第205話 原初の3柱揃い踏み 女神も居るよ その3
空気を読んでくれた始祖の神様を仲介として、今度はちゃんとご挨拶。
やっぱり男神様は“原初の3柱”の、残り2柱の方々だったみたいです。
先ずは“この世の理を司る神”様とそれに付き従う“芽生え(植物的な意味で)を司る女神”様。
“この世の理を司る神”様は“原初の3柱”のご長男に当たるそうです。
続いて“全ての物体を司る神”様とそれに付き従う“結実(果実的な意味で)を司る女神”様。
“全ての物体を司る神”様は、当然“原初の3柱”のご次男に当たるらしいです。
これに末弟である“全ての魂を司る神”様である、魂の神様を含めて“原初の3柱”って事に。
マジで“原初の3柱”が揃っちゃいましたな・・・。
それぞれの男神様に付き従う女神様方は、中級神の姉妹神様らしいです。
で、今までは寝たきり状態だった2柱のお世話係をしていたそうな。
“夫婦”って訳では無いらしいけど、恋人(?)と言うか、“内縁の妻”状態なんだってさ。
そーいやー地球にも、“芽生え”とか“結実”を司る双子の女神様が居た様な・・・。
確か、“春の女神”様と“秋の女神”様だったかな? まぁそんな感じらしいです。
引き続き、こちらの面々もちゃんとご挨拶をば・・・。
まぁ本当なら、こっちが先にご挨拶すべきなんだろうけどね。
“やらかした方が悪い”って事で、始祖の神様の指示で私達のご挨拶は後からになりました。
で、軽く挨拶を済ませたら、客室の2人部屋へご案内。
改めて合流したら、始祖の神様が『さっきの事を水に流す為に、裸の付き合いをするぞい!』
って言い出したので、そのまま男連中はお風呂(風呂酒)へ。
まぁまだ昼前だし、年越し蕎麦の準備も済んでいるから別にいいけどさ~。
残った女神様2柱は、美の神様(今はディーさん)とは面識があるらしいので、
主な対応をお任せした上で、ルナ達にも接客をお願いしておきます。
風呂酒開始早々に、始祖の神様から“無礼講”が宣言されたので、
陸くん達こと、ランドくん達をも巻き込んで宴会開始です。
『・・・リュウノスケ殿。先程は失礼した。心よりお詫び申し上げる』
「もう謝って頂かなくても大丈夫ですよ?分かって頂けたのなら、それで結構です。
私の方こそ“原初の3柱”である“この世の理を司る神”様方に対して、
不遜な態度を取ってしまい、申し訳ありませんでした。
それと、私に対しては“殿”なんて不要ですよ?呼び捨てでも構いませんから」
『いや、先程の態度は我らの恩人に対して取るべき態度では無かった。重ねてお詫び申し上げる』
「いやいや、もう十分ですって。お気になさらず・・・」
『しかしだな・・・』
『いい加減にせんか。酒が不味くなるわぃ。双方が詫びて居るんじゃから、それで良しとせい』
『ですが最高位神様・・・そう申されましても・・・』
『兄上様方。もうその辺にした方が宜しいかと。
これ以上はリュウノスケくんも望んで居りませんし、最高位神様も望んで居られません。
むしろ、最高位神様のご意向を蔑ろにされるおつもりですか?』
『そうでは無いが・・・』
『では・・・そうじゃな。“この世の理を司る神”も“全ての物体を司る神”も、全員に酌をせよ。
リュウノスケも2柱に酌をして、それで手打ちとする。それでどうじゃ?』
「私はそれで構いませんよ?
って言いますか、魂の神様や陸くん達をも含めてですが、私が酌をする事なんていつもの事ですし。
つーか逆に、始祖の神様ってば今まで手酌で飲んだ事ってありませんよね?
始祖の神様にしてみれば、いつも通りの事なんじゃ・・・」
俺の“始祖の神様”呼びに、若干目つきが鋭くなる“この世の理を司る神”様方。
『がっはっは。まぁ細かい事は気にするな。
“この世の理を司る神”も“全ての物体を司る神”も・・・分かっておろうな?』
始祖の神様がそんな態度を目聡く気付いて、逆に睨み付けられて“しゅん”とする2柱。
『『承知致しました・・・』』
で、お互いに酌をし合ってとりあえず手打ちって事になりました。
これ以上引っ張るのも何だしね。 って事で、いい加減俺もぶっちゃけます。
「“この世の理を司る神”様も“全ての物体を司る神”様も・・・。
いい加減呼び辛いので、“魂の神様”みたいな略称でお呼びしても構いませんか?」
『む?お主も上級神だと聞いて居るし、恩人でもある。我らは構わぬが・・・』
「いや、私からだけで無く、ここの全員が呼ぶ事になります。それはご了承下さい。
それと、もうご存知かも知れませんが、ここでは他世界なんかでの上下関係の持ち込みは禁止です。
口調とかも、もう少し砕けた感じでお願い出来ませんか?」
『『むぅ・・・それは・・・』』
『兄上様方。抵抗しても無駄ですよ?
なんせ、リュウノスケくんは“最高位神様”こと、“始祖の神様”公認の友人関係ですからね。
このリュウノスケくんの世界で、リュウノスケくんの意思に反する事は、
“最高位神様”のご意向に反する事になりますよ?』
魂の神様らかタイミング良く助け舟が入ったので、
俺と始祖の神様は“ガシッ”と肩を組みつつニヤニヤしながらお2柱を見つめます。
『『むぅ・・・致し方あるまい・・・』』
マジで“仕方無く・・・”って感じですねぇ。まぁ慣れて貰うしか無いのですが。
『しかし何故、上級神とは言え・・・言い方は悪いが、ただの1柱が最高位神様の友なのだ?』
と、“全ての物体を司る神”様。
『兄上様? 正直な話、最高位神様と“半裸”で“くんずほぐれつ”する気は、おありですか?』
魂の神様の発言を聞いて、露骨に嫌そうな顔をするお2柱。そんなに嫌なもんかねぇ?
俺としては、近所の“仲良し爺ちゃん”と相撲する程度の事だった記憶なんだが。
まぁ“半裸でする”ってのは、確かにちょっと抵抗があるかも知れんが・・・。
あ。何か少しだけ思い出したけど、確かあの時は仕方が無かったんだよなぁ・・・。
『『むぅ・・・それはさすがに・・・』』
『えぇい!なんじゃその顔は!
ええわいええわい! ワシにはリュウノスケが居るんじゃからな!お前らなんぞ知らんわい!』
始祖の神様がちと可哀想ですが、俺を巻き込まないで欲しいです。
まぁ有難い事なんだけどね。“虎の威を借りる狐”じゃないけどさぁ。
『決まりだね。じゃぁリュウノスケくん?これから何て呼ぶことにしようか?』
「う~ん。“この世の理を司る神”様は“理の神”様とかで如何でしょうか?
で、“全ての物体を司る神”様は“万物の神”様って事でどうでしょう?
って言っても、前に魂の神様がご提案して頂いたお名前なんですけどね」
『ん~。それで良いんじゃない? 兄上様方。宜しいでしょうか?』
『『仕方が無い・・・承知した・・・』』
「後は口調をもう少し砕けた感じにして貰う事だけですかねぇ」
『そっちは追い追いかなぁ。兄上様方は、誕生してから最近まで、ずっと寝たきりだったんだしね。
少し活動出来る様になってからも、始祖の神様の風呂酒に付き合っていた程度だったから、
あの中では立場的には圧倒的に上位だったしね。 “話す”って事に慣れて無いんだよ。
まぁもう暫くの間だけでも、大目に見ててよ』
「あぁ。そういった事情があったんですね。了解です。
だったらまぁ仕方が無いですね。 徐々に慣れて貰えさえすれば、私としては構いません」
『『感謝する』』
「いえいえ。むしろそちらの事情も知らずに言い出した事ですからね。お気になさらず。
・・・所で、話を蒸し返すつもりは無いのですが、何故来られて早々にお怒りだったんですか?
何かお気に障る様な理由でもあったんでしょうか?
あぁ!これは単純に今後の為にお伺いしたいだけであって、他意はありませんのでご理解下さい。
“私達の対応の何が悪かったのか?”ってのを、単純に知っておきたいだけですので。
今後も・・・まぁ無いとは思いますが、似たような事があれば、参考になりますから」
『その件か・・・。むぅ。何と言って良いのやら・・・』
『兄上様?別に今更隠す様な事でも無いのでは?
実際リュウノスケくんから聞いて来た事ですし、正直に答えられても問題御座いませんよ?』
『そうか・・・では正直に答えよう。
先ず第一に、最高位神様が共にご光臨されると知った上で、皆が跪いて居なかった事。
次に、下級神とは言え、それらを差し置いて・・・人類であるリュウノスケ殿が口を開いた事だな。
最後に、“原初の3柱”である“全ての魂を司る神”に対する口の利き方が気に入らなかった事。
・・・それらが理由となる。リュウノスケ殿の世界では、
“他世界での上下関係を持ち込んではならない”事を知らなかった事が、一番の理由ではあるが』
恨めしそうに魂の神様を睨み付ける、“この世の理を司る神”様こと、理の神様。
『アハハハ・・・』と、乾いた笑いしか返せない、魂の神様のせいって事ですかね?
「なるほど。1点目はともかく、2点目に関しては私にも落ち度がありましたね。
いつも通り、神体じゃなくて分体でお出迎えしちゃいましたからねぇ・・・。
あ!そうか。って事は、あの“如き”の中にはルナ達やレナ達神が含まれて無かったのか。
ん~。だったらちょっと過剰反応しちゃったのかなぁ・・・。
問答無用で“神威”かましちゃったしなぁ。結果的にだけど、遣り過ぎたな、あれは」
『あ~あの威圧じゃな? にしても、リュウノスケも益々規格外になって居るのぅ。
殆ど力を持って居らんとは言え、“原初の3柱”相手に圧倒するのじゃから、大したもんじゃわい』
『いや、始祖の神様?アレって結構洒落になっていませんでしたよ?
中級神ですら失神しちゃいましたしねぇ・・・。 私達にもとばっちりが来ましたし』
『そうじゃなぁ・・・』
「あ~それに関しては、済みませんでした?」
『何でやらかした本人が疑問形なんじゃ!』
「いや、まぁぶっちゃけますけど、中級神の女神様2柱は置いておくとして、
上級神であり“原初の3柱”のお2柱だったら、“アレくらいは平気かな~?”と・・・ねぇ?」
『あ~。まただけど、リュウノスケくんの認識の相違だねぇ。
それに、今の私達って本当の意味では“上級神”って呼べないしね。特に兄上様方はそうだし』
「ん?どういう事です?」
『ん~とねぇ。私や始祖の神様が分身体だって言うのは、前に話した事があったよね?』
「ええ」
『分身体って言ってもね?この世界の分体みたいに、
単純に“コピーする”って訳じゃ無いんだよ。
当然、ヒロアキくん達やミツハルくん達の分身体もね?』
「あれ?そうなんですか?」
『うん。今のヒロアキくんやミツハルくんって、どんな感じなの?』
「今の私は4対6ですね。ミツハルさんは?」
「自分は今、8対2ですね。特には自分の世界でやらなきゃいけない事もありませんし」
「ん?何ですか?その4対6だの8対2だのって」
『神としての力の割合って感じかなぁ。まぁ自我の割合って言った方が理解しやすいかも。
ちなみに、私や始祖の神様は5対5ね?』
「へぇ・・・そんなのがあるんだ・・・」
『そそ。んで、兄上様方の場合は1対9なんだよ。ちなみに今、ここに居るのは1の方ね?
まぁそれは、兄上様方は“神としての役目”があるから、今は仕方が無い配分量なんだけどね?』
「じゃぁ単純に、今の理の神様や万物の神様って、
今は“本来のお力の1割しか持って居ない”って事でしょうか?」
『まぁその認識で大体はあってるよ。
とは言っても意識の共有は可能だから、その時々で任意変更は可能なんだけどね?
まぁ兄上様方の場合は神としての役目があるから、変更するのは難しい所なんだけどさ』
「へ~。あ!そっか。だから“威圧慣れ”していないはずの陸くん達も大丈夫だったんだ!」
『いや、それとはまた、ちょっとだけ別の話になっちゃうんだけどね?
上級神のたった1割とは言っても、そこいらの下級神並程度の力は十分に持って居るから。
その辺は“曲がりなりにも“原初の3柱”は別格だ”って話なんだけど・・・。
まぁルナちゃん達を基準にはして欲しくないんだけどね。一般的な下級神の話だからね?
それを踏まえた上で、単に兄上様方が“威圧慣れ”していないだけだと思うよ?
何せ誕生してから最近まで、寝たきり状態だった訳だしね』
「あぁ、確かに。そういう事だったんですね・・・」
『で、じゃ。ちとリュウノスケに頼み事があってのぅ』
「何でしょうか?」
『理の神らにも、この世界で過ごす事を許可して貰えんかの?
勿論、“来訪者の分体として”をも含んだ話なんじゃがな?』
「は?なんでそうなるんですか?」
『それはねぇリュウノスケくん。
ぶっちゃけるけど、神としての力を増やしたいんだよ。兄上様方の』
『『リュウノスケ殿。宜しくお願い申し上げる』』
俺に頭を下げてくる、お2柱。
「いやいや、ちょっと待って下さいよ!」
『何、今更4人程度増えた所で、大した手間では無いじゃろ?
リビングやらも既に拡張してくれた様じゃしのぅ。
ついでに言うのなら、報酬として“モノリスの書”の強化も対価として考えて居る。どうじゃな?』
「いやいや、そもそもの前提条件がおかしいですって!今日来られたばかりの神様でしょうが!
失礼とは思いますが、ついさっきまでこの世界のルールなんかも知らなかった神様方なんですよ!?
言葉が悪いのは承知の上で言わせて頂きますが“それらを承知の上でそのお話を受け入れろ”と?」
『うむ。お主の言う事ももっともじゃがな? “それらを承知した上で”じゃ』
「大体、“神としての力を増やしたい”からですって?
そんなの、この世界でなくとも出来る事なんじゃないんですか?」
『その辺は私達が“来訪者の分体”を欲した理由と同じなんだよ。可能性の話。
ぶっちゃけ、ここほど兄上様方の鍛錬場として最適な場所って無いんだよねぇ。
それは、美の神や従や接を預けた時と全く同じ理由だね。
しかも確実に、神としての核の上昇も見込める。格の方は置いておくとしてもね?
結果的には、“神としての力の増大も見込めるのでは?”って理屈なんだけどさぁ。
どう? この理屈って破綻していると思う?』
「・・・いや、その理屈に対しての反論は・・・特にありませんが・・・」
『だよね? 何たって、史上最速で上級神を誕生させた世界なんだしね?』
「いやいや、それでも!」
『ではリュウノスケよ?ちと聞くが、
“ワシらが“来訪者の分体”として過ごす初期段階”を、お主はどう予定しておるのじゃ?』
「それは・・・当面は、この居住区内で基本的なスキルのレベル上げをして貰うつもりですが?」
『じゃろ?
じゃったら、まだまだこの世界の事を知らない理の神らが此処に居ったとしても、問題なかろう?
時間なら“神の試練”じゃったか? それが終わるまでに20年ほど掛かるんじゃろ?
つまり、“少なくとも数年程度は、この居住区内で生活する必要がある”と言う事じゃろう?
それらを踏まえた上で、何処に問題があると言うんじゃ?』
「それは・・・そうかも知れませんが・・・」
『何、この世界のルールやらも、ワシらが教える。
と言うか、長年この世界で過ごしてきた魂の神が“教える事を請け負う”と言うて居る。
魂の神よ。そうじゃな?』
『はい。その責は間違いなく私が負います。何かあったとしても、私の責任で構いません。
ねぇリュウノスケくん?この世界でのパーティーメンバーの最大人数って何人だったっけ?』
「それは・・・最大6人までですが、それが何か?」
って言うか、魂の神様って知ってて聞いてるよねっ!?
『私・美の神・理の神様・芽生えを司る女神・万物の神様・結実を司る女神・・・。
ほら、それぞれの分体で丁度6人になるじゃない?
将来的にサポートが必要な場合があったとしても、ちゃんと私達が付いて行ける。
で?他に問題でもあるの? って話になってくるよね?
客室も現状だと余っているみたいだから、理の神様達や万物の神様達の居住に関しても問題無し。
結果的にだけど、“来訪者の分体”を育成する事がメインだから、当面は此処で過ごす事になる。
本体が居る場所も、客室があるんだから問題無いよね?
・・・ほら?改めて聞くけど、一体何処に問題があるって言うのさ?』
反論の余地が・・・無い・・・だと!?
突然の展開に“オロオロ”していると、ミツハルさんに“チョンチョン”と肩をつつかれました。
で、升酒をちょいと掲げつつ、“ニヤリ”と一言。
「リュウノスケさん。もう完全に詰んでますよ?」
うがぁぁぁぁぁっ!!これだから嫌いなんだよっ!!頭脳派はっっっ!!!




