第167話 フィッシュ オン!
のんびりと始祖の神様&魂の神様と一緒に、ミーさんの所で飲食中。
空くん(運んできたのはメイドさんですが)の焼き鳥を始祖の神様方に奪われたりしつつ、まったり空間です。
まだ若干会場全体がざわついてたり、時折視線を感じたりしてますが、完全スルーで。
トウは、メイドさんか乳母さんが気を使ってくれたのか、肉塊を貰ってハムハムしております。
ついでに乳母さん達が嬉しそうにモフっているのはご愛嬌。
つーか、普通の犬なら食事中にモフられたら嫌がるものなんですがねぇ。
トウにはその辺の危機感が無いらしい。まぁ、あいつなら当然か。
で、只今始祖の神様達と念話で会話しながらのんびり焼き鳥を堪能中です。
俺はすっかり忘れてましたが、念話スキルって複数同時会話も可能な設定にしてたんですよねぇ。
先日ルナ達に指摘されて、思い出しました。
【にしても、随分と派手にやらかしたもんじゃのぅ】
【ははは、まぁいいんじゃないですか?
これだけ派手にエサをちらつかせたんだから、食いついてくれればそれで良し。
駄目だったら・・・まぁそれはそれで、また何か別の方法を考えますよ】
【ん~・・・大丈夫みたいだよ? ちゃんと掛かったみたい】
【なら今晩辺りに早速仕掛けて来るかな?私達がいつまでこの世界に滞在するかが不明なんだろうし。
それじゃ、後の諸々の事は始祖の神様方にお願いしますよ?
不死じゃない陸くん達や天ちゃん達の事もありますので、トウは残しておきますが。
せっかく上手くいきそうなのに、無駄に血が流れるのは好ましくありませんからね。
勿論ミツハルさん家の警護の人とかも含めて。ですからね?
その分、始祖の神様や魂の神様の方が、より手間が掛かるかも知れませんが】
【了解了解。ま、後は任せておいてよ。
私だけじゃなくて始祖の神様も居られるから、リュウノスケくんは心配しなくて大丈夫だよ?
そういう訳で、始祖の神様も宜しくお願い致します】
【うむ。リュウノスケは気兼ねなく暴れるが良いわ。
むしろ此処からがリュウノスケの本領発揮と言った感じじゃがのぅ。どうなるか、楽しみじゃわい】
【そうですかね?そんなに暴れるつもりは無いんですけどねぇ・・・】
【ははは。リュウノスケくんて見た目的には完全に武闘派じゃないからね。
体型的にも背が低いし。筋肉質っぽい体つきもしてないからね。
一応冒険者っぽい服装はしているものの、どちらかと言えば知性派なイメージしか持ってないんじゃないかな?
本質的には、神々の中でも上位に入るぐらいの超武闘派なのにねぇ・・・。
この会場で、その事を見切れる者なんて殆ど居ないんじゃないかなぁ。
ちゃ~んと気配や体裁き、足運びなんかを観察したら、分かると思うんだけどねぇ・・・】
【まぁそれでいいですよ。下手に警戒されるよりはマシですから。
実際私としても、あんまり頭を使うよりは即武力行使の方が楽でいいんですけどね。
なので、後処理諸々はミツハルさんに丸投げしますよ。何と言っても、此処はミツハルさんの世界ですからね】
【そうだね。
我々もちょっとした手伝いぐらいはしてあげるけど、最終的にはミツハルくん次第だからねぇ。
ま、ミツハルくんなら上手く立ち回れるんじゃない?
本質的には、リュウノスケくんとは逆に、ミツハルくんの方が知性派なんだし】
【ですね。って!ちょっと!!そのボンジリは楽しみに取っておいたやつなのに!】
【がっはっは。早いもの勝ちじゃわい。
リュウノスケはまた持って来させれば良いじゃろ。諦めぃ】
【むぅ・・・】
【それと、さっきのリュウノスケくんて口調がえらく変だったけど何だったの?】
【あ~。それは単純に慣れていないからですよ。
大体千年以上引き篭もりしてたんですから、その辺は勘弁して下さいよぉ~。
自分でも変と言うか“キャラが固まって無い”って思っていたんですから・・・】
そんなこんなでそろそろ夕方。
特に閉会の宣言とかもなく、パラパラと帰っていく来場者達。
俺が突発的に手土産を追加したもんだから、若干出入り口付近で混雑したものの、特に問題は無かったみたい。
それなりに余ったみたいなんで、裏方さんや馬車の御者さん達も含めて全員持ち帰らせる事が出来た模様です。
余った酒瓶の後処理はミツハルさん経由で担当者にお願いしておいて、我々もミツハルさん家に帰ります。
帰りの御者さんや護衛に付いていた騎士さん達が、俺に対してえらく恐縮していたのが笑える・・・。
で、帰って少ししたら夕食タイム。
全員が食堂に集まって、朝と同じくかなりガッツリ系の夕食です。
挨拶もそこそこに、すぐに夕食開始。つーかミツハルさん達は朝から何も食べてないみたいだしね。
「ふぅ・・・あぁ!忘れていました。
リュウノスケさん。ウチの国の者が失礼しました。改めてお詫び致します。
後、ご提案頂いた件。有難うございました。お約束どおり確実に履行させる様、徹底させますよ」
「筆頭杜氏のおっさんの件なら、もうどうでもいいですよ?大して気にしてませんし。
大体、あの程度の酒で満足している様では程度が知れますので。その辺はお気になさらず。
むしろ“あのおっさんも含めて”ですが、これからの方が大変でしょうね。
とりあえずは、より近場の目標が設定出来るはずですし、特定の酒造を支援する訳では無くなるんですから、
今後は今までよりも、より一層酒造関係者が切磋琢磨して行かないと潰れる事になります。
“一石を投じた”と言えば聴こえは良いですが、大混乱する可能性もありますからねぇ。
まぁ、それも悪くは無いと思いますので、今後は長い目で見てやるべきでしょう」
「了解です。ところで・・・あの手土産ですが、一体何を出したんですか?」
「あ~アレですか・・・。
実はあの場では“神酒の10分の1”とか言いましたけど、実際にはそれより下のお酒しか出してませんよ?
大体高くて100分の1ぐらい・・・かなぁ?
具体的には地酒が主でしたが・・・え~っと。何だったっけ?
○楽蔵、○後の月、○鳳、○九郎、○珍、○ん、○狗舞、○乃越州、○槌、○州一献、○住鶏、○賀、○春、
○龍、○介、○凰美田、○部勘、○良萬、○州北鹿、○くれん、○奥八仙、○囲一圓、○坤一、○の影虎、
○代の光、○姫、○隠正宗、○齢、○洋美人、○木、○楽蔵、○丈夫、○泉、○住鶴・・・ですね。
他はハズレとして数種類のパック酒。大ハズレとして某プライベートブランドの安酒ですね。
ハズレ以外の地酒類も・・・まぁ美味しいお酒ですが、いつもウチで飲んでいるお酒に比べれば安いですよ?」
「あぁ!なるほど。とりあえずは“一般大衆向けの、安くて旨い酒を目指す様に誘導した”と言う事ですか?」
「そうですね。
とりあえず“単独で利益を出せる様なお酒を造る事が出来る知識や技術が根本にあるべき”だと私は思います。
富裕層向けの高級酒を醸造するのは、そういった利益を出せる様なお酒を醸造出来る様になってから。
つまりは“それぞれが試行錯誤が出来る余裕が出来てから”って事になりますね。
何事も“順序”ってものがありますからね。最初から、いきなり高級酒を造る様じゃ駄目ですよ?
そういう意味で、あの筆頭杜氏以外の酒蔵とか杜氏には期待したいところですね。
今までは支援金無しで独自にやっていたんでしょう?だったらそこそこ下地は出来てるんじゃないかなぁ。
それなら後は楽なもんですよ。
私が出したお酒の中で目指す物があれば、とりあえず其処を目指せばいいだけですしね」
「なるほど。お気遣い頂き、有難う御座います。
しかし、リュウノスケさんがかなり悪目立ちましたが、大丈夫でしょうか?」
「あぁ!アレって一応意味があったんですよ。
始祖の神様と魂の神様が気付かれた事なんですが、あの中に良からぬ事を考えている輩が居たみたいですね。
で、ソレを釣る為のエサになった・・・と言うかされたんですよ。私」
「は?」
「あの騒ぎに巻き込んだ、ハゲた貴族っぽいおっさん。あいつの事ですよ。
貴族みたいですが、何者なんですか?」
「・・・あの者は、グラネイア帝国の皇帝です。確かグラネイア19世だったかな?
現状では数少なくなった、独裁政治を行っている国の皇帝ですよ。
まぁ皇帝と言っても、自称なんですけどね。
それで・・・あの者は一体何を考えていたんですか?」
「まぁそれはひとまず置いておくとして・・・。
ミツハルさん?そのグラネイア帝国とやらを潰したら問題ありますかね?」
「あ~大問題ですね。
グラネイア帝国は、自分の世界で最大の食糧生産国であり、最大の食糧供給国なんですよ。
それに、以前自分の国が問題を起こしてこの国に移った際に、最も支援してくれたのもグラネイア帝国です。
そう言えば・・・確かに今代の皇帝に関しては、余り良いうわさは聞かないですね・・・。
先代までの皇帝はそれなりに優秀だった様ですが・・・。
とりあえず自分としては、あの国自体を潰して欲しくは無いのですが?」
「では、皇帝自身については潰しても問題無い。って事でいいですか?」
「まぁそれなら・・・」
「了解です。その方向で動きますかね。まぁあのハゲ貴族次第ではありますけどね。
あぁ!ハゲ貴族じゃなくて、ハゲ皇帝か。
ま、どうにせよもう確実に潰す事が決定してるんだし、どっちでもいいや」
『ははは。リュウノスケくん殺る気だねぇ』
「ミツハルさん達にはルナ達の出産に関してお世話になりましたからね。
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『うむ。任せるが良い』『了解したよ』
その後、夕食を食べながら、こそこそと色々なパターンで段取りを打ち合わせ。
どういう手段に出たとしても、神様相手に喧嘩を売るんだからそれ相応の覚悟はして貰わないとね!
夕食&打ち合わせも終わり、まったり寛いでいたら、ノックの音と共に食堂の扉から女官さんの声が。
「グラネイア帝国皇帝陛下より“手土産”のお礼としてワインが届きましたが、如何致しましょうか?」
との事。
そして食堂の窓の外に、さっきまでは居なかった複数の気配も感知。
ぃよっし!掛かった!