第219話 リザアース歴1100年1月2日(日) 経過報告会 その2
「さて、私からの報告としては以上です。それでは皆さんの方から、何か要望等々はありますか?」
「先ずは開拓担当を代表して、自分から要望を出してもいいでしょうか?」
エスさんがビール片手に挙手しつつ発言。
ちなみにエスさん。
教育関係が終了した後は、南西方向(一番最初に北極大陸の人類達が到達しそうなので、接触する前に先行して開拓する事にしました)に設置した“下位ギルド水晶”のサブマスターをお願いしてあります。
それほど人数を必要とする訳でも無いし、ご家族揃ってギルド職員になって貰いました。
以前はジンさんにサブマスターをお願いしていたのですが、「事務仕事なぞ旨みが無くてやってられんわ!」とか言ってかなり嫌だった模様。
まぁ事務仕事をしてても、今更スキルレベルが上がる訳でも無いし、皆お金には困って無いからねぇ・・・。
唯一意味がありそうな算数系スキルのレベルも、北極大陸の初期人類へ教育をしていた間にカンストしていたらしいので、確かに旨みは無いのですが・・・。
(文句も言わずに引き受けてくれたエスさんご一家に感謝ですな)
ギルド出張所(?)の実情としては、集落の開拓や帝都外城壁の建設等々の統括をお願いしている感じかな?
ついでに討伐依頼なんかも“神の依頼”として出ているらしいので、そっちはまぁ予定通りです。
(ちなみに、エッジ達が統括する帝都内の四方のギルド水晶の“神の依頼”には、討伐系の依頼が殆ど無くなったらしいです。
特殊世界樹の影響下にあるせいか、周辺に魔物が発生しなくなったのが原因だろうと思われる。
例外的に猛獣系や野犬類の討伐依頼がポツポツとある程度っぽいです。
まぁ帝都内での個人依頼はそれなりにあるそうなので問題は無いんだろうけど、ギルド職員の主な仕事が新規受付と日々の炊き出しになっちゃったのは大誤算でした。
もう今更なんですけどね・・・)
「どうぞ?」
「では・・・リューノさんに。と言うか、リュウノスケさんに幾つかスキルを追加して貰いたいのですが、お願い出来ませんか?」
「と、仰いますと?」
「ぶっちゃけ自分達が開拓作業をメインにしていると、スキルのレベルアップなんかの恩恵が殆ど無いんですよ。
ギルドの討伐依頼なんかが十分にあればいいのですが、実情としてはジンさん達の取り合いになっている状況です。
まぁ今は順番に持ち回りにして貰って対処して居ますが・・・。
そこで、開拓作業に関しても何かしらのスキルを追加して頂ければ自分達も遣り甲斐がありますし、ギルド依頼の消化にも拍車がかかるのでは・・・と。
それらに関する新しいスキルがあれば、自分達のモチベーションも上がりますからね。
結果的に、開拓作業に関しても“神の依頼”としてある事ですし、悪くはないと思うのですが?
具体的なスキル案としては、木材加工や石材加工。ついでに皮革加工なんかに対応可能なスキルがそうですね。
リューノさんだったら創造魔法で済ませてしまう事が可能なのでしょうが、自分達では手作業になってしまいますので、非常に効率が悪いんですよ。
まぁ土系魔法スキルと建築系スキルだけはレベルアップしていますから、それはそれで有難いのですが“もう少し旨みがあっても良いのでは?”と」
「ふ~む・・・なるほどです。確かに問題ですね・・・」
エスさんの仰る事も、ごもっとも。確かに俺の見落としなのかなぁ。
実際問題として、建築物なんかに使う木材加工の場合はいちいち作業するのが面倒なので俺は創造魔法で済ませちゃってました。
装備品用の皮革加工なんて特にそう。ちゃんと知識として皮革加工の知識を俺は持って居ないので、実際問題として俺だと“皮のなめし加工”とかは出来んのです。
で、今までは面倒なので、“神パワー”を信じて創造魔法でパパッと済ませて居ました。
(エスさん達が自前で皮革加工なんかが出来るのは、ちゃんとそれらの知識を持って居たせいみたい。
ま、他の神々も居るんだし、“理の神様”ことリアンさん方が居るんだから、当然と言えば当然の事。
なるべく他世界の知識の持ち込みは禁止させて頂いてはいるものの、「その程度だったら・・・」って事で、以前に許可を出しました。
んで、多分俺ら以外の人類達や他大陸の人類達の状況も、程度の差はあれど同様に出来て居るみたいなのは、“神パワーによる人類達への知識補完”だと思われる。
それぞれ独自に発見したのかも知れませんがね)
が、エスさん達も含む人類達の場合だとそういう訳にも行かない訳で・・・。
木材から建材等を加工するのもいちいち手作業で作業しなきゃならないし、皮革加工も同様に手作業らしいです。
これはレナ達からも確認を取ってみましたが、同様に“スキルとして有った方が望ましい”との意見でした。
「お父様?ついでと言っては何ですが、陶磁器・宝飾品加工に関するスキルの追加もお願い出来ませんか?」
エッジからも追撃。むぅ・・・どうも俺が思って居る以上に、俺の世界って色々と不便らしいです。
出来れば追加するスキルに関しては、アクティブ&パッシブなスキルを希望なんだとか。
要は品質等が下がっても構わないので、“短縮再現”みたいな事が出来る様なスキルが望ましいとの事。
“創造魔法頼り”の俺じゃぁ気付かない点だったので、確かに必要かもね・・・。
一応2次産業って言えばいいのかな?
エッジに詳しく聞いてみましたが、職業として木工職人・皮革職人・石工職人・陶器職人・宝飾職人といった職業に就いた人類は居るらしいので、“職業として”俺の認識としてはあったんだろうけど、スキルだけが抜けていた感じ。
確かに見落としと言われればその通りなので、これは追加せねばなるまい・・・。
「・・・うん。了解しました。後程追加しておきます」
「うむ!これでやる気が出るわい!」
ジンさんを始め皆さん多少は不満があったらしくて、早速祝杯を揚げて居られます。
う~ん。見落としっちゃ~見落としだったんだし、もっと早くに気付いて対処してあげれば良かったかな?
「他に問題はありますか?」
「自分からは以上です・・・と、言いたい所なのですが、やはり早く人類に引き継ぎをお願いしたい所ですね。
ギルド運営が片手間で済んでいるとは言え、これ以上国政に関与するのも何ですし、何より自分達もスキル上げやらをして、この世界を純粋に楽しみたいのですが・・・?」
「現時点で、どの程度人数が居住可能な状態になっていますか?」
「200人程度。100家族以下なら即居住可能な状態は整っていると思いますよ?
長屋的な簡易住居で良いのなら、優先して追加建設しても構いませんし。
城壁の方はリューノさんが作った基礎の上に5mほど、石材で城壁を築くだけでいいんですよね?
だったら・・・河からそれぞれ1kmほどは延伸作業は完了済みです。
後、利便性も考えて橋も幾つか建設済みですね。
他の門とか跳ね橋とかの建設にも着手していますし、城壁上でも狭間とか通路もある程度目途が立っていますよ」
「そうですか。一応順調な様ですね、有難う御座います。
う~ん・・・あのギルド水晶の管轄ってリルだったよな?
サブマスを含めたギルド維持要員の他に、一般人200人程度の移民団を編成可能かな?」
「・・・今すぐに、という事であれば難しいかも知れませんが、数ヶ月程度期間を頂ければ可能だと思います。
それよりも、ジン様方や特にエス様方と接触しても問題が無い様な人員の選定作業の方が時間が掛かるかと」
「そっか~、そっちの問題もあったか。
幾ら昨年末、一旦本体に戻って若返ったとは言え、人類に気付かれて面倒になるのも嫌だな・・・。
とりあえず、接触しても問題が無さそうな若年者達を優先して選定しといてくれる?
最低限“口が堅い”って事も、選定条件の1つとして加えておいて」
「はい。承知しました」
「と言う訳で、近々に・・・と言うのは無理ですがこんな感じで妥協して頂けませんか?」
「遅くとも、2年以内には引き継ぎ可能だと考えても構いませんか?」
「リル?」
「はい。それまでには十分に編成可能だと思います」
「了解です。なら自分達は構いませんよ。リルちゃんよろしくね」
「承知致しました」
「ではそういう事で。リル。お願いね。
他に問題はありますか?」
「じゃぁ私から1つ。
お願い・・・と言うか提案・・・かな?」
ウルズさんが挙手しつつ発言。ん~?一体、何だろう・・・。