第9話 幼馴染達の訪問は処刑宣言?
───前略、夏海は元気にしているかい? おじさん達はお父さんから預かっている君の相続分の財産を使い潰す勢いで旅行に勤しんでいます。
追記、ウチの子たちが君に会いたがっていたよ。その内、そっちに行くそうです。その時はヨロシクね!!
何だよ。この高級そうなオープンカー! 車の上に乗ってピースしてるのおじさんの家族!! まじで、父さんの遺産を使って買ったのかよ!! ありえない!! 僕はおじさんから送られてきた手紙と写真を見て顔を歪めた。
と言うか、この追記の内容も、とんでもないじゃん。イキナリこっちに来るからよろしくね。じゃねぇーよ!
って、僕のこの姿を見られたらヤバイじゃん! どうしよう。どうしよう!!
「あら? 夏海なにを身悶えしているのかしら? カッコイイ彼氏でもできて恋い焦がれてるの? 困ったわ。私の可愛い妹を誑かすなんてねぇ」
そう言って、ノックもしないでニヤニヤと笑いながら姉であるアリシアがやってきた。ベットで転がる僕を見てそんな意見を吐けるのはあなたぐらいだよ。
「今日も可愛いわよ。白いワンピースが良く似合っているわ。ついでにベットに飾ってあるクマのヌイグルミを抱っこしてくれないかしら?」
「イヤです。やめてください! お姉さま!!」
「フフフ、私に力で勝てると思って?」
僕に無理やり白いクマのヌイグルミを持たせて悦に入る姉。 体格差が有りすぎて、勝負にならない自分が悲しい。それにしても、王女なのに力で男にそんなことを強要するなんて聞いたことないよ。いや、この女尊男卑の国ならそんな王女も普通なのかな。本当にやってられない。
「うーん!! かわいいわ。さすが私の妹」
もうたまらないっと言って姉は僕をひたすらハグしてきた。うん、姉にとって僕は人形だよ。
「ああ、そうそう、忘れていたわ。お客さまがお見えよ。入ってもらって」
「わかりました」
いや、聞いてないんですけど!? 姉にベットの上で後ろから抱きつかれたこんな姿で対応するの? いいの、王家の威信もクソもない格好なのだけど。
って、アリシア姉様を見ると楽しくて仕方がないと言わんばかりに目が爛々と輝かせているよ。今までこの表情をした姉がロクなことをやったことがないような気がするな。イヤな予感。
「失礼します。って!? すごい、綺麗な女性が二人いるわ」
ヌイグルミを抱いたまま姉にハグされた状態の僕は少し涙目になりながら、声のした方向を見て固まってしまった。だって、そこにいたのは…
「嬉しいことを言ってくれるわね。ありがとう」
「いえいえ、本当の事を言っただけですから。と、所で、ここに夏海がいると聞いて来たのですが?」
そう言っておじさんの息子であり、悪友であった誠がそう言って微笑む。ああ、おじさん、そのうちじゃないじゃん!! もうきてるじゃん!!
「ここよ。ここ」
フフフと軽やかに笑って固まっている僕を指す姉。最悪だ。
「え、うそ? もしかして、夏海?」
「…嘘、夏海くんなの?」
そう言って、扉から二人が入ってきた。って、おじさんの息子以外の友人たちも来たの!? 嘘だろう!! しかも、僕の大好きな幼馴染もいっしょなんて聞いてないよ!!




