第187話 異世界冒険者生活4日目
今日も早朝から太極拳。
目標にしている“1週間以内に完全踏破”の期間が、半分を切りました。
そろそろ急いで、本格的に攻略に専念せねば・・・。
結局昨日の話し合いでは、俺とカイオスさん達とで平行線でした。
効率重視な俺と、安全第一なカイオスさん達。
まぁ言い分は分かるんだけどなぁ・・・“勿体無い”としか、言い様がありません。
安全第一なのは大切だとは思うけど、安全マージンも取り過ぎたら害悪だと思うんですがねぇ。
その辺は、俺やヒロアキさん達が“不老不死”となった弊害なのかも知れません。
死に戻りなんて無い世界なんだし。
そんなこんなでいつものルティーンワークを済ませたら、
一昨日と同じくカタリーナさんと朝食です。
相変わらず酔い潰れているカイオスさん達は放置の方向で。
あと“蟒蛇”なカタリーナさんに突っ込みは入れない方向で。
朝食が済んだら、さっさと召喚獣達を召喚。ダンジョンに潜ります・・・。
***第60~70階層***
ヌルッと踏破。相変わらず単純に数が多い以外は問題無しです。
新装備の調子も確かめてみたけど、特に問題無さげ。
つーかまだまだ俺って範囲魔法攻撃以外で被弾していないので、防具に関しては分かりません。
得物もファルシオン→片刃直刀に変更になっただけなので、そんなに違和感も無いですし。
“叩き潰す”よりも、“斬る”攻撃に、より特化したぐらいかな? 首狩りが捗ります。
出てくるモンスター達も、51階層からの面子にリザードドラゴンが追加したぐらい。
結局“纏闘気術”による範囲攻撃が有効でした。実に良い感じ。実入りも問題無しです。
少し早めに召喚獣達と昼食を済ませて、71階層へのポータル解放戦へ。
と・・・今までと同じ面子? ただ、リザードドラゴンが多くなった感じでしょうか?
正直、昨日感じた嫌な予感が的中した感じ。
71階層からが本番かと思って居たけど、もっと先が本番なのかな?
***第71~80階層***
もうね。嫌な予感が的中していると思っていいと思う。
個々の力量は上がっているものの、出てくるモンスター達は相変わらずの面子。
数がさらに増えただけって感じですかね? リザードドラゴンは確実に増えています。
その分、経験値効率と金銭効率が跳ね上がっていると思われる。
リザードドラゴンからは白金塊もドロップしましたし。
結構な数の他の鉱石類も、フロアで確保出来ています。また小白金貨単位での収入が確定ですね。
つーかさ?
白金塊がドロップして思ったんだけど、リザードドラゴンが白金塊をドロップするのなら、
これ以前の階層で金塊や銀塊、銅塊やそれらの鉱石類なんかのドロップもあったんじゃねぇの?
大体装備品に関しては、スケルトンからファルシオンをドロップして以来、皆無なんだが・・・。
どんだけレア運無いんだよ俺・・・。
・・・で、ふと疑問に思う。
各都市で流通している、各硬貨の兌換率や含有量って同じなんだろうか?
小銅貨に関しては冒険者の質や数によって左右はされるだろうけど、問題無く供給される。
が、それ以上の貨幣って、冒険者の質とダンジョンの難易度によってかなり左右されるんじゃね?
それって、インフレとかデフレに簡単に傾く事になるんじゃ・・・?
まぁその為に“鉱石類はギルドへの売却義務”があるんだろうけどさぁ。
今後、俺が大量に高額貨幣を持ち込んだら、この街の貨幣経済に問題が起きるんじゃ・・・?
・・・まぁ深く考えるのはよそう。
どうせ“オリジーのダンジョン”を完全踏破したら、俺はこの世界から去る事になるんだし。
それよりも、今まで以上に1度に遭遇するモンスターの数が増えてきているせいか、
またまた召喚獣達のレベルUPのペースが早くなっているのが問題かな?
大体1フロアで1レベルUPペースに戻りました。
多分80階層のフロア殲滅時点で、55レベルに到達しているはず。
しかし、残念ながら体格の増加以外に変化無しです。スキル習得も進化も無しでした。
特にベロスなんだけど、マジで進化先を間違えたのかも知れません。
これじゃ、三頭犬にならないじゃん!名前負けしちゃうじゃないのさ!
所で・・・コレってさ?
やっぱり“此処までで、ちゃんとレベル上げをしとけよ?”的な事なんじゃないかな?
とりあえず81階層へのポータル解放戦で様子見をしてみますかね。
初見の相手が出てくる様であれば決定と言う事で、昨日に続き再度のレベル上げをしましょう。
で、ポータル解放戦。
案の定初見の相手でした。双頭犬や合成獣系統のモンスター達。
数は少ないけど、兎に角素早い! まぁ“今までのモンスター達に比べれば”の話なんですがね。
俺には余裕で対応可能な範囲なのですが、範囲魔法攻撃やブレス攻撃もしてきやがります。
昨日召喚獣達のレベル上げをして居なかったら、やばかったかも知れません。
これは確実に“再度のレベル上げが必須”だと判断しました。
つー事で、次のフロアまで様子見&解放したら戻る事にしましょうかね。
既に背負い袋も2つ半ほどが一杯になっているし。
ちなみに、双頭犬と鷲獅子の召喚石もゲットしました。が、これは売りません。
確実に高値で売れるだろうから儲かるんだろうけどね。
ぶっちゃけ、バランスブレイカーになりかねないほど強力な召喚獣になると思うので。
戦争なんかで使われる様になったら、またヒロアキさんの世界が混乱しかねないですしね。
これは、今後得られるであろう召喚石に関しても同様にするつもりです。
と言うわけで、そのまま俺の“亜空巻収納”へ直行~。
まぁ鉱石類に関しては、ちゃんとギルドに売りますがね。
ついでにとうとう双頭犬達から大銀貨が取れました。お金稼ぎが加速する予感・・・。
つーか、もう俺ってお金には困って無いのですよ。むしろ、今は使い所が無い感じ?
今回結構な額の収入があったとして、昨日に続いて装備を更新するとしたら金属装備になる訳で。
それって昨日の感じだと、小柄な俺に合うサイズがあるかどうかが問題なのです。
実は昨日もその点で色々と問題があったのです。小人サイズだと小さ過ぎだし。
(小人の身長は120~130cmほどなのです。俺、一応160cm弱なのでね)
割と簡単に調整の利く皮鎧が、今の俺には一番合ってます。何しろ軽いしね!
買い替えるとしたら、得物ぐらいかなぁ・・・でも結構気に入ってるんだよねぇ。今の直刀。
忍者刀っぽいし、切れ味も悪く無いし。
ミスリル銀製の装備って、魔法との親和性が高いのがウリだけど、俺って魔法を使えないしね。
だったら余り意味が無いのですよ。剛性的には鋼鉄製の方が若干上みたいだし。
・・・ちょっと気になったので、双頭犬の召喚石を鑑定してみた結果がこちら。
名前:双頭犬喚石
重量:10g
特殊効果:魔力を纏って握り潰す事により、ドッグの異常進化である双頭犬が召喚可能となる。
双頭を持つ異形のドッグであり、特殊能力としてブレス攻撃や魔法攻撃等が可能。
当然、本来持って居る高い索敵能力や探査能力、近接戦闘能力にも優れ、素早さや筋力値も高い。
非常に強力な召喚獣であり、召喚者には相応の魔力消費が必要となる。
ヒロアキ神の統治する世界の限定品。召喚もヒロアキ神の世界内限定である。
・・・ドッグの異常進化・・・だと?
何それ!あの時の進化先選択の中には“異常進化”って無かったじゃん!
って事は何ですか? あの時、“進化させない”を選択するのが正解だったって事!?
そんなもん分かるかーっ!!
この鬱憤は、次の階層で暴れて晴らそう・・・。
***第81階層***
先のポータル解放戦での面子が相手。
手を抜くと範囲魔法攻撃やブレス攻撃で召喚獣達が即ピンチに陥るので、手が抜けません。
モンスターの数自体は多くないので、本気で即殺しまくって終了。ポータル解放戦も同様でした。
むしろ憂さ晴らしで暴れまくったのですが、若干まだ足りない感じ・・・。
ちなみに双頭犬達も魔銀塊をドロップする模様。
って事は、この世界にもオリハルコン的なもっとレア度高めの鉱物があるだろうし・・・。
やっぱりこのダンジョン。まだまだ続くものと思われる。急がねば・・・。
とうとう俺もギルドランクが“B”になりましたね。ちょっと時間が掛かり過ぎかな?
背負い袋3つが、ほぼ一杯になってるし、気分を落ち着ける為に一旦帰還しますかね~。
82階層へのポータル解放戦後、洗浄&乾燥してからコリン以外を送還してダンジョンから脱出。
すぐにギルドの受付で鉱石類の売却処理&送還。
昨日同様に売却品の数が多いので、待ち時間の間にかなり早めの夕食へ。
で、売却金額。
拾った小銭の換金分も含めると大体小白金貨6枚強の収入になりました。
魔銀塊以外にも、リザードドラゴンの召喚石が高かった模様です。白金塊が一番高かったのかな?
小銭もバカになりません。もう高層に到達しているせいか、マジで儲けがえげつないです。
リザードドラゴンの召喚石に関しては、カイオスさん達が持ち込む可能性があるので売りました。
大金貨以下の分は、再びギルドに献金・・・と言うか、寄付しておきます。
どうもギルド同士の横の繋がりってあんまり無いらしいので、献金と言うよりは寄付が正解。
今度は数十日間の宿の利用が無料になりました。が、俺にソレは余り意味が無いです。
それよりも、とっとと召喚獣達のレベル上げをしなきゃ・・・。
今日はこのまま強行したい所。
が、リポップの待ち時間があるので、せっかくなので無料になった宿で軽く仮眠を・・・。
***第60~81階層***
ちゃんと時間を見計らって、ダンジョンに戻って来ました。で、召喚獣達のレベル上げ。
多分これで65レベルぐらいには上がったかな? でも、もう少し上げておきたい所です。
81階層のモンスター達と1対1で相対したとして、5分程度は粘れるぐらいにはしておきたい。
が、既に背負い袋も2つがそろそろ一杯に。一旦戻りますかね・・・。
またまた洗浄&乾燥してからコリン以外を送還してダンジョンから脱出。
早速、再び得た鉱石類を(今回は召喚石無しです)売却&大量の小銭を両替。
夜番なのか、カタリーナさんが居たのでお願いしておきました。
またもや売却品の数が多かったので、一旦仮眠する事を伝えて宿の部屋へ・・・。
・・・むぅ。軽く寝たら小腹が空きました。“また潜る前に夜食を・・・”とか思ったら、
食堂スペースでまったり飲んだくれて居たカイオスさん達に捕まりました。
まぁいいか。飲食しつつ少しだけ付き合いますかねぇ。
一言断りを入れて夜食と飲み物を取ってきたら、カイオスさん達に合流。
まったり飲食しつつ、カイオスさん達との会話に付き合います。
「リューノ。順調か?」
「まぁ、ぼちぼち・・・ですかね」
「んで?昨日言っていた70階層には、本当に到達したのか?」
「ん~。黙っていてもどうせバレるだろうから正直に言いますが、70階層は過ぎましたよ?」
「「「「「「マジでかっ!?」」」」」」
「「うそっ!?」」
おぉぅ。カタリーナさん達も聞いていたみたいです。
つーか、食堂スペースに居た他の冒険者さん達も盗み聞きしてたみたい。ざわついています。
「で?で? 70階層を過ぎたってんなら、71階層ってどんな感じなんだ?」
今度は静まり返る食堂スペース・・・。皆して聴いてるみたいね。
「う~ん。61階層と比較しても、出てくるモンスター達は同じですね。
ただただ単純に“数が増えている”って感じでしょうか? 少しは強くなっていますがね。
それと、ドロップ品はまだ分かりませんね。リザードドラゴンからは白金塊が取れたぐらいです」
「そうか・・・それじゃぁ今の俺らでも行けそうなのか?」
「カイオスさん達って、もう64階層までは行ってるんですよね?」
「ああ」
「ん~。だったら行けなくも無いんじゃないでしょうかね?多少時間は掛かるとは思いますけど。
昨日も言いましたが、それなりに威力がある範囲攻撃が出来れば、楽勝で行けますよ?」
「昨日も言っていた範囲攻撃か・・・で、その辺リューノはどうしているんだ?」
「ピクシーが範囲攻撃魔法を持っていますからね。
私も自前で範囲攻撃“モドキ”を使っていますから、そんなに苦労はしていないですね」
「はぁ?範囲攻撃“モドキ”って何だ?」
「ん~。カイオスさん達って、斬撃を飛ばす事って出来ますか?」
「ん?“エアスラッシュ”の事か?」
良かった。あったのね、そんなスキルが。
ソレ系のスキルが無かったら、俺が異端過ぎて説明のし様も無かった所だわ。
「その“エアスラッシュ”ってのがどんな攻撃なのかは知りませんが、
要はその飛ぶ斬撃を範囲攻撃代わりに使っているんですよ」
「アレをか? ・・・いや、まぁ確かに複数相手に当てる事は出来るだろうが・・・」
多分俺とカイオスさん達とでは認識の差があると思うけど、さすがにバラせない話は出来ません。
俺のその飛ぶ斬撃が“扇状の広範囲攻撃”ってだけですがね。
「ん~。それじゃぁ、皆さん全員が何かしら範囲攻撃の魔法を覚えたらいいんじゃないですか?
新しく魔法を買ったとしても、多分すぐに元は取れますよ?
私が仮眠する前にカタリーナさんに買取査定して貰ったのって、夕方から稼いだ分だけですしね」
「「「「「「マジかっ!?」」」」」」
おぉぅ。食堂スペース全体が一斉に騒がしくなりました。
まぁねぇ。あの稼ぎが幾らになるかは知らないけど、
どれだけ少なく見積もったとしても、大金貨以上は確定のはずだしね。
「むしろ昨日も言いましたけど、51階層ぐらいから範囲攻撃があれば、滅茶苦茶楽ですよ?
1回の戦闘時間がもの凄く短縮出来ますから、効率もアホほど良いですし」
「・・・それはまぁ分かった。今後の参考にはさせて貰おう。
で、リーナから聞いたが、お前さん早朝から潜っていたんだろう?
それじゃぁ、夕方までに稼いだ額って幾らだったんだ?」
「え~っと、確か小白金貨6枚強だったかな?」
また騒がしくなる食堂スペース・・・。まぁねぇ、それだけ稼げば目立ちますわな。
「おいおい・・・マジかよ・・・1日でそんなに稼げるものなのか?」
「まぁ朝からの分はポータル解放戦で得た分がありましたからね。
レアドロップも、普通に稼ぐよりは遥かに多かったせいだと思いますよ?」
俺が夜食を食べ終わるのを見計らって、カタリーナさんから査定終了のお知らせがありました。
静まり返る食堂スペース・・・。 何か注目されてますねぇ。まぁいいけどさ。
「お疲れ様です~。お待たせしちゃってすみません。で、幾らになりましたか?」
「・・・両替分も含めて、小白金貨2枚強となります・・・」
ざわめきを通り越して、大騒動状態の食堂スペース。何やら慌てて外へ駆け出す冒険者も居ます。
いつも通り小白金貨だけを受け取って、残りはギルドへ寄付します。
さすがにギルド側もネタ切れみたいで、食堂での飲食無料の期間が延長になった程度のサービス。
で、近づいて来たカイオスさんがカタリーナさんに再度確認。
「リーナ。その査定金額ってマジか?」
「大マジよ?全く呆れて物も言えないわ・・・。
それと、リューノさんが一度戻って清算したのも間違い無いみたい。
リューノさんから査定依頼を受けた後に確認したら、
“宿代を数十日間無料とする様に”って申し送りのメモがあったわ」
「おいおい・・・1日で小白金貨8枚以上稼ぐって、どんな上級冒険者だよ・・・」
呆れた表情でこちらを見てくる面々をスルーして、俺はとっととダンジョン入り口のポータルへ。
もう3時間以上経過しているから、モンスター達もリポップしているはず。
んじゃ早速召喚獣達も召喚してっと。
「おい!リューノ? 何処へ行くつもりだ!?」
「何処って・・・ダンジョンで召喚獣達のレベル上げですけど?」
「はぁっ!?この時間から潜るのか?」
「ん~。まぁ眠くなったらダンジョン内で寝ますからね。それじゃぁまた~」
まだ何か言っている面々をスルーして、再び60階層へ。
今回で召喚獣達のレベル上げも終われるかな?