第183話 異世界冒険者生活1日目 その5
丁度空いている時間帯なのか、暇そうなカタリーナさんを発見。
早速売却等々のお話をせねば!
「ども、カタリーナさん。お疲れ様です」
「あら?リューノ様。もうお戻りですか?」
「ええ、丁度区切りの良い所まで進められたので、少し早いですが戻ってきました。
ところでダンジョンで得た物の買取について少々疑問がありまして・・・。
先程、カイオスさん達からお伺いするのを忘れて居たので、
お手数かとは思いますが、改めて説明して頂けませんか?」
「構いませんよ?全く、カイオス達ったら・・・。
さて、買取についてでしたね。
基本的にはダンジョンで得た鉱石類は、必ずギルドで売却する義務が御座います。
例外としては、その素材を直接自身達の装備品を発注する場合にのみ、例外として認められます。
ただ、装備品にして転売目的で売却しなかった場合は、処罰対象となりますのでご注意下さい。
・・・まぁ、1度使っただけで転売するなど、グレーゾーン的な部分も御座いますが、
基本的にはギルド以外での“売却等”は処罰対象であるとご理解下さい。
その他のダンジョン内で得た装備品や召喚石等につきましては、特に規定は御座いません。
一応、当ギルドでも買取は行っておりますが、
専門の店舗等で売却するよりは若干安めの買取金額となってしまいます。
これもギルド運営の利益を得る為で御座いますので、
私共と致しましては、可能で御座いましたらこちらにて買い取らせて頂ければ・・・。
と言った所で御座いますね。
大体この様な感じで御座いますが、他に何か御座いますでしょうか?」
「え~っと・・・。
要は“鉱石類以外でも安くても構わなければ、全て買い取って頂ける”との認識で大丈夫ですか?」
「はい。その通りで御座います」
「了解です。有難う御座いました」
「いえ、これも仕事のうちですので」
「それじゃぁ早速ですが、買い取って頂けますか?
っと、それとも買取は専門の場所があるのでしょうか?」
「いいえ、こちらで全て処理出来ますよ?
と申しますか、私共ギルド職員全員の必須技能としてある程度の鑑定能力を求められますので、
私共のカウンターでも買取業務を行っております」
「そうですか。では買取をお願いします」
「はい、畏まりました」
早速背負い袋から、本日の戦利品を取り出します。
粗鉄塊が11個、召喚石がバット1個、ゴブリン1個、ピクシーが2個。
さて幾らになる事やら・・・。
「拝見させて頂きます・・・。
っ!これはっ!ピクシーの召喚石じゃないですかっ!
リューノ様。この短期間で12・・・いえ、13階層以上まで潜られたのですかっ!?」
「ええ、まぁ」
「・・・失礼かとは存じますが、ギルドカードを拝見させて頂いても?」
「構いませんよ?」
首から下げていたギルドカードをカタリーナさんにお渡し。
「では失礼して・・・やはり・・・。
はぁ・・・漸くカイオスが言っていた“期待の新人”の意味が分かりましたわ。
それにしても、この短時間でよくもまぁ・・・」
ギルドカードを返してもらいつつ、改めて金額査定をお願いしておきます。
「・・・粗鉄塊が1つ小銀貨1枚となります。
バット、ゴブリンの召喚石が大銀貨1枚。ピクシーの召喚石が各小金貨1枚となりますが・・・。
本当にこちらで買い取らせて頂いても宜しいのでしょうか?」
う~ん。小金貨2枚と大銀貨3枚、小銀貨1枚って事か。
拾った小銭を含めて、23万円強の稼ぎって感じでしょうかね?
一日の稼ぎとしたら十分過ぎじゃね?
つーか、マジでこんなに稼げていいのかな?
「はい。構いません。全て買い取りをお願いします。
ところで少し疑問なのですが、ポータル解放戦ってレアドロップ率が高いんですかね?
低階層だと“儲からない”って聞いてたのに、この稼ぎって多くないですか?」
「そうですね。確かに冒険者の方々からその様な話を聞いた事が御座います。
カイオス達の方が詳しいと思いますので、後程確かめられては?」
「そうですね。そうします」
「承知致しました。
あと、当ギルドにてお売り頂き、有難う御座います。
リューノ様?この後はどうされますか?カイオス達との待ち合わせまで時間が御座いますが?」
時刻は18時前。
一応の予定としては、今日は宿に1泊して明日は朝からダンジョンに潜る予定。
ちなみに、明日以降はダンジョン内で寝泊まりしつつ、一気に攻略するつもりです。
なので・・・ちょっと先に買い物をしとくべきかな?
「ちょっと不足している物があるので買い物に行ってきます。その前に今日の宿探しですかね?
冒険者ギルドって宿も併設しているとポントスさんから聞いたのですが、
受付はどちらでしょうか?」
「あぁ!こちらでも宿の受付は可能ですよ?飲食等は向こうのカウンターでお願い致します。
ではリューノ様?何泊をご予定でしょうか?」
「とりあえず1泊でお願いします」
「畏まりました。
夕朝昼の食事付きで1泊小銀貨5枚となりますが、素泊まりでしたら小銀貨4枚となります。
今晩はカイオス達の奢りだとお聞きして居りますが、如何致しましょうか?」
「ギルドでの食事って、1食当たりおおよそ幾らぐらいでしょうか?」
「個人差は御座いますが・・・おおよそ大銅貨5~7枚程度が相場で御座いますね。
勿論、増量等によっては多少お値段が上がります。減量は出来ませんのでご了承下さい。
その為、食事付きでのお泊りの方がお得では御座いますが?」
「そうですか。ん~どうしようかな・・・。
今日の晩はカイオスさん達が奢ってくれるらしいし、まぁいいか。素泊まりでお願いします」
さっき貰った大銀貨1枚を渡し、お釣りで小銀貨6枚を貰います。
ついでに溜まった小銭(小銅貨)を両替して貰ってっと・・・。
「・・・以上ですね。それではこちらが本日お泊り頂く部屋の鍵で御座います。
あの階段を上って頂いた、302号室となります。
お手洗いは各フロアの最奥に御座います。共用となりますので、予めご了承願います。
それと湯浴み等の必要が御座いましたら、大銅貨3枚でご用意致しますのでお申しつけ下さい」
ギルドの広間スペース奥の階段を指示しつつ、説明してくれるカタリーナさん。
「有難う御座います。湯浴みは・・・今日はいいかな?汗をかくほどの運動もしていないし。
また必要になったらお願いしますね」
「はい、畏まりました。またのご利用をお待ちしております」
カタリーナさんと別れて、早速今日泊まる部屋へと行ってみる。
階段を上がって、3階の“302”と書かれた部屋へ。
あ。何となく分かってたから、勝手に来ちゃったけど、俺って“世間知らず”な設定だった。
まぁこれぐらいはいいか。いちいち“何階ですか?”って聞くのも何だしな。
で、今日の宿に到着です。
「・・・狭いな。本当に寝るだけの部屋って感じ。ビジネスホテル以下だな、こりゃ。
まぁいいや。とっととポントスさんの所に行って、背負い袋とかを買い足しておこう」
部屋の確認が済んだら、とっととポントスさんのお店へ。
かなり大き目の背負い袋を2つとメンテナンス用の砥石を購入。
ついでに小銭用のそれなりに大き目な袋を1つ追加購入。小金貨1枚の買い物となりました。
当面はコリンに小銭拾いと荷物持ちをやらせとこう。どうせ戦力としてはアテにならないしな。
で・・・戻って来たんだけど・・・まだ時間前です。18時半前。
時間帯的に徐々に冒険者達も戻ってきているのか、少し人が増えてきています。
場所取りがてら、適当に大き目な円卓を占拠しつつ、一足早く独りで軽く飲食を開始。
先程カタリーナさんから教えて貰ったカウンターで買って来ました。
少ししたら、足を引き摺ったルータさんが合流。
早速座って頂いて、代わりに飲み物なんかの買い出しをしておきます・・・。
ルータさんとお喋りしていたら、カタリーナさんも合流しました。
どうやらもう19時を過ぎていたみたいです。
ちなみに、気になって居た“ポータル解放戦”のレアドロップに関してですが、
ルータさんの話では、確実にレアドロップ率が高いそうです。
むしろ逆に、ドロップをしない方がレアなんだとか。
なるほどですね。そりゃー儲かる訳だわ。んで、低層だと儲からない訳だわ。
だって、今日1~13階層のポータル解放戦以外でのドロップだと、小銀貨1枚程度だしね。
で、3人で軽く飲食しながら楽しくお喋りしていたら、ようやくカイオスさん達が合流。
「すまねぇ。待たせちまったみたいだな」
「カイオス!貴方が言い出しておきながら、遅れてくるんじゃないわよ!」
「いや~悪い悪い。ちょっと召喚獣のレベル上げをしていたら、意外と面白くてな?」
「“面白くてな?”じゃないわよ!
貴方からリューノさんを誘っておいて、待たせるなんて・・・。
リューノさん?本当にダメな幼馴染でごめんなさいね?」
「いえいえ。カタリーナさんもお気になさらず~」
「あ?何だお前ら。いつの間に仲良くなってんだよ?」
さすがに仕事外のカタリーナさんから“様”呼ばわりされるのも何なので、
“さん”呼びにして貰ったんですが、カイオスさん的にはお気に召さないご様子です。
つーか、そんな事を言うのなら、遅れてきた方が悪いんじゃないかな?
あと、カイオスさん。
探索役だったルータさんの代役として、
元々持って居た犬の召喚獣を試しにパーティーに加えて探索役を試していたんだそうな。
最初は完全にダメダメなお荷物だったそうなんだけど、
それなりの階層だったせいかレベルが上がるのが早くて、それが楽しかったんだって。
まぁその気持ちは分からんでも無いです。
当然、まだまだ戦力としては“アテ”にはならないそうですが。
俺としては、完全にルータさんの代役として犬の召喚獣が定着しちゃったら心配なぐらい。
幼馴染の仲に亀裂が入ったら・・・とか思うとね。
まぁ荷物持ち要員が減っちゃうんだし、ソレは無いとは思うけどさ。
そんなこんなでカイオスさん達主催による宴会が開始。
最初に改めて全員が俺に感謝の言葉を述べたぐらいで、終始適当に飲食してます。
もちろんお酒も入ってます。
この世界では、ワインやビール(エール系)が主流みたいです。
ラガー系ビールが無いって事は、まだまだ下面発酵か低温熟成の技術が発達して居ないのかな?
楽しく飲み食いしつつ、追加で色々と情報収集をしておきます。
先ずは召喚獣に関して、4点ほど面白いお話を聞く事が出来ました。
1点目。
召喚獣のLVUPって、ダンジョン内での戦闘限定らしいです。
どれだけダンジョン外で生活させようが、戦闘経験を詰ませようが、レベルが上がらないらしい。
2点目。
ドッグ系の召喚獣は、とりあえずLV10で最初の進化をするらしいです。
さっきまでカイオスさん達が潜っていたのは、余裕を見て30階層からだったそうで、
レベル1の犬の召喚獣がサクサクLVが上がったらしい。それで判った事なんだそうな。
ちなみに進化先は、正常進化の“ワイルドドッグ”と特殊進化の“マジックドッグ”なんだって。
早速カイオスさん達は、“ワイルドドッグ”にしてみたそうな。
ちなみに“マジックドッグ”は、その名の通り魔法が使える様になるらしいです。
3点目。
気になって居た召喚獣の性別ですが、やはりコリンは雌らしいです。
と言うのも、同一種族(未確認だそうですが、恐らく進化後も含むかも?との事)の場合は、
召喚者とは逆の性別、次は同じ、その次は逆・・・と、なるらしい。
なので、召喚者が男性の場合は、雌→雄→雌→・・・。女性の場合は雄→雌→雄→・・・。
となるのだそうな。
この辺は、この世界にも犬や猫好きが居るらしくて、確認済みらしいです。
ちなみに性別はあっても、同一種族の召喚獣同士での交配はしない(出来ない?)らしい。
んで、別の種族の場合は、カウントされない模様です。
もし召喚者が進化させて得た召喚石から再召喚した場合は、元の性別を引き継ぐんだってさ。
召喚獣を進化させた召喚者が、その召喚石を譲渡したり売ったりして、もし他者が召喚した場合は、
さっき言った通り、“進化前の種族としてカウントされて性別が決定されるんじゃないか?”
との事でした。逆の場合は前例なんかも無いらしく、不明との事。
つーか、そこまで詳細に召喚獣に関しての研究はされてないらしくて、
経験則的に“そうなんじゃないか?”って程度でしか分からないのが、正直な所らしいです。
・・・するって~と何ですか?
まぁシィは見た目的に分かるけど、コリンだけじゃなくてライム達も雌って事なんですかね?
4点目。
かなり気を使って、無知な振りをしつつ聞き出してみた所、
鷲獅子や半人半馬なんかの合成系統の召喚獣も居るらしい。
が、それらはダンジョン内で出てくるモンスターのレアドロップで召喚石を得られるらしく、
鷲系+獅子系の召喚獣をなんらかの方法で合成する。とかって方法では無いらしいです。
そもそもこの世界では、“召喚獣の合成”って方法は無い模様。
ちょっと心配していた三頭犬作成に関しては、犬系の進化先でいいみたい。
伝説としては、確かにそんな存在が居たらしいそうな。それもヒロアキさん所の子だと思う。
続いてダンジョンに関して。
今俺が潜っている10階層程度の大広間1つの配置は、30階層まで続くらしいです。
んで、20~30階層では、野生動物的なモンスター(虎とか熊とか馬とか)が相手になるそうな。
まぁそんなに数は群れて居ないそうなので、俺的には楽勝っぽいですな。
あの時の俺の戦闘している姿を見た、カイオスさん達もそう言う意見でした。
照明役でピクシー等が一緒に居るのだそうですが、それでも戦力的には問題無いと判断出来ます。
31階層から60階層までは、小部屋が幾つもあるフロアになるのだとか。
当然トラップも本気で殺しに来る仕様らしい。典型的な壁から矢とか槍とかもあるらしいです。
で、ここで注意点が1つ。
小部屋だからアクティブ化したモンスターをノンアクティブ化する事は可能なんだそうですが、
(当然射線と言うか、視界から消える訳だしね。それでも、暫くは扉前に居座るそうですが)
モンスターの中には扉を開けて移動してくるモンスター(特に手がある奴)も居るらしく、
部屋の中にモンスターが居ないからって油断は出来ないそうな。
前にも聞いたけど、アクティブ化とノンアクティブ化を繰り返した狩りも不可能らしいので、
相応の実力が無ければ突破する事は困難な階層になるらしいです。
そんな感じですが、61階層からは再びダンジョン内に光源があるらしい。
その代わりに、ダンジョン自体の広さが格段に広くなっているそうな。
フロア的にも、大部屋+小部屋みたいな配置になっていて、しかもトラップ類も多いらしいです。
出てくるモンスターも、其処まで行くと、とうとう竜種が出てくる様になるらしい。
オリジーのダンジョンに関して言えば、そこまで行けるパーティーって、
カイオスさん達を含めても両手で足りる程度のパーティーしか居ないんだとか。
と言うか、そこまで到達出来る力量があるパーティーの殆どが、
此処よりも効率良く稼げる、別の街のダンジョンに移動してしまうパーティーが多いらしいです。
カイオスさん達がオリジーのダンジョンで狩りを続けているのは、
多分だけど“カタリーナさんが居るせいなんじゃね?”とか思ったり・・・。
つーか話の流れでバレてしまったんですが、
俺が既に13階層まで突破している事をカタリーナさんから聞いたカイオスさん達。
完全に呆れていました。
「無茶しやがる」とか「暗闇でどうやって狩りしてんだよ」などと言われましたが、
逆に「松明を持ってるゴブリンとか、完全に的じゃね?バカなの?」って言ったら、
口を揃えて「お前の方がおかしい」とか言われちゃった・・・解せぬ。
そんなこんなでそろそろ良い時間。
カイオスさん達はまだまだ飲み足りないそうなので、続行する模様ですが、
俺は明日の朝からダンジョンに籠る予定なので、一足先にお暇を。
ちなみにカタリーナさんは明日は休みの日だそうで、今日はカイオスさん達と飲み続けるそうな。
で、ちょっと気になったダンジョンの出入りに関して聞いておきます。
・・・が、どうもちゃんと鉱石類さえギルドで売るなら、出入り自体は自由だそうです。
時間指定も全く無し。
完全に余談ですが、カタリーナさん達ギルド職員(飲食カウンター担当者も含む)は、
基本8時間労働の3交代制だそうで、常時カウンターに誰かは居るらしいです。
今晩泊まる宿の鍵は、明日カウンターで渡すだけでOKらしいし、問題無いかな?
うむ。色々と聞けたし、今日はもう十分かな?明日からはちゃんと本気で頑張ろう。
いい加減さっさとクリアして、ルナ達&レナ達にも会いたいしな。
って事で、早速部屋に戻って就寝。 おやすみなさい~。