婕妤
春になった。穏やかな空気が漂っていても後宮の人間関係は冷たいものであった。春に浮かれているのは皇上くらいであろう。この日、皇上と皇后が太后に呼び出された。部屋に案内されると太后は茶を飲んでいた。二人は太后に挨拶すると彼女は茶碗を卓へと置いた。
「皇上、皇后、来てくれてありがとう。かけて」
二人は椅子に腰を下ろす。二人はなぜ呼び出されたのかわからない。何か太后を不快にさせるようなことをしたのだろうか。
「麗妃だけれどね第二夫人から降格させたいの…こなたは温妃を第二夫人にしたいのよ。温厚だし、慎みがある。この前の封号事件では第二夫人に敬意を払うように言ったけれど、麗妃は第二夫人の重責を果たせないわ」
「お母様、その件はお母様と皇后に任せます」
「あと、皇上は譚婕妤を寵愛し過ぎないように」
太后の小言はそれだけだった。その日、麗妃は第二夫人から降格した。代わりに温妃が第二夫人へ昇格した。第二夫人は皇后が不在の時や病気の時、後宮の管理を代わりにする。その重責を考えたら麗妃よりも温妃の方が適任であった。麗妃は降格の知らせを受けてますます権カにしがみついた。そして使えそうな人材を探し始めた。すると、李家が娘を側室にしたいという話を宮女の秋菊が持ってきた。麗妃はこれは駒になるとして直ぐ李家の李修媛を入宮させた。修媛は麗妃の推薦で婕妤に封じられた。面白くないのは莫答應である。先に侍寝したのに最下位の答應のままだからであったからだ。しかも、あれから皇上は彼女のもとを久しく訪れていなかった。莫答應は時を恨み、また、金蓉を呪った。このような仕打ちに耐えられるほど彼女は寛大ではなかった。