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「あー疲れたー」
丸一日かかった引越しが終わり
新しい自分の部屋に置かれた使い慣れた自分のベッドに身を投げる
残念ながら文化系の俺に力仕事は辛い
それにしてもこの疲れようはヤバいな…
そう言えは最近体育の時間しか運動してない気がする
今日から筋トレでもするかなと睡魔に襲われる中思う
「ねみぃ…」
ドンッ
「お兄ちゃんご飯!!」
「 !? 」
意識が途切れそうになった時
荒々しく開けられたドアの音と陽菜の馬鹿デカイ声に驚き目をカッと見開いた
「脅かすなよな陽菜…」
「お兄ちゃんご飯!!」
「第一いきなり入ってくるなよ
部屋入る時はノックしろっていつも言ってるだろ」
「ご飯!!お兄ちゃんご飯!!」
「…分かったよすぐ行く」
俺の話なんて全く聞いてない陽菜にため息混じりでそう伝えると
速くね!!と言って陽菜は1階のリビングに降りて行った
「ドア閉めろよ
…ノックはちゃんと躾けないと本当にヤバイな」
俺だって健全なる高校生男子なわけで
だから色々いきなり入ってこられたらヤバイ時もある訳で
とそんな事を思いながら俺は陽菜が開けていったドアを閉め
晩飯が待つリビングへと降りて行った
リビングに着くとみんな席についていてテーブルの上には飯が並んでいた
父さんが作った雑な見た目の料理ではなく普通に美味そうな料理だった
俺は空いてる席に座った
あまりそこは座りたくないと思ったけどそこしか空いてなくて仕方がなくそこに座る
座ると嫌でも目の前に座るアイツが目に入った
あー変な感じがする
「よし揃ったなでは頂きます」
保育園の給食みたいにみんなで手を合わせ挨拶をして食べ始める
「上手い!!上手いよこのお味噌汁!!」
「美味しい!!」
「あら良かったわ」
味噌汁1つに大はしゃぎする父さんと陽菜
味噌汁なんて誰が作ろうと大体一緒だっつうの
ズー
…美味い
俺や父さんの作る味噌汁より何倍も美味い
でもはしゃぐほどでもないだろ
うん美味いけど
俺は味噌汁のお椀をおいておかずのハンバーグに箸を伸ばし
一口サイズに切ると口に入れた
「美味い!!…あ」
つい感想が口から出てしまった
「うん!!ハンバーグもすっごく美味しい!!
お父さんが作ったハンバーグなんかより全然美味しい!!」
「なんかとは酷いな陽菜…
おっ本当に美味い!!陽菜の言う通り父さんの完敗だな」
俺が口に出すと2人も美味しいと絶賛する
なんか悔しいけど俺の口からつい出てしまうほどハンバーグは美味かった
「そこまで喜んで貰えるなんて良かったわね結音」
「?」
どうしてそこでアイツに話を振るんだ?
そんな事を思いながらどんどんハンバーグを口に運んでいく
「うん嬉しい」
「もしかしてこれ作ったの結音ちゃん?」
「はい」
「!?」
その会話に俺は箸を止めてしまった
えっこれをアイツが作った?
それを俺は食べてる?
何それ?
「すごいね結音ちゃん
こんな美味しいのが作れるなんて」
「そんな事ないですよ」
「私が仕事の時は結音がいつも晩ご飯作ってくれるのよ
それに結音は料理上手なの」
「そうなのかー
やっぱり女の子は違うな
俺や潤も料理してたけどいつも不味くてな」
「料理できるだけましよ
今度2人にも作ってもらおうかしら」
「不味くていいならいつでもどうぞ
でも良かったな潤」
「何が」
全く嬉しくない事実を知ってしまったせいで
俺はちょっと不機嫌に返してしまった
「大好物のハンバーグがこんなに美味い作れるお姉ちゃんができて
今日からいつでも食べれるぞ」
「!?べっ別に大好物じゃねえから!!」
「えーお兄ちゃん大好きでしょハンバーグ」
「あら可愛いのね潤くん」
「可愛い~潤く~ん」
「違うし!!」
俺は一気にご飯をかき込んだ
悪いかよハンバーグが好きじゃ!!
てか俺の前で笑顔のアイツがムカつく
別に俺を見て笑顔じゃないけどなんかムカつく
…でもまあ美味いのは認めてやるよ
1人頭の中でツッコミながらハンバーグをまた口に入れた
ん?なんかもう一つ引っかかる事がある気がする
あれなんだ?
父さんなんか今言った気がする
…そうだなんでアイツが
「なんで姉ちゃんなんだよ」
「ん?」
「なんで俺が弟な訳
同い年だろ」
「ああそれは結音ちゃんの方が生まれが早いから
潤は11月だろ結音ちゃんは6月なんだ
だから戸籍上は結音ちゃんがお姉ちゃんで潤が弟なわけよ」
「なっ…」
俺がアイツの弟!?
無いわ
無さ過ぎだろ
「良かったな潤
これでお姉ちゃんに思う存分甘えられるぞー」
「だっ誰が甘えるか!!」
「照れるなよ思春期くん」
「照れてねえ!!」
「あんまり潤くんで遊んじゃ可哀想よ」
「大丈夫!!これが俺と潤のコミュニケーションの取り方だからな!!」
俺はこんなコミュニケーションの取り方は願い下げだ
でもそんなツッコミを入れたら父さんは喜んでもっとコミュニケーションを取ってくるはずだから止めてまた飯をかき込む




