第131話 想定外
神様方が到着して挨拶を交わした後、それぞれの客室へご案内。
そこで驚愕の事実が発覚。
あっさりと魂の神様と美の神様がヨリを戻したらしいです。
きっかけとしては、去年の出来事が決定打だったらしい。
狙ってやった俺としても喜ばしい限り。
・・・なんだけど、色々と予定が狂ってしまった。どうしよう。
とりあえず俺の問題は脇に置いて置いて、魂の神様と美の神様は今回から同部屋で過ごして頂く事になりました。
魂の神様をいじるネタが減った・・・。
むしろ今年からは、俺がいじられ役になる可能性が高まった感じ。
いいもん!始祖の神様と2人で独身貴族を気取るから!
そんな事がありつつ、晩御飯には少し早いので単純に飲み会としてスタート。
まだ夕方前なんですけどね。
神様連中で集まって飲み会です。
ミーさん達はルナ達へ軽く従者教育をお願いしつつ“ついでに飲み会して下さいね?”な感じ。
「それにしても、魂の神様と美の神様が元の関係に戻ったのは驚きですね。
私としてはもう少し時間が掛かるだろうと思って居たのですが・・・」
『それに関してはリュウノスケさんに感謝ですわね。後ミーさん達にもですが。
リュウノスケさん達に後押しして頂けたからこその結果だと思います。
感謝の念しかありませんわ』
「魂の神様も割りとあっさり元の鞘に戻られましたよね?」
『ま、ね? 別に今までも美の神が嫌いだった訳じゃ無いから』
くっ!淡白なリアクションしやがって!いじれないじゃないか!
「それに関して、始祖の神様はどうお考えで?」
『まぁワシからしたら、単純に元の鞘に戻っただけじゃからの。
当人同士の問題とは言え、じれったくてしょうがなかったわい。
正直前々から“とっとと元の鞘に戻れ”と言いたかったぐらいじゃしの』
「ふむぅ・・・。となると、今後どうなるんでしょうね。
始祖の神様はその辺はどうお考えでしょうか?」
『まぁなるようになるじゃろ。今気にしても仕方が無い事じゃしの』
『ん?リュウノスケくん。何の話だい?』
「いや、当然魂の神様と美の神様の間に出来るかも知れないお子さんの話ですよ?」
『あ~。まぁ神の子って出生率自体が低いからね。
特に気にしなくてもいいんじゃないかな?』
・・・やばいかな?
オド酒飲ませちゃったら、出生率が結果的に上がりそうな気がするんだけど。
一応始祖の神様だけには伝えておこう。
「すみません。始祖の神様?少し宜しいでしょうか?」
『ん?何じゃ?』
「ちょっと内密に相談したい事がありまして・・・。
バーカウンターの方にお願い出来ますか?」
『内密な話?まぁ構わんぞ?』
そそくさと始祖の神様と2人して、バーカウンターに移動。
一応追加でお酒とつまみは出しておいたので、あっちのリア充3柱は勝手に飲んでて下さい。
「え~っと実はですね、今までは私が元居た世界のお酒しか出して居なかったじゃないですか?
それでですね?せっかくだし、この世界の特産品代わりにお土産用として新しいお酒を作ったんですよ」
『ほぅ!それは旨いのか?』
「まぁまだ試作段階ですけれど、確実に旨いですね。
ただちょ~っと問題がありまして・・・」
『む?』
「ただのお酒じゃなくて、薬酒なんですよ。しかも精力剤的な。
まぁ単純に滋養強壮剤って言ってもいいんでしょうけど。
ただ、まだまだ試作段階のせいか、薬効成分がかなり強力でして・・・」
『む?それの何が・・・あ!』
「お気づきになられました?」
『もしかして、出生率に影響しそうなほどなのかの?』
「恐らくは。試飲されますか?さすがに少量にして頂きますけれど」
『うむ。旨い酒なら興味はある。が、ちと怖いのぅ』
「『出ろ!』どうぞ。
一応元のお酒は幻の酒なので、ベースとしてはソレになります」
コップ酒になりますが、1杯だけ創造魔法で作って提供。
『ふむ、頂こう・・・んぐっ・・・っ!!!旨いっ!!』
「ちょっ!声が大きいです!」
始祖の神様の“旨い!”発言で、全員から注目を浴びる俺と始祖の神様。
愛想笑いして、なんとか誤魔化します。
が、絶対に誤魔化し切れてないとは思う。
今はいいけど、後で絶対に追求されるだろうな。
『すまんすまん。しかしこの酒は実に旨い。
んぐっ・・・んぐっ・・・んぐっ・・・ぷはぁ~。 くぅ~っ。たまらんのぅ。
この酒は過去に飲んだ事の無いほどに旨い酒ではないか?
これの何処に問題が・・・む?』
おもむろに自分の下半身に視線を落とす始祖の神様。
気付きました?コレのやばさに。
と言うか、始祖の神様でもそうなったか。これはマズいかも。
『おい。リュウノスケよ。これは実に“けしからん”酒じゃな?
じゃが、何やら力が漲るようじゃ。ワシでも体が熱くなってきおったわい』
「あ~。やっぱり始祖の神様でもそうなっちゃいましたか・・・」
『ん?どういう事じゃ?』
「いや、私の“分体”では飲んでみたんですけど、“神体”ではまだ飲んでないんですよ」
『ワシで試した。と言う事か?』
「御気を悪くされたなら申し訳ありません。
が、始祖の神様って意識を持った時点で“性欲”が無かったとお伺いして居ましたので。
このお酒。今は“オド酒”って呼んでるんですが、それを飲んで頂いた結果が知りたかったんです。
“神体にも影響を与えるのかどうか”と、“もし影響があるのならば、どの程度なのか”ですね。
結果は・・・まぁ始祖の神様のご様子からして、普通に“人類”が飲んだ場合と違いが無さそうですね。
これで“強力な精力剤”って点は決定かな?
“性欲”が無いと仰って居られた始祖の神様でも“性欲”を刺激するみたいですし。
ちなみに、それでもまだまだ第1段階です。
今以上に飲むと、今度は性欲自体を抑えきれなくなると思います」
『これでもまだマシじゃと?』
「はい。
少量ならば、まだ滋養強壮剤としての効能が表面化する程度ですが、量が過ぎると性欲が止まらなくなります。
で、本題ですが。
コレを大量に魂の神様か美の神様に飲ませたら、確実に子を成せるぐらい猛るかと・・・」
『むぅ。
もう永い事神として存在して居ったが、たかが1杯でこれほどとは・・・。
お主の言う通り、強力な薬酒なのじゃろうな。
確かに量が過ぎればあ奴らならばそうなるやも知れん。
じゃが、この旨い酒をあ奴らに飲ませないのもどうかと思うぞ?』
「その辺の判断をお伺いしたかったのです。
正直、このお酒をお2人に飲ませてしまったら、新しい神が誕生する可能性が高いのでは?」
『そうじゃな・・・。
“性欲”が無いはずのワシですらこの状態。
相思相愛の相手が居るなら、盛っても仕方が無いかのぅ。
だとすれば、確かに“全ての魂を司る神”と“美を司る女神”だと新しい神が誕生しそうじゃな。
第1段階と言う事は、リュウノスケの“分体”では“色々と試した”と言う事か?』
「“試した”と言うより“最初からかなりの量を飲んだ”が正解ですね。
試作品として試飲したら“美味しいお酒が出来た!”と思って、嬉々として飲みまくりましたから。
その時以降は自重して一切口にして居ませんけど」
『で、第1段階以降はどうなるのじゃ?』
「順を追って説明させて頂きますと、最初は単純に強壮剤代わり程度の効能がありました。
疲労回復とかの方向ですね。力が漲る感じです。疲労とかも含めた回復薬とかそんな感じですね。
で、飲み進めると、一気に性欲方向に特化する感じでした。
しかも疲れ知らずと言うか、性欲の衰え知らずと言うか・・・。
まぁとにかく歯止めが利かない感じになります。
お恥ずかしい話になりますが、その時は一晩中自分で処理しても、完全には満足出来無いほどでした。
しかも疲れ知らずなので、何度果てても衰えないと言うか・・・。
まぁ詳細はかなり私が情けない話になりますので、割愛させて下さい」
『要は飲めば飲むほど“性欲とその持続力が高まる”と言う事かの?』
「概ねそんな感じです。
そんなお酒だったので、本当なら魂の神様にこっそり飲ませようかと思って居ました。
今回神様方が来られるまでの私の予定としては、オド酒を使って、
“美の神様とヨリを戻すきっかけになったらいいな~?”程度に考えて居たんですがね?
正直薬効成分が強すぎるのと、元の関係に戻った以上、
後は自然の成り行きに任せた方がいいのではないかと思いまして。
あ。ちなみにですが、ミツハルさんの方は今の所飲ませる方向で考えて居ます。
生まれるお子さんも“神の子”にはなるのでしょうが、“神”として誕生する訳ではないでしょうから。
以前少しだけお伺いしましたが、
“神”として誕生しないのであれば、それほど影響も無いと思いますので」
『確かにの』
「でまぁ結論としては、新しい神の誕生を認める・・・と言うか、許容するか否かの話になるかと。
その辺りのお話を“神々の祖”で居られる始祖の神様に予め相談しておかないと。と、思いまして。
後、出来れば始祖の神様としてのご判断を仰げればな。と」
『むぅ。難しい判断じゃのぅ・・・。
普通に下級神が増える程度であれば、何処かの世界を統治させれば良いのじゃが、上級神同士の子となるとな』
「やはり誕生時点で、中級神以上の神として誕生するのでしょうか?」
『恐らくそうなる可能性は低く無いじゃろうな。
しかし“中級神同士の子”であれば、前例はあるが。上級神同士は前例が無いからのぅ』
「ちなみにですが、“中級神同士の子”の場合はどうなったのですか?」
『誕生時点で中級神としての核を持った子が生まれたぞ?
認識としては未熟じゃったから、格としては下級神じゃったがの。
そやつらの場合は、両親共に下級神から昇格して中級神となった者じゃったから、
親である中級神の治める世界を行き来して暮らしておる。
今でもそんな生活をしておるはずじゃ』
「では、治めている世界を持たない。
しかも上級神である魂の神様方のお子さんの場合はどうなりますか?」
『お主が危惧している通り、それが難問じゃな。
先ずあ奴らには育児をする為の場所が存在せん。統治する世界を持って居らんからの。
次に、生まれてくる子の“神としての”核も格もどうなるか、ワシにも判らん』
「やはりこれは魂の神様方にお出ししない方が良いでしょうか?」
『むぅ。それはそれで、これほどの酒を独占する事も問題となろう。
・・・リュウノスケよ。どうなろうと責任はワシが持つ。あ奴らにも飲ませてやれ』
「宜しいのですか?」
『仕方なかろう。
ワシらだけで飲むには勿体無さ過ぎるし、秘匿するならばワシも飲めん事になる。
それはこの味を知った以上、正直我慢出来ん。
“全ての魂を司る神”らに子が出来たとしても、ワシが何とかしよう。
まして秘匿なぞしようものなら、万が一バレた時に酒の神からワシが責められるしの。
どちらにせよ手間になる事は変わらん。ならば開き直るしかあるまいて。
その辺は酒の神に渡してしまえば済む話でもあるしな。
しかしリュウノスケも厄介な代物を作ってくれたものじゃな。まぁ旨い酒じゃし、責めるつもりも無いが』
「申し訳ありません。しかしまだ問題点があります」
『まだ何か問題があるのか?』
「はい。私は相互不干渉を基本としています。
今まで“お土産”としてお渡ししていた酒類は私の元居た世界。いわば“地球産”でしたので問題無かったのですが、
このお酒に関しては、加工品である性質上、私の世界由来の物となります。
その為、先程仰られた“お酒の神様”へ渡された場合ですが、相互不干渉に抵触する恐れがあります。
私と致しましては相互不干渉を崩すつもりが御座いませんので、何かと問題が発生する可能性が否定出来ません。
それらの問題に対しても、始祖の神様に対処をお願いしても宜しいでしょうか?」
『そうじゃったな。お主は“引き篭もりの神”じゃったのぅ。
・・・相判った。この酒に関して何らかの問題が起こった場合の対処も引き受けるとしよう。
当然その代償として、ワシには存分にその酒を飲めるように取り計らえ。良いな?』
「はい。そういう事でしたら問題ありません。
何かとお手数をお掛けする事となるでしょうが、宜しくお願い致します。ただ・・・」
『む?“ただ”何じゃ?』
「失礼かとは思いますが、始祖の神様の性欲を刺激した場合、お相手が居られないのでは?」
『あ』
呆ける始祖の神様。
いやいや、俺が一番危惧してたのはその点なんだって。
だから始祖の神様だけに話を通してるんだし。
俺はいいですよ?元々飲まない様にするつもりだったし。
もし飲んだとしても、最悪自己処理すればいいだけの話なんだから。
多分だけど、“分体”で飲んで“神体”に戻れば済む話な気もしてますからね。
でもね?“最高位神様”である始祖の神様が自己処理とかちょ~っとどうかと思う訳ですよ。
しかも言ってみれば、よそのお宅で自己処理するとか。余りにも・・・ねぇ?
だからって、ルナ達を差し出せとか言われたらどうしよう。って感じだし。
まぁ言われても全力で拒否りますけど。
ちなみにですが、俺が飲んだとしてもルナ達を相手に致す事は考えて居ません。
俺から求めるなら、お酒とか魅了魔法に頼らずにちゃんと抱いてやりたいと思って居ます。
その後、始祖の神様と色々どうするかを相談。
その結果、とりあえず元旦の夜まではオド酒は出さない事に決定。
一応の解決策も決まりました。
正直、あんまり乗り気はしない解決策だけど、俺が作っちゃったお酒だし。一応の責任は取ります。
かなり嫌なんだけど・・・。
そうこうしていたら、既に晩御飯の時間近くになりました。
ま、オド酒に関しては置いておいて、とっとと年越しの準備を始めますかね~。




