第110話 ペットな従魔
とりあえず饕餮が生まれたみたいなんで、転移しようかと思ってルナ達に声を掛けたら一緒に着いて来るとの事。
ま、どうせ後で顔合わせしなきゃいけないし、面倒なので全員纏めて一緒に転移。
今日は徹夜確定かなぁ・・・。
眼前に魔素の塊が渦巻いております。
もうちょっと誕生までに時間が掛かるかな?
その辺にたむろしてたオーガ系を5匹ほど神威で縛ったら、ルナ達と雑談です。
ちなみに、此処ってまだ1階層しかないダンジョンぽいです。
あんまり広くも無い上、階段も見当たらないので。
エリアは氷原。
場所的にはジーク大陸の中央火山帯西側。(衛星の視点で確認しました)
「魔物とは、この様にして生まれるのですね」
興味深そうに観察しているルナ達。
「そそ。ある程度の魔素が溜まった場所に自然発生するんだよ?
まぁダンジョン内だと魔物が生まれやすい環境なんだけどね。
基本的にはお前達もこうやって生まれたんだよ?」
「なるほど。ところで、そこの雑魚共は処理しなくても良いのでしょうか?」
神威で萎縮してるオーガ達を横目に見ながらルナが一言。
まぁお前達からしたら雑魚だけど。確かに雑魚なんだけど・・・。
「うん。
これから生まれるのは饕餮って言う種なんだけど、最初からある程度強力なスキルを持った種にしてあるんだよ。
で、誕生直後にどの程度の戦闘能力があるのかを確認しようと思ってね。
どういう闘い方をするのか、の確認ってところかな?
まぁある程度戦闘させて、どれくらい戦えるか確認出来たら手出しするけどね。
“神の試練スキル”も付与する事になるから、勝てるとは思ってないんだけどね。
様子見って感じかな?
あ、そうそう。
言い忘れてたかも知れないけど、お前達が人化した時は、今までみたいに魔物を直接食べるのは禁止ね。
人類とかだと、それってかなりの異常行動に見えると思うから。
今のうちから慣れておくように。
食料を“調理する事”も従者としては必要なスキルと言うか技能だから、それも兼ねてるけどね」
「「「「「承知致しました」」」」」
そうこうしている間にそろそろ魔素が収縮し始めました。
もう生まれるかな?
ちゃんと“エサ”として待っているオーガ達はある意味偉いですな。
自分で神威で萎縮させておいて言うのも何だし、まぁ可哀相だとは思うけどね。
その辺は既に割り切ってます。 慣れって怖いね!
魔素の収縮も終わり、体長2mほどの人面牛が誕生。予定通り饕餮みたいです。
で、眼前の俺を確認するなりへたり込む饕餮。
へたり込むって言うか、座り込んで頭を下げてるのかな?
「あ!神威発動しっぱなしだったわ。ま、いっか。とりあえずお前を従魔にするから」
完全鑑定したら萎縮してました。
まぁ色々と面倒臭いのでそのまま従魔にします。で、いつも通りの魔改造。
神の祝福で神獣化したら、その辺は一気にスキル付与出来るので楽になりました。
追加で完全鑑定も付与します。
神獣化で同時に付与される“神の試練スキル”のせいで、最初は能力値が1/100になっちゃうけどね。
人面牛のままだと、正直ペットっぽくないので変身させます。何がいいかな~?
「ん~やっぱり柴犬かな?
大きさは体長1m弱ぐらいか?もうちょい小さくてもいいかも。
でもミニ柴だと小さ過ぎるからちょっと嫌。
癒しにはなるだろうけど、モフり成分が不足しそうだし。
とりあえずお前、柴犬に変身してみ?って柴犬が判らんか。
ん~念話で俺のイメージを伝えられるかな?・・・こんな感じなんだけど・・・どう?」
念話で会話じゃなくて、写真と言うか見たイメージを直接送ってみる。
初めての事なので上手く行くかは不明だったけど、なんとなく伝わったみたいで饕餮は変身・・・したんだけど、
やっぱり微妙に違うので、いちいち違う点を指摘しつつ、ちゃんと柴犬っぽくなって貰いました。
「良し。今後は基本的にだけど、お前の姿はそれで固定な。
戦闘時とかは元の姿でもいいけど、今の姿を基本とするから。
んで、先に紹介しとくけど、此処に居る5人が俺の契約従魔達だから。
お前の先輩だし、実力的にも遥かに上だからちゃんと丁寧な対応をするように。
後他に4体の契約従魔が居るけど、それぞれ俺の国の門番をしてるから手出ししないようにな。
それからお前の今後の方針としては、成長してから北極大陸に連れて行くつもりだけど、誰かの従魔には絶対に手出ししないように。
ちゃんと狩る前に完全鑑定使って従魔じゃないか確認しろよ?
まぁ当面は居住区で訓練漬けになると思うが・・・。
とりあえず、それ以外の魔物に関しては自由に狩っていいから。
北極大陸で狩って良いのは魔物だけね。OK?」
念話で“是”って返ってきたので大丈夫っぽいです。
「ん~次はお前の名前だな。
・・・“とうてつ”だから“トウ”でいいや。お前の名前は“トウ”な」
再び念話で“是”って返ってきた後、ルナ達にそれぞれ念話で挨拶してるみたい。
おや~?複数に対して念話って出来るんじゃないの?とか思ったけどスルー。
相変らず萎縮してるしね。
まぁレベルの問題かも知れないし、ちゃんとした挨拶としてはそれぞれに対して挨拶するのが普通だし、問題無しです。
挨拶が終わったみたいなんで、早速指示を出してみます。
「トウ。早速だけど、お前の戦闘能力が見たい。
丁度手頃な奴がそこに居るから狩ってみて。
まぁ今のステータス的に倒せないだろうとは思うけど、全力で戦ってみてくれる?」
また念話で“是”って返ってきたので、神威を解除。
一斉に慌てて逃げ出すオーガ達。
どうせ狭い上に閉鎖空間なんだから逃げ場なんてないのにねぇ。
エリア的に遮蔽物すらないし、一応端から端まで見渡せるので、俺達主従はのんびり観戦。
再び人面牛に戻ったトウですが、ステータスが激減してるので本当にオーガを狩るのは無理だと思う。
この状況で狩れたら及第点と言うか余裕で合格ですな。
ステータス的に完全に下回ってるから、普通に追い駆けても捕まえられないしねぇ。
暫くトウの鬼ごっこ状態だったのですが、オーガがトウに関しては弱いと判ったみたいでトウを狩りに掛かりました。
今度はトウが逃げる番。かと思いきや、そのまま向かっていくトウ。
で、そのままオーガが攻撃する前にオーガの影に影隠れ。
当然、いきなり攻撃対象を見失って軽く混乱するオーガ達。
まぁ完全に俺の予想通りかな。
後はトウが死角から急所を狙って飛び出して、一撃入れたら再び影隠れの繰り返しでした。
自然回復量の都合上、長期戦になったらトウの負けが決定するだろうし、
完全に戦い方が俺の予想通りだったので、戦闘試験は終了とします。
まぁ当然狩れないわなぁ。
生まれたて&神の試練中のトウと、普通に生まれたてのオーガですらステータス差がありすぎるもの。
それなりに生きていたっぽいオーガじゃ話にならないでしょう。
まぁ軽くでも混乱させられたただけで十分か。
死角からの急所の一撃で、普通なら終わってるだろうしね。
「トウ。もういいよ~。大体判ったから」
言いながら苦無の同時投擲で纏めてオーガの頭部を吹き飛ばす俺。
5匹程度なら本当に瞬殺です。
「トウ。そいつら食いたかったら食って良いよ」
嬉しそうに柴犬に戻って、尻尾をフリフリしながらガツガツ食べるトウ。
まぁその様子だとペットとしては合格か。
「主様宜しいでしょうか?」
「ん?何?ルナ」
「トウですが、私共の存じ上げない力を使っていた様ですが・・・」
「あぁ!あれね。
あれは完全に俺とトウしか使え無いスキルにした“影隠れ”ってスキル。
一応隠れている影を攻撃したら解除されるんだけどね。
どっちかって言うと、暗殺とかそういった日陰者が使う様なスキルだからね。
お前達に付与するつもりはないよ。
お前達は正統派。トウに関しては邪道と言うか卑怯って感じの戦闘スタイルにしたからね。
まぁ便利なスキルではあるけど、ネタさえ判ってしまえばお前達なら対処可能だし。
影の無い所なら意味の無いスキルだけど、夜とかだとかなり凶悪なスキルになるよ。
だから今後は、俺が冒険者として連れて行く時に汚れ役をやって貰おうかと思ってね。
ルナには凶獣の面があるでしょ?トウはそれをより強化した感じかな?
一応ルナの負担軽減にもなると思う。
と言うか、俺がいちいちルナに凶獣の面をお願いするより、トウに処分させた方がいい場合もあるかな~?って思ってさ。
一応そうであって欲しいとは思うけど、人類全てが善人になる。
なんて俺としても微塵も思ってない訳よ。
俺としては処分してもいいと思う人類も出てくるだろう。ってね?
ルナとかトウの凶獣としての面はそういった人類に関する事だから、役割分担って感じかな?
正面から叩き潰すルナと裏から叩き潰すトウって感じ。
まぁルナも真正面じゃないけどね。
んで、それ用のスキルって訳。判った?」
「はい。承知致しました。ご配慮有難う御座います」
相変らずガツガツオーガを食べてるトウ。今3匹目に突入です。
もうちょい時間が掛かりそうなので、前々から気になっていた事をこの際だし聞いてみる。
「ところで話が変わるんだけど、お前達・・・。
と言うかルナとかフェンとか毎回俺から見たら食いすぎだけど大丈夫なの?
リヴィアに関しては体格の問題である程度納得出来るんだけど、お前ら自分の体積以上の量を食っても平気だよね?」
「それに関しましては、魔物・・・と言いますか従魔となった時でも同じだと思いますが、
元の姿で居た時は“オド”を含まない物を食しても完全には満たされないのが理由かと思います。
“オド”を含まない食材に関しましてはほぼ無尽蔵に食べられるかと。
ただ、人化した時に関しましては、“オド”を含まない食材を食べましても多少満たされましたので、そのせいかと思われます。
尾篭な話では御座いますが、排泄に関しましては食べた分だけ出ますので、
必要な栄養素などを摂取した以外に関しては、そのまま排泄していると思われます」
「つまりは、魔物姿じゃない時は“オド”を摂取しない限り、どれだけ食べても満腹にはならない。って事?」
「恐らくは」
「でもそれって変だよね?
魔物姿でも“オド”を含んでいるはずの物を食べても満腹にはなってないじゃない?」
クイックイッと親指でトウを示しつつ。追加で聞いてみる。
「恐らく、ですが。“オド”の摂取限界量の様な物が存在するのでは?
今までにそこまで食べた事が御座いませんので判りかねますが、主様なら何かご存知なのでは?」
「う~ん。そんな記述をした覚えは無いんだけどなぁ。俺のイメージ補正か?
いや・・・そんなイメージもして無かったと思うが・・・。
要は良く分からんって事が判ったって事か。
いちいち“オド”の摂取量の限界に挑戦する意味もないしな。
どれだけ食えば満たされるのか分からんし。
とりあえず人化した時に関してはある程度でも満腹感はあったんだよね?」
「はい。御座いました」
「だったら覚えておいて。
現状のお前達と言うか、ルナ・リヴィア・フェンの食事量って普通の人類からしたら異常だから。
もし人類に紛れて生活する場合があったら、その点は注意してね。
特にルナ。
役割的にお前が一番人類と接触する可能性が高いんだから、十分注意して。
今後は、お前達全員が人類としての食事量として、不自然に思われない程度の量に制限するからね。
まぁいきなり減らしたりはしないけど、徐々に慣れていってね」
「「「承知致しました」」」
そうこうしている間にトウがオーガ5匹を平らげました。
マジで食事に関しては謎が多すぎる・・・。
俺のイメージ補正でもないとは思うんだけどなぁ。
まぁ当面は問題ないからいいか。検証するのも面倒臭いし。
んじゃ。無事に用事も済んだ事だし、ダンジョン核を破壊したら帰りますかね~。




