第045話 3匹の従魔
「到着・・・したけど、正直ないわ~」
いきなりですが、テンションだだ下がり。目の前には超巨大な烏賊。
「よくよく考えたらクラーケンって水棲生物にしてるから、居住区に連れて帰れないじゃん。
連れて帰れたとしても、体表のねばねばとか絶対癒し系にはなれないし、自分で指定しておきながらだけど・・・。
ないわ~。もうお前は食う以外に使い道ないわ~」
こっちはテンションだだ下がり。
クラーケンの方は突然現れた俺に対して警戒していたものの、こっちのやる気の無さを無視して攻撃してきました。
って言っても食腕を刺突してきただけですが。
「お前に時間消費するのも正直勿体無いからさっさと終わらせるわ。
すっげー勝手な事言ってて申し訳ないけど、あっさり食料になってくれ」
刺突攻撃攻撃を瞬動であっさりかわして、極爆風魔法をカマイタチ状にして発射。
全ての腕を根元あたりから切り落としたら、持ってきてた不思議な武器を爪化させ、
クラーケンの2つの眼球の間ちょっと上に刺突。確か烏賊の〆方ってこれであってたはず・・・。
まぁ瞬動で間合いを詰めると同時に刺突したんで腕までめり込んでますがね。
とりあえず体色が白化したんで多分大丈夫なはず。
先に斬り飛ばした食腕を回収して空間魔法で倉庫に転送。その後本体を転送出来たんで、まぁ死んでるでしょ。
「う~ん。思いっきりミスった。まぁ珍しい食材が確保出来たから良しとしとこう。
海系でって考え過ぎたのが失敗の元だな。もう普通にリヴァイアサン狙いでドラゴン系にするか。
ルナとタリズと一緒に育てるから、あんまり成長してない方がいいな。
んじゃ、なるべく生まれたてのドラゴンな方向で。『探せ!』」
「・・・・ん?もしかして居ない? 全く反応がないんだけど・・・。
まだドラゴン系には出会った事がないからなぁ。意外とレア種なのかも。
それか条件が厳しかったのかな?だったら条件をもう少し!おっと。反応アリ。
魔法の発動からのタイムラグが気になるけど、さっさと移動するか。『転移!』」
「到着・・・したけど・・・これってどう言う事だろうねぇ。
生まれたてって言うか生まれる瞬間じゃね?」
周囲を見渡したら多分此処はダンジョン内だと思われる。
で、眼前に巨大な黒っぽいもやもやが・・・。
魔物が誕生する瞬間なんて当然見たことないからちょっとドキドキ。
気配察知と魔力察知を発動させてみたけど、周囲どころか記憶にあるダンジョンの気配すらしない感じ。
魔物だけでなく、ダンジョン自体も生まれたてっぽいです。
まだもやもやが集まってる途中みたいなので余所見して確認してみたけど、階段は見当たらず。
奥に扉が見えるので、多分ダンジョン核の部屋だと思う。
やっぱりダンジョンも生まれたてみたいだね。まぁドラゴンを従魔にしたら破壊しますけど。
黒っぽいもやもやも、かなりの濃度と大きさになってきたのでそろそろかな~?
でも、まだもうちょっと時間が掛かりそうなので、さっきのタイムラグの考察。
「とりあえず魔法発動時点では、生まれたてのドラゴンが居なかったのは確実だと思う。
で、俺が条件として想像してた0歳のドラゴン自体も居なかったんだろう。
なので反応がなかったんだけど、丁度いいタイミングで新しくドラゴンが生まれそうだから反応した感じかな?
ってことは、生まれたての魔物を指定しておけば、今回みたいにお知らせ機能みたいな感じで使えるってことか?
そう考えると便利だな。
ある程度成長した奴を育てるつもりはないから、今後も従魔を探す時はとりあえず検索だけ掛けるようにしよう」
そうこうしている間に黒っぽいもやもやが完全に真っ黒の塊となりました。
大きさ的にはタリズの変身前よりも数十倍はでかいサイズ・・・だったんだけど、なんでか収縮を開始。
で、徐々にドラゴンの体型に収縮。相変わらず真っ黒だし、かなり巨大なままだけど。
「ふ~ん。多分魔物の体に必要な魔素を球体状態で確保出来てから、魔物として形作られる感じかな?
『完全鑑定!』・・・表示無しか。
やっぱり今の段階では魔物として存在してなくて、ただの魔素の塊って感じになってる訳だ。
で、魔素の塊が「グルァァァァッ!」あぁ、終わったのね。めっちゃでかいな。威圧感もハンパないし。『完全鑑定!』」
名前:なし(魔物)
種族:ドラゴン(雌)
年齢:0歳
状態:正常
HP:100/100
MP:100/100
SP:100/100
STR:24
INT:28
AGI:24
DEX:20
MID:28
所持スキル:飛翔LV1・詠唱破棄LV1
マスタースキル:なし
LP:100/100
LUK:10
CHA:10
HGR:100%
HP自然回復量:1
MP自然回復量:1
SP自然回復量:1
成長状態:成熟期
最大所持重量:24kg
ATK :64
MATK:68
DEF :64
MDEF:68
「ほうほう。完全に生まれたてのドラゴンのステータスってこんな感じなのね。多分初期の人類も同じぐらいかな?
あ、スキル分とかATKとかの分は、これよりも多少は低くなるか?
確かドラゴンはATKとかを増量する記述にしたはずだし」
「とりあえずお前。俺を餌認定してるっぽいけど、格の違いを知りなさい。『手加減』。
あと、いつまで俺を見下ろしている?いい加減・・・頭が高けぇ」
ドゴッ!
瞬動でドラゴンの頭上まで移動して、頭部に踵落としを1発。
手加減スキルも発動してるし死にはしないでしょ。
「さてと。一応聞くけど、死ぬか従魔になるか選んで下さい。
俺としては従魔になるのをお薦めしますが、ど~しても嫌だ~と言うのなら諦めますので。
従魔になるなら翼も頭も地面につけて下さい。考える制限時間は1分です。
はいスタート」
威圧もしなかったので気にしてませんでしたが、生まれてすぐに叩き潰されたせいか、混乱してるみたいでした。
とりあえず混乱解除魔法かけてから、面倒だけど改めて説明。
で、カウントダウン再スタート。
まぁルナの時とほぼ同様の状態ですね。あの時は助けた側だったけど、今回の俺は狩る側。
若干良心が痛む所ではありますが、今まで散々色々な魔物を狩ってきた以上、綺麗事は言ってられません。
今の俺は強者だけど、早くて数千年。遅くとも数万年後には弱者になってる可能性だって高いからね。
それまでに信頼出来る仲間が欲しいのです。その為には俺だって必死になるさ。
不老不死だからいつの日か絶対飽きると思うし、破滅思考が芽生える可能性だってある訳で。
従魔達に愛着が湧けば、そういった思考のストッパー的な役割になって貰えるんじゃないかと思っています。
そういえばルナちゃんを従魔にした時も、最初は混乱してたなぁ。
生まれるのに時間が掛かるみたいだし、ある程度知恵のある魔物だったら誕生直後を狙って狩る可能性もある訳だ。
自分でそうしときながら言うのも何だけど、魔物として生まれるのも大変だねぇ。
胎生だったらある程度大丈夫だろうけど、自然発生の魔物は誕生直後から生命の危機が付き纏うとは。
色々思考していたら、いつの間にかドラゴンは五体投地状態になってました。
「従魔として認められたみたいね。殺される選択をしなくて良かったよ。それじゃ『我に従え!』」
体積がでかい分、ルナやタリズより少し時間が掛かりましたが、無事従魔契約完了。
「よ~し。とりあえず名前を決めるか。水系統は確定だからリヴァイアサン方面から攻めてみるか。
リヴァイアは直球過ぎて嫌だな。ん~雌だしな。リヴィアでいいか。あんまり変わらないけど、長いのは嫌だし。
じゃ、お前の名前はリヴィアな。俺には既に2体の従魔が居るから、そいつらの妹分ってことでよろしく。
と言うか、説明するより先に魔改造するか。頭が良くなってる方が理解も早いだろうし」
いつも通りの魔改造。ルナやタリズと同じく色々と付与。自重はしません。
違いとしてはタリズと同様に属性特化させたいので、属性魔法が水系統限定って感じですね。
ちなみに最初から極氷雪魔法を付与してあげました。
でかいので完全変身も当然付与済み。勿論不死も追加。
一応これでタリズと同格になるはず。
後は水系統で進化して、聖獣化してくれるのを祈るのみって感じですね。
で、いつもの説明をざっとしました。
まぁ後から居住区の説明もするから簡単に説明しておくぐらい。
居住区で他の2匹と顔合わせが済んだら、ちゃんとした説明を改めてしようと思っています。
「よ~し。いつまでもその格好だとしんどいだろうから、とりあえずこれ位の大きさになれ。
完全変身付与してるから使えるだろう。
あ、もうちょい小さい方がいいかな?んじゃ、これ位で。やってみ?」
タリズの時と同じですが、タリズより少し小さめの1mぐらいを手で示しつつ指示。
一応四足歩行なので、体高より体長の方が大きいのでタリズよりも少し小さめにしてみました。
ちゃんと理解したのか大体指示通りのサイズに縮小。元の大きさからしたら1/7ぐらいになった感じかな?
「よしよし。とりあえずその姿をこれからは基本とするからちゃんと覚えておくように。
外で狩りをする時と、後で行く居住区の鍛練室以外では常にその大きさで居ること。
あと、元の姿を除いてその姿以外に変身するのは当面禁止な。
用事も済んだし、さっさと帰りたい所ではあるけど、ダンジョンの破壊もしとくか。此処が何処かすら判らんけど。」
他にダンジョン階層がある訳でもないからさっさとダンジョン核の部屋へ。
のしのし着いて来るリヴィア。
で、到着したけど、特に考える事無くダンジョン核を裏拳1発ぱり~んとな。即地上に転送。
「お~どっかの中央火山帯っぽいな。凍土化してるけど、吹雪いてる量からすると東側かな?
まぁいいや。どうせこれからの俺は中央大陸を中心に狩りをする予定だし。その時に改めて観察しよう。『転移!』」
「到着!
リヴィア。ここが俺達の家ね。とりあえず先輩2人に顔合わせするから着いてきて。
そろそろ晩御飯の時間だけど、リビングに居ないってことは2人とも鍛練室かな?」
一応部屋の配置とか出入り禁止部屋とかを適当に説明しつつ鍛練室へ。
で、人型のまま入室。
服とか濡れちゃうけど、後で洗浄&乾燥させるし風呂も入るからまぁいいや。ってことで。
で、予想通り2匹とも相変わらず遊んでました。
タリズよ。もう少し積極的な狩りをしなさい・・・。
リヴィアも伴ってのんびり泳ぎながら陸地部分に移動したら、2匹とも俺に気付いてついてきました。
で、物珍しそうにリヴィアを観察中。
「はい注目。こいつが新しく仲間に加わったリヴィアです。仲良くしてあげてね。
ドラゴンだから本当はかなりでかいです。元の大きさに戻すから吃驚しないように。
リヴィア。さっきも軽く説明したけど、この部屋に関しては元の大きさで大丈夫だから元の姿に戻ってくれる?」
指示通り元の大きさに戻ったリヴィア。ルナもタリズも、そのでかさに若干びびってます。
まぁ改めて見ると確かにでかいし、顔も厳ついから威圧感もハンパないですけどね。
でも実際は生まれたてなんでタリズはともかく、ルナなら簡単に狩れる程度だと思うんですがねぇ。
「はいはい。
こっちが本来の姿だから。明日の訓練から一緒に参加して貰うので仲良くして下さい。
ルナ達側で戦ってもらうから、今後は連携とかも考えてね?
で、リヴィア。こっちのテイル種がルナ。バード種がタリズって言います。
それぞれ姉貴分・兄貴分だから、丁寧な対応を宜しくお願いします。
ルナもタリズもまだリヴィアは生まれたてで判らない事も多いだろうから、色々教えてあげてね。
そろそろいい時間だし、晩御飯にしようか。3人ともちょっと水辺から離れててね」
3匹がちゃんと水辺から距離をとったのを確認してっと。
『爆雷!』
極爆風魔法で水中に大規模な雷を発生させてみました。
ちょ~っと威力が強すぎたのか水蒸気爆発みたいになったけど、3匹に影響が出なかったのでスルー。
ルナとタリズもそれなりに食べたんだろうけど、出した数が多かったのか結構な数が水面にぷかぷか浮いてます。
舞空術併用で片っ端から倉庫/給仕室に転送しまくる・・・マジで出し過ぎたかも知れん。
俺の今晩の晩飯は魚料理で決定だな・・・。
ルナ達は新規加入祝いで昨日と同じメニューにしとこう。さすがに晩飯まで魚を食わせるのは可哀相だし。
魚の転送が終わったら獲り残しが無いか確認してから再び陸地部分へ。
リヴィアとタリズがめっちゃびびってますがスルー。
お前達も今後はこれぐらい強くなって貰うんだぞ?
特にタリズ。
お前には同じ魔法を付与してるんだから、これぐらいは使えるようになれよ?
ルナの方は俺の規格外さにもう慣れた様子。さすがは長姉、貫禄が違いますな。
単純に今までの訓練でもっとえげつない事をしたせいかも知れないけど。
「それじゃ、俺は晩御飯の準備してくるから、リビングで待っててね。
あ、判ってると思うけど、ちゃんと鍛練室を出た廊下で洗浄&乾燥魔法で体を綺麗にしてからね。
それとルナ。俺の方から一応の説明したけど、改めてリヴィアとタリズに此処での生活のルールを説明しておいてね。
種族が違うけど、念話を使えばいけるでしょ?
じゃぁ後はよろしく。
あぁ、トイレとかちゃんと済ませてから待ってるように。それじゃぁまた後でね!」
用件だけ伝えてさっさと倉庫/給仕室へ。
今回からは量が多くなりそうなんで1人だと大変です。
「リヴィアがどの程度食べるか判らんな。元の大きさがアレだし。
とりあえず最初はルナと同じ分量を出してみるか。
足らなかったら言うように伝えれば、今後の食事量も判るだろうからな。
他は昨日と同じでいいか。俺だけ刺身にしよう。せっかくの魚だし、魚を食べるのも久しぶりだしな」
俺の夕食は朝の味噌汁の残りと鮭の刺身、あと御飯。
ちなみに俺は魚の捌き方を知ってるので問題なし。さすがにマグロを捌いた経験はないけどね。
ルナとリヴィアはオーガを1匹づつ。タリズはゴブリン系の小物を5匹。
後はいつものおやつ代わりのスライムとドライマンゴー。それと野菜ジュースで終了です。
「オーガを運ぶのが面倒臭過ぎ。2匹同時とかSTRが低かったら無理だなこりゃ」
無理やり片手にオーガを2匹掴んで、後は台車を押しつつリビングへ。すると・・・。
「ルナの影響か?行儀良いのは嬉しい事だけど、シュール過ぎるだろうこの光景は」
左から竜・狐・鳥が行儀良く並んでソファーに座ってるってどうよ?
しかも尻尾があからさまに“御飯待ってますよ~”的に左右に振られてるし。
タリズは見えないから判らないけど、ルナとリヴィアの尻尾が完全に同期してるからちょっと変な感じ。
・・・まぁいいや。さっさと配膳済ませて飯食って風呂入ろう。
んで、とっとと寝て明日地獄を見せてやろう。




