「全く。
心配を掛けたのは申し訳ないと思うけど、上級だの中級だのどっちでもいいじゃん」
「まぁまぁ。
そう思えるのはリュウノスケさんぐらいですよ。普通なら上級神になりたいと思うものですからね」
「ミツハルさんも上級神になりたいと思って居られるのですか?」
「当然、なれるものならなりたいですね」
「上級神になって、具体的に何がしたいんですか?」
「具体的にと言われるとちょっと困りますけれど、力が無いよりはあった方がいいですから」
「自分の世界を治めるだけなのに、過剰に力が必要だとは思えないんですけどねぇ。
まぁルナ達を既に過剰に育てちゃってる私が言っても説得力はないでしょうけど。
でも、ルナ達を育てたのも別に過剰に強くしようとした訳じゃないしなぁ」
俺は朝食を食べ終わったので、先に飲んでます。
理不尽に怒られたせいか、軽く自棄酒入ってますけど。
で、暫くしてリビングに戻ってきた魂の神様。
若干お疲れと言うか、げんなりモード。
「で、どうでしたか?」
わくわくしながら聞くミツハルさん。
『格は中級神だったよ。ただ、神としての核と持っている力は上級神と同等だった・・・』
「は?それってどういう事なんでしょうか?」
『私にも判らないよ。
少なくとも、ここに1柱色々とおかしな神が居るって事が確定した感じだね』
俺を親指で“クイックイッ”と差しながらそんな事を言う魂の神様。
おかしな神だって。失礼な!
そんな話を聞き流しつつ、俺独りで自棄酒です。
俺だって頑張って上級神になろうとしたっつーの!
全員が食事も済んで和やかに飲酒(お子様達は野菜ジュース)タイム。
俺だけ少し離れて手酌で自棄酒してます。ちなみに昨日飲めなかった“幻の酒”を俺だけで飲んでます。
昨日の飲ませてくれなかった仕返しだ!ミツハルさんは単に巻き添え。
『あぁ、リュウノスケ君。
ルナちゃん達がモノリスの書に記述が無い存在に進化してるから、モノリスの書に追加修正しといてね』
「は?進化したって・・・まだ魂持ってないんですよね?」
『だから、記述が無いって言ったでしょ?見てみれば判るよ』
はぁ?とか思いつつ、ルナを完全鑑定。
名前:ルナ(???)(従魔)
種族:ナインテイル(雌)
(以下略 各種ステータスが倍ぐらいに増えてます)
「あれ?なんか種族は変わってないけど、魔物だった所の記述が“???”になってる・・・。
あとステータスが倍ぐらいになってるし。なんだこれ?」
『それね、リュウノスケ君達の世界で言うなら“神獣”になったって感じかな?
リュウノスケ君が消滅しかかってた時にルナちゃん達全員が近くに居たせいで神気をかなり浴びたからね。
モノリスの書に神獣の記述してないでしょ?だからだよ。
追加しといてね。詳細はリュウノスケ君の好きにしていいよ』
「はぁ。まぁ了解です。
皆さんが帰られてから、じっくり考えて追加修正します。」
そうこうしてたら、陸くん達がミツハルさんに内緒話。
で、ミツハルさんご一家で何やら相談中です。
「あのぅ・・・リュウノスケさん。お願いがあるのですが?」
「ん?何でしょうか?」
「陸達が空を飛びたがっているので、遊ばせてやって貰えませんか?
あと、今回は我々も参加させて頂きたいのですが?」
「あ~。そういえばそうでしたね。
それじゃ、とりあえず移動しますか。 今回は魂の神様も参加されますか?」
『ん~?定員オーバーしない?
問題ないならせっかくだし私も参加させて貰うけど」
「ミツハルさん達は・・・リヴィアに3人で乗ってもらうとして・・・。
シファード!お前の完全変身の封印解除するから魂の神様乗せられるぐらいに巨大化して」
とりあえず指示を出しつつ、遊戯室へと移動。
エリアは前回同様に、初夏の草原(芝生)エリアです。
従魔達全員を元のサイズに戻して、シファードの変身系の封印を全て解除したら、巨大化させます。
「ん~シファードは大体こんなもんでいいや。問題はリヴィアだな。
リヴィア~?ちょっと動きづらくなるかも知れないけど我慢してね~」
全身棘だらけなんで、比較的棘の無い後頭部ちょい下あたりにジェットコースターでよく見る座席を創造魔法で作成。
視界前方に棘というか鰭があるけど、まぁ仕方ないと諦めて貰います。
陸くん達や魂の神様の分も同様に作成して、それぞれの従魔に固定。
風魔法である程度の風圧は抑えられるから大丈夫でしょ。
とりあえず座席がズレないようにだけ注意して取り付けました。
で、前回の陸くん達はおんぶ紐でしたが、もうしっかり首もすわっているので、全員ジェットコースタースタイルに。
4点固定式だし落下の危険もないでしょ。背もたれ部分も少し大きめにしてあるし。
念のために全員にネックガードは装着して貰いましたが。
ルナ→海ちゃん
タリズ→空くん
リヴィア→ミツハルさん・ミーさん・クレマチスさん
フェン→陸くん
シファード→魂の神様
で、それぞれ分乗したら、とりあえず魂の神様から酒瓶を取り上げていざ出発。
飛びながら飲むつもりだったんかい!と突っ込みたかったけど、無言で(ジト目はしましたが)回収しました。
ちなみに今回は、俺も完全変身でミニドラゴン化してみました。
ミツハルさん一家は吃驚してましたがスルー。
ちなみに、エンシェントミニドラゴンでした。
で、最初は前回同様に飛行はせずに軽いランニングから。
もう既にお子様達は大喜びしてます。
お子様達が慣れてきたら速度を上げてそのまま飛翔開始です。
上空で前回同様の編隊を組んで、改めて従魔達に安全第一の指示を出したら、即戦闘機動を開始。
いや~朝から色々あってストレス溜まってたんですよねぇ。
自由に空を飛ぶのって気持ちいいなぁ。
人体よりもミニドラゴン化して正解だったわ、めちゃめちゃ飛びやすい。
軽い尻尾の操作だけでバレルロールが可能とか、やっぱり飛翔種はいいなぁとか思いつつ、ストレス発散です。
俺の動きに合わせて、従魔達も同じ動きをするから存分に振り回してます。
お子様達も“キャーキャー”言いながら喜んでいるみたいなので、今回は飛翔から高速飛翔へスピードUP。
お子様達の限界に挑戦してみます。
ミツハルさんが「ちょっ早過ぎっ・・・」とか言ってますが、スルー。
魂の神様はなぜか爆笑していますが、あの神は謎過ぎる・・・。
大体200km/hぐらいでお子様達の騒ぎ声が聞こえなくなったので、80km/hぐらいが丁度いいみたい。
それぐらいの速度なら高速飛翔じゃなくていいやってことで全員飛翔だけにして、後は楽しませる方向で。
どうせなら俺も楽しみたいので、部屋の中央あたりで思いっきり咆哮。
従魔達(&お子様達)も続いて咆哮。
大声出すのも気持ちいいです。
どうせならミツハルさん達も楽しめばいいのに・・・。
1時間ほど空中散歩を楽しんだら、そろそろお昼の時間帯。
速度を落として軟着陸したら軽いランニングしてクールダウン。で、終了。
「お疲れ様でした~」
再び人体に戻ってから、全員を降ろします。
お子様達はちょっと疲れてるっぽいけど、十分に堪能して貰えた様子。
ミツハルさん主従はちょっとぐったりしてます。楽しめなかったのかな?
魂の神様に関してはスルーです。
「ちょうどお昼時ですし、このまま此処でお昼にしますか。
ピクニック代わりに丁度いいですし。
それじゃ、『出ろ!』お?予想以上にいっぱい出たな。神格位が上がったせいか?」
大人連中(魂の神様含む)が使い物にならないので、俺と従魔達でお昼の準備です。
ちゃんとお手伝い出来るウチの従魔達は実に偉いです。
かなり巨大なビニールシートを敷いて、そこにお昼御飯としてサンドイッチやらを出します。
一応お酒も出しましたが、基本はコーヒー牛乳な感じ。
お子様達は相変らず野菜ジュースです。
従魔達用に急いでオド補完用のゴブリンなんかの小物を数匹給仕室から持ってきたら、全員休憩モードになってました。
そのまま昼食へ。
「・・・リュウノスケさん。前回よりも早くありませんでしたか?」
サンドイッチを食べながら、ちょっとお疲れ気味のミツハルさん。
「あぁ、すみません。
陸くん達の限界がどの程度なのか見極めようと思って、前回よりもちょっと飛ばしたんですよ。
大体時速80km弱ぐらいが丁度いい感じみたいですね。
今回で見極めが出来たので、もうしませんよ」
「それなら良いのですが・・・いや、良いのかな?」
「ははは。
まぁ今回は私も色々と溜まってたので、ストレス発散させて貰いました。
もうしませんから、安心して下さい」
「分かりました」
「で、速度を上げた時は別として、どうでしたか?空の散歩は?」
「陸達が好きになるのも判りますね。
と言うか、ほぼジェットコースターって感じでしたから。
ただ、レールが無い上にどんな動きをするのか予測不能な分、純粋に楽しむよりちょっと怖かったです」
「あ~。まぁ私の気分次第で飛んでますから。
ジェットコースターってのは正解だと思いますよ?私もそのつもりですし。
一応お子様達が居るから、これでも戦闘機動とか無茶な動きは少なめにしてるんですけどね。
大体ウチで従魔達と訓練してた時はもっと高速で移動しながら無茶苦茶な動きをしてましたからねぇ。
これでもかなり抑えた動きだし、従魔達にしてみれば本当にお遊びって感じですよ?」
「ルナちゃん達が強くなった理由の一端が判った気がしますよ。
かなりのスパルタ教育ですよね?
何も言わずに陸達の限界見極める為に速度出した件もそうですし」
「そうなんですかね?
う~ん、そう言われるとそうなのかも知れませんけど、もう訓練自体してませんからね。
今では各自の自主性に完全に任せてますよ。
ところでミツハルさんところのグリフォンだと、どの程度の動きが出来るんですか?」
「直線飛行だけで今回の1/3程度、時速30kmほどでしょうか?
旋回とかしたらもっと速度は落ちますが」
「あ~そりゃ陸くん達も不満でしょうね。この速度を体感した後だと特に」
「ですよねぇ。私も実際に体験してよく判りましたが、速度域が段違いでしたからねぇ」
「先にメリーゴーランド的な乗り物にした方が良かったかも知れませんねぇ。
ジェットコースターに乗った後だと、ちょっと物足りなく感じるかも知れませんから。
まぁあれはあれで楽しい乗り物だとは思うんですけどね」
俺が言った新しい乗り物的な発言に反応するお子様達。
で、ミツハルさんから説明を受けてます。
まぁ既に言ったけど、ジェットコースターに慣れた子供がメリーゴーランドで満足するかは疑問なんですけどね。
「ミツハルさん。
せっかくだから、ミツハルさん主導でミツハルさんの世界に遊園地を創ってみませんか?
文化文明の発達中だとおっしゃってましたし、娯楽も必要だと思いますよ?
そういった施設がなかったら、娯楽として受け入れられて収益も上げられると思いますし」
「そうですね。ちょっと考えてみます」
その後は普通にピクニックでした。
お子様達は疲れたのか両親に膝枕して貰ってお休み中。
残りは少し控えめなトーンでお喋りしながら酒飲んでました。
従魔達も少し離れた場所で相変らずルナの熱弁を聞きながら酒盛りしてます。 なんかこんな光景にも慣れちゃった。




