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第4話 アリシア王女の洗礼

 僕はアリシア王女に自室に呼び出されて生まれてはじめて女性の部屋にいる。いや、彼女が実の姉だということはわかっているんだ。


 でもさ、そのことを知ったのは2日前だから僕の認識としてはまだ家族って気がしないんだよね。しかも、運が悪いのか良いのかわからないけど、彼女は王女というだけあって、すごいキレイなんだ。


 そんな王女の部屋に呼ばれた僕はここに来るまですごく緊張していたんだ。そう、わりとこれでも勇気を振り絞ってここに来たのだ。なのにこの仕打はないよね! 


 ───アリシアお姉様!!


☆☆★


「学園に入学する前に礼儀作法を一通り、覚えてもらいましょうか」


 部屋に入るなり、アリシア王女はそんなことを僕に言ってきた。


「まずは、私の呼び方から改めてね」


 微笑むアリシア。その満面の笑みを見て僕は年上のお姉さんも良いなとぼんやりと思いながら頷き、


「王女様と呼べということでありましょうか?」


 と使い慣れない敬語で対応した。敬語って難しいよね。普段、使う機会がなかったから忘れてしまったよ。確か小学校の時に一通り習ったような気がするけど。


 …忘れてしまった。


「違うわ。日本には立場が上のものに敬称をつけるでしょう? それと同じで私達の国ではその人のことを褒める言葉を先につけるのよ」


「…例えば?」


 僕は彼女が言ったことがイマイチわからなくて、聞き返した。


「天上の神々よりも聡明で輝ける美の化身スーパー美少女アリシアお姉様とかね」


「て、天!? なにそれ? おかしいの」


 自らにあまりにも大層な敬称をつけた姉にプッフフと僕が笑うとアリシアは釣り上がった目をますます険しくしてこちらを睨みつけてきた。


「ぐ、苦しい、れす!!」


 いや、睨みつけるだけで終わらないのかよ!!


「く、苦しい。首を閉めないでくらはい。ギブギブゥ!! ギブアップれす!!」


 声がかすれてまともな言葉にならない。それよりも、呼吸ができないのがやばい。死ぬ! 死んでしまう!! 手を放してくれ!


「天上の神々よりも聡明で輝ける美の化身スーパー美少女アリシアお姉よ!! さっさと練習としてお呼びなさい!!」


 そ、そんな長い言葉を一瞬で覚えられないよ!! ひとまず、放してください。僕は首を絞めていた姉の手を無理やり、引き剥がして酸素を確保。


「…ハァ、ハァ、アリシア姉様、ごめん。長くて覚えられないよ!!」


「ダメね。仕方ないわね。優しいお姉様はこれで許してあげるわ」


 そう言うとアリシアは窓際まで歩いた後、部屋に置いてあるクローゼットを開けてなにかを探しはじめた。


「あった〜!! さぁ、夏海? 罰ゲームの時間よ!!」


 満面の笑みでこう言ってきた。ちょ、ちょっと、その掲げているモノは何ですか? どう見てもスバルですら着ていないようなキワキワなスカートのメイド服だよ!? それによく見ると猫耳も見えるんですけど? 


「そ、その手に持っているモノはなに?」


「あれ? 知らないの? 夏海ちゃん、これは猫耳とメイド服と言うのよ。さぁ、お着替えしましょうね?」


 アリシアお姉様? メイド服と猫耳を掲げて近づくのをやめてくれませんか? いやだ! ニヤニヤ笑って近づかないで!!


「や、やめてくれ〜!!」


 後から聞いた話だけど、王宮内に僕の悲鳴が響いたとか響かなかったとか。もうイヤ〜!!

 

 あと後日談なんだけど、メイドのスバルにこの国の風習を確認したくてこの国の敬称の付け方を聞いたら、


「そんな風習はありませんよ。アリシア王女に謀れたのでは?」


 と言われたよ。なんだよ。僕は騙された上に辱めを受けたのか。もう最悪だ〜!!

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