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愛人~後宮の女たち~  作者: 月島式部
春の微睡み
10/21

香り袋

皇后は長椅子にもたれて黒豆茶を飲んでいた。最近、腹の周りに贅肉がついたらしく黒豆茶をかかさず飲んでいる。美容に気をつけていても皇后は孤閏の身であった。そこに舞い込んできた金蓉の懐妊に大きく心を乱されている。そこに宮女の綸子(りんし)が香り袋を持って現れた。

「綸子これは?」

薫衣草(ラベンダー)の香り袋です。気持ちを静め、枕元に置けば安眠できますよ」

「譚婕妤にも分けてあげましょう」

「懐妊したての薫衣草は危険です。贈られるなら橘子(オレンジ)がよいでしょう」

「そうなの…」

皇后は綸子から香り袋を受け取った。甘くなく清涼感のある香りが漂っていた。皇后の脳裏に黒い稲妻が走った。

「綸子、莫答應を呼んできて」

「畏まりました」

しばらくして莫答應が現れた。綸子が椅子に案内すると別の宮女が皇后をつれてきた。皇后は微笑みかけた。

「皇后様、お呼びくださり誠にありがとうございます」

「こなたはあなたが心配でね。最近、皇上のお越しがないみたいだけれど」

「皇上は譚婕妤ばかり…夜も眠れません」

「そうね。眠れならいなら、これを枕元に置くと良いわ」

そう言って皇后は香り袋を莫答應に手渡した。莫答應は香り袋を鼻に近づけ香りをかいだ。

「なんと安らぐ香りかしら!皇后様、よいので?」

「こなたは大丈夫よ。さっそく枕元に置いて試すと良いわ」

皇后が席を立つと莫答應も席を立った。宮女に見送られ自室のある梨花房(りか)に向かった。その道中、宮女が小さく告げた。

「これを懐妊した譚婕妤に贈られればきっと株があがりますよ。そうしたら皇上も来てくれるかもしれないでしょう」

「そうね!それは良い考えだわ!」

さっそく莫答應は踵を返して碧藍殿へと向かった。外に控えていた瓊花に見舞いと告げて案内をさせた。通されたのは寝所だった。金蓉はつわりのためか顔は青白く、おまけにげっそりとしていた。

「婕妤様、お見舞いに参りました」

「莫答應、香り袋でも持っているの?」

「妊婦は香りにも敏感になると言うけれど本当ですね」

莫答應は袖口から香り袋を取り出した。そして安眠できますよ、っと言って枕元に置いた。莫答應の香り袋を瓊花は怪しんだ。そうして莫答應は茶も飲まず帰って行った。

「婕妤様、香り袋を拝見させてください」

「どうしたの、瓊花?」

渡された香り袋を瓊花はかいだ。そして小刀で袋を裂くと中から薫衣草が出てきた。

「薫衣草!直ぐにこれは捨てましょう!懐妊したての頃は危険です」

「何ですって!莫答應…!」

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