第070話 お屠蘇とお年玉
リザアース暦803年1月1日(神)。 元旦で御座います。
毎度おなじみルナによる、てしてし目覚ましによる起床。
今年もいい一年になるといいなぁ。と思いつつ、いつも通り分体作成してリビングへ。
リビングでは既に神様2人とウチの従魔達が座ってました。
「明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します」
『おめでとう。今年もよろしくね』
「リュウノスケさん。明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します」
神様2人だけじゃなくて、従魔達からも新年の挨拶が。
当然それぞれにちゃんと挨拶を返します。
「ミー達も、もう起きていたのでもうすぐ来ると思います。
もう少し待って頂けますか?」
「こちらもちょっと正月準備とお屠蘇の準備をするので大丈夫ですよ。
ミツハルさん所ではお屠蘇ってやってましたか?
今から準備して始めようかと思うのですが?」
「いえ、自分はやったことないですね。
知識としてそういう行事がある事ぐらいしか知りません。
初参加ですが、大丈夫でしょうか?」
「そう堅苦しい行事ってほどじゃないので大丈夫だと思いますよ?
あと予定としては、お屠蘇が終わったら陸くん達へのお年玉渡して、それぞれ1年の抱負を宣言する感じですね。
こっちは書初め代わりに始めた行事なんですけどウチでは定着してるので、まぁ気楽に参加して頂ければ結構ですよ。
あ、一応魂の神様にも参加して頂く事になるので、魂の神様も何か考えておいて下さいね?」
『了解~。で、お年玉とか書初めとかって何?』
「了解って。全然了解してないじゃないですか・・・。
お年玉って言うのは、まぁ元々の意味から離れちゃってますけど、
大人が子供に“今年一年頑張ってね”って感じでプレゼントとかを渡す習慣みたいなものですね。
私の頃は現金を渡してましたが、さすがにこの世界で現金を渡しても意味がないからプレゼントって形にしますけど。
書初めは字が上達することを祈願したりとか、それこそ“今年一年これを頑張るぞ!”って目標を書く行事ですね」
『ふ~んなるほど。了解。
ところでリュウノスケ君の所の従魔達にはお年玉あげてるの?』
「お年玉としてはあげてないですけど、その代わり正月3日間は完全休日にしてますからね。
飲み食いし放題だし。それがお年玉代わりかな?
まぁ基本的に、お酒とボア煮を出すのは年始限定にしてますから。
それで満足みたいですし」
『なるほど。そういう形でもいいんだね。考えておくよ』
「宜しくお願いします。それでは準備してきますので」
いそいそと給仕室へ。
とりあえず鏡餅セットだけを持ってリビングの適当な場所に設置。
鏡餅の意味とかを魂の神様に聞かれたけど、ミツハルさんに丸投げ。
ちょっと先に準備させて下さい。
今年から人数が増える事を失念してて、お屠蘇を入れておく器が小さいんですよね。
なので給仕室でこっそり創造魔法を使って新しく大きめの器を作成。当然お屠蘇も十分に入ってます。
で、いつものセットを持って再びリビングへ。ミーさん達も起きてこられてソファーに座ってました。
改めてミーさん達にも新年のご挨拶。
で、先ほど魂の神様に説明した行事について説明しようかと思ったら、既にミツハルさんの方から説明して頂いたとの事。
それじゃ全員揃ったんだし、とっととお屠蘇を終わらせちゃいますかね。
「あ、これを聞いたら失礼かも知れませんが、
ミーさんとクレマチスさんのどちらがお若いのかを確認しなきゃいけないんだ。
あ~。その辺含めて魂の神様にお屠蘇行事について改めて説明した方が早いかな?」
『ん?どういう事だい?』
「お屠蘇って行事の意味としては、厄除けとか邪気を払うとか色々あるんですが、
その中に若い者の元気・・・と言うか精気かな?を年長者に分け与えるって意味があるんですよ。
で、この3つの盃を小さい方から順番に若い人から回していって、薬酒を飲むって行事なんですよね。
意味とか仕来りとかは諸説あるので、その辺はウチのルールでやらせて貰いますが、基本はそんな感じなんです。
で、空くんが一番若いから、スタートと〆は空くんにお願いするのは確定なんですけど、
年齢の若い者順なものですから、年齢を聞かなきゃいけないんですけど、女性に年齢を聞くのは失礼かな?と」
一応魂の神様に説明しつつ、全員にお屠蘇行事について説明してみました。
『あぁ、なるほどね。私が一番の年長者だし、全員の年齢も判るだろう。って事だね?』
「はい。お伺いするのは若干失礼かな?と思うので。魂の神様ならば問題ないかと。
ついでにウチの従魔達と、どっちが若いのかも知りませんし」
『なるほどね。了解了解。ん~』
全員を見渡す魂の神様。
『若い者順だと、
空くん・海ちゃん・陸くん・シファードくん・フェンくん・リヴィアちゃん・タリズくん・ルナちゃん・
クレマチスちゃん・ミーちゃん・リュウノスケ君・ミツハル君・私。の順番だね』
「有難う御座います。
今までは俺しか居なかったので仕方なかったのですが、一応手酌厳禁なのでミツハルさんにも手伝って貰っていいですか?」
「構いませんよ?何をすればいいんでしょう?」
「単純にお酒を注ぐだけですよ。
最初の1回目は私がやりますから見てて下さい。
あ、陸くん達にはまだお酒は早いと思うので、一応真似事だけにしておきますね。
陸くん達には悪いけど、これを飲むのはもう少し大人になってからにしてね。」
空くんに一番小さな杯を両手で持たせて、お屠蘇の入った容器の注ぎ口をちょんと付ける程度の真似事をします。
で、空くんは飲んだフリ。空くんが終わったら海ちゃんへ杯を渡してもらって同じくちょん付け。陸くんも同じです。
シファードは飲み慣れてるので普通に注いで飲ませます。
そのまま順番に回して、俺の番の時だけミツハルさんに注いで頂きました。
魂の神様まで回って飲み干して貰ったら、再び空くんに杯を持たせて真似事して〆。
これを残りの中と大の盃の計3回やったらお屠蘇は終了です。
「はい。これでお屠蘇の儀式は終了です。お疲れ様でした~」
お子様達だけは飲めなかったので若干不満げ。
今になって思うと、
お屠蘇が終わったタイミングで大人達がお年玉を渡すのにも意味があったんだなぁ、とか思いました。
要はご機嫌取りだったのね。
「で、俺から陸くん達にお年玉です。
あ、ミツハルさん?結局去年も渡しましたけど、お年玉って渡して大丈夫ですか?
今更かも知れませんが」
「大丈夫ですよ?自分らの世界でもお年玉って風習は作りましたから。
でもリュウノスケさんはくれぐれも自重して下さいね?
トンデモ性能な物とか貰ったら困りますし」
「ははは。今年は大丈夫ですよ。
んじゃ改めて、陸くん達にお年玉ね。『出ろ!』『出ろ!』『出ろ!』
ん~。我ながら完璧な手触り。伊達に長年モフってないな」
自画自賛ですが結構な自信作です。
完全再現じゃなくて微妙にデフォルメしてる所が一番苦労しました。
タリズの嘴とか硬いから危ないしね。
「ルナちゃん達を模したぬいぐるみ・・・ですか?」
「ふっふっふ~。実はこれ、ぬいぐるみにもなるリュックサックにしてみました!
まぁ背中とかお腹が開くとちょっと微妙なので、口からしか物を入れられない分、収納容量自体は少ないですけどね。
あぁ、先に言っておきますが、見た目より容量は少ないですよ?
じゃないとモフり甲斐が無くなっちゃいますし。
前回無限収納的な物がNGだと聞いたのでこういった形にしてみました。
ただし、所持者の成長に合わせてこれ自体がある程度大きくなる分、若干収納容量も多くなりますけどね。
まぁどれほど成長しても、実物よりは小さいぬいぐるみサイズまでにしかなりませんから大丈夫かと思います。
如何でしょう?問題ありますか?」
「いえ、ぬいぐるみ型リュックサックなら特に問題があるとは思えないので大丈夫だと思いたいです。
ただ、リュウノスケさんの創る物なので・・・何か他に機能付いてますか?」
「信用ないなぁ。とりあえずさっき言った自動成長の他には自動帰還、自動修復、防塵、防汚、防水ぐらいかなぁ?
あぁ、自動修復に関しては、ミツハルさんが神としての力を込めないと修復しないかも知れませんけど。
ダメですかねぇ?陸くん達には好評っぽいのに。
まぁいいや。魂の神様はどう思われますか?」
陸くん達は既に貰えるものと思って目がキラッキラしてます。
まぁもうちょっと待ちなさい。
で、さっきから微妙にニヤニヤしている魂の神様。
俺がこっそり仕込んだ機能にも気付いているみたい。
『いいんじゃないかな?
それじゃ、私からのお年玉として自動修復をミツハル君の力無しでも出来るようにしておくよ』
「あぁ、それなら安心ですね。長く使ってもらえるし。
で、どうします? 陸くん達は欲しそうですけど?」
俺の手元にあるルナ・タリズ・フェンのぬいぐるみ型リュックサック。
既に陸くん達はロックオンしてます。
魂の神様もこちら側。後は親御さん次第な完全アウェーの雰囲気の中で断れるかな?
「・・・陸、海、空。頂くなら、魂の神様とリュウノスケさんにちゃんとお礼を言いなさい」
「「「魂の神様!リュウノスケ様!有難う御座います!」」」
ふっ当然の勝利だな・・・。
お礼と共に、自分のお気に入りの俺の従魔を模したぬいぐるみを俺から速攻で奪取。
で、早速モフって感動してます。
そうだろう、そうだろう。実物とほぼ同じ感触になるように頑張ったからね!
モフモフ具合なんて本物同然です!
「足とか羽とかが伸びて、体の前で固定出来るようになってるから背負ってみて?」
一応リュック機能も試して貰わないと所有者が確定しない仕様にしてるので、すぐに背負って貰いました。
足とか羽が“みょ~ん”と伸びて、体の前で“パチッ”と接着固定出来るようになってます。
4点固定式だから、ずれたりしないのでその辺も安心設計。
取り外しも接着部を裏から押すだけなので簡単です。
で、子供らしく“きゃっきゃ”言いながら見せ合いしてます。
うむ。我ながら良い物を創ったな。
一旦外して容量のチェックをする子供達。
手近にあった1升瓶(おせち時用)を頑張って突っ込んでますが、半分程しか入らない事にちょっとがっかり気味。
収納に関してはNGが出てるので、そっち方面では改造してません。
で、それを見て安心したミツハルさん達。 甘いなぁ・・・。色々と。
無事お年玉も渡せたので次の行事へと移ります。ちゃっちゃとやらないと朝御飯が遅くなっちゃうので。
で、書初め代わりに各自今年の抱負と言うか、今年一年頑張る事を全員の前で宣言。
魂の神様→色々頑張る(適当過ぎませんか?)
ミツハルさん主従→子供の躾&世界平和(まぁパパさんママさん&神様主従だからねぇ)
俺→新しい酒を思い出す(魂の神様よりほぼ強要されました)
ルナ達→自分の従魔達をもっと強くする(フェンとシファードにも従魔が出来ました)
お子様達→両親の言う事をちゃんと聞く&勉強をがんばる(ミツハルさんに強要されてました)
色々と突っ込みたい所ですけど、とりあえず全員“目標目指してがんばろう。おー!”で締めときました。
いい加減従魔達もお腹を空かせているのでおせちタイムに突入したいところ。
さっさと全員の杯に酒(お子様達は野菜ジュース)を注いで周り、全員で乾杯したら飲食開始です。
従魔達は待たせた分飲食のペースが速いですが、他はいつも通り。
毎年代わり映えのしないメニューだけど、魂の神様含めて満足して頂いている模様。
ここでは初おせちなお子様達(当然お子様仕様にしてあります)も、
すごく嬉しそうに食べているので、ホスト側としても満足していいかな?
ミツハルさんやミーさん達がおせちの各料理の意味を子供に教えている姿とか、実に微笑ましいです。
お子様達が、リュックを背負ったままなのを忘れて食べているのはご愛嬌。
気に入ってくれたみたいで良かったです。
このまま出来るだけ肌身離さず持ち歩いて欲しい所ですね。




