第026話 チートですか?
『転移!』
一瞬で到着。まぁそういう魔法にしたんでね。で、そのまま周囲を観察。
外套とかの装備品のおかげで寒くもありません。顔だけはちょっとだけ痛寒いぐらい。
「ん~ある程度融けてる所は融けてるけど、完全には融け切ってないな。
経過日数的に短期間過ぎたかな?でもうっすら地表が見えるからそれほど苦労しないかもな~」
そのまま観察を続け、魔族の誕生予定地候補を探します。
候補地としては、
現段階である程度氷が融けてて地表が見える所。(神の守護層の範囲内ってことね)
それなりに広い平地部を持っている所。
なるべく近くに岩塩鉱山がある所。
です。
水に関しては、ぶっちゃけそこらじゅう雪やら氷だらけなんで考えなくても大丈夫だと思ってます。
魔族の誕生予定地はモノリスの書に“南極点より最も近く”と記述を入れたので、
とりあえず南極点から見れば見つかるかな?と思った次第。
あとは適切な場所にそれなりの環境に整えておけば、多分誕生地点として選ばれるはずだし。
舞空術で空中に静止すること暫し・・・。
「ん~まぁあそこならいいかな?鉱山がちょっと遠いけど。5kmほどってことか、ま、行けない距離でもないな。
とりあえずかなり広い平地ってのが理想的な物件ですねぇ。
近くにさらに低地部もあるから、もしかしたら川になるかも知れないし。色々な面で考えてもあそこがいいかな」
目的地に向かって転移。で、到着。
「お~?予想してたより氷が厚いな。でも周りと比べると下の方は融けてるみたいだし、一応守護層の範囲内だろう。
よし、ここを魔族の誕生予定地にしよう。
とりあえず・・・この氷をなんとかしないと始まらないかな。
っとその前に。鉱山だと思ってたのが岩塩鉱山じゃなかったら意味ないから、先にそっちの確認しとくか」
早速転移。で、到着。もういちいち歩いてない感じ。まぁレベリングも兼ねてますけどね。
「むぅ。多分露出してる白透明っぽいのが岩塩だと思うが、氷が邪魔で確認出来ん。いっちょ派手にぶっ放してみるか~」
初魔法らしい魔法なんでちょっと使ってみたかっただけかも知れませんが、とりあえず詠唱から。
独自詠唱してもいいけど最初なんで基本に忠実に。
『神の爆炎よ!蛇となり地を這い回りて我の周囲の氷を溶かし尽くせ!』
とりあえずどの程度の消費MPが必要か判らなかったので自重なしでMP全消費で使用。
詠唱の後半は確かこんな感じでもOKにしてたはずなんで独自詠唱にはなってないはず。
厨二的詠唱になっちゃうけど、まぁそこは我慢するとして。今後は出来る限り詠唱破棄で行きたいです。
対象を氷としたんで、一応鉱山への影響も配慮してます。神話級魔法なんで鉱山溶解しちゃったら意味無いと思って。
で、これでとりあえず現状の俺が全力で使った魔法の影響力が判るかな~って思ったんだけど・・・
「蒸し暑っ!耐えられないことないけど、水蒸気がすご過ぎて訳判らんわ!」
水蒸気であたり一面真っ白です。解けてるっぽい所は透明なので、一応見えることは見えるんだけど、
割りとすぐに白くなる感じ。沸騰してる薬缶の蒸気吹き出し口みたいな感じで想像して貰えれば判るかな?
一応守護層範囲内は問題ないと思うけど、範囲外も溶かしてるかも。指定し忘れてたし。マズイかな?
でも、こっちはそれどころじゃありません。足元からものすごい勢いで水蒸気が噴出中。
煙突効果で外套の足元から首元にかけて高速で熱い水蒸気が通過していってます。
耐性があるからなのか、装備品の快適温度調整の限界を超えてるのか判りませんが、かなりの蒸し暑さ。
多分アレ。昇華って言うんでしたっけ?固体が液体を介さずに気体になる現象。
あれが現在進行形で足元を含む周囲からどんどん進行中。
あんまり見えないのになぜ進行中なのかが判るかって言うと、足元の氷も無くなってるので体がどんどん下がっていくから。
氷が昇華するなんてどんな温度やねん!とか思いつつ、目を閉じてじっと我慢。
じっと我慢・・・。
じっと・・・っていつまで続くの?
・・・ってあれ?いつの間にか体が下がってないな~と気付いて足元を見ると、地面に到着してました。
周りはまだ水蒸気いっぱいの状態ですが、自分周辺に関しては氷が融けたっぽい。
もう終わったのかな~?とか思ってそのまま暫く待ってみたものの、水蒸気が立ち昇るのは相変わらず続いています。
いい加減待つのも飽きてきたので、とりあえず自分の周辺を観察。
「ん~溶岩がそのまま固まったって感じだな。風化とかする以前に氷河期突入して氷漬けって感じか。
このまま樹を植えても大丈夫なのかな?一応表面を1mぐらい粉砕してから植樹した方が確実・・・かな。
それなら倒れたりしないだろうし。きちんと根も張ってくれるだろうから。
・・・それにしてもまだ終わらんのか・・・とりあえず神話級魔法はチートってことでFA」
相変わらず水蒸気はもくもく出てますが、ちょっとは私から離れてきたので鉱山の方へ移動。
今後、神話級魔法を使う時はもう少し気を付けて使おうと心に決めつつ鉱山の確認。
とりあえず確認したかった白透明っぽい鉱石は露出しているので確認だけは出来ます。
「ん~。岩塩でいいのかな?まぁ舐めりゃ判るか」
早速ぺろりん。
「意外と薄味?でも塩で間違いないな。薄味だけどしょっぱいし」
無事岩塩鉱山と判れば、もうここに用はないんだけど・・・相変わらず水蒸気がもくもくと・・・。
「これ、どの程度まで続くんだろ。
何回か瞬間移動してるとは言え、秒間自然回復量を上回る消費はしてないはずだから、
少なくとも7千以上のMPを突っ込んだ計算になるんだが・・・」
ただ待ってても暇なだけなのでとりあえず座り込んでコーヒータイム。ついでに植樹方法を考えます。
創造魔法で樹木を植えるのは決定だけど、地表を粉砕したりとかは予定外だったからなぁ。
どうせレベル上げがてらなんだし、先に土系魔法使って土壌改良した方がいいのかも。
で、改良した土壌に創造魔法で松とかカラマツとかモミとかそういった針葉樹を植樹予定。
確か針葉樹って結構耐寒能力高かったはずだし、創造魔法で追加して低温耐性スキルを付与する予定だから、
それなりのMP消費になるはず。 あと、スキルじゃないけど低日照でも大丈夫にしとこう。
とりあえずの予定としては、
極爆炎魔法で氷の除去→極岩石魔法で土壌改良→創造魔法で耐寒能力を上げた樹木とか地衣類を生み出す。
そんな感じ。
まぁ土壌改良までの作業を多重混合魔法で火系統と土系統同時発動させとけばレベリングにもなるしね。
で、全力で多重混合魔法を使ってから休憩を挟んでおけば、創造魔法で植樹する時にMPも回復してるでしょ。
でも、その間のSPが勿体無いなぁ。どうせ自然回復するなら何かで使っておきたい。
万が一魔物と遭遇した場合を考えると、全部消費するのはマズいから、ある程度の消費には抑えたいけど、
現状余りまくってるしなぁ。一番楽なのは常に舞空術使っとけばいいか。あれの消費量はそれほど多くないし。
隠蔽看破系はMPも消費するように記述しちゃったしな。他に何かあったっけ?
派生元スキルのレベル上げしてもいいけど、どうせ派生先のレベル上げする時に上がるから、
イマイチ派生元スキルのレベル上げは乗り気にはなれないんだよなぁ。
ん~まぁいいか。マジで魔物に遭遇した時にSPが不足しちゃったら困るしな。
とりあえず浮いてればレベル上がるだろうからそれだけしとこう。
とりあえずチートなのは判ったから、のんびりやっていきますかね。
まだまだ時間はあるけど、これからの作業は時間が掛かるの確定してるからな~。
あ、完全鑑定はSP消費だけだったな。マメに鑑定する癖つけとけばレベル上げになるか。
とりあえずさっきの岩塩を鑑定してみるか~。
そう思ってさっきの岩塩を不如意棒で小突いて砕く。で、ちょっと大きめの欠片を持って・・・無詠唱でいいか。
“完全鑑定”
名前:岩塩
所持者名:リュウノスケ(分体)
重量:1kg
各種補正:なし
特殊効果:塩化ナトリウムの塊であり、人類に必要な塩分を摂取可能。ただし水に溶けにくい
「ふ~ん。一応分類上はアイテムになるのかな?
所持者が俺なのは採掘したのが俺だからか。あと、水に溶けにくいとか知らんかったわ~。
この辺は神補正なのかな? まぁ有り難いからいいか。 これ、放置したらどうなるのかな?」
そう思って元あった付近にポイ。
再度“完全鑑定”してみたところ、所持者名が“なし”になってました。
「所有権を放棄したって感じになる訳ね。了解了解」
暇つぶしをしつつ、コーヒーついでにそんなにお腹は減ってないけど、少しだけサンドイッチも摘みました。
まぁ肥満体型にはなりたくないので腹7分目ぐらいで辞めましたが。
当然50cmほど浮きながら食事しましたよ。一応レベルアップが目的だし。
そうこうしていたらいつの間にかあたりの水蒸気は収まったっぽいんだけど・・・。
遠くの方ではまだ水蒸気が上がってます。
「あ~こういうの知ってる。チートって言うんだよね。ここまで露骨だと嫌でも実感するわ」
多分だけど、私を中心に現時点で数十kmぐらいの範囲内で氷の層が消滅してました。守護層とか全く関係なし。
まぁおかげで魔族の集落予定地付近の氷も融けて無くなってますがね!
今度からはもっと指向性を持たせた魔法の使い方しなきゃな。って本気で思いました。
とりあえず自分のMPを確認すべく自身を完全鑑定。
「もうMP完全に回復してるやん・・・。あんまり休憩の必要ないかもな。
まぁサクサク進められるならそれに越したことはないからいいけどさ~」
まだ遠くの方では水蒸気が上がってますが、とっとと次の作業へ。
「とりあえず極岩石魔法で土壌改良してみるか。
氷が無い所を1mほど掘り返して栄養分とか追加して攪拌するイメージでいいか。
地形自体が変化するのは嫌だから、土壌改良した後は上から突き固める感じで同じ高さを維持しよう。
独自詠唱なら消費MPも増えるだろうし、イメージ通りの結果になるだろうからそっちで行こう。
ついでに詠唱短縮と破棄のレベル上げにもなるし。あぁ!あと鉱山は除外としてっと。」
ってことで。
『土壌改良!』
とりあえず結構な短時間でMPが全回復するのが判ったので、自重しません。
今の所、誰かに迷惑掛ける訳でもないし、魔物とか居ないだろうから。
万が一居たとしても、さっきの水蒸気で蒸し焼きになってるだろうし・・・。
独自詠唱完了と同時に足元の地面が隆起。で、すぐ陥没。元の高さに戻りました。
それが私を中心に円形波紋状に広がっていきます。
音的には“ガガガ・・・”とか“ズドドドド・・・”とか“バキバキバキ・・・”みたいな音が重なって聞こえるので、
ただただ五月蝿い感じ。
さっき指向性を持たせて~とか思ってたけど、とりあえず氷がなくなった部分が円形っぽいので今回は同じ感じで。
とりあえず暫く放置・・・。
・・・まだ遠くの方で“ズガバキ”聞こえてきますが、自身を完全鑑定してみたところ、
ほぼMPが回復してたので次の段階へ進みます。
同時進行出来るみたいだからさっさと済ませたいです。
MPの秒間回復量が501だったはずだから、大体15秒ぐらいでほぼ全回復する計算になります。
ちょっと時間をあければぶっ放し放題ってことですね。
ただ、今の段階だとリザアース上のマナが枯渇しないかが心配。今後は植樹していったら供給量が増えるはず。
さっきからやり過ぎな気がするので、もしマナ不足で魔法が発動しないなどの状態になったら、
一旦本体に戻って普通に寝るか~とか思ってます。 あともう1つ問題点が。
「俺、知識としては松とかカラマツとかモミとかの針葉樹は知ってるけど、どれがどれだか区別が付かないんだよなぁ。
都会っ子だったから目にする機会も少なかっただろうし。
特別植物に関する知識を持ってた訳じゃないから、ここから先は神のイメージ補完に頼った方が正解だろうな」
独自詠唱は決定なんだけど、そもそものイメージが弱いので神パワーによるイメージ補完に期待。
イメージ内容としては、太陽系地球における、松とかカラマツとかモミと呼ばれる植物を6~9m間隔で植樹する感じ。
一応幼木じゃなくて、ある程度成長した奴を希望。さらに低日照でも大丈夫なように。
あと低温耐性スキルも。
それから、それぞれの木々の間には地衣類が密生してる感じをイメージ。こっちは多分大丈夫。
最後に樹木だけは鉱山には生えないことも忘れずに追加。
それじゃ早速。
『緑化!』
リザ系銀河を創造した時みたいに光の輪が広がっていって、内側から木々やらがにょっきり生えてくる感じ。
久々の光景だし、結構美し不思議(脱字じゃありません)な光景なんで“お~”と思いながら眺め中。
まぁそれほど時間が掛からずに木々が密生してるので見えなくなりましたがね。それでもちょっと感動。
光の輪が通過した後は、地面が一面緑になってて木々の幹の茶色とあわさって大森林が誕生した感じ。
暫く余韻に浸ってたけど、“あ!”と思ってしゃっきりします。
「う~ん。いい光景だった。
いつまでこの強引な緑化が出来るか判らんが、リザアース上のマナが尽きるまで頑張ってみるか。
よし、とりあえず集落予定地へ移動してみて、そこを起点に極点を周回する感じで緑化して行こう。
とりあえず次からは混合魔法で土壌改良までやって~の予定通りの方針でやるか。
んじゃ、さっさと向かいますかね」
とりあえず上空100mほどまで上昇。光の輪が相変わらず緑を生み出してますが、とりあえずスルー。
で集落予定地方向に体を向けると丁度南極点にある火山が右手に見えます。
「先ずは集落予定地に行ってみるか『転移!』」
集落予定地上空に到着。ここは既に緑化済みっぽい。
一応地上に降りて確認確認~。
「ん~♪完全に森の中って感じだな。守護層も機能してるみたいだから寒くも無いし。
何か目印付けといた方が後々便利かな?
ん~何にしよう。あんまり目立つ目印とか人工物は配置したくないな。
・・・1本だけ巨木にしとくか?
他の樹よりも成長早くしたり、成長限界を上げたりしとけば、目印としては十分か。よし、その方向で」
とりあえず再び上昇。
集落予定地の大体中心あたりの樹を巨木にしたいので、平地部全体を見渡して中心付近に降下。
「ん~。単に目印なだけだからどれでもいいか。 とりあえず目の前のやつにしとこう」
樹の幹に触れながら、成長速度を倍に。樹木としての成長限界を3倍に。低温耐性スキルをMAXに。
あと、低日照に対する耐性の更なる追加と自然と枯れるまでは折れたり倒れたりしないようにイメージしつつ。
『付与!』
いい詠唱が思いつかなかったけど、光の粒子が幹に吸い込まれていったので成功したと思う。
「とりあえず目印は出来たかな?あとは延々と植樹作業か~。若干面倒だけど、まぁ仕方が無い。
火山を中心に時計回りでいいかな。常に火山が右手側に見えるように植樹していけば植え残しもないだろうし、
ある程度は極点を中心とした森林地帯になるでしょ。
作業終了の目安は・・・南極大陸全部埋め尽くすのは面倒だから、海岸線が見えるようになるまで。
か、リザアースのマナが尽きて魔法が打てなくなるまで。 とするかな。」
そうと決まれば再び上昇。
とりあえず見える範囲では光の輪が見当たらないので緑化は終わったっぽい。
あと、もう水蒸気も確認出来ませんでした。
「さてやるか~。でも作業再開の前にコーヒーもう1杯飲んどこっと」
そう思って水筒を取り出したはいいけど、蓋を開けた直後にコーヒーが凍結。
がっかりしながら再降下。
「あ~極点付近で、しかも上空だったら瞬間冷凍も当然か。
これからも休憩する時はいちいち降下しなきゃならんと考えると面倒だな。ま、仕方ないけど」
念のため地上でもう一度蓋を開けたら、ちゃんと暖かいコーヒーに戻ってました。
3口ほど飲んで蓋をきっちり閉めたのを確認してから再上昇。
「さて、始めますかね。
とりあえずはこの緑化済みの際まで『転移!』」