お仕置き
あの火事からしばらくして金蓉は慶妃となり、温妃は温貴妃となった。しかし、温貴妃は火傷から邪気が入り込んだ影響で身体が冒されてしまった。そして水仙の咲く頃に亡くなった。貴妃となった彼女の葬儀はまるで皇后の葬儀のように荘厳であった。
金蓉は悲しみに暮れている暇など微塵もなかった。ネズミ退治が待っていたからである。そのネズミとは懿嬪であった。育児に専念していたのと温貴妃の看病の間にネズミは皇上を奪っていった。そんな手癖の悪いネズミに金蓉はお仕置きをしたくなったのである。しかし、ネズミも知恵をふるうのか仁禧宮の厨房に仲間を忍ばせてきたのである。厨房の蘂之である。彼女は懿嬪の浅はかさに笑うしかなかった。
「露花、蘂之に食事を作らせて」
「慶妃様…良いので?」
「当然、毒が錆を入れてくるでしょうね…下僕は主人に似るものよ、蘂之はこの機会を逃したくはないはずよ」
「わかりました」
露花は金蓉に一礼すると部屋を後にした。入れ替わるように粛妃が瓊花に案内されて現れた。粛妃は金蓉の前にくるといきなり跪いた。
「同じ妃の位ですよ…お立ちになって」
「慶妃様、私が憎くても殺さないでください!」
そういうと粛妃はわんわん泣き出した。宥めながら話を聞くと夢の中に麗妃が現れて「譚金蓉に殺された」と言い放ちながら彼女の首を絞めたそうだ。迷信深い粛妃には耐えられない恐怖であった。とりあえず、優しく宥めて今日のところは帰らせた。
「面倒が増えたわ…」
金蓉は深くため息をついたのだった。




