わびしい最期
結局、寧福宮は全焼した。その原因は不明とされたが、春玉の人影が見えた瞬間に火がついたという証言により放火とされた。温妃は治療のため仁禧宮の東殿に移された。皇后は渡された戸籍を康坤宮に持ち帰って寶壽宮の宮女たちの調査を始めた。皇上はしばらく金蓉の傍にいることに決めた。
「皇上、放火だなんて物騒です」
「火の中に飛び込んだ女の言葉ではないな」
皇上は金蓉を抱き寄せた。胸の中では温妃を殺しかけた犯人の憎悪が押さえきれないでいた。
一方、皇后は戸籍を携えて寶壽宮に知らせもなく訪れた。宮女たちは中に入らせまいと必死に行く手を遮るが、皇后という権力者の前では全てが無意味だった。宮女たちを押さえつけて寝所に向かうと麗妃は夜化粧の真っ最中だった。
「呑気に化粧などいい身分だわね」
「皇后?!」
麗妃は鏡台から離れて礼をとった。皇后は長椅子に腰を下ろした。
「司正たちに寶壽宮を調べさせるわ」
「なんですって!?」
「宮女たちの不正が証拠として出てきた」
そこに太監が容児を連れて現れた。太監は容児の袖を無理やりまくった。するとひどい火傷が残っていた。
「この者は姓を莫、名を狼という…しかし、戸籍には偽名が記載されていた。おまけにその火傷…春玉がみた人影ね。司正たちに身柄を引き渡す。麗妃、あなたを孟答應に格下げし、冷宮に送る」
「譚金蓉ね!!あの女が悪いのよ!」
司正たちに身を送られた容児こと莫狼は拷問にあった。それに耐えきれず金蓉に毒を盛ったこと白状した。しかも、全て麗妃の命令と付け加えて。
翌日、孟答應は食事を運んできた宮女は絶句した。孟答應が首を括っていたのである。寵愛薄い妃の落ちぶれた最期だった。




