表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが  作者: パー子
第一章 協調性
9/52

「ごちそうさま」

ここに居たらまたケガをしそうなので

俺はささっと食べて終わり席を立つ




「あっ待って潤くん!!」

早く部屋に戻ろうとしたけど呼び止められたので足を止める




「あのねデザートにプリンがあるの

だから部屋戻るのもうちょっと待って」



「プリン!?」

何故か俺より陽菜が食いついた




「そうよみんなの分あるからご飯食べ終わったら食べようね」



「ヤッター!!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「うんいいねこのまったりタイム

あとピアノの生演奏のBGMなんかあると最高なんだけどなー」

みんなでプリンを食べているといきなり父さんが言い出した




「それは弾いてくれってことかしら?」



「ピアノなんてめったに聞かないからね

それにせっかくリビングにピアノが置いてあるんだし

一曲お願いします!!」



「陽菜もピアノ聞きたい!!」



「でもね私はもう手遊び歌くらいしか弾けないの

だからここは結音にお任せするわ」

そう言ってニコッとアイツに笑いかける




「結音ちゃんもピアノ弾けるのかい?」



「一応は…」

話を振られてちょっと恥ずかしそうにハニカム




「幼稚園から中学卒業まで習ってたのよね

だから私よりも上手よ」



「おお凄いじゃないか

弾いてほしいなー」



「辞めて1年も経つから…」



「えー結音お姉ちゃん弾いてくれないの?」



「さてどうしますか結音?」

その言葉にため息を1つ落とす諦めたように笑うと席を立ち

ピアノの前に行き蓋を開け椅子に腰掛けた



指を鍵盤に置くとそのまま軽く深呼吸をした

そしたらアイツの顔つきが変わった



まただ

また見たことない表情

学校じゃ見せない表情

アイツは集中したように真剣な表情になりゆっくりと指を動かした



~~~♪



アイツが奏でる音がすんなりと耳に入ってきた

その音を聞いてるとなんだか落ち着いてくる

それにこの曲知ってる

何だっけ




「二つのアラベスクね

私大好きな曲なのよ」

コーヒーの入ったマグカップを両手で包み込むように握り笑顔で詩織さんはそう言った




「大したもんだな」



「結音お姉ちゃん凄い!!

でも陽菜この曲知らない…」

まあ小学生にクラシックは分からないよな

そう思ったら鍵盤を見つめながらピアノを弾いていたアイツが

陽菜の方を向いてニコッと笑った

すると曲調が代わり誰でも知っている曲へと変わった




「きらきら星だ!!」



「正解っ」

嬉しそうに言葉を発した陽菜にアイツは笑顔でそう言った




「…でもちょっと違う?」

初めは陽菜の言う通りきらきら星だったけど段々違う曲になってる気がした




「この曲はきらきら星変奏曲って言うのよ

色んなきらきら星が隠れてるの」



「本当だ!!ここ『きらきら光る夜空の星よ』だ!!」



「面白い曲だな」

それから曲が終わるまでみんなアイツの弾くピアノに静かに耳を傾けた




「結音お姉ちゃん上手だったよ!!」



「ああ本当に上手いな結音ちゃん!!」



「ありがとう」

アイツは2人の方を向いて笑顔でお礼を言った

…礼言えるんだな




「陽菜もピアノ弾いてみたい!!」



「いいんじゃないか?」



「そうね音楽好きなのはいいことだと思うわ」



「おいで陽菜ちゃん一緒に弾こう?」



「ヤッター!!」

陽菜は笑顔でアイツの元へと走った




「じゃあ私の真似っこしてね」



「うん!!」

椅子を半分ずつで座り2人とも笑顔で楽しそうにピアノを弾く

全くもって俺の知らないアイツ

アイツ本当に俺のクラスメイトの米倉結音か?

本当は別人だったりして



あの食事会の次の日からの学校

アイツは今まで通りの俺の知ってるアイツだった

協調性無しの根暗ボッチ

同じクラスだからすれ違うことも普通にあった

でもアイツは無視と言うか眼中に無いと言うか俺に無関心だった

俺はどこからバレるか分からないから1人ヒヤヒヤしてたって言うのに




「ちょっといいかみんな」

陽菜の下手なピアノを聞いていると

父さんがいきなりちょっと真剣そうに話しだした




「新しく家族になるからな

ちょっとした決まりを作ろうと思う」



「なんだよいきなり」



「この再婚は父さんたちの我儘だと思ってる

だからみんな無理して家族になろうと思わなくてもいい」



「どういう事だよ」



「そうだな

例えは俺と詩織の事をお父さんお母さんと無理して言わなくていい

そりゃあ言ってくれると嬉しいけど

言うか言わないかは自分達で決めてくれ

それに話しにくいなら敬語のままでもいい

俺達も好きで再婚したんだ

だからみんなも好きにしてくれて構わない

分かったかな?」



「じゃあ陽菜は陽菜って呼んでほしい!!」



「なんでそうなんだよ陽菜」



「だって好きにしていいんでしょ?

だったら陽菜は陽菜って呼ばれたい!!」



「陽菜はあんまり分かってないみたいだなー」



「まあいいじゃないかしら

リクエストにお応えして私も今から陽菜って呼ぶわね」



「やったー!!

じゃあ陽菜は米倉先生の事お母さんって呼ぶね!!」



「あら嬉しいわ」



「えへへへ

お姉ちゃんも陽菜って呼んでね!!」



「うん分かった」



「じゃあ潤くんはなんて呼んでほしい?」



「えっ俺?

俺は何でもいい…です」



「そうじゃあ潤くんのままで行きましょうか

他の呼び方で呼んで欲しくなったら言ってね?

私的にはジュンジュンとか可愛くていいと思うんだけれど」



「いやそれは止めてもらえるとありがたいです…」



「うーん残念ね」



「思春期だから仕方がないよ

じゃあ結音ちゃんも当分は結音ちゃんかな?」



「私はどっちでも大丈夫です

でも敬語はすぐに取れないと思います…」



「結音は人見知りだからね」



「構わないよ無理することはない

俺の事は雅紀さんでいいから」



「はい分かりました」



「あっ待てよ雅さんとかでもいいかもしれないな

そうだせっかく女子高生に呼ばれるならマー君でもいいな!!」



「雅紀さんそれ結音が娘じゃなかったらセクハラですよ」



「何!?世知辛いね…」

父さんがボケている最中俺はその呼び名に付いて考えていた




俺はアイツの事をなんて言えばいいんだ?

父さんは好きにしていいって言うけどさすがに「米倉」はダメだろう

ここはやっぱり「結音」か?

いや話したこと無い奴に対していきなり呼び捨てってどうよ

馴れ馴れしすぎだろ

だったら父さんみたいに「結音ちゃん」

…ダメだキモいこれは絶対に無しだな



てか俺アイツと話すことあんのかな

あーどうなんだろ俺達

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ