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俺の創った箱庭世界  作者: コルム
異世界冒険編
166/243

第166話 今回は自重しません

静まり返る会場。

全員が完全に俺らの遣り取りに飲み込まれた感じかな?

あぁ!当然、始祖の神様と魂の神様は除きます。相変らずミーさんの所でニヤニヤしながら飲んでるし。


とりあえず針には掛かりそうなので、此処で一気に撒きエサを撒いて確実に釣ってみますかね。


「・・・ミツハル神。此処に居る酒造に携わる者を全員集めろ。

それと・・・ミツハル神の世界に対する干渉に抵触するかも知れんが・・・筆頭杜氏だったか?

お前に対する支援金を廃止させる可能性がある。それを受け入れられるならこの場に残れ。

受け入れられないのであれば、今すぐこの場から去れ」


青ざめた顔で固まる筆頭杜氏のおっさん。


「主席宰相!リュウノスケ神様の御心のままに!今すぐ該当する者を集めよ!


リュウノスケ神様?筆頭杜氏を退去させる理由をお尋ねしても宜しいでしょうか?

それと、“私の世界への干渉に抵触する”とはどういう事でしょうか?」


「何。簡単な話だ。

特定の者へ漫然と支援するのではなく、毎年支援する者を選抜させれば良いと思ったまでだ。


・・・そうだな。

新酒の品評会でも開催して、最も良い酒を造った者へのみ、その年限りの支援金を渡す形に変えた方が良い。

支援金と言うよりも、この場合は報奨金と言うべきか?

そうすれば、ミツハル神の世界でもより早く、より旨い酒が造れる様になるだろう。


そういった意味での干渉だ。

無論、この世界はミツハル神の管轄する世界であり、此処はミツハル神の国でもある。

どの様な判断を下すのかはミツハル神次第ではあるが、もし現状と同じ支援を続けるのであれば、

そこの筆頭杜氏に対して我がこれ以上干渉する気は一切無い。


我はこれよりミツハル神の世界の杜氏に対して、“酒とはどうあるべきか”を“己の舌”で理解させるつもりだ。

其処に優劣を持ち込みたくはない。 唯一“己の味覚のみ”を基準としたい。

で、あるからこそ退去を命じた。国から厚遇されている様な輩などは特に。な。


まぁ、この時点で既にミツハル神の世界に対する干渉に当たる訳だが?

ミツハル神が干渉自体を受け入れないのであれば、我も自重するが・・・如何か?」


「リュウノスケ神様が“我が世界の杜氏に対して支援をして頂く”と考えても宜しゅう御座いましょうか?」


そうこうしている間に、主席宰相さんによって10人ほどの人数が集まってきました。

その周りでは、俺とミツハルさんの遣り取りを伺っている人々。

当然さっきの筆頭杜氏のおっさんと、貴族っぽいおっさんも近くに居ます。


「それは違うな。正確に言うならば支援では無い。意識改革だな。

杜氏としての誇りであり、己の味覚、自己研鑽によってのみ、より良い物が生まれるべきであると我は思う。

で、あるからこそ。我としては、むしろ支援などをするべきでは無いと考えている」


「意識改革。で、御座いますか・・・具体的には何をなさるおつもりでしょうか?」


「神酒には遥かに劣るが、それぞれ特徴を持った酒を飲ませるだけだ。

現状のミツハル神の世界の杜氏では、どうあがいても“幻の酒”には届かん。


で、あるならば。

より近い目標や道標となる、それぞれ異なった指針を提示してやれば良い。

当然、杜氏それぞれの趣味嗜好などもあるだろう。

我はそれで良いと思うし、むしろそちらの方が好ましい。


我も“幻の酒”を飲んだ事があるが、アレは全てを非常に高い水準で兼ね備えた酒。

完璧なる酒ではあるとは思うし、一切の瑕疵も無いとは思う。

が、あの酒ですら“何か1つでもアレを超越する事すら不可能である”とまでは思えん。

無論、あの酒をこの世界の杜氏達が生産出来る様になる事が1つ目の目標とはなるだろうがな。

しかし、ただ漫然とあの酒の劣化模倣品を造り続けるよりは遥かにマシだろう?」


ざわつく周囲の杜氏達。

どうやら何人かは幻の酒を飲んだ事があるらしい。


そして何やら考え込むミツハルさん。


いやいや。ミツハルさん?悩む要素なんて何処にも無いですって。むしろ好都合だと思いますよ?

俺がやろうとしているのは、この世界の杜氏達の技量底上げが目的なんですから。

まぁ問題点としては、日本酒限定であるって事ぐらいでしょうか?

日本酒限定での底上げになる訳だから、ワインとかの洋酒なんかとは格差が出てくる可能性もある訳で。


まぁそれはそれでアリだとは思いますがね。

ワインならワインの。ブランデーならブランデーの。それぞれの良さって日本酒とは全く違うんですから。

ワイン好きが居てもいいし、日本酒好きが居てもいい。その辺は個々人の趣味嗜好の違い。

多種多様な選択肢があってこそ、初めて文化ってのは進歩すると思うのです。


「ミツハル神よ。如何か?」


「・・・承知致しました。リュウノスケ神様のご提案を全面的に受け入れさせて頂きます」


筆頭杜氏のおっさんが「そんなっ!」とか言ってますが、今は神同士による会話。

一般ピーポーの意見なんざ、完全スルーで。


「我が提案しておきながら言うのも何だが、本当に良いのか?

確かに継続的に支援する事によって、伝統や知識の蓄積が出来ていたはずだ。

それを全て放棄する事になりかねんのだぞ?」


そうなんですよね~。

まぁ現状としてはまだまだ未熟ですが、継続支援する事によって得られるメリットも無視出来無い訳で。

伝統や知識の蓄積は勿論の事、ブランドイメージってのもあります。

今後の発展に期待するっていう意味では、むしろマイナスになる可能性の方が現実的には大きいかな?

俺の提案って、それらを切り捨てる事になるんですからね。


まぁミツハルさんの英断だとは思いますが。

だって、昨日飲んだワインに比べれば、さっき飲んだ日本酒は遥かに劣る訳で・・・。

日本酒好きとしては、正直不満だったのですよ。

支援を受けてながら、“この程度の酒しか造れないんじゃ、マジで無駄遣いじゃね?”ってのが本音なのです。


「リュウノスケ神様が言外に仰らんとする事も理解出来ます。

が、確かに“漫然と支援し続けるだけでは駄目である”とのご指摘の方が、この場合は正しいと判断致しました。


主席宰相!

我の命として、今年度より筆頭杜氏及び筆頭酒造に対する支援金は完全に打ち切るものとする。

それにより発生する余剰金は、リュウノスケ神様のご提案通り一般人を含む全酒造関連者による品評会を開催し、

その場において最も優秀な酒を造った酒蔵に対する報奨金として計上せよ!


リュウノスケ神様。これで宜しゅう御座いましょうか?」


「この世界はミツハル神の管轄。

そのミツハル神の世界に対し、我が口出した事を先ずは詫びておこう。

また、ミツハル神の判断に対して我が是非を唱えるのも異な事。

その判断に対しては何も言う事は無い。


では約束通り、ミツハル神の世界の杜氏に対する意識改革をするとしようか。


筆頭・・・いや、元筆頭杜氏だったな。他の酒造に携わる者共もだ。

ミツハル神の判断に感謝すると良い。お前らに新たな指針を与えてくれようぞ。


とりあえずは・・・そこのテーブルを使わせて貰おうか」


偉そうに言い放ったものの、俺独りじゃちょっと手が足らないので、

メイドさん達にも手伝って貰ってかなり大きめのテーブルを綺麗に片付けて貰いました。


「よし、とりあえずは良いだろう。此処に居る者共に我が力の一端を見せてやる。『出ろ!』」


またまた偉そうに言ってますが、単に創造魔法で40種類弱の日本酒とぐい呑みを出しただけです。

口調とかは、ちょっと悪ノリしてるだけ~。

あぁ!ちなみに1升瓶にはラベル類が一切ありません。当然見た目も全部同じにしてあります。

今後の事も考えると、余計な情報は与えたくないしね!


「リュウノスケ神様。これらは・・・?」


「何、確か神酒だったか?それよりも劣りはするものの、そこそこ出来の良い酒だ。それぞれ特徴も違う。

価値としては、神酒の10分の1から1000分の1まであるはずだ。

その程度の価値しかなくとも、現状のミツハル神の世界の杜氏達にとって、良い刺激となるだろう。


己の味覚に。そして杜氏としての誇りを持つ者達よ。此処にある酒達を一口ずつ味わうと良い。

それぞれが全て目指すものが違った酒達だ。

その中から、己に合った酒。己の目指す酒を探し出し、今後の目標とするが良い」


個人的に“キメッキメ”で言ってみたものの、恐れ多いのか誰も近寄りません。

オイ!せっかく出したんだから、お前ら飲めよ!


面倒臭いので、隣の屋台でバーテンやっていたクレマチスさんを呼んで、給仕役を任せます。

ちなみに、それぞれのお酒はぐい呑みで1人1杯限定としました。ちゃんと味わって飲めよ~?


順番に並んで1杯ずつ飲んでいく酒造関係者を眺めていたら、ふと思いついた事が。

エサは大きい方がいいよね!

って事で早速・・・。


「・・・ふむ。酒造関係者だけに飲ませるのも芸が無いな。


ミツハル神よ。

この場・・・いや、今回の参加者やメイドや警備兵などの裏方を含めて、どれほどの人数が居る?」


「恐らく1千人には達しない程度の人数かと思われます。それが何か?」


「何。ちょっとした手土産でも、と思ってな。

ミツハル神。接客や警備などを統括する者を呼んで貰えるか?少し頼みたい事がある」


「承知致しました」



で、呼び出された2人。迎賓館の管理責任者と警備主任らしいです。


「直答を許す。

お前達2人に全ての来客・・・いや、成人以上の全ての来客に物を渡す事は可能か?

あぁ!来客者だけでなく、裏方として働いた者も含めて全員に。だが?」


「「はっ!問題御座いません」」


「良し。ならば・・・其処の出入り口付近になら出せる空間があるな。『出ろ!』」


どど~んと大盤振る舞いです。

1千本の酒瓶が並ぶ姿は、中々壮観ですな。

さすがにこれだけの数だとスペース的に縦置きは無理なので、横に積み重なってますが。

当然下の方の段にはストッパーを出して酒瓶の山が崩れない様にしてあります。

再び静まり返る場内。


「神酒には劣るが、先程出した全ての種類の酒を用意した。

帰る時に、先程の条件に当てはまる者全てに1瓶ずつ持ち帰らせよ。如何なる者であれ、必ず1瓶限定とする。

もし残る様であれば、残りは全てミツハル神の元に届けさせよ」


「「はっ!確かに承知致しました!」」


「リュウノスケ神様?これらは?」


「何、酒造関係者だけ特別扱いするのも問題だろう。

だったら手土産の1つでも持ち帰らせれば良い。先日はミツハル神達に世話になったしな。

その謝礼代わりだ。


まぁ、どの酒を持ち帰られるかは完全に運次第だがな?

どの酒を引くのかも、ある種のくじ引きだな。それもまた一興だろう。

運が良ければ神酒の10分の1とは言え、価値のある酒が手に入る可能性があるのだから」


一斉に騒然とする場内。

そりゃまぁそうだわなぁ。神酒の10分の1とは言え、価値のある酒がタダで手に入るのだから。

ちなみにハズレだと1000分の1の価値しかありません。それでも価値はあると思うけどね。

ま、全くラベルが無い上、瓶だけでは絶対に区別出来無いので、本当にくじ引きって感じ。

“後は帰ってから、自分の舌で楽しんでね~?”って感じですな。


とりあえずやる事やったので、エサとしては十分か?

“んじゃ、俺も後は普通に楽しませて貰いますかね~?”と思ってミーさんの所へ移動。


ふと気がつけば、ハゲ貴族(もう面倒なのでこれで呼びます)のおっさんがミツハルさんに話し掛けてました。


「恐れながら・・・創造神様。少々宜しいでしょうか?」


「何か?」


「先程の神様は“酒の神”様であらせられるのでしょうか?」


「いや、違う。“酒の神”様は別にいらっしゃる。今回はご来訪頂けなかった」


「そうで御座いましたか・・・いやしかし、これほどのお力ならば・・・」

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