第059話 危惧?
あれから延々とお酒を呑みつつ神様3人+従者2人でしゃべってました。
ちなみにミーさん。語尾に“ニャー”がつく猫族の方だそうです。 あとご主人様の突っ込み担当だと言ってました。
クレマチスさんは犬族で、子供の頃は語尾に“ワン”を付けて話すそうですが、成長と共に言わなくなるそうな。
ミツハルさんの拘りかと思ってた執事服に関してはクレマチスさんの希望らしいです。
最初はメイド服だったらしいのですが、ヒラヒラが動きづらいから、今の服装で落ち着いたとのこと。
それにしても、リザアースでも獣人族の語尾はそうなるんだろうか? 特に指定はしなかったけど・・・。
で、よくよく聞いたらミツハルさんの世界も、いわゆる“剣と魔法の世界”にしたそうです。
何時でも、何処からでも、幾らでも、人を簡単に殺せる“兵器”の存在を排除した世界にしたかったとのこと。
人の生き死にに対して、目に見える形で遣り取りさせた方が抑止力になると考えたんだって。
まぁ俺も全く同意見ですね。
その方向性だから、リザアースよりも低レベルの魔法しか創らなかったらしい。
そのせいで、俺の創造魔法みたいな魔法が無いんだって。
ミツハルさんの世界では、やっと大豆の加工食品(醤油等)の量産が可能になったって喜んでました。
あと、ミツハルさんは現人神として自分の世界を渡り歩いているらしいです。
顔出しで世直ししてる分、表面上は問題が少ないらしい。
逆に隠れている問題に対処しなくちゃいけないのが大変らしいですが、先日大方片付いたとのこと。お疲れ様です。
話し込んでて気付かなかったけど、既に夕方と呼べる時間帯。
俺としては、久々に同郷の人とも会えたし、もっと話していたいので、お泊りを勧めてみる。
「ところで、皆さんのお時間の都合は大丈夫でしょうか?
もし可能でしたら、正月の間だけでも泊まっていかれませんか?
私としても、もっと色々とお話をお伺いしたい事もありますし、可能でしたらのんびり過ごして頂きたいのですが?
正直に言うと、この居住区に客室を創ったものの、まだ活用された事がないのでご意見もお伺いしたい所ですし」
『私は問題ないから、甘えさせて貰おうかな? ミツハル君はどうする?』
「自分達も問題ありません。
リュウノスケさんのお邪魔でなければ宜しくお願いしたいですね」
従者さん達はミツハルさんの意思に従うとの事。だったら客室を拡張しなくちゃね!
「問題ないなら是非泊まっていって下さい。
あぁ!そういえばウチの従魔達の紹介がまだでしたね。ルナ!皆連れてきて~」
のっそりこっちに歩いてくる5人。
おいタリズ。お前千鳥足じゃね~か!鳥だからって許されないぞ?
・・・つーか全員酒くせぇ・・・呑み過ぎだっつーの。
「すみません。
結構自由に生活させてるものですから、初めてのお酒で随分呑み過ぎてるみたいです。
とりあえず、こっちの3尾の狐がルナ。長姉になります。
で、鳥が長男のタリズ。次姉でドラゴンのリヴィア。次男で魔狼のフェン。3男で末弟のミニドラゴンのシファードです。
ほら!皆ちゃんと挨拶して!」
魂の神様→ミツハルさん→ミーさん→クレマチスさんの順にそれぞれがきちんと順番に鼻や嘴を擦り付けて挨拶。
完全に酔っ払いにはなってないみたいで、一安心です。
「最初は“引き篭もりの神”って聞いてたけど、これだけ多くのペットに囲まれて生活してたら楽しそうですね。
後輩が苦労してるかもって考えてたけど、全然そんなこと無いじゃないですか。
いいなぁ。俺もペットが欲しいなぁ」
あ、ミツハルさん。それ以上はダメです!ミーさんが突っ込み狙ってますよ!!
「いや、ペットじゃなくて従魔なんですけどね。
あと一応、私の世界では強い部類の存在なんですけどね・・・。
それと、その通り名の件なのですが、結果的に付いて来ただけで、なろうとして引き篭もってる訳じゃないんですよ?
ミツハルさんならお判り頂けるかも知れませんが、他の神様から過剰に干渉されることを嫌っての結果なんで」
『そうそう。通り名が先行しちゃって誤解してる神も多いけど、
リュウノスケ君は別に引き篭もってるんじゃなくて、完全に独立した世界を創ろうとしてるだけなんだよね。
全くそれを理解してない神が多いことと言ったら・・・少しはリュウノスケ君を見習え!って感じだよね』
魂の神様も色々大変みたいですね。まぁ俺のせいで面倒掛けてる点もあるので申し訳ないですが。
とりあえずその辺の愚痴は他の人に聞かせるのも何だし、ちょっと人払いしますかね。俺も聞きたい事があるし。
「あ!そうだ!
ミツハルさん。ミーさんやクレマチスさんってお風呂とか大丈夫ですか?
もし問題無いのでしたら、ウチの従魔達をお風呂に入れてやって貰えませんか?その間に寝室の準備もしておきますので」
「え?リュウノスケさんが言うお風呂って、もしかして檜風呂ってやつですか?
いや~いいですね!後で自分も入らせて下さいね!
ミーにクレマ。リュウノスケさんの言う通りしてくれるかい?」
「皆可愛いから問題ないニャ!判らない事はルナニャンに聞けばいいですかニャ?」
「はい。それでお願いします。
一応念話である程度の会話が可能なはずですから、大丈夫だと思います。
あぁ、ルナ!今日は入浴剤無しだけど、明日は入れていいからね。
それとミーさん達に変なルールを教えない事!
多分皆が浴槽のへりに頭乗せて入浴するスタイルになってるのって、ルナが教えたせいでしょ? ダメだからね!
それとミーさん、クレマチスさん。お手数掛けて申し訳ないのですが、ウチの従魔達を洗ってやって貰えますか?
シャンプーとかボディソープとかも全部浴室内にありますので、自由に使って貰って構いませんので。
あと、タオル類も脱衣所の棚の上に置いてありますので、ご自由に使って頂いて構いません。
使い終わったら他の洗濯物とかと一緒に洗濯乾燥機に入れて、スイッチだけ押して貰えれば30分ほどで完了しますから」
「了解しましたニャ。
シャンプー?とか良く判らないけど、ルナニャンに聞くニャ。クレマもそれでいいニャ?」
「ええ、了解しました。ではご主人様、また後ほど。
神様方もお先に失礼致します」
「いってら~。
リュウノスケさん?ペット・・・じゃなくて従魔にシャンプーとか大丈夫なの?」
ミーさん達にひょこひょこ連れて行かれる従魔達。
普通だと、飲酒直後に風呂って危険行為だけど、無呼吸スキルあるから溺れる心配も無いから大丈夫でしょ。
「最初は私もシャンプーしても大丈夫なのかって心配したんですけどね、
地球の動物と一緒だと考えない方がいいみたいで、結構好きなんですよウチの子達。
普通、鳥が入浴とか有り得ないじゃないですか?
でもタリズは普通にシャンプーもしますし、湯船にだって浸かりますよ?」
「へぇ。やっぱり違う世界だと生態も違うものなんですねぇ」
「ですね。
あぁ、少しの間席を外させて頂きますね。寝室の準備をしてきますので。
あ、ミツハルさん所は3人部屋の方がいいんでしょうか?それともキングサイズのベットを用意した方が?」
「あ~お気遣い有難う御座います?
でも、幾ら何でも人様のお宅でそういう事はしないから気にしなくていいですよ」
「なら、別室でも構いませんか?」
「ええ、大丈夫です。
むしろ久々に独りでのんびり眠れるからそっちの方が有難いかな?」
「それでは少し失礼して・・・。
おっと。その前に。『出ろ!』一応お薦め出来るお酒なので暫くこれでお待ち願います」
とりあえず、俺のお気に入りのお酒(地球では割とお高い清酒)を出したら急いで主寝室へ。で、『帰還!』
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『帰還!』
「さて、お客様を待たせる訳にもいかないし、ちゃっちゃと済ませますかね」
で、リビングへ。
『ん?神体に戻ったみたいだけど、何するんだい?』
「あぁ、客室なんですが、今まで使ったことが無かったので2人までしか泊まれないんですよ。
で、拡張しようかな~と。 すぐ済みますのでもう少し待って頂けますか?」
『構わないけど・・・ちょっと興味あるし、見てていい?』
「自分も興味ありますね。見学させて貰っていいですか?」
「いや、それほど面白いものをお見せ出来るとは思いませんが・・・。
まぁ不都合がある訳ではないので構いませんよ?」
空間拡張するだけだしなぁ。
見てても面白いとは思えないけど、別に見られて困る事する訳じゃないし。
で、客室へ移動。
「ん~。
とりあえずベッドサイズを一応大きくしてっと『空間拡張!』&『拡大!』
・・・あとは、2部屋にしてから4部屋にした方が楽か。
となると、中央に廊下を設置って感じだな。
『空間拡張!』&『回転コピー!』&『空間拡張!』で最後に『コピー!』で、どうよ?」
元々あった部屋のベットをダブルベットサイズに拡張。それらを、そっくりそのままそれぞれ90度回転させてから、
中央に出入り口が来るように配置。で、3mほどの幅で中央に廊下を設置し、同じ物をさらに奥側に追加した感じ。
中央廊下を挟んで都合4部屋に拡張。
最大で8人同時まで宿泊可能な部屋に変更しました。
中身は全く一緒なんで楽なもんです。ちなみにちゃんと各室内鍵式の鍵も付けました。
『はははは・・・これで本人は下級神だって思ってるんだから、もう笑うしかないよね?』
「えっと・・・なんて言ったらいいのかな?自分でも出来るかどうか怪しいんですけど?」
あれ?なんか反応が微妙??
「えっと?何かマズいことしましたかね?私?」
『いやいや、やってる事が下級神レベルじゃないって話だよ。
空間をいじるとか、普通の下級神じゃ無理だからね。
ちょっと力を見させて貰ったけど、核的には中級の上位ぐらいあるんじゃない?』
「はぁ。まぁ・・・有難うございます?」
「ははは・・・ね?ミツハル君。“引き篭もりの神”ってあだ名通りでしょ?」
「ちょっと納得してしまった自分が居ますが。リュウノスケさんて本当に私より後輩なんですよね?
それでここまで力を使いこなせてるって・・・自分も、もう少し頑張ります」
「えっと??頑張って下さい??
すみません。何がおかしいのか判らないので何とも言えないのですが・・・」
『まぁ気にしなくていいよ。
単純にリュウノスケ君の力が強くなってるから、神としての格が上がってるんじゃないの?って話だから』
「あ~なるほど。 まぁ正直どうでもいいですけどね。
あぁ、だから引き篭もりって言われるのか」
ちょっと納得。
ま、俺としては、リザアースをきちんと統治出来ればそれでいいと考えてるので、神の格なんてどうでもいい話です。
「あ、ついでなんでリビングも拡大しときますね。
最近従魔達の食事の時でも少し手狭に感じて来た所なので」
ってこでリビングも拡大。
中央テーブル以外の備品類はそのままに単純に倍のサイズに拡大しました。
これで通路も広くなったし、オーガ3体ぐらい転がしても狭くならないでしょ。
ついでに輪廻転生の輪の容器も倍に拡大しときました。
「これは・・・呆れるか、笑うしかない・・・ですかね?」
とはミツハルさんの弁。魂の神様は爆笑してました。まぁ多少は酔ってるんでしょうけど。
とりあえず用件は済んだので再び主寝室に戻って分体作成。
で、改めて広くなったソファーに座って呑み再開です。
『ところで、どうしていちいち神体になったり分体になったりしてるの?』
「あぁ、ちょっと面倒ではあるんですけど、意識的に役割を分けてるんですよ。
神としての力を使う必要がある時は神体で作業するけど、基本的には分体で過ごしてます。
レベル上げにもなりますし、神体と分体だと体感時間と実際の時間の流れに誤差が出るみたいなので」
「あ、それは確かに感じたことがありますね。
自分は常に神体ですけど、思ってるよりも長時間過ぎてる事がままあります。
その為に従者を連れてるって言っても、過言じゃないかも知れない。
リュウノスケさんの世界はスキル制の世界なんですよね?だからレベル上げですか?」
「正確に言うならスキル制&ステータス制って感じですね。まぁレベル上げもあるんですが・・・。
で、まぁそのせいでちょっと色々と悩んでる所でして・・・。
神様方にお伺いしたい事があったんですよ」
『その為の人払いってことだね。いいよ?答えられる範囲なら教えてあげる』
「有難うございます。先ずはウチの従魔達の魂についてなんですが・・・」
とりあえず色々と疑問に思ってた事を聞いてみました。
あれだけ賢いのに魂は宿ってないのは間違いないのか?とか・・・。
まぁ色々です。
で、従魔の魂については確実に宿ってないとの事。
ただ、限りなく魂を持った存在に近いから、1000年の魂解禁日?には即魂が宿る可能性が高い。
との事でした。となると・・・。
『多分リュウノスケ君が危惧してる事になると思う。どうするつもりなんだい?』
「・・・正直まだ判りません。
ただ、後悔だけはしない選択を選べるように努力は続けるつもりです」
『残ってる時間はそんなにないけど、モノリスの書を修正したりはしないの?』
「それはありません。
記述初期段階だった時や加筆するならともかく、モノリスの書の修正はなるべくしたくないので。
結構入り組んできてますから、どこで変な問題が発生するか判りませんから」
「神だったらその問題ごと踏み越えていくのもアリだと思いますけど?」
「そうかも知れませんが、私の基本は分体だと考えています。
神としてこの世界を創造し、魂の器が安定してきたら、基本的には分体のまま生活し、死ぬつもりです。
まぁ死ぬと言っても、分体が死ぬだけで新しく分体創ってまた生活を始めると思いますけどね。
今はその下準備をしている。と言った所でしょうか?」
「それ、結構危険な思想になったりしませんか?いわゆる破滅思想的な」
「確かにありそうですよね。でも、それもあって従魔を従えてるんですよ。
最終的にはストッパーの役割になってくれると信じてますし、そう遠くない将来分体よりも従魔が強くなりますから。
と言うか、強くしている最中だんですけどね。それがなかなか難しくて・・・。
まぁ今は充実してますよ?
人口が増えたら冒険者としてミツハルさんと同じように世界を旅するつもりですし、
飽きたら北極大陸に自分の国を建国してもいいし、それにも飽きたらダンジョン経営とかでも面白そうですしね。
無限にある時間の潰し方なんて、それこそ“引き篭もり”の得意分野じゃないですか?」
『ははは、まぁちゃんと考えてるならそれでいいよ。
あ、そうそう。リュウノスケ君には言ってなかったけど、キミと同じ目的の新しい神はもう増えないから。
輪廻転生の輪についての問題はもう完全に解消された感じなんだよ。
だからこれからは気楽に構えて大丈夫だからね』
「あぁ、そうなんですか。
後輩が増えないのは残念かも知れませんが、今の私には接点がないですから、余り意味がないかな?
魂の器に関しては現時点で余り協力出来なくて申し訳ありません。って感じですね。
あと700年以上待たないと、魂の器が生まれてきませんから」
『了解了解。
おっと、お風呂上がったみたいだね。それじゃ、難しい話はこれで終わりにして、楽しくお酒を楽しもう』
「そうですね。
あ、どうします?先に夕食にしますか?お風呂にしますか?夕食なら・・・カレーがいいかな?
ミツハルさんはあまり昔の食事をされてないみたいですし」
「おぉ!カレーって懐かしいですね!是非食べたいなぁ。
それにしてもリュウノスケさんは主夫って感じですね?」
「ははは、言わないで下さい。最近私もそんな感じがして凹んでましたから」
『あ~3食昼寝付きの生活って楽だねぇ。今度は他の神も連れてきていいかい?』
「それは当面勘弁して下さい・・・そうですね・・・。
この世界で1000年経過した後なら私も従者か魂を持った従魔を従えていると思うので、
それまでの間は、魂の神様が全力で阻止して下さいね?
じゃないと御持て成しどころじゃなくなりそうなので」
『それはなかなか頑張らないといけないねぇ。ミツハル君も他言無用で頼むよ。
ここでは煩わしいことから開放されるから、毎年来れるといいんだけど」
「承知してますよ。
おせちや同郷の神と酒を酌み交わせる機会をみすみす失いたくないですからね」
「それじゃぁ1000年までの間は、今年の4人限定で許可ってことで。
じゃ、私はカレーを作って来ますので、ちょっとの間失礼しますね。
あ、そうそう。
今日は私の誕生日って設定なので、ケーキも出しますから、ショートケーキ1個分ぐらいの余裕を持って食べて下さい。
それではまた後ほど。もしお暇でしたらウチの従魔で遊んで貰って構いませんよ。では」
ミーさんの。「ニャッ!広くなってるニャ!」の声を後に倉庫/給仕室へ。
思わずカレーって言っちゃったけど、まぁ創造魔法である程度処理したらいいか。
どうせなら全員分作ろう。ルナ達も同じメニューじゃ飽きちゃうだろうし。
ってことでボア肉を捌いて似非ポークカレーにしてみました。
まぁ基本のルーや御飯なんかは創造魔法で作成。
ボア肉を適当な大きさに切って、ある程度炒めてから煮込んで終了です。
煮込んでいる間に、ケーキ作成。
創造魔法でプレーンのクリームケーキを創り、各種生フルーツを乗せて終了。
大体1時間ほど経過したかな?そろそろカレーも煮込めたと思うので配膳に掛かります。
とりあえずカレーの入った巨大な寸胴とお櫃を台車にのせて、先にルナ達大食い用にオーク系を3匹持っていきます。
で、リビングではルナがお酌係。タリズ、リヴィア、フェン、シファードがそれぞれ接待してました。ナイス判断!
神様達も楽しんで頂けてる模様。
ルナ達にはおやつのお代わり自由権があるから、追加でケーキも用意しとこう。
「ルナ~リヴィア~フェン~。
お前らはちょっと晩御飯足らないかも知れないから、先にこれを食べといて」
大食い3人組にオークでお腹を少しは満たさせつつ、台車を取りに戻って普通の食事を配膳。
ミツハルさん。
久々のカレーかも知れませんが、子供のような目をするのは辞めましょうよ。
「後でデザートを持ってきますので、先に食べましょうかそれじゃ、「「「「頂きます!」」」」 」
各自がつがつ食事中。
実際俺も食ってみたけど、やはりボア肉侮りがたし。 予想以上に旨過ぎ。
小食組み含めて、皆がお代わりしたのでカレーは綺麗さっぱり無くなりました。
「いや~。もう自分の世界に帰りたくなくなっちゃいそうですね。
懐かしい味だし旨いしで言う事ないです」
「そこまで喜んで頂ければ私としても嬉しいですね。
皆食べ終わったみたいなので、デザート用意しますね。
少々お待ち下さい」
使った食器類を台車に乗せて給仕室へ。
で、寸胴とかお櫃は食洗機に入らないので洗浄&乾燥魔法で洗ったら、残りは食洗機に放り込みます。
ホールケーキを10個ほどと、取り皿&フォークを台車に乗せて、再びリビングへ。
と、全員の目(従魔含む)がケーキに釘付け。
まぁ手抜きとは言え、フルーツ山盛りのケーキは従魔達にとって初めてだしな。
神様達はまだ食べたことないからか? とか思いつつ配膳。
ちなみに、従魔は1人1ホールです。多分お代わりが来ると思って多めに持ってきました。
1ホールを6等分したら神様達の前に配膳。今回もコーヒーを淹れました。
で、さぁ食べましょうか~と言おうとしたら。
「ハッピバースデー トゥ ユ~♪」
どうやらミツハルさんの仕込みらしい。従魔達も体を左右に振りつつ、リズムとってます。
フェンは合いの手で「ワォーン」・・・いや、狼だろ?犬じゃなくて。
蝋燭がないので吹き消す儀式は無かったけど、うれし恥ずかし有難かったです。照れながら「有難うございます~」。
では改めて。
「「「「頂きます!」」」」
・・・・あ゛~気持ち悪い。
食い過ぎた上に甘い物まで食って、しかも酒呑んでたから余計に。
まぁ暫く大人しくしてたら治まりそうなので、ちょっとコーヒー飲みつつ休憩。
従魔達大食い3人組は都合4ホールづつ完食。珍しくタリズとシファードも2ホール食ってました。
あとミーさん達従者2人もハーフホールぐらい食べてました。
ちなみに不足分は追加で作ってきました。予想も甘かった。
俺、鉄の胃袋ってスキルを追加しようかと本気で悩み中です・・・。
「いや~。さすがに食べ過ぎましたね。少し休憩させて下さい。
それにしてもリュウノスケさんは料理上手ですねぇ。
ここまでレパートリーがあるとは思いませんでしたよ」
何かミツハルさんの中で俺が主夫認定されつつあるっぽい。
「いやいや。
さすがにこの短時間で1からは作れないので、魔法とスキルでカバーしないと・・・。
まぁ大体のレシピは覚えているし、食い道楽だったので創造魔法である程度創る事が出来るのが大きいと思いますよ?」
「そうですか。
だったらある程度でも構わないので、ミーやクレマに教えてやって貰えませんかね?
この味を食べられるのが年に1度だけと言うのは、思い出してしまった以上、正直辛いんですが・・・」
「それは構いませんが・・・食材はどうされるおつもりですか?
ミツハルさんの所にある食材を私は把握してないので結構制限があると思うのですが?」
「あ~その問題があったか・・・。
自分も詳細は把握していないので、ミー達と相談しながら出来る範囲で、で構わないのでお願い出来ませんか?」
「そういう事でしたら構いませんよ。早速始めますか?」
「ミー、クレマ宜しく頼むよ。さっきのケーキまた食べたいよね?」
「もちろんニャ!あんなに美味しいくて甘いのは初めてニャ!」
「私も精一杯勉強させていただきます」
「判りました。それじゃぁミーさんクレマチスさん。宜しくお願いします。
とりあえず付いてきて頂けますか?」
ミツハルさんの従者2人と共に給仕室へ。
で、要るかな~と思ってメモ帳とペンを創造魔法で先に出して2人に渡します。
「先ずはケーキからでいいですかね?
最低限牛乳なんかの乳製品と卵、小麦粉、砂糖は必須なんですけど、大丈夫ですか?」
「牛乳と卵はあるニャ。小麦粉も大丈夫ニャ。砂糖って何ですかニャ?」
「これですね。
とりあえずおせちでも結構使うので、必須の調味料なんですけど・・・」
おいおい。砂糖が無かったら、作れるものがかなり限られてくるぞ??
その辺はミツハルさんも理解してると思うから、心配してなかったんだけど・・・。
若干不安に思いつつ、とりあえず砂糖を舐めさせてみました。
「甘いニャ!クレマも舐めてみるニャ!」
クレマチスさんにも舐めて貰います。
「これは・・・我々の世界では見たことが無いですね・・・」
マジか・・・。
前途多難な予感がする・・・ん?砂糖以外の甘味って何がある?蜂蜜とかで代用出来るものもあるよな?
「ミツハルさんの世界で甘味って何がありますか?あぁ、フルーツを除外して、ですけど。
例えば蜂蜜とか、メープルシロップなんかはありませんか?」
もしこれらが無いようならば、俺の手には負えません。
「蜂蜜はあるニャ!でもメープルシロップ?は聞いたことないですニャ」
ふむ。蜂蜜があるなら一応は代用出来るか。
「一応蜂蜜で砂糖の代用としてお教えしますけど、私も始めてなのでちゃんと出来るかどうかは確証が持てません。
可能でしたら、ミツハルさんに砂糖の生産をお願いしてみて下さいね。
一応砂糖を使ったレシピだけは別にお伝えしておきますので」
とりあえず蜂蜜でケーキを作ります。
俺が作るより、実際に自分の手で作って貰った方が覚えるだろうってことで、
ミーさんが作ってる間はクレマチスさんがメモする係り。
で、逆もアリでおせち込みで何種類か作ってもらいました。
まぁ予想通りケーキは白いクリームが若干黄色っぽいし、粘度も違うけどそれなりに様にはなりました。
あと、ミツハルさんが元瀬戸内周辺の出身者だとお伺いしたので、ついでにイカナゴの釘煮の作り方も伝授。
まぁ日本でも限られた地域でしか作られてない&食べられてないけど、地元の味って忘れられないでしょうしね。
で、こいつは基本的に砂糖じゃなくてザラメを使うし、家庭によっては蜂蜜や水飴を使うので、問題なく作れました。
難点としては、ミツハルさんの親しんだ味ってのが判らない点ですね。
イカナゴの釘煮って基本的には完全に家庭料理だから、各家庭で味が違うのも当然なのです。
とりあえず基本的な作り方だけレクチャーして、後はミーさんとクレマチスさんの頑張りに期待しますって感じ。
あと、釘煮に関してはミツハルさんには内緒という事に。
是非ともいきなり作って驚かせてあげて欲しいので。
「とりあえずこんなところですかね?
慣れない調理場でメモとか調理をしてたからお疲れでしょう?
ちょっとだけ休憩がてら、甘い物でもどうですか?」
頑張った従者さん2人にドライマンゴーを差し出しつつ、いつものコーヒーをカップごと創造魔法で出しました。
こうやって考えると、創造魔法ってマジ便利。
「これも甘いニャ!でも普通のフルーツとは違う感じニャ・・・なんですかニャ?」
「これはドライマンゴーですね。
単純に言えば乾燥させただけのフルーツですよ。
水分が抜けた分、より甘みを強く感じるんですよね。
乾燥させてるだけに、多少は保存が利きますし便利ですよ?
腹持ちもいいですし、ミツハルさんみたいに旅をされる時なんかには重宝するかも知れません」
「こちらの作り方も教えて頂けませんか?」
「構いませんよ?
と言ってもそれほど難しくはないのですが、手間が掛かるんですよね・・・」
極低温のオーブンで加熱するドライフルーツの作り方を伝授。
焼くんじゃなくて乾燥させるだけなので、見てないといけないのが唯一面倒なぐらいで後は楽なもんです。
一通りのレクチャーが終わったらリビングへ。もう結構いい時間です。
「ルナ!皆と先に寝ててくれる?
あぁ、悪いんだけど、明日も8時頃に起こしてね。
俺はもう少し神様達とお話してるから。 お風呂も入るしね。・・・ん?」
ルナ達に先に寝るように指示したら、それは了解したけど、おやつのお代わり自由権を行使して、誕生日ケーキを所望。
「あぁ。おやつは今日のケーキがいいのか。
ダメだよ?一応誕生日ケーキだから別のにしてくれない?・・・どうしてもあれがいい、と?」
あれは誕生日専用にするつもりだったからなぁ・・・。
「う~ん。じゃぁこうしよう。明日は今日とは別のケーキを作ります。
まぁケーキと言うかタルトなんだけど。
あ、ちなみに今日と同じくフルーツいっぱいで甘いやつね。
それならどう?ちゃんと甘いし、タリズ達も大好きなフルーツだっていっぱいだよ?」
従魔同士で話し合い。
・・・つーか、おいお前ら。よく考えたら、俺が主人なはず。なぜに俺が妥協せにゃならん?
従魔同士の話し合いでようやく結論が出た模様。
で、よろしく。おやすみなさい~ だと。何かむかつく。
釈然としない気分で従魔達が主寝室に入っていくのを見送ってたら、後ろからトントンされました。
「リュウノスケ様。その“タルト”なるものは教えて頂いていないのですが?」
クレマチスさんでした。貴女もですか・・・。
とりあえずクレマチスさんには明日タルトの作り方を教える事で納得して頂いて、
先にミツハルさんの従者さん2人を客室にご案内。
で、あっさり済むはずもなく。
「神様方と同等の部屋で休む訳にはいかない」
等々でひと悶着。面倒なのでミツハルさんに説得して貰って事なきを得ました。
「いや~ミー達が手間を取らせてすみませんでした」
「いえいえ。それだけミツハルさんが慕われてるって事ですよ。
そんな些細なことより杯が空ですよ? お注ぎしますね」
「あ、すみません」
「魂の神様もどうぞ」
『いや~ありがとうね~。
それにしても檜風呂っていいねぇ。 その上お酒も美味しい。言う事無いねぇ』
で、男3人、神様同士でのんびり風呂に浸かりつつ、風呂酒を楽しんでおります。
つーか女体化だろうが何だろうが、自由自在なんで男かどうかも判らんけど。
まぁスルーで。
『リュウノスケ君は毎日こんな生活してるのかい?』
「いや、さすがに毎日はしてないですよ。お酒を飲むのも、今日が初めてですし。
基本的に鍛練してるか、魔物を狩りながらの食材集めですね。
ウチの従魔達は大食いが多いですから、それらに時間取られて余り余裕はないですし。
一応4日毎に1日休日を取ってますが、その日は従魔とのコミュニケーションの日って感じですからねぇ」
「あ~俺もルナちゃんとかフェンくんとか欲しいなぁ。ペットで癒されたいです」
「そんな事言ってると、またミーさんに平手を貰いますよ?」
「あはは。まぁミーはミーでいい所が沢山あるから別なんですけどねぇ」
「それはミーさんに直接言ってあげて下さいよ」
「手厳しいなぁ。ところでリュウノスケさんは従者を持たないのですか?」
「あー、ウチはまだ魂を持った存在が居ませんからね。1000年過ぎてから考えようと思っています。
それまでは従魔達の訓練だけで手一杯ですし、現状で満足していますからね」
『さっきも言ったけど、本当に1000年になったら魂は宿ると思うよ?』
「ええ。それはもう覚悟しました。まぁ色々とあるでしょうけど、それも含めて。ですね」
『まぁちゃんと考えてるなら言う事はないかな。頑張ってね』
「はい。ありがとうございます」
神様同士でのんびり雑談しながら長風呂タイムです。まぁ正月ぐらいは深酒してもいいでしょ。
どうせ明日はルナに起こされるんだし。
補足説明です。
ミツハル神の世界では”砂糖がない”様な表現になっていますが、正確には、
”白糖”の流通量が極端に少なく、ほぼ目にする機会がない。 が正しいです。
つまりサトウキビ由来の”黒糖”はそれなりに流通しているものの、甘いもの=フルーツが常識の世界だとご理解下さい。
そのため、本文内でクレマチスが発言した言葉を正確に表現するなら
「これは・・・我々の世界では”こんな白い甘味料を”見たことが無いですね・・・」
が正しい表現となります。
頭に上白糖しかなくて、黒糖の存在をすっかり忘れている主人公のミスでもありますが。