第178話 テンプレ
相変わらず色々とヒロアキさんから話を伺いつつ、昼食。
軽めにサンドイッチ系でした。
俺は俺で、ヒロアキさんの世界の聞ける範囲内での情報収集をします。
俺が向かうダンジョンがある都市は、“原初”って意味を込めて“オリジン”にしたんだって。
当然ダンジョン名も“オリジンのダンジョン”なんだそうな。
ヒロアキさんが、この世界で一番最初にダンジョンを創った場所であり、
一番最初の人類を誕生させたのもその都市らしい。
「ネーミングが安直ですけどね」
とか、ヒロアキさんが自虐的に言ってましたが、
ネーミングセンスの無さに関しては、俺だって負けていないと思う・・・。
そのダンジョン。一番最初に創っただけあって、かなり拘ったダンジョンなんだとか。
で、当然ヒロアキさん的には一番の自信作らしいです。
ただ、かなり深いダンジョンらしい上に、低階層だと全く旨みが無いんだって。
ちなみに、全部で何階層まであるのかは教えて貰えませんでした。
ヒロアキさん的には、低階層は鍛錬の場として最適な場所として創ってはみたものの、
その低階層だと“旨みが無い”って点で、かなり初心者には人気が無いダンジョンらしいです。
その分、低階層を突破出来る冒険者だと、それなりには美味しいダンジョンではあるらしい。
より深い階層だと、他のどのダンジョンよりも美味しいらしいんだけどね。
とは言うものの、低階層が美味しくないせいで、深層まで攻略する人も少ないのだとか。
だから、“オリジンの都市”でダンジョン探索をしている冒険者の平均レベルは高いんだって。
その反省を生かして創ったダンジョンが、俺が潰した都市のダンジョンらしいです。
最初からそれなりに美味しいダンジョンにしたんだそうな。
まぁあの都市のダンジョンに関しては、
俺がオリジンの都市に行っている間にヒロアキさんが色々と手を加えて、
改めてバランスの再調整をするらしいですけどね。
ヒロアキさん的にも面白く無いらしいですし。
ちなみに、ダンジョン探索者=冒険者なんだけど、
ダンジョン探索者は必ず冒険者ギルドに登録が必要なんだとか。
と言うか、ダンジョン内へは物理的に入れないのだそうです。
ギルドカードを持っていない者は入口で弾かれるんだって。
ヒロアキさんの世界では、
冒険者ギルドで発行されるギルドカードに踏破したダンジョンの履歴が記録される仕組みらしい。
一度でも完全踏破したダンジョン階層は、
そのギルドカードの能力で第1階層と、10階層毎にあるポータルで移動出来る仕組み。
完全踏破とは、その時点で行けるダンジョンの全ての範囲に行く必要があるらしい。
ただしこの移動は個人限定。若しくはパーティー内の最低踏破階層までらしいです。
ちなみにマッピングもギルドカードを所持していればオートマッピングが可能なんだそうな。
後から任意で好きな階層なんかも自由に閲覧も可能。
「何その便利アイテム!」とか思ったけど、一応他の人には見せられない仕様なんだって。
当然、他のダンジョンとは完全に別の記録として記録されるらしいです。まぁ当然ですね。
ギルドカードで他の人に見られる可能性があるのは、踏破記録のみらしいです。
俺の世界と違ってヒロアキさんの世界では、一応すべてのステータスがマスク状態なんだとか。
一部神殿みたいな所でのみ、自分自身のステータス確認は出来るらしいんですけどね。
まぁその話は俺には縁の無い話ですな。多分異常なステータス値になるだろうし。
俺のイメージでは冒険者と言えば依頼なんだけど、ヒロアキさんの世界では殆ど無いらしいです。
全く無い訳では無いそうなのですが、特定の鉱石に対して“高価買取中”みたいな程度らしい。
ついでに言うと、パーティー制限も有り。最大で6名までなんだって。
その辺はウチの世界と同じですな。当然、数に物を言わせてのゴリ押しも不可能なのだとか。
「辻ヒールとかあるんですか?」
って聞いたら、どうもダンジョン内はパーティー単位で別空間になるらしく、
同じダンジョン内でも別のパーティーに遭遇する事は絶対に無いんだって。
つまりはアレですか?ソロだと敵しか居ないって状況な訳ですか?
結構普通の人類だとハードモードじゃね?まぁパーティーを組めって話なんでしょうが。
俺は・・・パーティー組むつもりが全く無いのですが?
俺の場合は全員敵。つまり見敵必殺って事ですね。了解です。
そうこうしていたら結構時間が遅くなったので、明日の早朝に出立する事になりました。
晩御飯は何かのステーキでした。
結構美味だったけど、何の肉だろうか?一応牛系だとは思うのだが。
夕食後は男神様連中で揃って一緒にお風呂へ・・・。
っとその前に。
山吹さんに今後のトウのお世話と、俺がこれから着る事になる衣類等の準備をお願いしておきます。
ヒロアキさん家の浴室もそれなりに広くて、大人6人程度なら一緒にゆっくり出来る広さでした。
ちなみに地下から源泉を引いてあるらしくて、ウチと同じく源泉掛け流しのリッチ仕様。
そんなお風呂でゆっくり入浴タイム・・・そうなってくると、当然風呂酒タイムに突入する訳で。
ヒロアキさんがビール派らしいので、入浴しながらですがビールを飲みつつプチ宴会へと突入。
2時間ほど色々と無駄話をしてから上がります。
で、お風呂から上がったら、早速問題発生。
山吹さんに用意して貰った装備(特に下着類)が案の定サイズが合わない!
まぁ俺って、この中では一番のチビっ子なのだから仕方がない事なのですが・・・。
此処はちょっとだけ大目に見て貰って、俺の魔法で若干のサイズ調整。
素材自体をいじる訳でも無いし、何か追加して付与する訳でも無いのであっさり終了です。
用意して頂いたのは、シャツ・トランクス・靴下のインナー系が3着。
後は上着・皮鎧?・かなり厚手のズボン・ベルト・ロングブーツ・何かの獣の皮製の外套・ショートソード。
他には収納用のポーチ・リュックサック・恐らくポーション用の肩掛けと各種ポーション類。
ポーションはHPとMPしかないらしいです。どちらも貰ったのは初級ポーションなんだとか。
ついでに小袋に入ったこの世界での貨幣で、大き目の銀貨と銅貨が10枚ずつでした。
当然ショートソードは鞘とベルトに装着出来る様に紐が着いてました。
小袋は即、外套内側の隠しポケットへ直行です。
で、肝心の着心地なんですが・・・ちょっとゴワゴワします。
特に下着類がかなり気になるぐらいにゴワゴワ。
これは新品だからだと思う。どうせそのうちにその感覚にも慣れるだろうし。
まぁ慣れなかったとしても、頑張ればせいぜい1週間程度着られればいいので我慢です。
その他の装備は・・・まぁいいでしょう。特に問題を感じません。
とりあえずの獲物となる、ショートソードも軽く振ってみた感じだとそれなりに良い物みたい。
で、聞き忘れていたこの世界の貨幣について。
一応貰った貨幣以外にも金貨や白金貨ってのがあるらしいですが、常用する様な物じゃないそうな。
この辺はウチの世界と同じかな?
ヒロアキさんの世界ではそれぞれの硬貨に大と小があるらしいです。
白金貨>金貨>銀貨>銅貨の順番な所はウチの世界と大体一緒。
10進法だそうで、小が10枚で大に。大が10枚でより高価な小硬貨と同等なんだって。
ウチの世界と違って、小銅貨1枚が地球で言う10円相当ぐらいの価値らしいです。
それ以下の硬貨は無いんだそうな。
数年前のオリジンの都市の物価で言うと、一泊で小銀貨3~5枚程度。
大体3千円~5千円って所ですかね?
まぁそもそも他の物価や、ダンジョンで得られる金額の程度が不明なので何とも言えませんが。
とりあえずの初期費用が10万円ちょっとって事は理解しました。
が、そもそもショートソード1本で、しかも魔法禁止状態で食って行けるのか?って話。
『分体とは言え、リュウノスケくんなら飲まず食わずでもなんとかなるよね?』
とは魂の神様の弁。
それはちと、ハードモード過ぎやしませんかね?
ダンジョン内には完全物理攻撃無効の生物類が居ないと聞けたので、多少は安心出来るか?
・・・うむ。少なくとも気休めにはなるか。最悪俺って徒手空拳でも戦えるし。
魔法系や練気魔闘術系なんかは全面使用禁止になるとは言え、武技系は禁止になっていないんでね。
さすがに神話級スキルは異端過ぎて全面禁止にされましたが。
まぁね。舞空術とか、一応は武技系スキルだとは言え、異端っちゃー異端だしね。
とりあえずは遠距離攻撃が可能となる様に、苦無なんかを優先確保出来れば問題は無いでしょう。
一通りの用事が済めば、少し早いけど今日は就寝。明日に備えます。
翌朝。ちょっと早めに全員揃って太極拳をしたら、朝食。
ちなみに太極拳はヒロアキさんも山吹さんも参加です。獣状態のトウだけは不参加でしたが。
それが終わればいよいよ出発です。
昨日山吹さんに用意して貰った装備一式を再確認してっと。
全員が揃ってお見送りです。門番代わりのケルベロスにも軽く挨拶をしておきます。
多分トウの遊び相手になるだろうしね。
「それじゃ、後は宜しくお願い致します。
山吹さん。お手数かとは思いますが、トウの世話を宜しくお願い致しますね」
笑顔で頷く山吹さん。
『んじゃ、リュウノスケくん。いってらっしゃい~』
「楽しんできて下さいね?」
「はい。でわまた後日に。『転移!』」
お見送りはかなりあっさり風味でした。 どうやら心配もしていないらしい。ま、当然か。
まぁヒロアキさんはこれからやる事あるんだろうから別にいいけどね。
で、到着したのはオリジンの街(都市)から南東に約20kmほど離れた森の中。
ちなみにオリジンの街はパンゲア大陸(?)の中央付近にあって、南東側に広大な森があります。
南には他の都市へと通じる街道があって、当面はそこを目指してまっすぐ西進の予定。
街道に到達したら、街道沿いに北上してオリジンの街へと目指す予定です。
ちなみに南西側にも森がありますが、どちらかと言えば山脈に近い感じです。
今更ですが、この世界での俺の設定。
名前はリューノ。年齢は20歳。当然男。
恐らくは孤児で、今までは森の中に隠遁生活をしていた爺様に育てられたって感じ。
で、「もうそろそろ独立して生活しろ」って爺様に言われて都会を目指す冒険者って所ですね。
日々の食生活なんかは、森で狩りをして得た肉なんかが主食。
たまに数日掛けて、爺様が何処かへ行って必要な生活必需品なんかを入手していた。
今の俺の装備一式も同様に爺様が用意した物。
そのせいで、今までに爺様以外の人付き合いは全く無し。
大体こんな感じかな? まぁある意味テンプレ設定ですな。
「よし到着っと。
んじゃスキル上限が上がった事だし、瞬動のレベル上げがてら街道を目指しますかねぇ」
当然瞬動を使えば転移じゃなくてもすぐに街道へと到着です。
森で遮蔽物が多いって?そんなもん、とっくに慣れっ子なのですよ。
気分は野猿ですな。木々の間をあっという間に抜けました。
此処からは悪目立ちはしたくないので、てくてく歩いて北上します。
・・・30分ほど歩いたかな?
前方で何やら争っている感じです。行商人か何かが野盗に襲われているんですかね?
マジで“テンプレキター!”って感じですな。
お偉いさんかお嬢様が襲われてたら、完全にテンプレな展開。
んじゃ、さっそく介入してみますかねぇ。
この世界の人類の程度も分かるだろうし、俺にしてみればかなり都合のいい展開ですわ~。




