第120話 ネタばらし
「ふぅ~。お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」
気持ちを切り替えて、始祖の神様方に深々と謝罪。
せっかく楽しんで貰おうと企画したのに、最後が駄目駄目じゃん。
でも、今言っておかないと意味が無かったしなぁ・・・。
あ、ミツハルさん御一行はまた気絶してるみたい。って、ミツハルさんもかよ!
さっきの本気の神威の余波かな?美の神様が介抱してくれているっぽいので、お任せします。
『・・・いや、それは構わんのじゃが・・・幾つか質問しても良いかの?』
「はい?どうぞ?」
『さっきの模擬戦。アレは本気じゃ無かったと言う事かの?』
「いえ、私はそれなりに本気でしたよ?
ルナ達が完全に本気の状態じゃなかっただけで」
『『え゛』』
「え゛って。
ルナ達が完全に本気だったら、私だってもっと苦戦していましたからね。
スキルに頼らなかったら、私だって勝ち目なんて有りませんし。
その為にチート武器を用意したんですから。
あれほど簡単に決着がついたのは、私としても完全に予定外だったんですよ?
まぁ今のあの感じだと、現状でもこの世界での最上位の者達ですから慢心してたんじゃないですかね?」
『ちょっと待って!
リヴィアちゃんのあのブレスも本気じゃ無かったって事!?』
「そうですね。
とは言っても、練気魔闘術は身体強化系のスキルですから、それほど大きな違いは無いかも知れませんが。
ただ、反応速度とか膂力とかは段違いになるとは思いますけれどね。
まぁブレスに乗ってたのが神話級の水系統だと思うし、元々それなりの威力はあったのかな?
あぁそうだ!
魂の神様?リヴィアのブレスで1撃死とか勘弁して下さいよ。
おかげで予定が狂って大変だったんですから。
だから“ルナ達からの横槍には注意して下さいね”って予め言っておいたのに」
『・・・』
『・・・その“チート武器”とやらを見せて貰えるかの?』
「はい、構いませんよ?」
神罰の刃を取り出して、始祖の神様にお渡し。
「チートの内容としては、自身の攻撃力と被攻撃対象者の攻撃力を乗算した攻撃力になる。ってチートですね。
それぐらいしないと、ルナ達に私の攻撃が通りませんからねぇ。
あいつらの防御力って半端ないですし。
そんなチートでも、さすがに当たらなければ全く意味が無いんですけどね?
だからあいつらが手抜きしたって事です。
まぁ手を抜いている状態のルナに、ソレを当てる事にも苦労した私が偉そうにしてたのは内緒にして下さい。
今回私の主目標としては、ルナ達の慢心を無くす事でしたからね。
結果的には気持ちを締め直すいい機会になりましたし。
あ!一応問題にならない様に、ソレが使えるのはここの居住区限定にしてますけどね。
その辺はちゃんと自重しました」
俺、ちょっとドヤ顔・・・あれ?誰も反応してくれない・・・。
『・・・始祖の神様。ソレ。やばい代物ですよね?』
『かなりやばいのぅ。さすがにワシでも防ぐのは無理かも知れん』
「ん?ちょっと待って下さい。
始祖の神様でも“防げない”ってどういう事でしょうか?」
『リュウノスケくんさ。やっぱり異常。普通の神とは認識が違い過ぎるよ』
「どういう事でしょうか?」
『リヴィアちゃんのブレスもそうだけど、神が“これは死んだ”と認識するほどの攻撃を食らったら死ぬんだよ。
まぁ基本的に不死だから、普通は復活するんだけどね。仮死状態になるって感じかな?
だからリヴィアちゃんのブレスを食らった私も、
自身の認識限界を超える攻撃を受けたから死亡扱いになった訳だね』
「え~。上級神だったら、あの程度の攻撃だったら耐えられるんじゃありませんか?
さすがにミツハルさんみたいに両断されたら認識として死亡扱いになるかもな~?
とは思いますけど」
『いやいや、あの攻撃は無理だって。
さすがにリュウノスケくんでも厳しいでしょ?』
「う~ん。言われてみればそうかも知れないですね。
さすがに分体に直撃したら即死するかも。
でも直線攻撃だし回避出来るんじゃないかなぁ。
それに神体だったら、直撃した所でそれほどダメージを食らうとは思えないんですけど?」
『うん。良く判ったよ。
始祖の神様。とりあえずリュウノスケくんに“神としての常識”を覚えさせましょう』
『そうじゃの。神としては異質過ぎるしの』
「え?何です?猛烈に面倒事な予感がするので、全力で拒否したいんですけど?」
『リュウノスケくんは気にしなくていいよ。こっちの話だから』
「いやいや!、私に対して常識がどうとか言ってましたよね!?」
もう俺を完全無視の魂の神様。
始祖の神様と何やら相談中。俺が何をした・・・。
『とりあえず・・・ミツハルくん達は問題無いみたいだね。ありがとう美の神』
『いえ。ミツハルさんもミーさん達もただ気絶していただけの様ですから。
“喝”を入れたら問題ありませんでしたわ』
「あ!すみません。また神威の余波ですかね?美の神様有難う御座います」
『いえ、構いませんよ』
と言いつつ、引きつった苦笑する美の神様。何かすみません。
つーか、そうなる可能性があったから“席を外して”ってお願いしたのに。
『とりあえずリュウノスケよ。
お主に関しては何らかの方法で“神としての常識”を学んで貰わねばならん。
それは覚悟しておれよ?』
「え?何でそんな事が必要なんですか?
私って引き篭もってるから、他の世界とかに影響ありませんよね?」
『ぐっ・・・それはそうなんじゃが』
『始祖の神様!此処で引いちゃったら駄目です!頑張って下さい!』
『そう言う魂の神は、こやつを他の世界に引っ張り出す良い案があるのか?』
『・・・美の神はどう?』
『おほほほほ・・・私は美に関する事以外には、余り興味が御座いませんので・・・』
「まぁ何か問題があるんでしたら、
その“神としての常識”を学ばせて頂きますけれど、当分の間は保留して下さい。
せっかく北極大陸の開拓を始めた所なのに、正直この世界とは関係の無い事に煩わされるのも嫌ですし。
楽しんで頂こうと思って企画した“模擬戦”で、面倒事になりそうなので、
今後は“模擬戦”もしませんから」
『むぅ・・・』
『とりあえずリュウノスケくんが暇になったら、
“神としての常識”を学んでくれるって事でいい?』
「それなら構いませんよ? ちゃんと“暇になったら”ですけどね」
『とりあえず始祖の神様。今回はそれで良しとしておきましょう。
実際問題としては、確かにリュウノスケくんの言う通り。
他の世界には影響がありませんし』
『そうじゃのぅ。釈然とせんが、仕方が無いか』
「あのぅ。
話の腰を折って申し訳無いのですが、リュウノスケさんの威圧に関して疑問があるのですが?」
『あ!その件もあった!
リュウノスケくん。今回の威圧ってどの程度だったの?』
「今回はルナ達に対しては本気で威圧しましたね。最後の方は確実に。
多分アレが“分体”での全力ですよ?」
「えっと・・・。
自分ら中級神だったら、上級神の“分体”の威圧の余波で気絶する事もあるんでしょうか?
正直、結構ショックだったんですけれど・・・」
『あ~ミツハルくん。“普通は”そんな事は無いから、気にしない方がいいと思う。
と言うか、リュウノスケくんを普通の上級神と一緒にしないで欲しい。
私でもかなり怖かったし。
同じ上級神の美の神はどうだった?』
『余りの恐怖感で鳥肌が立ちましたわ。冷や汗もかきましたし。
正直、余波であの程度だったのなら、直接威圧を受けたルナちゃん達が心配ですわ』
『ミツハルくん。上級神でもそういう事だから、心配しなくていいよ。
と言うか、コレに慣れちゃったらダメだと思う。
分体とは言え、威圧慣れしているリュウノスケくんが異常なだけだから。
あんな威圧感を出せる神なんて殆ど居ないから大丈夫だよ』
「“殆ど”って所に、そこはかとなく不安を感じるんですけど・・・」
『ソレはアレじゃな。
戦の神とかその辺の闘いに特化した上級神の威圧ぐらいなものじゃよ。
改めて思うが、
誕生して1000年程度の神が上級神となって、あの威圧を発するとは異常な神じゃのぅ』
「結論としては、リュウノスケさんは規格外。と言う事で宜しいでしょうか?」
『そうじゃの』
神様連中で結論が出たのか、冷たい目で俺を見る4柱。
ついでにミーさん達も怯えた目で俺を見てます。
「あぁもう!はいはい。判りました。どうせ私は引き篭もりの変な神でいいですよぅ、もう。
大体、予め皆さんには席を外して下さいって言ったのに、何この仕打ち。
自分達で受け入れたのに、納得出来んわ~」
『話を戻すが、
最初に予定していた“完全隠蔽看破”スキルで姿を隠した事はまぁ良しとしよう。
ワシらは予め、お主の隠しダネとして聞いておったからのぅ。
後“幻影”とか“分身”も同じじゃな。
で、じゃ。
先程の話じゃと、お主は他にも枷を付けて闘ったと言っておったが、それは何じゃ?』
「あぁ、それもさっき、ちらっとルナ達に言った“封印”に関して、とかですね。
あいつらが今取得しているスキルを封印してしまえば、肉弾戦しか出来なくなりますからね。
ブレスは不明ですけど。
しかもステータス補正も潰せるから、戦力的には落ちるんですよ。
まぁステータス自体が成長してるので、全体としては微々たる物かも知れませんが、
魔法系統が使えなくなるだけで、あいつらなら結構な枷になりますからね。
そういう意味では一番大きな枷としていた“完全隠蔽看破”スキルに対応したルナは“結構やるなぁ。”
とは思いましたけどね。
それも全力じゃない状態で、だったから、
今回締め直しておけば全員が対処出来る様になりそうですし。
やっぱりそういう意味でも、良い機会でしたよ。
他には・・・そうだなぁ。
不老不死スキルを封印してからのLP変更スキルで、即死攻撃が可能ですね。
まぁこれは面白くないからやるつもりがありませんけどね。
後は・・・創造魔法で損壊不能の”檻”を創るとかそんな感じですかね?
まぁ単純に“戦闘”って事に関する枷と言う意味で言えば、
今回使った“完全隠蔽看破”が一番凶悪かも知れませんけどね?
“戦闘”じゃなくて“蹂躙”なら、また話は別ですけど」
『視界を制限した状態での“分身”と“幻影”だけでもえげつないと思ったのに、
もっとえげつない手段があったって事?』
「そうですね。
“方法としては”ありましたね。使うつもりは全くありませんけど。
例え“ゲーム”であっても、バランスブレイカーなやり方をして勝っても楽しくありませんし。
まぁ“完全隠蔽看破”がバランスブレイカーと言えばそうなんですけど、
今回はルナが対応してみせましたからね。
私としても参考になりましたよ。
空気の動きで攻撃が察知されるとは思って居ませんでしたから。
その神罰の刃だって補正としては完全にチートでバランスブレイカーですけど、
所詮当てられなければ全く意味が無い武器ですからね。
実際にルナには簡単に当てられませんでしたから。
結果的には丁度いい程度に収まっていたと思いますよ?」
とりあえず始祖の神様から神罰の刃を返して貰って、亜空間に収納。
さすがにもう使う事も無いかな?
『それから最初の爆発じゃな。アレは何じゃ?』
「アレは神話級・・・まぁこの世界での最強の火系統の魔法ですね。
あわよくば、アレで申し訳ないですけど早々にミツハルさんには戦線離脱して貰うつもりだったんですけどね。
ルナ辺りなら読んでくるかな~?とは思っていましたし、他にも魔法を同時に使いましたからね。
そんな予想もしてましたから、全力発動はしませんでしたけど。
実際の所、ルナ達もそれは読んでたんじゃありませんか?」
『ええ。
ルナちゃん達から、リュウノスケさんが初撃として視覚を奪う攻撃か爆発系統の範囲攻撃を仕掛けてくる。
とは聞いて居ました。
・・・が、同時に使ってくる事と、我々の背後で爆発させるとは予想して居なかったので、
あの時点では後手に回ってしまいましたが・・・。
それにしても、あの爆発でも全力では無かったと?』
「そうですよ?
さすがに火系統の爆発は読まれてるだろうな。とは思って居ましたから。
全力発動した所で、リヴィアに防がれて無駄撃ちになってしまいますからね。
それじゃ意味がありません。属性相性だってありますし。
それを考慮しての後方で爆発させたのと、
極暗黒の併用でミツハルさんを落としたのはこちらの予定通りですね」
「うぅぅ・・・だから参加するのは嫌だったのに・・・」
「ごめんなさいですニャ・・・」
「ははは。
まぁ以前の感じだと、あの初撃で落ちていたはずなのに、耐えられたんですから、
ミツハルさんも確実に強くなってると思いますよ?」
『いえ、ぎりぎりではありましたが、リヴィアちゃんの防壁が間に合ったのですわ。
ただ、初動が遅れた分、完全には防ぎきれなかっただけで、その防壁が無ければ私も危うかった所です。
ミツハルさんが気になさる必要はありませんわ』
「え?その言い方ですと、初撃に重点を置いていたらアレで決まっていた可能性もあったのですか?」
『そうですわね』
「うわ~失敗したわ。もうちょっと威力を上げておけば良かった。
まぁそれでもルナ達が残るから、一緒と言えば一緒か。
ん?
アレで美の神様も危うかったって事は、最初のうちは固定砲台になってた方が良かったのかな?
最初からこっちの方が数的に有利だったし・・・」
『・・・リュウノスケくんさ。ちょっと試しに全力の魔法を私に撃ってみてくれない?』
「構いませんけど・・・魂の神様ってマゾですか?
わざわざ食らわなくても良いと思うのですが?」
『違うって。
とりあえず全力で撃ってみて。始祖の神様。復活に関しては宜しくお願い致します』
『うむ・・・くれぐれも死ぬなよ?』
「あ~。テストって事ですね。了解です。
まぁ爆散方向じゃなくて貫通方向なら復活可能かな?最悪闇ヒールも出来るし。
それでもいいですか?」
『何でもいいけど、全力でね』
「了解です。どうせテストなら、魂の神様も全力で守って下さい。
ん~そうだな。
判りやすく炎の槍って感じで行ってみますか。
魂の神様。ちょっと離れて下さいね。
一応貫通特化型の魔法ですけど、影響範囲がそれなりにありますから」
『了解・・・』
50mほど魂の神様に離れて貰って、全力で貫通特化のイメージで極爆炎の槍を作ります。
「それじゃ行きますよ~?」
魂の神様が頷いたのを確認したら、投擲。
「行け!」
ヒュン ドグッ・・・ドゴァァァ・・・・。 ドシャッ。
魂の神様の胴体に風穴&守っていた両腕を消し飛ばして、炎の槍は貫通。
後方の地面に炎の槍は着弾。で槍自体が爆散。周囲に炎を撒き散らしてます。
んで、魂の神様は即死っぽい。顔面から地面にベチャッと倒れました。
「あら? とりあえず闇ヒール! 魂の神様、大丈夫ですか~?」
『・・・大丈夫だけど大丈夫じゃないよ!!』
闇ヒールで復活したのか、むっくり起き上がりつつ、理不尽に怒ってます。
いや、自分でやれって言ったじゃん。
「魂の神様。さすがに頭脳労働者だからと言って、一撃死とか勘弁して下さいよ。
言っては何ですが、弱すぎませんか?
私の全力でも、タリズとリヴィアの神話級魔法の全力行使には届かないんですから。
まぁあいつら以外は属性特化してない分威力が落ちますけど、
それなりには強力な威力で魔法が飛んでくるんですから。
ちゃんと本気でガードして貰わないと・・・。
そんな程度じゃ“模擬戦”だと、ウチのルナ達だけで完結しちゃうじゃないですか」
あれ?全員が俺をすんごい冷たい目で見てる気がするんですけど?
『リュウノスケくんさ。
早く“暇”になってね。それで、ちゃんと“神としての常識”を覚えようか』
なぜか哀れみの視線で俺を諭す魂の神様。何故にっ!?
「いやいやいや!私じゃなくて、魂の神様の問題なのでは?ですよね?始祖の神様?」
『いや、お主がおかしい。なんじゃ今の攻撃!ワシでも危ういぞ!』
「は?
え~っと確認させて頂きたいのですが、今程度の攻撃でも始祖の神様だとそれなりにダメージがある。と?」
『当然じゃろうが!』
「すみませんが、ウチのタリズとかリヴィアなんかの属性特化した奴だと特に言える事なんですが、
平然と今以上の攻撃魔法を使ってきますが、その場合だとどうなるのでしょうか?」
『バカもん!そんな攻撃、普通に死ねるわ!』
「あ~なるほど。
始祖の神様がそうおっしゃられるなら、確かに異常と言えば異常ですねぇ。
と言うか“私が”じゃなくて、“この世界が”異常って事になりますけど?」
『むぅ。神だけの問題じゃない、と言う事か。そこまで付き合ってられんのぅ』
「まぁ、魔法攻撃なんかに関しては特にそうですけど、この世界と言うかこの銀河内で完結してますからね。
他の世界には影響が無いと思いますよ?
他の世界にもマナがあって、ウチの世界と同等の魔法行使が可能なら別ですけど。
第一、私が他の世界に興味が有りませんからね。
異常であっても、他の世界への影響は心配されなくても大丈夫ですから。
大体ウチの世界への影響は、魂の神様に連れて来られた者以外には進入を拒否してますし、
誰であれ、この居住区以外への立ち入りも禁止してますしね。
先日お伺いしましたが、始祖の神様から不干渉の通達も出して頂けたそうですし、何ら問題無いと思いますよ?」
『むぅ。まぁ確かにそうじゃのぅ・・・』
「ま、この世界が異常だと言う事は、何となく理解はしました。
本当に暇になったらその“神としての常識”を学ばせて頂きますから、心配しないで下さい。
第一、ウチの世界がどれだけ進歩したとしても、普通の人類がこの銀河から外には出られませんからね」
『それで良しとするかのぅ。
不安ではあるが、リュウノスケがこの調子じゃし、問題無いか』
「始祖の神様の了承を得た所で、疑問としては以上ですかね?」
『別件になりますが、ルナちゃん達への罰が厳し過ぎませんか?
もう少し優しくしてあげても良いと思うのですが?』
美の神様に同調するように、ミーさん達もうんうん頷いています。
「う~ん。
まぁ確かに厳しい処分とは思いますが、あいつらの気持ちを引き締め直すいい機会だと思うんですよね。
だからこの世界の神として、あの処分は決定事項ですね。
まぁ今年の年末までですし、それまでにちゃんと自分の役割を理解しておいて欲しいですからね」
『ルナちゃん達の役割とは何でしょうか?』
「始祖の神様と美の神様は昨年は居られなかったから、知らなくても当然なんですけど、
一応将来の予定として、私は“分体”でこの世界を放浪する予定なんですよ。
で、そんな生活をしていても、そのうち飽きるだろうなぁ。
とは予想はして居るんです。不老不死の神ですし。
そうなると、気まぐれにこの世界を滅ぼそうとか、滅茶苦茶に壊してやろう。
な~んて破滅思考を持った場合の、ストッパーの役割をルナ達には課しているんですよ。
まぁあいつらの事は家族だと思って居ますからね。“心理的な”抑止力にも期待してますけど。
で、追加する形で“物理的に”も阻止出来る存在としてルナ達には役目を負って貰ってるんですよ。
今のあいつらは私の“契約従魔”なので、その契約内容として“私が明確に間違えた場合は私を殺す様に”ってね。
まぁ殺すと言っても分体の方なので、一応現状のあいつらでも可能なはずなんです。
去年1年間ですが、あいつらはその“契約”の根本である“俺を殺す必要がある”って事を忘れて、
単純に“従者”としてしか成長して居ませんでしたからね。
まぁ“俺の役に立てる様に”って考えて行動してくれたんでしょうけど、
そもそもの“契約”を蔑ろにして、“従者”をやる必要なんて無い訳ですから。
あいつらはその辺を履き違えて居たんですよ。
さらに、分体の私程度なら勝てるって慢心してたみたいですしね。
そういう訳で、あいつらの慢心とか心構えなんかを締め直す必要があった訳ですよ。
まぁ今年の年末まで、と期限付きですから、その辺は私が妥協した感じですね。私だって愛着もありますし」
『なるほど。
ではそれを承知した上で、ルナちゃん達への罰を軽くして頂けないでしょうか?』
「申し訳ありませんが、幾ら上級神からの頼みであってもお断りさせて頂きます。
先程も言いましたが、この世界を統治する神としての決定事項ですので。
繰り返しになりますが、ルナ達が慢心していなければこの処罰は無かったので、大元はルナ達の自業自得です。
その事に気付く事。気付いた上で向上心を持って貰う事を主目的とした処罰ですので、変更する事は有り得ません」
『そうですか・・・私の勝利者としての権利を行使しても駄目でしょうか?』
「駄目ですね。もし行使したとしても、対象は1人限定ですよ?それはルナ達に優劣を付ける事となります。
それはむしろ悪い方向に影響が出ると思うので、ご理解頂きたいですね。
不遜ではありますが、もし始祖の神様からの命であったとしてもこの決定は覆りません。
重ねてご了承願います」
『残念ではありますが、そこまで言われてしまえば返す言葉もありませんね。
出すぎた事をお詫び致しますわ』
「いえ、むしろルナ達を気遣って頂いて有難う御座います」
『ところでさ、どうして美の神が勝利者なんだい?美の神って“降伏”したよね?』
「あれ?魂の神様も気付いて無かったのですか?結構露骨に仕込んだと思って居たんですけどねぇ?」
『御託いいから、ちゃんと説明してよ!』
「あ~魂の神様?模擬戦の開始直前に決めた“勝利条件”って覚えてますか?」
『それは当然勝ち残った方でしょ?』
「いやいや、ちゃんと思い出して下さいよ?」
俺と始祖の神様と美の神様はニヤニヤ。魂の神様他はまだ気付いてない模様。
面倒だし、ネタバレといきますか。
「始祖の神様?私ちゃんと言いましたよね?」
『うむ。しかと聞いておったぞ?
戦闘終了時に“戦闘不能状態になっていない事”じゃったな?』
「ですよね?
ほら。美の神様は“降伏”はしましたけど“戦闘不能”にはなって無いじゃないですか」
『それって詐欺紛いじゃないの!』
「いや、ちゃんと言った後に全員の了解も得たじゃないですか。
“補足や疑問等はありますか?”って言いましたよ?私。
それで責められるのはお門違いじゃないかな~?」
『ぐっ』
「はいはい。ちゃ~んと敗者は敗者らしく受け入れて下さい。
と言うか、魂の神様が頑張っていればそれで済んだ話なんですから。
大体、リヴィアの流れブレスに勝手にやられた“頭脳労働者”さんが、それに気付かないってのもねぇ?
あ!私の勝者としての権利を行使しますね。
魂の神様はこの世界での本日21時時点で自分の客室に戻って下さい。
21時から翌日の9時までは必ず客室に居る事としますね。」
『あら?ご自分の為に使われないのですか?』
「さっきも言いましたが、私はルナ達の怠慢を自覚させる事が主目的でしたからね。
勝利者の権利なんて付録みたいな物ですから。
コレと言って特に要望もありませんし。だったら有効活用しないと。ねぇ?」
『あらあら。お優しい事で。うふふ。
では私の勝者の権利として、魂の神は自分の客室の内鍵を掛ける事を禁止致しますわ!』
『んなっ!』
美の神様!ナイスなコンボ!
俺と美の神様と始祖の神様で、ハイタッチ。“いえ~い。決まったぜ~!”ってなもんです。
色んな意味で敗者な魂の神様。
魂の神様なのに、魂が抜けたみたいなお顔を晒しています。
魂の神様?今夜はお楽しみですかね?




