第134話 閑話 神様って何?
リザアース暦1001年1月1日(神)。
只今風呂上りで男神4人。バーカウンターで酒盛り中で御座います。
俺とルナの関係VS魂の神様と美の神様の関係の“醜い”言い争いも一段落。
今はまったり雑談中。
「ところで始祖の神様。
今回私って上級神になったじゃないですか?何か責任とか新しく発生するんですかね?」
『む?お主はこの世界をまだきちんと統治出来て居らんのじゃろ?
だったら今は別に何かを求める事も無いぞ?今後どうなるかは分からんが』
「あぁそうなんですか。とりあえず良かった~」
『何じゃ?そんな事を気にしておったのか?』
「ええ。
私が知っている上級神って魂の神様と今回新しく来られた美の神様だけなんですよ。
お二方とも何かしらの“役目”みたいなのを担って居られるみたいなんで、私もそうなるのかな~?と」
『ふむぅ・・・お主も何か“役目”が欲しいのなら考えんでもないが?』
「いやいや、別に何かしたい訳じゃないんですよ。単に気になっただけで。
そもそも、なんですけど。
上級神とか下級神とかの区別すら良く分かってませんからね、私。
せっかくの機会ですし、その辺りのお話を聞かせて頂けませんか?」
「あ!自分もそのお話には興味がありますね。
自分も中級神になりましたけど、特に何も指示を受けていませんから」
『まぁ構わんぞ?・・・むぅ。何処から話せば良いかのぅ』
「せっかくですし、始祖の神様の誕生の所からお願い出来ますか?
“始祖の神様がどうやって誕生したのか?”とかも興味がありますし」
『ふむ。まぁよいじゃろ』
とりあえずミツハルさんが作ったマティーニで、口を潤してから語り始める始祖の神様。
『ワシが誕生と言うか自意識を持った時には既にこの姿じゃった。
特に何かせねばならんとか、明確な“目的”や“役目”も無かったのぅ。
あと何かしらの“欲求”も無かったな。性的な物や神としての嗜好品なども全て含めての。
ただ漠然とじゃが、“ワシがこの世を治める存在である”と言うのは自意識を持った時点であったな』
「と言う事は、始祖の神様は“無”から生まれたって感じなんでしょうか?」
『いや分からん。ただ何となく気付けば既にワシは“ワシとして存在していた”と言う感じじゃったの』
「それってどういう状況なんでしょうか?
何処かの世界で突然生まれたとか、そういう事なんでしょうか?」
『恐らくそれは無いの。周りは完全に闇の世界じゃったし』
「闇の世界ですか?」
『リュウノスケくんさ。何度か神体で神力の使い過ぎで気絶したりしたじゃない?
あの時の意識がある世界を想像したら、多分分かりやすいんじゃないかな?
あんな状態の世界だったんだよ最初はね』
「あ~アレかぁ。確かに“闇の世界”って感じですねぇ」
「自分はおいてけぼりですか?」
『ははは。ミルハルくんはそこまで無理無茶無謀をしないからね。
まぁ、単純に真っ暗で上下左右も分からない世界を想像したらいいと思うよ?』
「なるほど」
「ってか、何でそんな世界を魂の神様が知ってるんですか?」
『それはアレじゃの。ワシが自意識を持った後、一番最初にした事が魂の神らを生み出したからの』
「え!って事は始祖の神様って魂の神様のお父さんって事ですか!?」
『ごめんリュウノスケくん。その表現は完全に間違ってる訳じゃないけど、適切じゃないから辞めて』
「どういう事ですか?」
『ん~微妙に違うと言えば違うんだけど、リュウノスケくんの創造魔法あるじゃない?
私達はあれで生み出された存在って感じかな?
リュウノスケくんが創造魔法で魂の器を創ったら、ソレってお父さんとは思わないでしょ?
大雑把に言えば、そういう事だね』
「へ~。まぁ確かに。と言うか、“私達”ですか?」
『そそ。始祖の神様が最初に生み出したのは私も含めて3柱なんだよ』
「は?上級神が3柱って少な過ぎませんか?魂の神様と美の神様と後1柱だけって事ですか?
・・・あれ?美の神様って魂の神様よりも年下だったはずじゃ・・・???」
『あ~それね。
分類的に上級神ってだけで、正確に言えば私達3柱は言ってみれば“原初の神”なんだよ』
「どういう事です?」
『それはワシから説明した方が早そうじゃな。
ワシが自意識を持った時点で“この世界を治める存在である”と認識して居った話はしたじゃろ?
で、じゃ。
ワシが最初に創ったのは“この世の理を司る神”を創った。
そやつに全ての世界の創造を任せる為にの。
次に“全ての物体を司る神”を創った。
簡単に言えば全ての物や生命を司る神じゃな。
最後に“全ての魂を司る神”を創った。
この世界で全ての魂を持つ者を司る神じゃな。
このやつらを最初に作った事が、ワシがワシとして一番最初に行った事じゃ』
「知らない神様が出てきましたけど・・・その方々も上級神なんですか?」
『分類上はそうだね』
「それだと中級神とか下級神って、どういう存在なんですか?」
『ぶっちゃけ、上級神も含めてただの区別じゃな。
自身が持つ力や“神としての”影響力の区分けじゃよ。基本的には“神である”という事に変わりはないぞ』
「ふ~ん。あ、いや、そうでなくて。
そもそも“中級神とか下級神ってどうやって生まれたのか?”がお聞きしたかったんです」
『面倒じゃが、順を追って説明するかの。
最初に創った“この世の理を司る神”の力で宇宙が誕生したんじゃよ。
自身の神力を全力で使ってな。
未だに世界を広げ続けて居るから、誕生してから暫くしてからは後は、ずっと昏睡状態じゃがの。
で、昏睡状態に陥る前に、その中心にワシの居住する世界を創らせた。
其処がいわばこの世界の中心じゃな。“この世の理を司る神”もそこで眠っておる。
次にそのワシの居住する世界に“全ての物体を司る神”の神力で生命なんかを誕生させた。
当然居住する建物なんかも同様じゃな。
その後、“この世の理を司る神”と同じく、無限に広がる世界に生命や物が誕生出来る環境を創り続けておる。
そのせいで“全ての物体を司る神”も“この世の理を司る”同様に、それ以来ずっと昏睡状態じゃがの。
最後にワシの居住する世界全ての生物に“全ての魂を司る神”が魂を宿らせた。
ちなみに、じゃが。
最初の輪廻転生の輪は誰が創った訳でもなく“全ての魂を司る神”の誕生と同時に、ワシの居住する世界に出現した。
何故かは分からんがの。
一応神々の中では魂の神を含めてこの3柱は“原初の3柱”と呼ばれておる。
無論、それらの力はワシ自身で行う事も可能じゃったが、より手軽な手足となる存在が欲しかったからの。
じゃからワシ自身の力を使って生み出した訳じゃ』
「ほ~。始祖の神様直系の神様はその3柱の方々って事ですか」
『そうだよ?一応私はこれでも偉いんだから敬ってね?』
「いや、始祖の神様の方が上でしょうに。まぁいいですけど。
で、本題がまだです。
改めてお伺いしますが、中級神とか下級神の存在ってどういう存在なんですか?」
『焦るでない。ちゃんと説明してやるわい』
ミツハルさんから追加のマティーにを作って貰って一口。
『ワシの世界の全ての生物に魂を宿らせた話はしたじゃろ?』
「「はい」」
『そやつらは魂が宿った直後から、いわば下級神と言える存在じゃった。
まぁ1000人ぐらいは軽く居ったからのぅ。多少の差はあれど、それほど力も無かった訳じゃ。
で、じゃ。
せっかく“この世の理を司る神”や“全ての物体を司る神”が頑張って世界を広げて居るのに、
ただワシの世界で遊ばせておくのも勿体無いと思っての。
それぞれにリュウノスケやミツハル達同様に世界を与えて統治させ始めた訳じゃ。
まぁ最初はお主らと同様に四苦八苦しておったがの』
「「へぇ~」」
『そうこうして永い間が過ぎるうちに、徐々にじゃが力を持った者が現れ始めた。
正確には神としての核と格が上昇した者の事じゃな。
そういった者達に任せておった世界は、共通して安定した世界を創って居ったんじゃ。
じゃから、新たに別の世界を兼任させ始めた。
ワシ自身でも謎なんじゃが“この世界は安定させ、成長させるもの”だと認識しておったからの』
「・・・1つ確認させて頂きたいんですけど、始祖の神様って“全知全能”ですか?」
『いや、違うのぅ。“全知全能”じゃったら、もっと効率良く世界を安定させて成長出来るじゃろ?
じゃからワシは“全知全能”であるとは言えん。
まぁ無駄に長生きだけはしとるからな。知識は豊富かも知れんが』
「・・・もしかして、始祖の神様も“より上位の神様に創られた存在である”って可能性もあるんじゃないですか?」
『否定は出来んの。ただ、肯定するにも根拠が乏し過ぎる。 要はワシですら“分からん”としか言えんわ』
「なるほどねぇ・・・」
「と言う事は、自分達中級神に関しては、当初は“複数の世界を治める存在”だったと言う事でしょうか?」
『そうじゃな。
ただ、下級神や中級神が治めておった世界の中でも、勝手に下級神が誕生する様になったからの。
中級神の役割としては、下級神の取り纏め役と言った所か。
それら中級神を統括するのが上級神の役割となった訳じゃよ』
「あれ?それなら、お酒の神様とか美の神様ってどういう存在になるんですか?」
『あ奴らに関しては、単純に“1つの事に特化した神”と言えるな。
元々は各々の世界を統治する下級神じゃったが、
1つの事に特化し過ぎた余りに中級神や上級神として統括するには能力不足じゃったからの。
じゃから“役目”として、世界を統治する権限を放棄する代わりに、特化する事を許可した訳じゃよ。
“世界を成長させる”と言う目的であるならば、特化した神も必要じゃろうと思ったからの』
「へぇ・・・。
とりあえず纏めると、
1つの世界を統治する下級神。
2つ以上の世界を統治する。若しくは、複数の下級神を取り纏める中級神。
複数の中級神を統括する上級神。
を基本として、
1つの物事に特化した場合は、世界を統治しない代わりに自身の特化分野に専念できる中・上級神って感じですか?」
『大体そんな感じじゃな』
「そういった分類だったら、自分としては疑問を感じるのですが?」
『ん?ミツハルくん。何処がだい?』
「自分やリュウノスケさんをわざわざスカウトしなくても、中級神や下級神って余っていたんじゃありませんか?」
「あ!確かに!」
『そうじゃな。確かに余っておった。
じゃがのぅ。元々が単一の世界で生まれた下級神が作った世界じゃったからな。
思想や方向性などは、どの神も似たり寄ったりじゃったんじゃ。
そこでじゃ。
“この世の理を司る神”や“全ての物体を司る神”が大量に創って世界が余っておる事じゃし、
新しい思想や方向性を持った者を神とする事になったんじゃよ。
ある程度実績のある安定した世界だけでなく、別方向からも新しい世界の構築を模索した訳じゃな。
“成長”と言う意味では、単一方向だけではダメじゃしのぅ』
「「なるほど」」
『問題となった輪廻転生の輪の許容限界に関しては、
“原初の3柱”が協力する事で、輪廻転生の輪の模倣品製造が可能な事も判ったしの。
まぁ結論としては、予想以上に上手くいった。と言えるな。
過去に前例の無いほど短期間で昇格した神が続出じゃからのぅ。
ましてリュウノスケなぞ、上級神になっておる。
ある意味、大成功じゃったな』
「あ~話が一番最初に戻りますけど、本当に“役目”とか負わなくて大丈夫なんですかね?」
『要らんな。現状では中級神や上級神でさえも余っておる。
いちいち“役目”やら“特化”させる方向を考える方が面倒臭いわい。
やりたい事があるなら別じゃがの。
お主らは確かに格としては昇格しておるが、“役割”としては下級神と一緒じゃよ』
「了解です。
あ~ちなみに、ですけど。魂の神様とか美の神様って普段何処に住んでるんですか?」
『2柱とも自身の世界を持って居らんからの。特定の居住地が無い。
ここ暫くは、美の神も暇なのかちょくちょくワシの酌に来るぐらいで、普段何をして居るのか知らんなぁ。
魂の神は輪廻転生の輪の改良をしておる様じゃが、お主はいつも何処に居るのじゃ?』
『私は“この世の理を司る神”の所か、各地の輪廻転生の輪の状況確認なんかで飛び回ってますね。
“この世の理を司る神”も昏睡状態ですが、意識同士での交流は可能ですから、色々と意見交換しています。
あと、“全ての物体を司る神”の所にもちょくちょく行ってますね。
こっちも同様で輪廻転生の輪の改良についての相談や意見交換が主です。
と言いますか、“原初の3柱”が協力しないと輪廻転生の輪がいじれませんからね。結構手間なんですよ。
後は各地の輪廻転生の輪の状況確認と、問題や変化が無いかのチェックが主ですよ。
今回の件で輪廻転生の輪が増えたせいで、移動ばっかりしてますよ。
しかも僻地希望者が多かったせいもあって、面倒ですね本当に。
あ、ちなみにだけど、ちゃんとリュウノスケくんの所が一番の僻地だから。
リュウノスケくんの所に来ればのんびり休めるからいいけど、日帰りとか勘弁して欲しいぐらい僻地だからねぇ』
「あ~ご配慮有難う御座います?
所で魂の神様か美の神様がお子さんを作った場合ってどうなるんでしょうね?」
『リュウノスケくん。その話をまたするのかい?』
「いやいや、今回は別個で聞いてますって。
どちらかがお子さんを作った場合はどうなるのかな~?と思いまして」
『むぅ。そうじゃのう・・・。
2柱とも自身の世界を持って居らんからの。
と言うか、そもそも子を成せる可能性が低いからの。気にする必要もあるまいて』
「そうなんですかねぇ・・・」
『ほほぅ。リュウノスケくん。こっちを見ながらその発言。受けて立とうじゃないの!』
第2(多分。もしかしたら3以上かも)ラウンド開始のゴングが鳴りました。
再び“ギャーギャー”言い争う俺と魂の神様。
それを酒の肴代わりに、余裕の表情で飲み始める始祖の神様とミツハルさん。
いや、普通気にならない?可能性は全く無い訳じゃないんだし。
あ、俺もそうなんだよねぇ・・・。ルナ達の事どうしよう・・・。




