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俺の創った箱庭世界  作者: コルム
異世界冒険編
165/243

第165話 大人気ない神様

ミツハルさんで1泊したら、朝っぱらから中庭で無駄にいつものメンバーが全員集まって太極拳。

それが終われば揃ってちょっとガッツリ系の朝食です。女官さん達によって既に配膳されてました。

今日の予定だと、ミツハルさん達はあんまりしっかりと飲食出来る時間を取る事が出来無いらしい。

まぁ、それがその世界の流儀ってんなら合わせますよ。つーか、ぶっちゃけ飲食しなくても俺らは平気だしね。


ちなみにトウは、俺が念の為に亜空間に入れておいたオーガを1匹追加して食べてます。

水も追加でマナ水を出したし、今日1日ぐらいなら夕方まで飲食しなくても問題無いでしょ。

昨日の分だけだと足りなかったみたいだし。



「んじゃ、今日の予定としては“迎賓館”とやらで新年会ですか?」


「新年会って言い方だとちょっと語弊があるかも知れませんが、まぁ大体そんな感じです。

要は各国の元首だったり大使などが自分の所へ慶賀の挨拶に来る事と、神酒の下賜が主な行事ですね。


始祖の神様や魂の神様。リュウノスケさん主従にも出来ればご参加願いたいのですが?」


『ワシらは自由に飲み食い出来るのかのぅ?』


「はい、大丈夫ですよ。

自分の世界での一流料理人が来る予定ですし、リュウノスケさんの所を真似して屋台みたいになってますから。

飲食に関しても、少なくともミー達の所でなら最低限ご満足頂けるレベルではあるとは思いますので。

多少のご不便をお掛けする事があるかも知れませんが、自分達も精一杯御持て成しさせて頂きます。


あぁ!昨日も言いましたが、念の為にミー達の事は呼び捨てでお願いします。

立場上、この中では自分達の方が格下とさせて下さい。変に増長した輩が出るとも限りませんから」


『その様な輩が居った場合が面倒じゃのぅ。飲食が出来るのであれば、まぁ何とか我慢出来る・・・か?』


「『同感です』」


「まぁそう仰らずに。

大丈夫だとは思いますが、念の為に。ですよ。

ですから、気軽に参加して頂ければ・・・」


「ま、私は出産の件でかなりお世話になりましたからね。ミツハルさんのご希望に沿った形で動きますよ」


「有難うございます」


『ふむ。ワシらだけ居残りと言うのもつまらんのぅ。 じゃったらワシらも顔だけは出すか?』


『はい。お付き合い致します』


「有難うございます。なら決まりですね。 陸。諸々の連絡を頼む」


「はい」


てって~と食堂から出て行く陸くん。

一応準備はしていたけれど、もし俺らが拒否したら、それはそれで受け入れるつもりだったらしいです。

ミツハルさんは用意周到だねぇ・・・。




その後、昨日会った主席宰相連中とも合流して数台の馬車に分乗して移動。

ちなみに俺、トウ、始祖の神様、魂の神様は同じ馬車です。

ガタゴト揺れながら30分ほど山道を登ったら、小高い丘の上みたいな所に到着した模様です。

馬車が止まりました。


御者さんの案内に従って早速馬車から降りてみたら、目の前にちょっとした宮殿みたいな建物が。


「ほぅほぅ。なかなか綺麗な宮殿だな。白亜の宮殿って感じか?」


今後、俺の国に造る時に参考にしようとキョロキョロしていたら、置いて行かれそうになりました。

“ちょっ!待って!俺もお客さんの1人だって!”とか思いつつ慌てて追いかけます。

シレっと俺お置いていくトウもどうかと思う。後、御者さんの視線から哀れみを感じました・・・。


迎賓館に到着したら、待機部屋みたいな大部屋で暫く俺&トウ&始祖の神様&魂の神様は待機。

ミツハルさん達は一応正装に着替えなきゃいけないらしいので、俺達を案内したら即退出して行きました。



「あ~。やっぱり私達もちゃんとした服装にした方がいいんですかね?」


『別に構わないんじゃないの?

ミツハルくんは散々今のままで問題無いって言ってたし』


「ならいいですかね」


部屋に置いてあったフルーツの盛り合わせなんかを摘みつつ、トウと戯れてたらミツハルさん達が戻ってきました。

おぉぅ。かなり豪華な冒険者装備って感じでしょうか?正装と言われれば納得する様な格好です。


「お待たせしてすみません」


「あ~ミツハルさん?本当に我々の服装はこのままでいいんですかね?」


自分の冒険者衣装を示しつつ、とりあえず確認。

一応純白のサーコートは着てるけどさぁ。ミツハルさん達の今の格好と比べると、ちょっと見劣りしそう。

始祖の神様や魂の神様って、元々ゆったりした純白のローブ系の服装だしねぇ。

魔術師って感じか?ソレ系の冒険者っぽいと言われればそれっぽい感じな服装です。


「構いませんよ。

皆様は自分よりも上位の神々と言う設定で行きますので、文句を言う輩も居ないと思います。

まぁ居たら居たで即刻放り出しますから、心配しないで下さい」


“いや、それはそれで問題あるんじゃね?”

とか思ったけど、面倒臭いのでスルー。大体俺って柴犬状態のトウを連れてるしね。

もしトウに“いちゃもん”付ける奴が居たら、物理的に叩き潰してやろう。ミツハルさんも怒らないだろうし。


そのまま1時間ほど待機。

待機時間が長いのでミツハルさんに理由を聞いてみたら、今頃は迎賓館前が馬車で溢れかえってる時間帯との事。

要は混むから早めに来たのね。あと無駄に会わない為か。




暫く待っていたら、女官さん(と言うよりも、こっちはメイドさんかな?)が迎えに来ました。


「最初に自分の方から皆さんの事をご紹介させて頂きますが、特にお願いする事もありませんのでご安心を。

誰に対しても頭を下げる必要もありませんし、何かお言葉を頂戴する事もありません。

他の者から会話を振られる事も無いとは思いますが、煩わしいと思われるのでしたらミーの所で飲んでいて下さい。

今年だけはミーの所に他の者を寄り付かせませんので」


ミツハルさんからの注意事項を聞いたら、早速移動開始です。

“さっきはちゃんと見てなかったけど、内装も結構豪華だな~”とか、観察しながら移動。

ものの数分でちょっと広めの扉前に到着。どうやらこっちは王族(?)専用の出入り口らしい。


「それではよろしいでしょうか?」


無言で頷く俺ら。


それに頷き返してミツハルさんから順番に入室です。

ちなみに始祖の神様が一番最後。その前が魂の神様で、その前が俺主従だと空くんに言われました。

ちゃんと順番を守って入ってみると・・・。


とりあえず“広っ!”って感じ。天井もかなり高いし。

ざっと見ただけでも、軽く数百人程度の人間が既に居るみたいです。まだ増えるのかな?


で、俺からしたら向かって右側に窓が並んでいるのですが、その前に場違いな感じで屋台風な設置物が・・・。

左側には儀仗兵(でいいのかな?まぁ警備員みたいな人です)とメイドさんがずらっと並んでいます。

良く見ると、右側の屋台と屋台の間にも儀仗兵とメイドさんが待機。

中央にも何列かに分かれてずらっと机が並べられ、色とりどりの食べ物&飲み物なんかも並んでます。

この部屋の中だけでも軽く5~600人以上は居るんじゃないだろうか?


“これは良い参考になるな~”とかぼ~っと眺めていたら、メイドさんに“スッ”と後ろから椅子に座らされました。

おぉぅ済まないねぇ。引き篭もりの神様だから、おのぼりさんみたいでちょっと恥ずかしいよ。


ちなみに席順ですが、一番最前列の豪華な椅子にミツハルさん。

少し下がってミーさんとクレマチスさんがミツハルさんの両脇に控える形で。

さらに後ろに陸くん達。その後ろに右から俺&床にトウ、魂の神様、始祖の神様の順です。

トウは俺の横で伏せしてます。

天ちゃんと大地くんは、窓際に並んで座った乳母さんぽい人に抱っこされてました。


全員が着席したら、ミツハルさんの挨拶が開始。


「皆良く集まってくれた。ここに集まった者達は何らかの功績ある者であったり、各国の元首や大使達だ。

良い機会なので、存分に見識や交友を広げる役に立てて欲しい。


また今年は幸いな事に、我より上位の神々にご来訪頂く事が出来た。くれぐれも粗相の無い様に。

それに伴い、今年はミーに神々の接待を申し付けてある。

無闇に近づいた場合は捕縛する場合もあるので、皆承知しておくように。


以上だ。それでは存分に楽しんでくれ」


「それでは先日通達のあった者に、創造神様より神酒を下賜して頂く。

事前通達の順番に従い、順に並ぶ様に!」


早速ざわざわし始めた中で、昨日主席宰相だと紹介された人が大声を張り上げたら、数十人ほどが並びます。

つー事は他の人達は付き添いだったりで、神酒は貰えない訳ね。

そりゃこんだけの人数を集めてたら、幾らお酒を渡しても足らないわな・・・。


とか思ってたら、おもむろに立ち上がるミーさん達。どうやら接客に回るらしい。

椅子にいつものぬいぐるみを掛けて、そそくさと移動。気付かなかったけど、念の為に持ってきてたのね。

“んじゃ、俺も適当にこの世界の食べ物を堪能しますかね~”と思って立ち上がろうとしたら、何やら念話が・・・。




・・・はぁ。面倒臭い。でもまぁミツハルさんにはお世話になったし、釣り針にでもなりますか。

一応念の為に、トウには天ちゃん達の近くで伏せ待機して貰って、俺は自由行動へ。

若干乳母さんっぽいお2人に、びびられているトウに笑える。

始祖の神様&魂の神様は早速ミーさんの所へ。



俺が移動すると割れる人垣・・・なんか避けられてるみたいでちょっと嫌だな。まぁ仕方無いけどさ~。


のんびりと屋台を眺めつつ、とりあえず最奥まで移動。

大体奥行きが400mぐらいはあるんじゃね?その分、屋台の数も半端無いです。

上座(神座?)から順にミーさんのバーカウンター。陸くんの寿司カウンター(何時の間に覚えた?って感じ)。

海ちゃんのアイス系デザートカウンター。空くんの焼き鳥屋台。続いてクレマチスさんのバーカウンター。

後はステーキ屋台だったり、フルーツの屋台だったり、揚げ物系の屋台だったりと多種多様。

3~4軒毎にバーカウンターがあるのはご愛嬌って感じかな。

後、食べ物系は基本がっつり系が多めでした。ありがちだと思って居たカステラ系屋台は無かったし。

中央に並んでいるテーブルには、既に出来合いの食べ物やら飲み物が置いてある感じ。


で、奥まで行ったらまた引き返して、とりあえず空くんの焼き鳥屋へ。


「やってる?」


ちょっと場違いですが、置いてあった椅子に座りつつとりあえずお約束を。


「は?リュウノスケしん様。どういう意味でしょうか?」


つーかその名で呼ばれ慣れてないから、違和感バリバリだわ。


「ははは。まぁ気にしないで。

ところで焼き鳥屋みたいだけど、メニューは豊富なの?」


「はい。父神様ちちがみさまより色々とご指導頂きましたので、恐らく一通りの部位はご提供出来ると思います。

後、私共に対する口調も改めて頂けますと・・・他人の目も御座いますし・・・」


「面倒臭いなぁ・・・。まぁわざわざ波風立てるのも何だから、ミツハルさんの指示に従いますかね。


んじゃ、皮4・ボンジリ3・せせり2・ハツ2・モモ2・砂肝2を。 出せる?」


「はい。すぐにご用意致します。今から焼き始めますので、少々お待ち願います。

タレと塩が御座いますが、どちらになさいますか?」


「あ~全部塩で。俺、基本的に塩派なんで。ちゃんとオーダー聞いてから焼くのね。

いいじゃない。感心感心っと、口調を改めなきゃね」


「承知致しました。恐れ入ります」


「ん゛んっ。後、お酒も此処で飲めるのか?」


「ご用意出来ますが・・・リュウノスケ神様に召し上がって頂くには、まだまだ不足かと・・・」


「何と! 空様、それは余りにもなお言葉!

今回献上させて頂いたのは、我らの自信作で御座いますぞ!」


唐突に横から出てきたおっさんが、空くんに食って掛かってます。


「控えろ!神の御前であるぞ!」


空くんの一喝で注目を集める俺ら。まぁ好都合か。


「ぐっ・・・しかし、我らの自信作を“不足”とは・・・それは撤回して頂きたい!」


「空。このおっさん誰?」


「御前をお騒がせしてしまい、誠に申し訳御座いません。


この者は、我が国の筆頭杜氏に御座います。

先程ご用意させて頂く事が可能と申し上げた酒を造った責任者で御座います」


「ふ~ん。

それじゃぁ旨いか不味いかは俺が判断するから、とりあえず出して。あぁ、熱燗で」


「承知致しました」


何を思ったのか杜氏のおっさん。俺の横に座ってきました。邪魔だっつーの。

で、聞きもしてないのにおっさんの言う自信作がどれほど素晴らしいかを俺に語ってきます。

つーかミツハルさんの話聞いてなかったのか?断りもなく俺の横に座るとかどうなんだ?


当然俺はガン無視(笑)。空くんもガン無視して黙々を鳥を焼いてます(爆笑)。

ある種異様な状況になって、さらに注目を集める俺達。


「お待たせ致しました、先に皮と熱燗になります」


「ふむ。頂きます。


・・・へぇ。上手く焼けてるじゃないの。大したもんだよ。美味しい美味しい」


「有難う御座います」


さて、問題のお酒の方はっと・・・。


「・・・此処で出せるお酒ってコレだけ?」


正直に言って“なんじゃコレ”って感じ。

多分コンビニで買うカップ酒よりも遥かに不味いです。


「はい」


「ちなみに焼き鳥をミーの所に持ってきて貰う事って可能?」


「リュウノスケ神様であれば、何ら問題御座いません」


「んじゃ、残りはミーの所で食べるから持ってきてくれ」


「承知致しました」


強引に熱燗を飲み下したら、とっとと席を立ちます。

と。


「我ら自慢の酒は、ご満足頂けたでしょうか?」


空気読め、おっさん。旨かったら席を立つ訳ないだろうが・・・。

俺。無言のまま立ち去るべく、皿を持ったまま移動しようとしたら、「お待ちを!」っておっさんに腕を捕まれました。


その弾みで皿から零れ落ちる焼き鳥(皮)・・・あ~あ。

“しまった!”みたいな顔をする空くんとおっさん。

慌てて駆け寄るメイドさん2人。


「空。皮4追加で。後は任せる」


「お待ちを!」


またしても食い下がるおっさん(笑)。

空くんに「控えろ!」って言われてるのに、ガン無視とか。いいのかこれで?

まぁ暇だし相手してやるかな。都合も良いし。

つーかニヤニヤしながら“我関せず”でミーさんの所で楽しんでいる、始祖の神様と魂の神様にちょっとむかつきます。


「あぁ?さっきから何?」


「ですから、酒の味の方は如何だったのでしょうかと・・・」


「不味い。以上。

で?もう用は無いよなぁ?」


「なっ!そんなはずは御座いません!我らの造った酒が「控えよっ!」っ!」


ミツハルさんご登場。神酒のお渡しも終わったのかな?


「リュウノスケ神様。我が国の者が大変失礼な事をしでかした様子。伏してお詫び申し上げます」


「構わんよ。落ちた焼き鳥は残念だったとは思うがな」


「空。急ぎ代わりの品をご用意せよ。


・・・恐れながら。

リュウノスケ神様、この者が造った酒の何処が良くなかったのか、ご指摘頂ければ有難いのですが?」


「ミツハル神はこいつが造った酒を飲んだ事があるのか?」


「いえ、まだに御座います」


「じゃぁ飲んでから言ってみろ。

空。さっきと同じ酒をそのまま出してみろ。あぁこいつ自身にも飲ませろよ?

ついでに・・・そうだなそこの奴。ちょっとこっちに来い。んで、お前も飲め」


丁度おあつらえ向きの奴が、目に付く所で大事そうに“神酒”を抱えて居たので、巻き込みます。


3人(2人と1柱)にさっきの酒飲ませたら、感想を聞く前に『出ろ!』でカップ酒を出します。

俺の突然の行動にさらに注目を集める状態に。もう此処に居る全員が沈黙しつつ俺達の様子を伺っている感じ。


で、カップ酒を四の五の言わずに3人に飲ませます。


「で?筆頭杜氏だったか?

まぁいいや、おっさんよ。直答を許す。どちらが旨かった?」


「それは・・・私共が造った酒の方が、総合的には劣って居たと感じました・・・。

ただし、気品としては私共が造った酒の方が上回っていたと感じます」


「ふむ。で、お前にも直答を許す。正直な感想としてはどうだった?」


続いて巻き込んだ奴にも聞いてみる。

(こいつもおっさんです。それなりに豪華な衣装を着てるので貴族か何かかな?ハゲてるけど。

お貴族様ってカツラが標準装備なイメージだったけど、この世界では違うのかな?)


「私も同じ様に感じました。

総合的な旨さとしては、若干後の方が勝っていたのではと思いますが・・・。

気品とも言うべき物が無かったと感じまして御座います」


「なるほどなるほど。で、ミツハル神。どちらが旨かった?」


「私も同意見で御座います。

リュウノスケ神様がお出しになられた方には気品と言うべき物が感じられませんでした。

言うなれば大衆向けの“安酒”と言った感じでしょうか?」


「なるほどなるほど。全員同意見と言う事か。

まぁそこの杜氏のおっさんも“バカだが舌は確か”。


ちなみにミツハル神よ。下賜している“神酒”はどの程度の価値のある酒を下賜して居るのだ?」


「“幻の酒”よりは劣りますが、それに次ぐ程度には価値のある酒で御座います」


つー事は、いつも持ち帰ってる“清酒”を下賜してた訳ね。なるほどねぇ。

一応アレも“幻の酒”とまでとは言わないけれど、そこそこお高い清酒を渡してたからなぁ。


「なるほどな。

さて、俺が出した酒だが、価値としてはミツハル神が下賜して居た“神酒”の1千分の1にも満たない価値しかない。

ミツハル神の指摘した通り“大衆向けの安酒”だ。


で?全体としてはそれよりも劣る酒の、何処に誇る要素がある?

気品の有無では無く、総合的な旨さとしての価値が何処にあるのか答えろ」


「それは・・・」


「リュウノスケ神様。この者には以前“幻の酒”を飲ませた事が御座います。

それ以来、あの酒を我が国でも生産出来る事を目標として、誠心誠意日々精進して居った事は事実で御座います。


我が国としても、その努力を無駄にすまいと支援して参りました。

その事を鑑み、何卒何かお言葉を頂けませんでしょうか?」


「ふ~ん。国として支援。ねぇ・・・。どの程度の金額を支援してたんだ?」


「財務大臣!今すぐこちらへ!」


「はっ!」



「筆頭杜氏に対する支援金額は如何ほどだったか?」


「はっ。年に金貨600枚前後で御座います」


「・・・ミツハル神。この国での一般的な平均月収は?」


「およそ金貨5枚程度かと」


「・・・毎年平均年収の10倍程度の投資か。・・・言っては何だが、無駄金だな。

このまま漫然と支援していても、何年経っても再現なんて不可能だぞ?」


「・・・リュウノスケ神様。その理由をお伺いしても?」


「何、簡単な話だ。

おい杜氏のおっさん。お前が造る酒の意図は何だ?」


「は?それは勿論あの酒を再現する事で御座いますが?」


「そんな事しか言えないからこそ、無理だって言ってるんだよ」


「リュウノスケ神様。どう言う事で御座いましょうか?」


「ミツハル神になら分かるかもな。

筆頭杜氏だったか?お前が造った酒は“ただの劣化模造品”でしかない。

あの酒を目指す一番の近道を歩んで居るつもりなのだろうが、そんな事は無意味だって事。

だからこそ、ただの安酒以下の味しか造る事が出来無い。この意味が判るか?」


「あえて遠回りする必要がある・・・と?」


「そういう事。

俺が出したのは、ただの安酒だがな?アレはアレで大衆向けとして、きっちりとした意図がある。

“より多くの人間が安く、それなりに・・・・・旨い酒を飲めるように”ってな。

要は値段と味のバランスって事だ。


じゃぁ、お前が造る酒の意図は何だ?

あの酒を再現したいとして、必要な知識は足りているのか?経験はどうなんだ?って話。

何もかも足りて無いだろう?それで再現するとか、笑い話にもならんわ。


で?幾らで売るつもりなんだ?そんな未熟な酒を?

そして誰が買うんだ?そんな旨くもない、まともな意図も無い様な酒を。だから無駄金だって言ってるんだよ」

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