第106話 従者教育概要
リビングに行くと、全員が人化してソファーに座ってました。
ルナとリヴィアを質問攻めにしてたみたいで、確実に何があったかバレてる模様。
超気まずいです。
「「「「「おはよう御座います」」」」」
「・・・おはよう」
ルナとリヴィアは妙に艶やかと言うか何と言うか・・・一皮剥けた感じ。
なんだか目を合わせづらいです。とりあえず全力で我慢。
「で?全員揃っているみたいだけど、朝食は終わったの?」
「いえ。
恐らくは主様とご一緒出来る朝食としては、当分の間無くなるかと思いましてお待ちして居りました。
あと、正直に申しまして、まだ主様のお食事をご用意出来る術を持って居りませんので、主様と共に同じ食事を。
と思いまして。ついででは御座いますが、主様の朝食の準備をお手伝いさせて頂ければ、と思います」
「あ~確かに今まで朝食は全部俺が用意してたもんなぁ。
まぁお前達が朝食の準備が出来る様になってくれれば助かるし、ついでに従者教育にもなるか。
んじゃま、軽い朝食になるけど、レクチャーしますかねぇ」
メニューとしては簡単に、焼いたトーストと目玉焼き&ボアベーコンって所か。
後でコーヒー淹れれば最低限いけるな。
トーストはトースター使えば勝手に出来るので使い方だけレクチャー。
ボアベーコンはちょっと厚めに切って、表面カリっと中はジューシーに仕上げます。
目玉焼きはちゃんと半熟ぐらいに。
見本として俺の分を用意する間に、
何に気を付けるかとか目玉焼きの半熟具合の遣り方なんかを教えて、各自が食べる分は自分で用意させます。
目玉焼きの半熟なんかは多少苦戦したものの、元々食べる量が多い分、十分な練習になったみたいで、
最後の方には各自それなりの朝食は出来る様になりました。
準備が終わったらコーヒー淹れて終了です。
ついでにコーヒーメーカー付近に小さな冷蔵庫を創造魔法で出して、牛乳を入れて置きます。
これで自分達でコーヒー牛乳を作る事も可能になりました。各自の好みで入れてねって感じ。
俺は今日はブラックな気分なので何も入れませんが、コーヒーシュガーなんかも用意。
全員が各々の配膳が済んだところで「頂きます」しました。
食いながら追加で色々と従者としての俺の考える方向性を伝えて置きます。
「前にも言ったかも知れないけど、一応従者教育としては今までの“従魔”の延長で考えて大丈夫。
追加するとしたら、よりゲストなり主人なりを持て成す方向で成長してくれればいいから」
「「「「「はい」」」」」
「後は・・・そうだな。
ルナ?俺とお前で楽しく会話してる途中に全然関係ない奴が会話に割り込んできたらどう思う?」
「不快ですわね。即始末してやりたいと思いますが」
「始末するのはやり過ぎだし、例えとしても極端な例だけど、俺が求める従者ってのはそういう事をしない者を求める。
その場の雰囲気とか空気を読むって言えばいいのかな?
出しゃばり過ぎるのは絶対に駄目。従者としては失格だな。
逆に、まったく不干渉なのも同じく完全に駄目だけどね。
今までの“従魔”だった頃は不干渉に近かったでしょ?
その立ち位置から、より相手なりに近い場所で持て成す事が出来たり、色々と配慮が出来る様な存在であればいい。
俺がお前達に求める従者ってのは“その場の環境を整える者”って感じであればいい。
後は個性も残してね。
画一的な従者ってのもアリだとは思うけど、俺はお前達を相変らず家族だと思って居るから、それぞれの個性は残して欲しい。
俺が思う従者の基本はさっき言った“その場の環境を整える者”である事。
当然“乱さない”って事も含まれる。
それさえ守ってくれれば、それぞれが思う従者を自分なりに考えて、自分に合った立ち位置を考えてくれれば良いよ。
料理に特化したっていいし、バーテンに特化したっていい。
その辺は自由に任せる。好きにして良いよ。
基本さえ守ってくれれば、どういった形であれ、最終的に行き着く場所ってのは俺が言った基本の部分になると思う。
後はどれだけ深くその“基本”って事が難しいかを理解出来る様になれば合格かな?」
「やはりかなり厳しい修行となるのでしょうか?」
「いや?全く厳しくないと思う。肉体的にはだけど。
俺からは不満点しか指摘しないつもりだし」
「どういう事でしょうか?以前厳しく指導するとお伺いしたはずですが?」
「うん。今までの鍛練とは逆方向でかなり厳しくなると思うんだよね~。
何しろ自分で試行錯誤しなくちゃいけない部分が今までの鍛練とは段違いになる。
しかも、各自が同じ方向に行く訳じゃないから参考にも出来ない。
完全に独りで試行錯誤して行かなくちゃいけなくなるからね。
ある程度はミーさん達が参考になるとは思うけど、
俺が求めているのはミーさん達じゃなくて、お前達自身が思う従者の形だからね。
俺からも指示しないし。
だから、全く指針が無い状態で進んで行かなきゃいけない訳だ。
今までの鍛練だったら、俺に一撃を入れるとか明確な指針があったけど、それが全く無い手探り状態で進まなきゃいけない。
やっている事が正解かどうかも判らないような状態で、それでも進まなきゃいけないから、精神的な部分で厳しくなると思う。
だから厳しい指導って言ったんだよ。
実際に俺は、駄目な点しか指摘しない指導しかしないつもりだからね」
「それは・・・」
「ま、これが難しい事を求めてるって事が判る様なら、従者教育を受ける資格はあるんじゃないかな?
それが判らない様なら、もっと厳しくなると思うけどね。
多分心が折れるんじゃない?
まぁお前達はいわば同期の従者になる訳だから、その辺は助け合いも必要だと思う。
その分、多少は楽になるだろうけどね。
お互いに意見を出し合えば問題点もすぐに見つかるだろうし。
その上で、立ち居振る舞いなんかも洗練されると思うしね。
以上!俺の思う従者教育概要でした。 ご馳走様でした!」
全員が全員黙りこくって俺の言った内容を把握して、若干不安そうにしてます。
ま、俺が求めている事の難易度が判る様なら、とりあえず及第点はあげられるかな?
俺はとりあえずコーヒーを飲みきって、自分の使った食器類を洗浄してから給仕室へ収納。
その辺も一応従者として出来るようになっておいて貰いたいんだけど、まぁまだ今の間は出来なくてもいいや。
で、用事が済んだら主寝室に戻って装備一式を整えたらリビングにとんぼ返り。
ルナ達は相変らず不安そうに悩んでました。
「最初の間はお互いをゲスト側ホスト側って分かれて、どうすれば快適に過ごせるかって事だけを考えてればいいよ。
快適と言うか“どうすれば相手が気分良く過ごして貰えるか?”って方が正解かな?
まぁ、今までの俺とか魂の神様とかの真似事をしてたらそのうち判ると思うし。
後は方向性の問題だけになると思うからね。
それじゃ、次の休日まで頑張ってね」
「「「「「行ってらっしゃいませ」」」」」
「はい。行ってきます。 『転移!』」




