第193話 異世界冒険者生活7日目 その2
ヒロアキさんが消えた後に残されたポータルを使って、さっさとダンジョンから脱出。
んで、荷物持ち役のコリン以外は送還してっと。
ギルドのカウンターへ行く前に、ちらっと食堂スペースを確認です。
う~ん。残念ながらカイオスさん達は居ないみたい。
その代わりに、2パーティーぐらいの人達が酔い潰れてグースカ寝てました。
他にはウエイトレス役のギルド職員さん2人が、何か飲みつつ談笑しながら休憩してたぐらいです。
実に閑散としてますなぁ・・・。
ちらっと時計で確認したら午前1時。あ~、まぁそりゃ仕方がないか。
攻略情報とかをカイオスさん達に直接伝えたかったんだけどねぇ。
まぁ情報の占有ってのも問題がありそうだし、ギルド側へ情報を流すのと纏めちゃいましょう。
改めてギルドの受付カウンターに行ったら、丁度良い事にカタリーナさんが居ました。
今日は夜番なのかな?
他にもお2人ほど受付嬢が居ます。めっちゃ暇そうにしてるけどね・・・。
「こんばんわ。
カタリーナさん、夜番ですか?お疲れ様です。 で・・・今、大丈夫でしょうか?」
「あら!リューノ様。お疲れ様です。今お戻りに?」
「はい。後“様”じゃなくて、気軽に“さん”呼びでお願いしますね」
「承知しました。それと、ここ数日お見掛けしなかったので、カイオス達も心配して居ましたよ?」
「ご心配をお掛けしたみたいですみませんでした。この通り、無事に五体満足で帰って来ましたよ?
ついでに色々とお土産話やらもありますが・・・。
え~っと、どうしようかなぁ・・・」
「何でしょうか?」
「カイオスさん達に伝言ってお願い出来ますか?
ついでにギルドや他の冒険者の方にも伝えても構わないのですが・・・?」
「言伝程度でしたら個人的に承りますが?ギルドや他の冒険者の方へもですか?」
「まぁぶっちゃけ、オリジーのダンジョンの攻略情報ですね。
後、この世界の創造神に関する情報・・・かな?」
「・・・は?」
「あ!その前に大事な事を忘れてた!
え~っと、確認なのですが・・・。
ダンジョン内で鉱石類を“持ち帰らなかった”場合って、何らかの罰則ってありますか?」
「へ?・・・いえ、罰則等は御座いません。
基本的にはダンジョンから持ち帰った鉱石類を転売等した場合のみの規定ですので、
“持ち帰らなかった”あるいは“持ち帰られなかった”場合の罰則は御座いませんよ?
それよりも、先程創造神様に関する情報と聞こえた気がするのですが・・・?」
・・・創造神様ね。
まぁヒロアキさんってばこの世界の神様だしな。言葉遣いには気を付けよう。
「まぁまぁ。それは今からお話します。
それじゃぁ・・・お隣の受付嬢さんに鉱石類の買取をお願いしておいて、
その間にお話ししましょうかね。 それでいいですか?」
「はい、宜しくお願いします。 ゴメン。悪いけどお願いね?」
カタリーナさんが隣に居たお2人の受付嬢さんに軽く詫びを入れつつメモの準備を始めたので、
俺とコリンも一旦受付嬢さんの所へ鉱石満載の袋を運んだら、とっととコリンを送還。
長話になりそうなので、俺も椅子を持ってきてっと。
「・・・んじゃ、いいですか?」
「はい、どうぞ・・・」
「それじゃぁ先ずは攻略情報と言うか、攻略の必須条件からかな・・・」
とりあえずカタリーナさんに思い出せる限りの出現モンスターの情報と、特徴なんかを説明。
で、改めて範囲攻撃の有効性を十分に解説した後に、後々魔法攻撃だけだと詰む事も説明します。
攻略情報の説明内容としては、こんな感じです。
150階層までのモンスターを相手にする場合、数で潰される危険性がかなり高いので、
可能な限り早い段階で範囲攻撃による殲滅力が重要。勿論その為に、高火力である事も。
これは相手取るモンスターの数が増えだす50階層辺りから有効なので、
最初はその辺から慣らして行った方が良い。
それか、最初から範囲魔法攻撃による飽和攻撃が有効。だだし、それだけだと後々詰みますが。
151階層以降になると、魔法攻撃の効きが極端に悪いモンスターが出てくるので、
近接物理攻撃手段の確保が必要。 当然、その近接攻撃も高火力であるほど望ましい。
剣等による斬撃や刺突攻撃だけでなく、格闘戦による打撃攻撃なんかも有効。
以上の条件を満たす為に、パーティーの個々人が、
ある程度自衛出来るぐらいの近接攻撃能力(迎撃能力も)&範囲攻撃能力を持つ事が、
ダンジョン攻略には必須だと思われる。
ついでに追加して、個々人でも回復手段を持つ事。出来れば蘇生魔法があれば万全。
ちなみに151階層からはトラップ類が一切無い模様。
個人的な意見としては、パーティーでの適正階層より20~30階層浅い階層で、
ソロで余裕を持って且つ、1日で10階層程度を殲滅攻略できる様であれば、
それより少し先辺りが適正階層だと思われる。
パーティーでの攻略には多少迂遠に思えるが、50階層から60階層の殲滅連戦周回が有効。
それに慣れてくれば、1日での踏破階層数を増やす方向で徐々に実力を伸ばした方が結果的に早い。
それすら慣れてきたら、10階層進んでも連戦が可能だと思われる。
・・・以下その繰り返しで、多分オリジーのダンジョンの完全踏破は可能。
ただし!131階層へのポータル解放戦からは初見殺しが出てくるので十分に注意!
・・・とまぁ、大体こんな感じ・・・なんだけど・・・。
俺が「90階層からのモンスターですが・・・」とか言い始めた辺りから、
カタリーナさんてば処理限界を超えたのか、終始無言でひたすらメモる事に専念してました。
どうやらカタリーナさんの常識をブチ壊したみたいです。
「・・・大体攻略情報としてはこんな感じですね」
「・・・えっと・・・何と言っていいのやら・・・。
とりあえず・・・リューノさんの今のギルドランクってお幾つですか?」
「“Zex”ですね。160階層で現状では終わりみたいですよ?
“創造神様が、新たな階層を追加されなければ”ですけどね?」
ギルドカードを提示しつつ、カタリーナさんにも踏破階層をお見せしておきます。
「では、リューノさんは“オリジーのダンジョンを完全踏破された”と?」
「今の所、そうなんじゃないですか?」
「それで本題なのですが・・・創造神様の情報と仰って居られましたが?」
「あぁ!その件ですね。ん~何と言えばいいかなぁ・・・。
まぁぶっちゃけますと、160階層を突破した先で会ったんですよ。創造神様に」
「「「それはっ!!本当ですかっ!?」」」
隣の受付嬢さん達も聞いてたみたいです。 まぁいいけどね。
「ん~。まぁ信じて貰える様な物的証拠はありませんけどね。
で・・・とりあえず会えたら、望みを1つ叶えて貰えるみたいです。
ただし、代償が必要みたいですけどね」
「・・・」
「リーナ?買取鉱石の中に、私達でも見た事が無い鉱石塊があるわ。
鑑定してみたけど“オリハルコン塊”みたい・・・。コレって、伝説と言われている鉱石よ?」
丁度いい具合に、買取をお願いしていた受付嬢さんから追加情報が。
そういや~オリハルコン塊って151階層からのドロップだったっけ。
あぁ、正確に言うなら150階層でのポータル解放戦で初めて拾ったんだっけな。
ま、“伝説と言われている鉱石”って言うぐらいだし、物的証拠にもなるでしょう。
「あ、そうそう。
その代償ですが、80階層からの召喚石でもいいみたいなので、
もし望みを叶えて欲しくてダンジョンに挑むのならば、売ったり使ったりしない方がいいですよ?
それもカイオスさん達に伝えておいて下さい」
「・・・伝承では、確かにオリジーのダンジョンの最奥には創造神様が居られ、
代償の代わりに願いを聞き届けて頂ける・・・と、伝え聞いて居りましたが・・・。
まさかそれが本当だったとは・・・」
「あ!ただし、死者蘇生とかはダメみたいですけどね。
その辺の線引きは、私じゃ分かりませんけど」
「「そっ、それで!リューノ様は何を望んだのですかっ!?」」
買取をお願いしていた受付嬢さんの達の方が、カタリーナさんよりも復帰が早かったみたいです。
別にハモらなくても・・・。
「ん~。それは秘密です」
「「そうですか・・・」」
と言うか、これからヒロアキさんが色々といじると思うし、迂闊な事は言えません。
「とまぁ、大体こんな感じです。
で、カタリーナさん。カイオスさん達への伝言の件はOKですか?」
「・・・はい。確かに承りました。
これらの情報はギルドで流しても構わないのですよね?」
「はい、構いません」
「ところで・・・今更なのですが、どうしてカイオス達本人に伝えないのでしょうか?
明日の朝には来ると思うのですが?」
「あ~。それは私が望んだ事と関係があるので、言えません。
と言いますか、ちょっと確かめたい事があるんですよ。
情報提供している時間も惜しいんですけどね?まぁそこは最低限でもお付き合いしますが、
それさえ済めば、私はすぐにでもこの街を立つつもりです」
「「「えっ?」」」
「すみませんね。ちょっと本当に急いで確認したいものですから。
ところで、この時間ってこの街の門って開いてます?」
「行商人などが通りますので、開いてはいますが・・・。それほどお急ぎなのですか?」
「まぁちょっと・・・」
「リューノ様。
申し訳御座いませんが、もう少し・・・いえ、もう数日お時間を頂けないでしょうか?
私共では“オリハルコン塊”の取り扱いをした事が御座いませんので、
今すぐに適正な買取価格が決められません。
ギルド長や鍛治組合等と相談の上、価格と決めねばなりませんので、お待ち願いたいのですが?」
「あぁ!それなら構いません。
もうお金には全く不自由していませんので、全部ギルドに寄付しますよ。
言い忘れていましたが、151階層ぐらいになると雑魚でも大白金貨をドロップしますので。
・・・ほら」
パンパンに詰まった小銭入れ一杯の大白金貨なんかを見せてアピール。
「「「・・・」」」
カタリーナさん他は目を見開いて、お口を“ぽか~ん”。
皆さんそれぞれ個性的な美人さんなのに、そんな顔してちゃ台無しですよ?
まぁ今の俺にとっては好都合。さっさとお暇しますかね。
「それじゃ、短い間ですがお世話になりました。
カイオスさん達やポントスさんにも宜しくお伝え下さい。でわっ!」
カタリーナさん達が復帰する前に、畳み掛ける様に言うだけ言って、さっさとギルドから脱出。
月明りの中、そのまま街の門まで直行。
入る時はお金を取られたけど、出る分には問題無いみたいなので衛兵さんに声を掛けておきます。
“もうこの街には居ませんよ~”ってアリバイ工作ですな。
てって~と軽くジョギング程度の速度で走り、城門が見えなくなった辺りで一気に加速。
かなりオリジーの街から離れてから、人の気配が無い事を確認。
んで、魂の神様へ【今から帰ります~】と念話連絡したら即転移。
「と~ちゃ~く。
おぉぅ。ヒロアキさん家の辺りだと、もう夜明け前なのね~。ちと遅くなったか?」