第141話 いつもの日常に戻れ・・・ませんでした
「・・・あぁ!お話は変わりますが、主様と私共の子の名前についてなのですが、主様が考えて頂けませんか?」
「は?」
「ですから、主様と私共との間に出来た子供の名前を付けて頂きたいのです」
「いやいやいやいや。ちょっと色々突っ込みどころが満載すぎて訳が判らないんだけど?」
「それほど難しい話なのですか?」
「唐突過ぎて理解が追いついて無いっての!
“俺とお前達の間に子供が出来た”だぁ!?出来る訳ないでしょうに!」
「いえ、確かに出来ましたよ。“完全鑑定”で私共を見て頂ければ確実かと思いますが?」
「あーまぁ確かに。んじゃ『完全鑑定!』」
・・・まぢで?
完全鑑定で見たルナ達の状態異常欄にはしっかりと・・・。
“状態:正常(妊娠 3日目 父:リュウノスケ)”
ってなってました。ちなみに全員同じ。
先日の乱交騒ぎのせいか!?でも分体だと子供が出来無い記述にしてたはずだし・・・。
・・・ってあれ?今日は6月24日だし、日数的に考えても先月の乱交騒ぎとは別件って事?
全員の妊娠日数も同じって事は、また乱交騒ぎが起きたって事だよな?
しかも今の俺って名前はリューノだし。・・・って事は、今度は本体が襲われた!?
「・・・とりあえずルナ達はちょっと待って。トウおいで~」
寄って来たトウを抱っこしてモフり倒して癒されつつ、状況把握に努めます。
正確に言うなら、パニック状態からの現実逃避中。
でもまぁ考えない事には正解が出ない訳で・・・。
ルナ達全員が妊娠したって事は、また今回も全員で俺の本体を襲ったんだと思われる。
それは間違い無いんだと思う。ルナ達が妊娠している子供の父親の名前が本体の俺の名前と同じだし。
つーか、俺がこの世界を創造する初期段階から一貫して、固有名詞に関しては“神としての俺”と被る可能性があるから、
“日本人的な固有名詞を名前に付けられない”ってイメージを持ってるんだよねぇ。記述はしてないけど。
欧米風とか中東風とかアジア風なのはOKだけど、日本人的な名前だけは付ける事が出来無いはず。
そうじゃないと、モノリスの書の記述に影響を与えられる存在が生まれる可能性が否定出来なくなるし。
要は“神として存在するリュウノスケという名前の存在”が誕生する可能性って事ですね。
適当に付けた様でも、ルナ達の名前に関しても、その基本方針から逸脱しない様にだけは気を付けて名前を付けたしね。
玄武や青龍達四聖獣に関しては、種族名と同じにしただけだから、一応問題無いと思ってます。
で、その前提が崩れてないならば、俺と同姓同名の別人って事も在り得ない訳で・・・。
となると、幾つか疑問点が残るんだよねぇ。
まず第一に、以前俺を襲う事を明確に禁止したって事。
万が一、またルナ達が暴走したとしても、俺がちゃんと“命令”として禁止した事を破るとは思えない点。
あの命令に関しては、ちゃんとルナ達も了解したはずだし、その辺は信用してもいいと思う。
となると、俺側で何か見落としがあるのかも・・・。
第二に、神の子として生まれるのは低確率のはずなのに、全員が同じ日に受胎したって事。
なので、可能性としては“オド酒”を使った可能性が非常に高い。と言うかそれしか無いと思うんだよねぇ。
大体、俺の本体って寝たきり状態のはずだから、性的に興奮状態になるとは思えないし。
俺(の本体)が“オド酒”を飲まされない限り、そういう事が出来るとは思えないのですよ。
んで、こちらも同じく俺に対する使用は禁止してるし、ルナ達もそれに関しても了承はしてたはず・・・。
第三に、そもそも“オド酒”をどうやって入手したのかって事。
確か“オド酒”の飲酒禁止を言い渡した時は“善処する”とかって誤魔化してたから、
“オド酒”を飲んだ可能性がより高くなった訳だけど、そもそもの入手経路自体が不明過ぎる。
俺が“ハメ殺された”後に酒蔵からは消去したはず。だったらコピーする事も出来無いはずなんだがなぁ。
原酒の保存場所には鍵が掛かってるし、複製魔法は片手で触れる事が条件になってたはずだから、
鍵を開けない限り原酒からのコピーは不可能なはずなんだよな。
う~ん。何を見落としてる?もしかして、他にも俺の知らない方法があったのか??
相変らず頭の中は軽くパニック状態ですわ。
かろうじてトウの肉球プニプニしてる心地良い感触で平静を保ってる感じ。
「・・・落ち着かれましたか?」
「まだ色々と混乱してるが、とりあえずは確認したい事が幾つかある。正直に答えろよ?」
「ご心配なさらずとも、私共が主様に“嘘”を吐く事は御座いませんわ。
事と次第によっては黙秘する事があるやも知れませんが、こと今回に関して黙秘する様な事は御座いません」
「ならいい。とりあえず1つ目。お前らは俺の本体を襲ったか?」
「はい。私共全員が神としての主様と交わらせて頂きました」
「それに関しては、以前“禁止すると命令した”と思うが、忘れたのか?」
「その様な命令は受けて居りませんね」
「いや、ちゃんと言っただろうが!んで、お前らも了承したはずだぞ!」
「お言葉を返す様ですが、確実にその様な命令は受けて居りませんし、了承もして居りません」
俺は訳が判らずイライラ。ルナ達はニヤニヤしてます。
くっそう何だ?何を見落としてる??
広くなったソファーに両膝を立てて座って、トウを向かい合わせに抱っこして肉球をプニプニ。
若干トウの目が“憐れみ”って感じの目をしてる気がする・・・。
「じゃぁ2つ目。“オド酒”を使ったか?」
「はい。使わせて頂きました」
「どうやって手に入れた?」
「先月、主様と交わった時の事を覚えて居られますか?」
「俺を“ハメ殺した”件だろ?大体覚えてる」
「でしたらお判り頂けるかと。
その後、その時の詳細につきましてもご説明させて頂きましたし」
「いや、答えになってないだろう?俺はどうやって“オド酒”を手に入れたのか聞いているんだが?
あの件とその後の始祖の神様達からの説明で“オド酒”が色々と問題があるからって酒蔵からはとっくに消去したんだぞ?
どうやったらお前らが飲めるんだよ?
大体問題があるからって、“オド酒”を飲む事は禁止したはずだしな。
まぁお前らは“善処”とか言って濁してたが」
「あら?お気付きになられませんか?」
「もういちいち聞くのも面倒臭いから、洗いざらい事の顛末を全部話せ。
昔も言った記憶があるが、俺はお前らほど頭が良くないって言ってるだろうが!」
「はぁ・・・仕方が御座いませんわね。
では、私共の子を認知し、名前を与え、育てる事に同意して頂けるのでしたら、今回の顛末を全てお話致します」
くっそ~っ!完全に俺の方が負け決定な感じ。
慰めてるのか、トウがてしてし俺の額を肉球パンチしてきます。
今の味方はトウだけだよ。これからも一緒に強く生きていこうね・・・。
「まぁ本当に俺の子だって言うのなら、仕方無いだろう。
せっかく宿った命なんだから、気に入らないからって殺したり見捨てる様な真似はせんよ。
襲われたとは言え、ヤル事はヤっちゃったんだし、そこまで甲斐性無しになったつもりも無いからな。
ただ、“俺の与り知らない所で俺の子が生まれた”って事が気に入らないだけだ。
分体の方の子だって言うのならまだ納得が出来るが、あっちは子供が出来無いはず。
で、俺の知らぬ間に本体が襲われて“子供が出来ました~”って言われて簡単に納得出来るはずも無いだろうが」
「では、主様のお気持ちは別として、先程の条件には同意して頂けるのですね?」
「まぁ仕方無いだろう。
お前らが俺の命令を無視したとは思えないし、そうなるとどうやって俺の子を成したのか想像がつかん。
今後の参考の為に、詳細を聞かせて貰おう。
ただし!
今回と同じ方法で俺の子を作る事や、お前達が勝手に“オド酒”を飲む事を絶対に禁止する。
今後は神としてお前達と交わる事があるとしたら、それは俺自身にその意思がある場合限定とする。
それぐらいは了承しろ。でなければ話にならん。
それが受け入れられないならば、この世界の理として“神には子供が出来無い”って記述を追加して、
絶対に“神の子”が生まれない世界にするからな」
「それは残念で御座いますが・・・少なくとも、この子を認めて頂けて良かったですわ!」
愛おしいようにお腹をさすりながら、ルナ達にっこり。
一方の俺は交換条件を出したものの、実質負けたのでがっくりです。
とりあえずとっととネタ晴らしをしてくれませんかね?
急展開&消化不良&予想外過ぎてストレスだわ・・・。




