第105話 初夜
とりあえず照明を点けてちゃんと確認。
やっぱりルナとリヴィアでした。メイド&執事服は着用してます。
「あのさぁ。お前を契約従魔にした時にちゃんと言ったと思うけど、
“家族だと思う相手を抱くほど飢えても居ないし、倒錯的趣味も持っていない”
って言わなかった?」
「お伺い致しましたね」
「で、リヴィアは“ゆっくり時間を掛けて”とかその時に言ったばっかりじゃん。
なのに今日?まだ5日ぐらいしか経ってないけど?」
「ルナ姉様とも相談したのですが、恐らく今回しか機会がないのではないか、との結論に達しましたので」
「は?なんでさ?
実際に抱く抱かないはともかく、今回しか機会が無いってのはどう言う事?」
「主様は今後、北極大陸の開拓に専念されるのですよね?
我々の従者教育の日だけはこちらに帰って来られるのかも知れませんが、生活の拠点を北極大陸に移されるのでは?」
「まぁその予定だけど?実際その方が便利だし。
転移魔法を使えば一瞬だから、どっちでもいいっちゃーどっちでもいいけど、多分帰ってこないんじゃないかな?
あっちで生活している間に問題点とかも出てくるかも知れないし、そういった事の洗い出しもしたいからね。
俺の国を造ったはいいけど、色々と不便だったら後から修正しなきゃいけないし、
あっちで生活した方が前もって気付く可能性が高いからなぁ。
でも風呂入りにとか、どうしても神体で処理しないといけない問題があった場合はこっちに帰ってくるぞ?
大体、年末年始はこっちに帰ってくるのは確定事項なんだけど?」
「はい。概ね承知しております。
が、年末年始以外の日だと我々も居るのかどうかが判りません。
従者教育をして頂いた日はこちらに泊まって行かれるのでしたら、確かにまだ猶予は御座いますが、
どちらにせよ、多少の誤差として早いか遅いかの問題でしかありませんので。
で、あるならば可能な限り早いの方が私共の都合が良いのです。
無論、主様のご意思を無視してまで事に及ぶつもりは御座いませんが、
私共が急いだ理由をお聞き頂いた上で、ご判断して頂けないでしょうか?」
「ん~?
とりあえずいきなり夜伽とか言ったから何言ってるの?って感じだったけど、
ちゃんと考えた上での行動だったって事?」
「はい。まぁ結論を先に述べたに過ぎませんが」
「ふ~ん。
まぁお前達を抱く抱かないはともかく、話だけはちゃんと聞くよ。感じ的に急ぎなんでしょ?
俺との間に子供が出来ない事も承知の上での行動だと思うし」
「はい。無論で御座います。
先ずは無礼を承知で夜分押し入った事に関して。謝罪致します。
ご指摘の通り、主様との間に子が設けられない事を承知の上で抱いて頂きたく思ったのは至極単純な理由で御座います。
“白面金毛九尾”の役割をお考え頂ければご理解頂けるかと。
私だけでなく、リヴィアも共に参った理由と致しましては、私だけ抱いて頂くのは不公平だと判断した為で御座います。
タリズ達も参加したい旨を申して居りましたが、元が雄である為、今回は遠慮させました」
「あ~“白面金毛九尾”の役割か。それを言われると、俺としても反論し難い所だな。
確かに嫌な役目を負わせたかも知れない。それに関しては“すまない”としか言えないな。
タリズ達に関しては感謝する。
正直元が雄だって判ってる相手とそういう関係になったら、俺が自己嫌悪に陥りそうだし。
リヴィアも一緒ってのは、まぁ公平にって事ならある程度納得は出来るけど、
リヴィアにはルナみたいな役割が無いのに、それでも一緒でってのはルナの判断か?」
「はい。
私共の間にも序列の様な物は御座いますが、主様との間に子を設ける為に。
主様にその気になって頂く為にはリヴィアと共闘しようと考えましたので。私だけで事を進めるつもりが御座いませんでした」
「まぁ2人して来たのはいいけど、そもそも俺をその気にさせる事が先じゃないの?
自分で言うのも何だけど」
「はい。
確かにその通りではあるのですが、“白面金毛九尾”の役割を考えると、主様との子を授かる前に。
少なくとも他の誰かに抱かれる前に、最初に主様に抱いて頂きたく思ったからで御座います。
“白面金毛九尾”の役割として、最悪主様以外の者に抱かれる様な事態になった場合、私は私自身を許せなくなります。
その為、せめて最初だけは主様に捧げたく、参った次第で御座います。
無論、その様な事態になる事は全力で回避するつもりでは御座いますが、何事にも絶対は御座いませんので」
「あ~。役割の件を言われると、俺としても反論し辛いんだよなぁ。
その話を持ち出すのは卑怯だとは思うが、事実である以上、受け入れざるを得ない部分・・・か。
俺もお前が役割とは言え、好いても居ない相手に抱かれなきゃならない可能性を考えると、正直かなり腹が立つしなぁ。
あ~あ。モノリスの書の記述をミスったかなぁ。でも、あれはあれで必要な役割だしなぁ。
あ、モノリスの書で思い出したけど、近親婚に関して記述してなかったな。
修正しとかなきゃ・・・まぁ今度でいいか」
「ご理解頂き有難う御座います」
「まぁ・・・な。
ただ、それを承知した上で言うのは申し訳ない事なんだが、今の俺ではお前達を抱けない」
「何故で御座いましょうか?」
「何度も言っているけど、お前達は俺の家族だと言う認識が俺の中ではかなり強い。
ほぼ生まれた時から一緒に居るからな。
良くも悪くもお前達と居た年月が長過ぎる以上仕方が無いと思ってくれ。
お前達は俺の目から見ても、控えめに言ってもかなりの美人だと思うし、魅力的な存在だとは思うんだが・・・。
すまん。正直に言って、男として機能しない。だから、結果的に抱く事は出来ない」
「これでもでしょうか?」
バングルの機能を使って全裸になるルナとリヴィア。
マジで全裸美女2人から“抱いてくれ”なんて据え膳もいい所なんだけど、反応しない事にはどうしようもないよね。
一応愚息の状態を確認してから、改めて告げる。
「すまん。やっぱりお前達をそういう目で見られないみたいだ。
あ~。
1000年ぐらい禁欲生活してたし、枯れちゃったのか、やっぱりお前達を家族としてしか見れないのかは判らん。
が、現状としての結論は抱く気にはなれないな・・・。
ルナの役割を考えると俺としても希望は叶えてやりたいし、これだけ最高の美女から誘われて応えられないのは悔しいが、
男として機能しない以上、どうしようもない。
ルナは従えている従魔とかに気に入った奴は居ないのか?
そいつを相手にするのはどうなんだ?」
「私が体を許せる相手など、主様以外には居りませんよ。
そもそも、私が欲しいのは主様の寵愛で御座います。
主様以外の子が欲しくてこの様な事を申している訳では御座いません」
「そっか・・・応えられなくて申し訳ない」
「せめて同衾する事だけでもお許し頂けませんか?
もしかしたら、その気になって頂けるかも知れませんし」
「ん~絶対に今回だけだぞ?」
「はい。承知致しました。リヴィアは逆側へ」
俺の右側にルナ。左側がリヴィアで2人共俺に密着。
女性特有の柔らかさを感じながらも反応しない愚息・・・。
マジで枯れたのかも。ちょっとショックだわ。
「如何でしょうか?」
「すまんな。ダメだわ・・・。
弁解する訳ではないけれど、お前達2人とも魅力的なのは確かだから。
俺の方に問題があるな、やっぱり」
「色々と試させて頂いてもよろしゅう御座いましょうか?」
「ん~お前が好きでもない相手に体を許す事を考えると、ちょっと業腹だからな。
・・・今回だけだぞ?」
「はい。有難う御座います」
ルナ&リヴィアの2人掛りでベロチューとか諸々試してみたものの、相変らずです。
俺としては、獣だった頃のルナに俺の方から抱きついたり、色々したりされたりした延長線上な感じ。
3人して困りました。マジで反応しない以上どうしようもないです。
ルナとリヴィアは半泣きで困惑中。俺としても何とかしてやりたい所だけど・・・あ。
「あ~。
1つだけ方法を思いついたんだが。要は俺に抱かれればお前達は満足な訳だよな?」
「はい!私共の願いを叶えて頂けるのでしょうか?」
「う~ん。
ちょっと微妙な方法なんだけど、重ねて問うけど、俺であれば問題ない訳だよな?」
「どういう事でしょうか?」
「お前達を抱くのが、今の俺の意志じゃなくてもいいのか?って事。
結論から言うと、俺と言う意思を持たない人形みたいな存在であっても構わないか?
って事だな。
まぁ元々今の俺って分体だから、一応本体とは違う訳だが」
「・・・どういった方法を思いつかれたのでしょうか?」
「何、簡単な事だ。お前達が俺を魅了魔法で操れば良い。
現状だと、今の俺は耐性系のスキルでレジストしているが、一時的に耐性系のスキルを封印すれば可能だと思う。
お前達とは基礎ステータス差があるから、スキルを封印したら恐らく俺も魅了魔法で操れるはずだし。
まぁ操られている間はお前達の操り人形状態になるが、一応操られている間も俺の記憶としては残る・・・と思う。
ただ、俺の意思としてお前達を抱く。と言う意味では完全に無くなるがな。
正確にはお前達に操られた俺を使って、お前達を抱かせる。が正解って感じになる。
それなら一応可能だとは思うんだが・・・。
無意識的にお前達を俺は自身の家族として見ているからな。
何か強引な方法を使わな限り、お前達を抱くのは無理だな。現状だと」
「そう・・・ですか・・・」
「まぁなぁ。
家族同様に過ごしていた従魔が、魂を持ったからって人化を許可したら美人さんでした。
で、即“抱いて”って言われて“はい喜んで!”とは行かんよ。
見ず知らずの相手ならともかく、家族として過ごしてきた時間が長いんだから。
時間が掛かるのは仕方ないでしょ。
お前達の好意は正直に言って嬉しいし、魅力的だとは思うから、俺の意識の問題だしな。
って事で、俺が自発的にお前達を抱く事は暫くは諦めてくれ。
俺の方でも今後はもう少し、お前達の事をちゃんと意識するようにするからさ」
「承知・・・致しました・・・」
かなりがっかりした感じのルナとリヴィア。
まぁ仕方ないと諦めてくれい。
「んじゃ、納得して貰った所でまた後日って事でいいか?
お前達も操り人形状態の俺に抱かれた所で嬉しくもないだろうし」
「・・・魅了魔法で操られている間の記憶は残るのでしょうか?」
「正確には判らん。
が、俺の予想だと残るんじゃないかなぁ・・・多分。って所だな。
この世界の理として魅了魔法の存在なんかはあるが、記憶に関しては未知数だ。
恐らく神としての認識が優先されるから、俺の予想している事で正解だとは思うけど、確実じゃぁないな。
確実に記憶を残すなら、神としてその様に理を定めればちゃんとその通りになるが、今はまだ定まってないからな。
魅了魔法で操ってもいいから、どうしても、と言うのならもう少し待ってくれ。
ま、遅くとも今年の年末には一旦神体に戻る予定だから、その時に理として記述しておく」
「・・・主様。
申し訳ないのですが“今”魅了魔法を使用させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「どうしてそこまで急ぐ?
お前の役割を考えても数十年は軽く猶予期間はあると思うが?」
「ミーさんから、こういった事は勢いも大切だとお伺いしました。
で、あるならば。主様が多少なりとも受け入れて頂けた時に事を進めたいと思います。
リヴィアはどうするかは知りませんが、私は魅了魔法で主様に記憶が残る事に賭けたいと思います」
「ルナ姉様。私も同意見です。
今を逃してしまえば、私との関係にも一線を引かれる恐れがあります。
それならば、私も共に抱かれる事を望みます」
「全くあの人は・・・。
言い方は悪いが、要は自慰行為と変わらんのだぞ?それでも良いのか?」
「無念では御座いますが、少なくとも“主様に貞操を捧げられた”と言う事実は残ります。
現状、私共をそういった“性の対象”として主様から自発的に抱いて頂けない以上、
僅かであってもそういった“対象”として見て頂ける可能性を高められる事に賭けたいと思います」
「俺が言うのも何だが、自身の貞操をそういう賭ける対象にする事は感心せんがな」
「はい。承知して居ります。今回が最初で最後と致します」
「お前達2人とも、その“最初”が肝心だと思うが?
・・・もう少し待てないのか?」
「「はい。今、お願い致します」」
「は~。判った。
今夜限りの限定で許可するが、それでもいいんだな?もう2度目はないぞ?」
「「はい」」
瞑目してちょっと悩む。
確かにルナ達の意思は尊重してやりたいとは思う。
実際魅力的な相手だし、俺としてもお相手頂けるなら嬉しい限り。
ただ、家族として見ていた相手と一線を越えてしまう事の忌避感は拭えないし、“本当に俺でいいのか?”とも思う。
俺の覚悟の問題なだけなんだけど、どうせ抱くならちゃんと抱いてやりたいし。
が、それは本能的にと言うか俺の意識的に無理っぽい。
・・・自分で提案しておいて何だけど、最低だな、俺。
根性なしもいいところだしなぁ。気合で何とかならんか?
・・・とか思ってみたけど、無理っぽい。
「・・・『封印』『封印』『封印』『封印』重ねて言うが、今夜限りだからな?
絶対にだぞ?」
耐性系4種を封印して、瞑目したまま告げる。
目を開けた瞬間に魅了される自信があります。
既に両側から感じる柔らかさで反応し始めている感じがするし。
この時点でやばいな、まぁ枯れてなかったって事で頑張ってスルーしとこう。
むしろ溜まってた感があって、正直ちゃんと我慢しないとかなりやばい。
「はい。お約束致します」
耳元で紡がれた言葉にすら強く反応したっぽい。
魅了魔法を使うまでもなく、もう限界じゃね?
「頼んだぞ・・・」
「はい・・・」
横に顔をやりつつうっすらと目を開けると、眼前にルナの顔があった。
すぅーっと自我が引いていくのを感じながら、引き寄せられるようにルナに顔を近づけてゆく・・・。
******
ぼんやりと。
と言うか、かなり疲れ果てて、2人が部屋から出て行くのを眺めている俺・・・。
暫くそのままぼけ~っとしてたら、段々と意識がはっきりしてきました。
それに伴って自分のやっちゃった事に愕然としつつ、大慌てで封印したスキルの封印を解除。
ようやく落ち着いて来たら冷蔵庫から水を取り出して(備蓄してました)一気飲み。
「あ~やっちゃった。
つい先日まで家族だの娘同然だの言ってたのに、この有様ってみっともねぇ・・・」
超自己嫌悪。
まぁ結論から言えば、無事ルナ達の希望は叶えられた訳だし、記憶もほぼ残っています。
途中所々で飛んでますが。
そう。記憶があるんですよねぇ・・・色々とやっちゃった記憶が。
俺より身体的に強いとは言え、初めての相手をいきなり2人同時にとか、俺も無茶したもんだわ。色々と。
1000年分の禁欲生活分を一気に吐き出した様な感じだったし。
大丈夫かな?あの2人。
「あんまり深く考えるのはよそう。精神的にマズい気がする・・・」
とりあえず色々と自分の記憶に蓋をして、機械作業的に乱れたベットを洗浄&乾燥。
ベットをちゃんと整えたらある程度気持ちは落ち着きました。
「さてと、北極大陸の開拓の前に朝飯だけはこっちで食ってから行きますかねぇ」




