第144話 報告とお願い
手分けしての来客準備が完了した頃に、丁度魂の神様から連絡が入ったのですぐに来て頂きました。
一応トウには従者訓練を中断するので、獣化して貰ってます。
『や!先日ぶり。で、一体何の用なんだい?いきなりこんな紙が送られて来たんで吃驚したんだけど?』
始祖の神様と2人してピラピラと紙っ切れを振ってます。
「突然お呼び立てしてすみません。
私には神様方への連絡方法が分からなかったので、こういった形を取らせて頂きました。
まぁ無事に連絡が取れたのなら良かったです。
とりあえず立ち話も何ですし、座ってから私の相談事を聞いて頂けますか?」
御2柱に座って頂いたら、すぐにルナ達が給仕をしてくれました。
『むぅ。茶が旨いのぅ。今までに飲んだ事が無い旨さじゃな?
リュウノスケの事じゃし、出し惜しみしていた訳では無いじゃろうが、何じゃコレは?』
「それも併せてご報告しなくちゃいけない事があります。
え~っと、先ずは先日お伝えし忘れていた件から、ですかね。
“オド酒”の件なのですが、実はこっそりと陸くん達にも1本づつ渡しておいたのをすっかり忘れてたんです。
で、その回収をお願いしたいのがとりあえず先ですね」
『なんじゃ、そんな事で呼び出したのか。
まぁ確かに放置して置いて良い問題でもないじゃろうし、別に良いがの』
『そうですね。
リュウノスケくんからの初めての連絡だからって急いで駆けつけたけど、そんなに大した用事でも無かったのかな?』
「連絡方法についてはすみません。他の方法が思い付かなかったものですから・・・」
『突然目の前に紙っ切れが現れた時は、“何事か!”と思ったが、まぁ仕方なかろう』
「重ね重ね申し訳ありません。で、お伝えし忘れてすみませんでした。
その代わりと言っては何ですが・・・『出ろ!』こいつを代わりに渡しておいて頂けますか?」
『何じゃコレは?“オド酒”に似ておる様じゃが・・・』
「説明するよりも飲んで頂いた方が早いですかね?『出ろ!』ちょっとお茶請けには合いませんけど、どうぞ」
試飲用に一升瓶と升を作成。でお注ぎしてっと。
『ふむ。まぁ飲めば分かるか。
・・・んぐっ・・・ぷはぁ~。
旨いのぅ!・・・コレか?連絡にあった代替品とやらは。
しかし“オド酒”とは違うのか?味も“オド酒”と全く変わらん様じゃが?』
「そうですね。先日ご依頼のあった“オド酒”の代替品のつもりです。私は“マナ酒”と呼んで居ますよ。
ついでに先程飲んで頂いたお茶に使ったのも、“マナ酒”の酒精を飛ばして水にした“マナ水”を使ってるんです。
多分お茶が美味しくなったのは、そのせいだと思います」
『ほぅ!もう対応してくれたのか!これで心置きなく旨い酒が飲めるのぅ』
『リュウノスケくんさ?その“マナ酒”の薬効成分ってどうなってるの?』
「あぁ!心配して頂かなくても、“マナ酒”に関しては精力剤的な薬効成分を除去してありますのでご安心を。
それ以外の基本的な味に関しては大体同じにしてあるので、問題無いと思います。
“マナ酒”の薬効成分についても“お酒の神様”に確認して頂く事が用件の1つですね。
“お酒の神様”から“問題無し”の判定が出れば、晴れてウチの特産品として出荷と言うか、お土産予定品なんですよ?
なので何本か持って帰って頂きますので、後ほどお渡ししますね。
後“マナ水”も同様です。
こちらも精力剤的な薬効成分は、元が“マナ酒”なので無いはずですが、問題があるかも知れませんし。
私が実際に飲んだ感想と予想としては、滋養強壮と体力回復なんかの効能は“マナ酒”と同様なんですけどね」
『ふむふむ。旨い酒なら大歓迎じゃし、今の所、特に問題があるようには思えん。
が、確かに一応は“酒の神”に調べさせておくべきかも知れんの。“マナ水”も同様じゃな』
「はい。宜しくお願い致します。
で、全くの別件・・・とまでは行かないかも知れませんが、別件でご相談があります。
先ず、ルナ達が“神”になりました。まぁ下級神なんですけどね。
で、そのルナ達と私の神体との間に子供が出来まして、その子も恐らく下級神として生まれると思うんです」
『ちょっと待って!
ルナちゃん達が“神”になったのは、まぁ前の段階で核を持ってたから想像出来るからいいとしても、
もう子供が出来ちゃったの!?』
「それについては、ルナ達が完全に暴走したんですよ。
先日の話をルナ達も一緒に聞いて居たじゃないですか?
んで、“神の子”でも出生率が高いと知ってあえて“オド酒”を飲んで私の本体を襲ったって事が事の顛末です。
まぁ“オド酒”の回収処理を怠った私の責任でもありますけどね。
正直に言って、私自身にも身に覚えが無い子供になっちゃうしで、ちょっとモメたんですよ?
今は多少は落ち着いたと言うか、まぁ私が納得したので、“始祖の神様方に連絡を取った”と言うのが正直な所ですね。
その子らが他の世界へ影響を及ぼしたり、そもそもこの世界から出すつもりがありませんから問題は無いと思います。
まぁ恐らく下級神で生まれるとは思いますが、私の本体よりは弱いですからどうとでもなりますよ。
まだルナ達には言ってませんが、将来的に私の国の統治に関与させる人材にするつもりなので、その辺は勘弁して下さい」
『まぁ新しく神が誕生したとしても、他の世界に影響が無いなら別に良いがの』
「はい。それは承知しています」
『で?相談ってのは?
そこまで想定出来てるのなら、特に問題があるとは思えないんだけど?』
「単純に言ってしまえば、ルナ達の出産の手伝いをミーさん達にお願いしたいので、繋ぎをお願い出来無いかと。
無事に出産を終えられて年末に来られたとしても、その時点でお願いするよりは予めお話だけは通しておきたいので」
『なるほどのぅ。
確かに5人も出産するとなれば、人手も必要じゃろうて。
しかもリュウノスケは“引き篭もりの神”じゃしの。頼れる相手も限られる・・・という事か』
「はい。
出産直後にお願いするのは本当に申し訳ないとは思うのですが、可能でしたらお願いしたい。と言うのが本音です」
『その“人手”の中には美の神も含まれるのかい?』
「出来ればお願いしたいですね。ミーさん達も含めて、無理を言うつもりは全くありませんけどね。
何分、私自身が父親になった経験なんて無いですし、ルナ達も初産になりますからねぇ。
私やルナ達が神となって不老不死になったとは言え、正直不安なんですよ」
『あ~その気持ち、ちょっと判るよ。私ももうすぐ父親になる訳だしねぇ。
私の場合でも、お互いに上級神だし生まれるのも“神”だって分かってるけど、不安だよね。
了解了解。陸くん達に渡した“オド酒”の回収と交換ついでにミーちゃん達にも伝えておくよ』
「すみませんが、宜しくお願いします。
あぁそうそう。一応トウも従者訓練を開始したので、人手としては数えられる様になって貰うつもりです。
トウ。人化してご挨拶して」
【はい。承知致しました】
「・・・改めまして、この姿ではお初にお目に掛かります。トウで御座います。以後宜しくお願い致します」
『へぇ。トウちゃんのが人化したらこんな姿なんだね。こっちこそよろしくね』
『うむ。よろしく頼むぞ。で、用件としてはそれだけかの?』
「はい。
陸くん達に渡した“オド酒”を回収して貰って、代わりに“マナ酒”を渡して貰う事。
あぁ!ついでにミツハルさん達からも“オド酒”を回収したのなら、代わりに渡してあげて下さい。
“マナ酒”と“マナ水”の薬効成分なんかで、“オド酒”みたいに問題があるかどうかを一応確認して頂く事。
ルナ達の出産の際に、可能であれば手伝って欲しい旨をミーさん達に伝えて貰う事。
以上ですね。
それと、陸くん達から回収した“オド酒”に関しては、始祖の神様が処分するなりご自由にして下さい。
もう私には必要ありませんからね」
『うむ。どれも魂の神に任せて良い案件じゃの。頼むぞ?』
『はい。承知致しました。
回収した“オド酒”に関しましては、後日お持ち致します』
「私からは以上ですね。その後何か変化とかはありましたか?」
『もうそろそろ美の神もミーちゃん達も出産が近いぐらいかなぁ。
あぁ!そう言えば、ミーちゃん達も神としての核を持った存在にはなってたよ。
さすがにまだ神にはなってないと思うけどね。ミツハルくんも相変らず中級神のままだと思うし。
私からはそれぐらいかなぁ。始祖の神様は何かありますか?』
『むぅ。ワシは特に何かをしておる訳でも無いしな。のんびりしておるよ。
まぁ“オド酒”の存在を知っている一部の上級神を抑えるのが面倒なぐらいじゃな。
が、リュウノスケが新たに創った“マナ酒”があればそれも収まるじゃろ』
「そうですか。
あぁそう言えば魂の神様。以前お渡しした“不思議な水筒”を貸して貰えますか」
『ん?コレがどうしたんだい?』
「ちょっと拝借・・・『修正!』はいどうぞ。
一応今まででも十分美味しかったとは思うんですけど、使っている水を“マナ水”に変更したんですよ。
多分前よりも美味しくなっていると思うので、楽しみにしてて下さい」
『お!そりゃ有り難いね!有難う~』
『む?ワシは貰っておらんぞ?』
「あれ?始祖の神様にはお渡しして居ませんでしたっけ?まぁいいや。『出ろ!』
はいどうぞ。中身は単に此処で飲むコーヒーなんですけどね。
魂の神様にはかなり前にお渡しして居たので忘れてました。すみません」
『いや、構わんが・・・どうせなら中身を“マナ酒”にせんか?』
「ん~出来るとは思うんですけど、一応は仕事中の休憩用とかだったりするので、用途としては不適切かなぁ。
それに、せっかくのお土産品の希少価値が下がってしまうので・・・」
『むぅ。確かにそうかも知れんのぅ。
まぁ良いか。アレは此処で存分に楽しむ酒としておくかの』
「すみません」
『良い良い。お主の言う事も一理あるしの。
では用事も済んだ事じゃし、土産を貰って帰るとするかの』
「『出ろ!』とりあえず“マナ酒”と“マナ水”をそれぞれ20本づつあれば当面は足りますよね?」
『うむ。すまんの』
「いえいえ、こちらこそお手間をお掛けしてすみませんでした。
後は、ミツハルさん達からも“オド酒”を回収されたのなら、その補填分ですかね?」
『ミツハルくん達からは全部回収済みだから、全部で7本かな?後は陸くん達の分だね』
「了解です。んじゃ『出ろ!』・・・よし。とりあえずこちらの10本をミツハルさん達の分。
残りの20本づつを始祖の神様と魂の神様の分としてお持ち帰り下さい。
あと“マナ水”も同数お渡しして置きますね。分配量も同じで宜しくお願いします」
『有難うね~』
『すまんのぅ。帰ってからが楽しみじゃわい』
次々と瓶を何処かへ収納する2柱。
俺の持ってる亜空間収納みたいなスキルなんだろうか・・・?
『あ!そうだ!リュウノスケくんさ。せっかくだし、私とか美の神が滞在する予定の部屋にマーキングしても良い?』
「マーキングって・・・何をするんですか?」
『単純に転移先登録って感じかな?
もう私達には此処への出入りを自由にして貰ったから、簡単に行き来が出来る様にしようかと思ってね』
「あぁ!なるほど。
でしたらご案内しますよ。前に魂の神様がご一家で滞在出来る様に、客室も改装済みですしね」
『また何かいじったの?』
「単純に3人部屋を2つ潰して1部屋にして、4人部屋にしただけですよ。
後はベビーベッドとか必要そうな物も置いてありますけど、一応確認して貰った方が早いかな?」
『気を使って貰って悪いね』
「いえいえ。長期滞在されるなら、ご自由に改装して頂いて構いませんので、美の神様にもお伝え下さい。
そのマーキングとやらもその部屋にどうぞ。
一応来られる時は、応対とかも必要になると思うので、連絡だけはお願いしますね」
『了解。じゃ、早速案内して貰おうかな~』
「はい。こちらへどうぞ」
『ワシも良いかの?』
「構いませんよ?見られて困る様な部屋にはしてませんから」
3柱で例の4人部屋に移動。
で、部屋の中を確認した魂の神様から非常に感謝されました。
俺的にもかなり頑張って充実させたし、安全面にも配慮したから嬉しい限りです。
で、マーキングって言ってたけど、何やらぶつぶつ呟いて終わりらしい。
さすがに“動物的なマーキング”とかはしませんでした。まぁ当然か。
ちなみに、転移先としては相変らずリビングを通して来て頂ける様にお願いしておきました。
個人的に来て、すぐに帰るとかの場合は直接部屋に移動してもOKですけど、一応はね。
『色々配慮してくれて有難うね~。
それじゃ、そろそろお暇しましょうか。始祖の神様も宜しいですか?』
『うむ。それじゃぁまたの』
「はい。また年末に。
あぁ!美の神様やミーさん達に安産を祈っていますとお伝え願います。
それと、もし問題が無い様なら“マナ水”を有効活用して下さいね。その件についてもミーさん達に伝言をお願いします。
滋養強壮とかの薬効成分って産後の方には丁度いいでしょうから。まぁ“他に問題が無ければ”ですけど」
『了解。色々と有難う。それじゃ、またね~』




