第064話 新たな来訪者
リザアース暦802年 1月1日(神)。
・・・てしてし・・・てしてし。
「ん゛? ふぁ~ おはようルナ。
明けましておめでとう御座います。本年もよろしくね。
それじゃぁお屠蘇しようか~。先にリビングで待っててね」
念話で【おはよう】と【明けましておめでとう~】と言いつつ走り去るルナ。
年始の挨拶もちゃんと言える様になってくれたみたいです。
「さて、今年一年も頑張りますか。それじゃ新年1発目!『分体作成!』
******************************
『分体作成!』
リビングで従魔達に一声掛けてから給仕室へ。
従魔達からも”おはよう”と”明けましておめでとう~”が帰ってきたので嬉しい限り。
で、リビングに鏡餅を飾ったら毎年恒例となったお屠蘇をします。
もうお屠蘇行事には全員すっかり慣れたもので、滞りなく終了。
で、ここ数百年間で恒例行事化させた、1年の抱負を各自発表。
書初めの代わりみたいなものですね。
まぁ今年はこれを頑張りますよ~って宣言するだけなので、出来なくてもペナルティがある訳ではないけど、
一応、各自真剣に取り組むようになったので結果オーライ。
俺→描陣&魔道具作成系をカンストさせる。(今のチート化した俺だと、手抜きとも言える)
ルナ→自分の従魔達をもっと強くする。
タリズ→自分の従魔を増やす&もっと強くする。
リヴィア→自分の従魔を増やす&もっと強くする。
フェン→従魔を探す。(フェンとシファードは、まだ自分の従魔を持っていません)
シファード→もっといっぱい食べれるようになる。(それが抱負なの?)
各自が発表したら、皆それぞれの目標に向かって頑張ろう。おー!! みたいなノリで締め。
で、朝食開始。当然正月仕様です。ここ数年の元旦の朝食は全員で乾杯してからってルールになりました。
1杯目だけ俺が全員に注いで回り、全員で乾杯したら、後は各自が自由に食事開始です。
もうず~っと代わり映えしない食事(おせちと雑煮と赤飯とボア煮)だけど、この3日間しか絶対に出さないし、
基本的に他の日は酒も出さないから飽きたりしてないっぽい。
皆美味しそうにがっついてます。当然飲みまくり。
俺も含めてだけど、全員が酒豪スキルカンスト済みなんで、泥酔の心配もしてません。
さすがに3日間だけとは言え、毎年大量に飲んでたからねぇ。
そりゃスキルもカンストもするわ。って感じ。
飲み食いしてたらそろそろ魂の神様ご一行が来られる時間です。
今年はミツハルさん所のお子さんも連れて、全員で来られると昨年末に魂の神様から連絡を貰っているので、
一応従魔達にはその辺の赤子に対する注意も改めてしておきました。
従魔達は従魔達で、新しい来客を楽しみにしているみたい。割と歓迎ムードです。
で、俺は来客の準備っと。
一応離乳食は始まってると聞いているので、赤ちゃん用の野菜ジュース類も準備。
従魔達の酔い覚ましに1杯ずつぐらい先に飲ませておきました。
俺には子育て経験がないので、野菜ジュースが飲めるのかを知らないけど。 まぁ1歳過ぎてるし大丈夫だとは思う。どうするかはミーさん達に聞きます。
あと、昨年末に今では殆ど使用されなくなった“鍛練室”を“遊戯室”に変更しました。
極稀に使った時も、泳ぎながら魚獲りしてたぐらいなので、ほぼ遊戯と言って問題ないですし。
単純に部屋をランダム選択からイメージ選択に変更したので、今まで通りのエリアも出現可能だし、
ミツハルさんとこのお子さんが大きくなったらリビングで遊ばせるのも狭いかな~と思いまして。
イメージで好きなエリアを作成可能にしたので、大草原だろうが遊園地だろうが思いのままになりました。
ビバ!神チート! まぁ詳細な遊園地をイメージ出来るかは別として。
で、準備が終わって配膳してたら魂の神様から『今から行くよ~』と連絡が。
相変らず分体だとノイズがひどいですが、用件さえ伝わればOKなんで即了解。
で、即転移して来られました。
『明けましておめでとう。今年もよろしく。早速お邪魔しに来たよ』
「「「明けましておめでとう御座います。本年も宜しくお願い致します」」」
「皆様、明けましておめでとう御座います。本年も宜しくお願い致します。
お待ちしておりましたよ? ささ、こちらへどうぞ」
ちなみに魂の神様方にも新年の挨拶は定着しました。
俺とミツハルさんの長年の布教活動のおかげです。
ミツハルさん達は各自1人づつ赤ちゃんを抱っこしてます。
さっきまで宴会していた従魔達もそれぞれ魂の神様から順に鼻先や嘴を擦り付けて挨拶。
ウチの子も偉いです。
で、挨拶を済ませた従魔達は赤ちゃんに興味津々。
ソファーに座ってもらったミツハルさん従者ご一行の周りに集まってます。
赤ちゃんは見知らぬ場所&従魔達に観察されている状態なので、ご両親にへばりついてます。
「リュウノスケさん、昨年は来られずに失礼しました。
この子が長男の陸(りく)。ミーが抱いているのが長女の海(うみ)で共にミーの子供になります。
クレマが抱いているのがクレマが生んでくれた次男の空(そら)です。
ほら3人とも、こちらがリュウノスケさんですよ~」
「いえいえ。お子さんを優先された方がいいんですから構いませんよ。
陸くん。海ちゃん。空くん。俺はリュウノスケっていう名前だからよろしくね~」
まだ1歳ちょっとだから理解してないかも知れないけど、一応挨拶。
赤ちゃん3人共、興味を持ってくれたのか、こっちを見てくれました。
ついでに従魔達も紹介。
それぞれ紹介した時に自分なりにアピールしてたのは微笑ましいですな。
シファードはその場で“くるっ”とバク宙してました。
「あぁ、そうそう。リュウノスケさん。お食い初めセットを有難う御座いました。
自分の世界ではまだそういった風習が無くて、お食い初めの事まで気が回っていませんでしたから、正直助かりました。
あと、お返しを何かしないと・・・とミー達とも考えたのですが、良い物が思いつかなくて・・・。
頂いておきながら何もお返し出来なくて申し訳ありません。」
「いえいえ、私が出来る事なんて、その程度の事しか思いつかなかったものですから。
創造魔法で出しただけですし、気にしないで下さい。
ミーさん達もお子さんも元気な姿が見られただけで十分ですよ。
逆にあの程度しか出来なくて申し訳ないぐらいです。
お子さん達はもう首もしっかりしてきてるみたいですね?」
「はい。最近では1人で歩けるようになりましたし、神の子だからか成長も他の子と比べると早いみたいです。
少しはこちらの言っている事も理解しているみたいですし、やはり若干普通の子供とは違うみたいですね」
「へぇ!それはすごい!それはまた将来が楽しみな子供達ですね!
とりあえずこちらに滞在されている間だけでも、ゆっくり過ごして頂ければと思います。
子育ても大変でしょうし、ウチの従魔達も構いたくて仕方無いみたいですから、もしよろしければ遊ばせてやって下さい」
「お気遣い有難う御座います。ほら陸・海・空。遊んで貰っておいで」
床に降ろされた赤ちゃん3人。恐る恐るウチの従魔達と初コンタクトです。
従魔達も判っているのか、自分から近づいたりせずにじっと我慢している模様。
で、それぞれと触れ合ったら赤ちゃん達もすぐに慣れたみたい。
特にモフモフ組みが人気な模様。
陸くんはフェンに。海ちゃんはルナに。空くんはタリズに特に懐いたみたい。
体表が鱗なリヴィアとシファードはちょっとがっかりしている模様。
でもモフモフだと暑いのか、たまにリヴィアに寄って行ってギューってしてるのでそれなりに満足っぽいです。
シファードは完全におもちゃ認定されたっぽくて尻尾を掴もうとして遊んでます。
赤ちゃんに気を使われてる従魔達ってどうよ? な感じ。
とりあえず、赤ちゃん達は従魔に夢中っぽいのでその間におせちを勧めておきました。
「あ、ミーさんとクレマチスさんはまだお酒ダメなんでしたっけ?」
「いえ、もう離乳が済んでいるので大丈夫ですよ。
歯もだいぶ生えて揃ってきてますし。
あぁ、うちの子達の食事に関しては持参しているので気にしないで下さい」
「そうなんですか?さすがは神の子と言うべきか、早い・・・んですよね?
すみません。私は子育ての経験がないので早いか遅いか判らないのですけど。
一応は野菜ジュースみたいなものだけは用意しておいたのですが」
「かなり早いみたいですよ?
まぁ私も始めてなのでよく知らなかったのですが、私の世界で雇っている家政婦・・・と言えばいいのかな?
その方達からはかなり早いと聞きました。
野菜ジュースなら問題ないと思いますので、後ほど頂ければと思います。
今は・・・ルナちゃん達に夢中みたいですし」
「・・・ですね。例年と同じで申し訳ないですが、どうぞ食べちゃって下さい」
「「「頂きます」」」
大人たち(魂の神様含む)は飲酒しつつ、適当におせちを食べながらお喋り中。
赤ちゃん達は完全に従魔達に慣れたのか、モフったりしつつ遊んでます。
確かに1歳にしては賢いな。 ちゃんと歩いてるし。
ちなみにルナの尻尾は大人気です。
9本あるので3本づつ使って赤ちゃんを丸ごと包み込んだり、滑り台みたいにして遊んだりしてます。
その点、リヴィアの背中や腕はリヴァイアサンになった影響か棘だらけなんでちょっと危険。
リヴィア自身もその辺は理解しているのか、お腹ぐらいしか触らせませんでした。
そのうちスキンシップが激しくなってきて、背中に乗ってお馬さんごっこを開始(リヴィアとシファードを除く)。
あ~。それ俺もやりたかった奴だ~とか思いつつ、相変らず飲酒。
「本当にミツハルさんとこのお子さんは賢いですね」
「有難う御座います。
やっぱり神の影響なんでしょうかね?どうも普通とは違うようで私もよく判らないんですよ。
ところでルナちゃん達は大丈夫でしょうか?
うちの子らは自分の世界だとかなり甘やかされて育てられているので、かなりやんちゃなんですが?」
シファードの尻尾を掴んで振り回して遊んでいる陸くんを指差しながら、申し訳無さそうなミツハルさん。
「あぁ。あれぐらいなら全く平気だと思いますよ?
私達と訓練してた時なんかは、もっと酷いと言うかえげつない事をしてきてますからね。
今の所、シファードも平気そうだし。
本気でマズかったら自力で脱出ぐらい出来ますからね。
ところで“甘やかされて育てられている”とおっしゃいましたが、子育てはどなたかが別にされているのですか?」
「ええ。自分達も積極的に接するようにはしているのですが、
現人神として動かないといけない時なんかがあって、その時は他の人にお願いしている時があるんですよ。
ただ、現人神の子供として接しているみたいで、かなり甘やかされてるみたいでして・・・。
一応普通の子供と同じように、叱ったりして欲しいのですが、中々そうはして頂けなくて・・・」
「あ~。まぁ何となく理解は出来ますけどね。
世話をする側からすれば“現人神様のお子様”な訳ですから、叱ったりとかは難しいと思いますよ?」
「そうなんですよねぇ。自分としては普通の子供の様に育って欲しいのですが・・・。
このままだと傲慢とか我侭になりそうで・・・。
今一番の心配事としてはそれぐらいですね」
「子育てした事がない私が言うのも何ですが、なかなか難しいですね。
ところで魂の神様。やっぱり賢かったりするのは“神の子”だからなんでしょうか?」
『そうだね。
まぁ他にも普通の子供とは違った力を持ったりする場合もあるけど、今はまだ未知数かな?
子供だから可能性や方向性は幾らでもあるからね。
どう育つかはその子と周りの環境次第かな?』
「やはりそうなんですね・・・」
考え込むミツハルさん。 で、ふと思う。俺の場合は?
「なるほど。もし私が子供を持つ事になったら、同様でしょうか?」
『うん。リュウノスケ君の場合でも同じだよ?
ただ、この世界に即した形で体現するだろうけど』
「う~ん。まぁ先の話になるでしょうけど、一応覚えておきます」
ま、俺にはそんな予定すらないけどね。相手も居ないし。
「あ、そうそう。
リビングでお子さん達が遊ぶには狭いと思って、最近使ってなかった部屋を遊び部屋に改造したんですよ。
後で遊びに行きませんか? 結構な自信作なんですが?」
「リュウノスケさんの自信作って所が、ある意味怖いですね。
何処まで規格外の状態になってるか不安ですが、よろしければ是非遊ばせてやって下さい」
む?何かミツハルさんの俺に対する認識が微妙な感じ。
信用はされてるけど“何したの?”って言うより“何やらかしたの?”ってニュアンスです。
これはご期待に答えねば。
最初は草原エリアにして、軽いジャブぐらいにしとくかな?・・・ふっふっふ。