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愛人~後宮の女たち~  作者: 月島式部
冬の満月
7/21

懿貴人

冬の寒さが一層、強くなるころ。越境将軍の董典(とう・てん)が異民族を撃退し、帰京してきた。その功績として娘の董紫雲(とう・しうん)が貴人として入宮した。紫雲は早くも麗妃と衝突した。それは紫雲の封号が原因だった。彼女は自分の容姿に自信があり、どうしても「麗」の字が使いたいと言い出した。しかし、「麗」は麗妃・華裳の第二夫人としての誇りであった。皇后が止めても聞かなかったが、「第二夫人には敬意を払うこと」っと紫雲が太后に窘められて渋々、美しいという意味の「懿」を封号にした。

金蓉は皇上からあの日の詫びとして婕妤(じょうよ)の位を賜り、昇格するのだった。それから金蓉は譚婕妤と呼ばれるようになる。住居も碧藍殿(へきらん)へと移った。宮女も瓊花(けいか)という宮女が新たな配下となった。金蓉は皇上の寵愛を一身に受け始めた。それを妬ましく思う者もいる。麗妃や懿貴人は特に妬み、何かを仕掛けてくるであろう。側室たちの雪解けは永遠にないのだ。

皇上は懿貴人と夜をともにしていた。懿貴人は甘ったるい声で住居を移してくれるようお願いし始めた。今、懿貴人が住んでいるのは綺羅殿(きら)といって星がよく見える殿舎だった。それでも懿貴人は綺羅殿が気に入らないようだ。

「皇上、わたくしは仁禧宮(じんき)に移りたいです。仁禧宮なら皇上の宮殿と近いですし…」

「仁禧宮には譚婕妤が入る予定だ。南の景明宮(けいめい)では嫌か?」

すると懿貴人はぷいと顔を反対に向けた。どうやら拗ねたらしい。そこが彼女の可愛いところであったが、短所でもあった。仁禧宮は寵妃が住まう特別な場所だから、いくら拗ねても無駄だった。

「そんな拗ねるようなら帰る」

「えっ、皇上!」

皇上は寝台から出て綺羅殿を去った。背後から「皇上、皇上!」と聞こえてきたが無視をした。仁禧宮はいつか妃になった金蓉のために空けてある。しかし、それを突然よこせと言われて皇上は不快感を覚えたのだった。そして綺羅殿を後にした皇上は自宮に戻らず明かりのついていた温妃の部屋で休んだ。

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