表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛人~後宮の女たち~  作者: 月島式部
夏の目覚め
13/21

夏侯太后

慶事の少なかった後宮がこの日は華やいだ。今日は太后の誕生日だ。慶和宮は花で飾られ、妃嬪たちや臣下たちからの贈り物で埋め尽くされた。いつも質素な太后もこの日だけは金の髪飾りをつけて大陸由来の紅を唇に塗っていた。

太后の誕生日には皇后をはじめ妃嬪たちが料理を作ることになっている。彼女の御膳は直ぐに妃嬪たちの料理で埋め尽くされた。太后付きの宮女、千竿(せんかん)が盆に料理をのせて現れた。

「太后様、こちらの粥は譚婕妤からですよ」

「まあ…身重なのにありがたいわ」

千竿が粥を御膳に置いた。粥は玉子粥で、溶き卵が綺麗な黄明色になっている。その色鮮やかな粥に太后は食欲をそそられた。そこに柳色の着物を纏った金蓉が現れた。太后は彼女を手招きして対に座らせた。

「こんな色鮮やかな粥は初めてよ」

「故郷の粥です。故郷ではこの粥を誕生日に作って振る舞うのです」

「そうなの。一緒に食べましょう」

「よろしいので?」

「ええ」

太后は千竿に粥を小皿に取り分けさせた。粥は湯気を立てている。二人は冷める前に口へ運んだが作り立てで上手く食せなかった。そこで少し冷めるまで話でもすることにした。

「こんなに豪華な誕生日、こなたが貴妃に冊立されて以来だわ」

「まあ…」

「こなたはね、あまり先帝に寵愛されなかった…懐妊して皇上を産んでから寵愛されて尊ばれた。良いこと?後宮の女は子どもがいなければ寂しく惨めなものよ。こなたはそれを身をもって知った」

「太后様のお言葉を肝に銘じます」

「さあ、粥を食べましょう」

「はい」

女は子どもがいなければ寂しい。この広く狭い後宮は孤独と栄華、寵愛と嫉妬が入り組むように存在している。その中で実子というのは唯一の肉親であり寄りどころなのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ