第160話 もうすぐ産まれます
只今私、遊戯室で寝転がってのんびりお昼寝中で御座います。
見上げれば太陽。右頬を撫でる様に吹く生暖かい風・・・。
「は~。いい気分。のんびりゆったりが俺らしいよねぇ・・・」
・・・ん?太陽?
何で遊戯室に太陽なんか見えるの?つーか風も吹いてるっておかしくね?
「あれ?何で???・・・あぁ、夢か」
そうと分かれば、徐々に覚醒。
右腕と言うか右肩にもふもふが乗っている感じがしたので、左半身を起こしつつ、もふもふを堪能。
「あ゛~もふもふ・・・最高やね・・・肉球!肉球!」
さらに手を伸ばして、肉球をプニプニ。
癒されるわぁ・・・。
【主様。お目覚めでしょうか?】
「ん~?」
この声はトウか。ふむ、いい肉球だな。プニプニ・・・。
【主様?】
「あ~。はいはい。起きますよっと。
ふぁ~っ。結構しっかり寝たな。むしろ寝すぎたか?」
目をコシコシしたら、目ヤニがごそっと・・・。
「おぉぅ。コレは結構な時間寝た感じ?」
ふと時計に目をやると、既に24日の昼過ぎ。俺寝過ぎじゃね?
「うわぁ!寝過ぎた!
トウ!先に戻って、皆に俺が起きた事を伝えてきて!すぐに俺も行くから!」
【承知致しました】
トウが出て行くのを視界の隅で見送りつつ、洗浄&乾燥魔法で軽く身だしなみを整えたら、即俺もリビングへ。
「すみません!遅くなりました!」
『リュウノスケくんおはよ~』
「「「「「「「「「「「「『おはよう御座います』」」」」」」」」」」」
リビングに行ったら、始祖の神様以外は全員揃ってました。
トウはなぜか水飲み場で水をガブ飲みしてます。
「遅くなってすみません。おはようございます。ところで始祖の神様は?」
『今、お風呂行ってるよ?』
「そうですか。
何か寝過ぎちゃったみたいで、本当にすみません」
『それは構わないけど、先にトウくんに御飯あげてくれる?
リュウノスケくんが寝てから、ずっと付きっ切りで飲食してないからさ』
「うわ~。トウ、ごめん。すぐに用意するわ」
大慌てで給仕室からオークを3匹ほど持ってきて、水飲み場横に転がしたらようやく一息。
その間に、ミーさん達がコーヒーを配膳してくれたので、落ち着いたら全員(始祖の神様除く)でコーヒータイム。
『それで?予定よりも寝てたみたいだけど、封印に関してはどんな感じだい?』
「そうですね。特に違和感は感じません。
“一部の記憶が封印された”って事もちゃんと覚えて居ますが、“何がどう”と言う訳でも無いですね。
うっすらと喪失感と焦燥感を感じる程度でしょうか?」
『それじゃ、特に問題無いみたいだね。
予定よりも時間が掛かったのは・・・。
それだけ無意識に“封印への”抵抗感を感じて居たせいなのか、単にリュウノスケくんが“ねぼすけ”だったって感じ?
その喪失感とか焦燥感も、そのうち慣れて気にならなくなるよ』
「そうですか。お手数お掛けしました」
『私よりも、ルナちゃん達に心配掛けた事を先に詫びるべきだね。
もうすぐ出産を控えているってのに、やきもきさせたんだから。
後、ずっと付いててくれたトウくんにもね』
「そうですね。
皆、心配掛けてごめんな。もう大丈夫だから、安心して出産に備えてね?トウも有難う」
「「「「「はい。承知致しました」」」」」
【主様?お代わりを頂いても宜しいでしょうか?】
もう全部食ったんかい!まぁいいけどさ・・・。マイペースな奴だな・・・。
改めてトウにお代わりを用意したら、本当に雑談タイム。
最初は何やら俺に気を使って居たミツハルさん達も、もう俺が大丈夫だと分かったみたいで色々聞いてきます。
が、封印された記憶の感想について聞かれても、答え様が無いっちゅ~ねん・・・。
暫く雑談に興じていたら、始祖の神様が風呂から出てきました。
『お?やっとリュウノスケが起きたのか。調子はどうじゃ?』
「お陰さまで、と言うか。特に変化無しですよ。
寝過ぎなぐらい寝ましたし、調子も問題ありません」
『そうかそうか。これでやっといつも通りじゃのう』
「そう言う始祖の神様は、私が寝ている間。何をやって居られたんですか?」
『ワシか?・・・聞いても怒らんか?』
「・・・怒られる様な生活をしていたって事ですか。もういいです」
『がっはっは。相変らず、扱いが雑じゃのう』
「自業自得でしょうに・・・。
その分、ミーさん達に負担が行って居たんでしょうね。
ルナ達も身重ですし、色々とご面倒お掛けして申し訳ありません」
「気にしないで欲しいニャ。私達も楽しませて貰ったから大丈夫ニャ!」
「楽しませて・・・?」
「ニャッ!」
何やら慌てて口に手をやるミーさん。
ふと全員を見渡すと、トウ(相変らず飲食中)以外の全員がニヤニヤとこっちを見ています。
何が・・・あった?
「いや~リュウノスケさん。気にしたら負けですよ?
自分も色々とありましたから。そこはほら、ね?」
「は?色々とって・・・!!!まさか・・・」
嫌な予感がして、魂の神様に視線をやると、超笑顔。
で、頷かれました。
「いやぁ~っ!!!俺の黒歴史がぁぁっ!!!」
脱兎の如く主寝室(分体側)に逃走。
記憶を封印したのはいいけど、俺の黒歴史の記憶を先に完全に封印して欲しかった・・・。
余りの恥ずかしさに、晩御飯時間まで自室に引き篭もりました・・・。
が、晩御飯が終わった後に魂の神様が改めて、此処に居る全員に俺の黒歴史が暴露。再び逃げ出すハメに。
俺、そのままフテ寝。後の事は知らん・・・。
そんなこんなで無駄にドタバタ出来たのも、出産の準備は滞り無く済んでいたせいです。
俺が寝てる間に、大概の事はミーさん達がやる事が無くて終わらせてくれていたらしい。感謝感謝。
後は俺が清潔な布とかを創造魔法で出しておしまい。って感じ。
3月25日。いよいよ出産予定日前日です。
昼辺りまではルナ達も平気でしたが、晩御飯が済んで一息ついた辺りにルナの陣痛が始まりました。
美の神様とミーさん&トウに付き添われて、ルナが部屋に戻って既に4時間ほどが経過・・・。
確か予定では26日の午前0時に産まれるはず。後1時間も無いです・・・。
その辺の出産予定時間なんかは美の神様やミーさん達には伝えてあるので、海ちゃんも手伝って巧く捌いてくれてます。
もう既にタリズ&リヴィアは自室待機の状態。フェンやシファードも異変を感じたらすぐに自室に戻る手筈です。
ちなみに次に産まれる予定のタリズの自室には、既にクレマチスさんが付いてくれています。
俺。創造魔法で出すもの出したら、もうお役御免になりました。
で、落ち着かずにリビングをうろうろ・・・うろうろ・・・。
ちなみに出産の立会いに関しては、一応訴えたもののミーさん達に却下されました。
部屋が狭いって事と、大丈夫だとは思うけど感染症予防の為だと言われれば、大人しく引き下がるしかありません。
その割には、トウが産後や万が一に備えて治癒要員として参加してるんだよね。俺だって魔法は使えるのに・・・。
「神体で洗浄魔法で綺麗に洗います!」とまで言ったのに・・・解せぬ・・・。
動物園の檻の中の猛獣の如くリビングをうろうろしていたら、始祖の神様から『目障りじゃ!』とのお叱りが。
“つーかアンタは今の所、ただ単に遊びに来ただけじゃん!”とか思いつつ、大人しくコーヒーをガブガブと・・・。
もうね。ただの1分程度なのに経過するのが長い事長い事。
初めてリビングの液晶時計をアナログ表示にしておけば良かったと後悔中です。
表示が1周するのに10秒ぐらい掛かるんだもの・・・。
そうこうしていたら25日23時55分・・・。
後5分で俺も父親になるのか・・・。こんなんで大丈夫なのか?俺。




