表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

第6話 ドSな王女とドMな男メイド

 バルシア王国に無理やり連れて来られてから何度目になるだろうか。今、僕はアリシア王女に呼び出されて、彼女の部屋を訪れていた。


「どうだった? はじめての学園はもう慣れて?」


 僕を見るなり、彼女は開口一番にそう尋ねてきた。ニヤニヤ笑っている彼女を見て分かる通り、初日で慣れるわけないのにあえてそう聞いるのだ。薄々は気が付いていたけど。アリシア王女は性格が悪いよね。


 人をからかうのが生きがいと言わんばかりのこの人に格好の餌を与えるのは自殺行為だね。ハァ、男に抱きしめられて胸を弄られたことは黙っていよう。もし、そのことをアリシア王女に知られたら、どんな風に揶揄やゆされるかわかったもんじゃないからね。


「アリシア王女様、夏海王女は初日から殿方の視線を独り占めしておりました。さらに夏海王女は若くハンサムな殿方と熱い抱擁をかわしておられました」


「なんで、そのこと知っているの? ねぇ、なんで?」


 知っていても、黙っていてよ。そんな格好をしていても君も男だろう!? 僕の気持ちがわかるだろう? 僕は涙目になりながらそういった。


「あら、あら、イケナイ子ね」


 お姉様! なに、丁度、退屈してた時に面白いことを聞いたわと言わんばかりのその表情!! アリシア王女は蛇が獲物を見つけた時のように目を細めてニヤリと笑った。


「はい、夏海王女はお綺麗なので仕方がないと思います」


 なに、この男メイド!? 男なのに女のように口を尖らして拗ねているぞ。


「フフフ、それは焼けてしまうわね。でも、大丈夫よ。あなたは私が後で可愛がってあげるから機嫌を直してね。それよりも夏海ちゃんにも困ったものだワ。王女としての自覚が足りないのかしら」


 目が怖いです。そんな鷹のような鋭い目で睨みつけないでください。


「男とバレて奴隷になりたいの? ドMなのね」


 暴言、罵倒、バリ騒音(罵詈雑言)!! 昔は兄弟、姉妹が欲しいと思ったけど、こんな姉はいらないよ!! って、なんか恍惚の表情を浮かべてないか!? この男メイド!! 僕がアリシア王女からの一方的に罵られているのを見て、身悶えして喜んでやがる。


「スバル、邪魔よ! 部屋の隅にでもいなさい。私は夏海と話しているのよ! わかるわね?」


 キツイ目を更にキリリと鋭くしてそう言うアリシア王女に


「はい、アリシア王女様」


 と返事をして男メイドは部屋の隅に行った。もちろん、男メイドは悪態をつかれて歓喜の笑みを浮かべてたよ。あいつは真性の変態だ!!


「ようやく、目障りな奴が視界から消えて真剣にあなたと話せるわね」


 酷い言われようだ。イヤ、あの男メイドにしたらこの罵倒はご褒美か。


「あなたにはまだ王女としての自覚がないわね。あなたに悪い虫がつかないように護衛の騎士を付けます」


 そんな自覚があってたまるかよ! 僕はれっきとした男なんだと叫ぶがアリシア王女は聞いていないのか話を続ける。


「…気に入ってくれると嬉しいんだけどね。さてとそろそろ呼びましょうか」


 アリシア王女が入りなさいと言うとすぐに


「お呼びでしょうか。アリシア王女」


 と言って、黒髪の貴公子然とした男が扉を開けて入ってきた。


 アリシア王女に頭を垂れた後にこちらを見てきた彼の瞳は吸い込まれそうな程に美しいエメラルド色であった。その瞳が余りにキレイで僕は彼の姿に見入ってしまった。そう、それ程に彼の瞳は魅惑的だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ